インタビュー

UQ mobileをリードするKDDI村元氏に聞く、「でんきセット割」やショップ拡充の狙いとは

 KDDIは、「UQ mobile」で新たに「でんきセット割」の導入や、auショップでの取り扱い、5G向けの料金プラン「くりこしプラン 5G」を発表した。2月1日から「3GB/1480円」から利用できる新料金プラン「くりこしプラン」が提供される中、このタイミングでのサービス拡充はどういった考えに基づくものなのか。

 KDDIパーソナル事業本部マーケティング本部副本部長の村元 伸弥氏と、次世代ビジネス企画部長の長谷川渡氏に、これまでの新料金プランの手応えと、今後の展開について聞いた。

「新料金ラッシュ」でのUQ mobileは

――2月~4月にかけて、各社から新たな料金プランが続々と発表されました。ここまでのUQ mobileの手応えはいかがですか。

村元氏
 具体的な契約数は開示していないのですが、新料金開始以降、かなり契約していただく件数が伸びてきています。

 これまではご自身で料金を調べ、UQ mobileのサービスを見つけて加入する、といった方が多かったのですが、今春、携帯電話の料金に関するニュースがたくさん増え関心が高まったのか、従来よりも(UQ mobileを契約するユーザーの)年齢層が格段に広がりました。

 マーケットが一般化した、とでも言うべきでしょうか。これはUQ mobileに限らない話なんだろうと推察しています。

村元氏

長谷川氏
 特定の年齢層が伸びた、というよりも全体として広がったという感じです。

――競合他社からもさまざまなプランが発表されています。他社の施策で、思わず唸ったような一手はありましたか?

村元氏
 どこか一社というよりも、各社さんのあの手この手で、料金プランの仕組みが思い切って変化したと思っています。訴求の方法やコミュニケーションのうまさなど、各社さんがそれぞれ工夫しておられるなと……。なにもしなければ、UQ mobileは埋没してしまいます。

auショップ対応、ラインアップ拡充で「機会損失」をカバー

――そして今回、auショップでの取り扱い拡充や、5G向けプラン、iPhone 12の取り扱い、そして「でんきセット割」が発表されたと。このタイミングになった理由はありますか?

村元氏
 個人的には、早ければ早いほどいい、と考えてはいました。

 auショップでの対応については、料金に関心を持っていただいて「説明を受けたい」「加入したい」と思っていただいたとしても、販売店が整備されていなければ、ご期待に応えきれない部分があったことを踏まえています。

 UQ mobile自身、もともと店舗がなかったところからスタートしています。でもオンラインだけでは伝えられないということで店舗を広げていきました。2月に新料金プランを提供することになり、全国どこでもしっかりとUQ mobileのサービスをお届けできる体制じゃないと、と考えた部分もあります。

長谷川氏
 お客さまの声を聞くと、「スマホを一緒に購入したい」というお声がとても多いんです。ラインアップをしっかり揃えなければいけないと。

長谷川氏

村元氏
 そうして準備が整ったのが、このタイミングだった、というわけです。

――揃えたかったピース、ということになりますか?

村元氏
 そうですね。UQ mobileは、auのネットワークを使っています。エリアカバレッジへの心配はないのですが、その情報もまだ行き届いていないと思います。そのあたりをきちんとお伝えしていきたいですね。

――これまでのUQ mobileの店舗で対応していた内容と、新たにUQ mobileを取り扱うauショップでのの対応内容で、違いはありますか?

村元氏
 大半は同じです。ただ、一部、修理センターへ引き継ぐところはあります。そこも丁寧にご案内できるようになる、という点は、これまでと違うところです。auショップでの対応以前は、そもそもご案内の接点がありませんでしたので。そしてサポート内容は日々改善を進めていきます。

5Gプランについて

――今夏より、5G対応の新料金「くりこしプラン 5G」が提供されるとのことですが、2月に登場した「くりこしプラン」と5G対応以外は同じ内容です。

長谷川氏
 まだ詳細が決まっていないところもあるのですが、同じ料金にすることにしました。

 というのも、4G LTEサービスと、5Gサービスを必ず連動させたほうがいいのか、あるいはUQ mobileらしさを出したほうがいいのか、(競争戦略上の)選択肢があるかなと思っているためです。

 またauでも5Gと4G LTEの料金は分かれている、という点もあります。

――確かにauでも、ですね。

長谷川氏
 「使い放題」はauブランドでご提供しています。UQ mobileでの5Gサービスは、3GB、15GB、25GBで区分けし、UQ mobileの4Gサービスと同じ料金体系にすることで、まずはシンプルな建て付けにしました。

――有料オプションにするですとか、別の料金体系にするといったことも想像していました。

長谷川氏
 今、スマホを買い換えたい方のなかには、「どうせなら5G対応機種がいい」とお考えになられることがあろうと思います。そういう場合、料金が異なると、躊躇されるかもしれません。悩ませてしまう要素は、お客さまにとってはペイン(痛み)になるんじゃないか、とも思ったのです。料金を同じにすることで、端末はやっぱり新しいもの、とお選びやすくなったかなと。

――ちなみに、新料金プランで人気の容量は?

長谷川氏
 今は「くりこしプラン S」、3GBが一番多いですね。でも「M」の15GBを利用される方も想定以上にいらっしゃいます。

村元氏
 繰り越し機能自体は、通信容量を使い切らなかった場合、自動的に適用されることになりますので、かなりの方が繰り越しになって、ちょっと多めの容量になっているかなと思います。

――小容量が人気、ということは、UQ mobileユーザーが5Gスマホを手にする際、すぐに「使い放題にしたい」ということになるわけでもなさそうですね。

長谷川氏
 もちろん長期的に見れば、将来、5Gに適したコンテンツのクオリティが広がって、もっと大容量がいい、というタイミングはやってくるでしょう。でも、今からスマホを買うとき、そこまで想像するのは難しい。

――欲しいスマホを買って、必要にあわせて料金プランを変えてね、ということですね。

iPhone 12を揃えた理由

――iPhone 12シリーズの取り扱いも発表されました。あわせて、ミドルレンジのAndroidスマートフォンもラインアップされました。

村元氏
 ラインアップの拡充は、基本的にお客さまのお求めに応じたものです。たとえばiPhoneは、これまでiPhone 11、iPhone SEなどをご提供してきましたが、iPhone 12も欲しいという声がありましたので、自然の流れでご提供に至ったと。

 Androidは、購入しやすい価格帯へのニーズが高く、最新の機種が欲しいという声があり、5G対応の2機種をご提供することになりました。

――auでもiPhone 12シリーズは用意されていますが、そのあたりの棲み分けのような考え方はあるのでしょうか。

村元氏
 サービスを提供する事業者の目線で、auはこうだ、UQ mobileはこうだ、と分けるよりも、お客さまが価値を感じ取って選んでいただければと思っています。ただ、auは使い放題で、オンデマンドの映像配信サービスとの連携も進んできています。コンテンツをリッチに使いたい、というところから、必然的にハイエンド寄りになろうところがあります。お客さまの指向もauとUQ mobileで分かれてきているかなと。
長谷川氏
 auにはフォルダブルスマホもありますし、フィーチャーフォンからの移行に備えてローエンドな機種もご用意しています。端末と通信がある程度分離する中で、お客さま自身にお選びいただく面が強くなってきているとは思います。auはより幅広く、UQ mobileは料金に関心を持っていただいた方にご用意する、ということで端末ラインアップを選んでいったことになります。

でんきセット割の狙い

――10日に登場した「でんきセット割」は、auでんき、UQでんきといったKDDIの新電力サービスを契約すると、UQ mobileの料金プランが割引されるというものですよね。個人的には意外に感じたのですが、「中の人」としてはすんなり決まった施策なんでしょうか?

くりこしプランSくりこしプランMくりこしプランL
データ容量3GB15GB25GB
月額料金 (割引適用前)1628円2728円3828円
割引額-638円-858円-858円
割引後月額料金990円2090円2970円

村元氏
 そうですね、わりと悩むことなく提供が決まりました。というのも、電気料金って家計のなかの支出としてもう固定化されているもの、ですよね。

 auでんきも、UQでんきも、ご契約いただけるとポイント還元分を含め、実質的な支出が下がる。とてもわかりやすいサービスなんです。今回、セット割を提供することで、より多くの方に知っていただきたいなと考えています。電力サービスの乗り換えもハードルが低いですし、「新しいUQ mobile」を示すには、一番いいものかなと。

――電力サービスへの切り替えについて、「面倒くさそう」と感じる人はそれなりにいそうです。

村元氏
 それが簡単なんですよ。実際、ワンストップで切り替えられます。お申し込みいただいて、住所やお名前などを登録いただければ、私どものほうで切り替えの手続きを進められます。

地殻変動のマーケットに

――povoもそうですが、ahamo、LINEMOと大手各社からオンライン専用プランが登場したことを踏まえると、今回のauショップでの取り扱いの拡充は、そうした動向へのカウンターにも見えています。

村元氏
 たしかに事業者目線では、そういう表現になるかもしれません。通信業界の動向として、オンラインメインのサービスが登場したわけですが、それひとつとっても、たどり着ける方もいれば、難しいと捉える方もいます。お客さまのお声を聞いていくと「オンライン専用プランは自分には関係ない」という方も非常に多いと感じたんです。

長谷川氏
 店舗という設定はそういう意味で、すごく重要です。他社さんの動きがどうこうとよりも、市場環境が変化した中で、お客さまが抱える悩みが増えたところがあります。

村元氏
 想定よりも大きな変化だったことは事実です。その分、UQ mobileとしても向き合い方を見直していかなきゃいけない。そのひとつの回答が今回の取り組みです。これまでは料金に注力してきましたが、あらゆる場面で、トータルで、安心していただけるポイントに重きを置いたということになります。

――なるほど、ありがとうございました。