インタビュー

法林・石川・石野が語る「LG V30+」の魅力

2017年最後のハイエンドスマホから見える2018年のトレンド

 9月のIFAで発表されたLGの最新Androidスマートフォン「V30」。12月22日にKDDIから「isai V30+ LGV35」として、そして年明けにはNTTドコモから「V30+L-01K」として発売が予定されている。発売直前にケータイ Watchでおなじみの法林岳之、石川温、石野純也の3氏に集まってもらい、V30+の評価、そしてLG製スマートフォンについて語ってもらった。聞き手は本誌編集長・湯野康隆。

「isai V30+」
左から法林岳之氏、石川温氏、石野純也氏

2017年のLGはトレンドを先取り V30+は待望の発売

――auのLG製端末isai V30+が間もなく発売されます。2017年最後に登場するハイエンドスマホということで、久しぶりに皆さんに集まってもらいました。今回もいつもの本音トークでお願いします。まずは今年のIFA(毎年9月にドイツで開催される国際家電イベント)に合わせてV30が発表されましたが、当時は皆さんどう感じていたのでしょう?

石川温氏

石川温氏(以下、石川)
 正直、IFAに行くときはノーマーク。

一同
 (笑)。

石川
 だけどLGの発表会を見ていたら、GoogleのVRプラットフォーム・Daydreamの日本初対応を発表して、プレゼンで日の丸まで出てきて、これは大変なことになるな、気合を入れて取材しないと、と思いましたね。有機ELを初めて使った、Googleの人もきている、日本でローンチする、驚いたしインパクトがある発表会だったと思う。そのせいかずいぶん待った感じがするね。まさに待望の発売。

――スマートフォンによっては発表時と国内の発売時とで、端末に大きく違いがあったりすることもありますが、今回はそのままストレートに発表会のものが発売されましたね。

石野純也氏

石野純也氏(以下、石野)
 名前がちょっと変わったくらいだよね。これまでIFAではLGをそれほど注目していなかったんだけど、V30はDaydream対応、有機EL採用、カメラにも力を入れて今年前半に発表されていたLGのG6以上のインパクトがあった。

石川
 そもそも従来のIFAではLGはモバイル中心ではなかったしね。

法林岳之氏(以下、法林)
 いつもはテレビに力を入れていたね。

石野
 2016年のIFAでもたしかスマートフォンは1機種だけしか置いてなかった。

法林
 過去にも丸めるBluetoothキーボードとか面白いものを出しているんだけど、モバイル的にはそれほどのトピックはなかったな。

石野
 だけど今年はMWC(毎年2月にスペイン・バルセロナで開催されるモバイル関連の世界最大級のイベント)で発表したG6はいち早く2:1のディスプレイを採用している。

石川
 G6で18:9という今年のトレンドをつくったというか、一番最初に発表したんだよね。最初は「18:9」と言われて「なんで2:1って言わないんだろ?」と、そっちばかり悶々と思っていたんだけど(笑)。

左から法林氏、石川氏、石野氏

法林
 バルセロナにいるあいだになんとなく納得していったんだよね(苦笑)。

石川
 ちょうどOSの進化でAndroidでマルチディスプレイの機能が搭載され、2画面に対応した。それで18:9は分割したときに正方形同士で見られるというのがあった。2月のタイミングで18:9で大画面、狭額縁、と今年のトレンドを実現していた。ただそのG6が日本で発売されなかった。どうなるんだろう? と思っていたらV30+が発売されることになった。

法林
 LGは毎回ディスプレイで先頭を走っている。高解像度のディスプレイを出してきたときもそうだったよね。有機ELを採用してきたのも不思議ではない。

石川
 昔からそうだけどスマートフォンメーカーが差別化しにくくなっていくなかで、部材をもっているメーカーが強くなっていくし、生き残っていく。ディスプレイ持っていて、有機EL載せられるLGのようなメーカーは世界を見ても数えるくらいしかないんだよね。

石野
 この秋冬から有機ELが一気に主流になりましたしね。やはりテレビを持っているのはLGの強み。慣れてないと有機ELの製品化に苦労すると聞きます。焼きつきを起こしたり、ディスプレイの調整がうまくいかなかったり。だからLGのように実績があると安心する。最近は日本でもLGのテレビを見るようになりましたし。

法林
 GoogleでLGを検索すると「LG テレビ」って出てくるもんね。

――売れているという裏返しだと思いますね。

石野
 昔からテレビのデザインも良かったんですよ。テレビも狭額縁で。他のメーカーはテレビの額縁にこだわっているように見えるところもあったから。

石川
 これでスマホも狭額縁になり、有機ELになり、縦長になり、来年以降もこのトレンドが続くだろうし、逆に言うと各メーカーは来年以降なにをするんだろう?って思う。いくところまでいった感じ。

石野
 各社のスマホと並べてもデザインがだんだんわかりにくくなっていますよね。まだ細部の違いで判断できるけど、このまま進んでいくと……あえてクセが欲しいかもしれない。「Fx0」のようなすごい作り込みをするとか。

カメラはCine Video、ポイントズーム、標準+広角に注目

石野
 そういえば日本ではあまり言われていなかったけど、IFAのV30のプレゼンでは動画をフィーチャーしていたんだよね。

法林
 発表会では完全に動画推しで、映画のように撮れることをアピールしていたね。

石野
 V30+の「Cine Video」という機能です。

――動画を作る側の機能ですね。

石野
 センスを問われるから凝った動画を撮るのは大変だけどね。「動画機能をそこまで使う?」っていう意見もあるだろうけど、昔は動画をスマホから配信するなんてことも、「そこまでやらないでしょ」という意見があったからね。ここまで動画配信が一般的になり、データ通信の帯域も広がっていくなかで、動画撮影も今後の可能性としてあると思いますね。ただCine Videoのエフェクトはモードが多過ぎて、もう少し整理してもいいかなと思う。

石川
 機能負けしているんですよ。周りにこのCine Videoに耐えきれるキレイな景色が無いから。スマホではなく、被写体がその機能に追い付いていない(笑)。

一同
 (笑)。

Cine Videoを用意

石野
 Cine Videoは15モードもあるので、どれを選んでいいか分からない。「クラシック映画」モードとかは分かりやすいから雰囲気のあるいい映像になるんですけどね。「夏の超大作」モードとかどんな加工しているのか分からないから選びにくい。

――流行語に「インスタ映え」がありましたし、次は動画で何か流行しますかね。

石野
 インスタも動画にシフトしていますし、Facebookも動画機能を強化していますよね。Twitterもそうですし、SNSのアプリが力を入れているので動画に力を入れるのはアリだなと思いますね。

石川
 デジ女系の人たちがLGのカメラで盛り上がっていた感じもあったので、撮りがいがあるというか、工夫して撮るとなるとV30+のカメラはいいと思う。

石野
 他にもレンズがガラスになっているし。ポイントズームもある。

法林
 ポイントズームはやってみると結構面白い。全体ではなく、ズームしたい部分をタッチして、好きな部分を拡大できる。風景とかもそうだけどズームを使って撮ると動画って雰囲気が変わるからね。動画編集は別の問題だけど、ポイントズームは今までにないし、普通のカメラにも無い機能。タッチを活かしている機能でもあるし。

Cine Videoのポイントズーム

――さらにカメラ周りは、F値1.6。

法林
 ただ明るくするとノイズが増えるから、ちゃんと撮れるのか、という問題がある。だけどIFAのV30やV30+を試してみると、暗いところでも明るくちゃんと撮れている。あとデュアルカメラの使い方が他のスマホと違うんだよね。多くのスマホのデュアルカメラは「モノクロ+RGB」か「標準+望遠」という組み合わせが多いんだけど。

石野
 V30+は「標準+広角」なんですね。

標準
広角
標準
広角

法林
 高い建物を撮りたいときとか、後ろに下がってもなかなか被写体が入らないことがある。そんなときにこのレンズがあると後ろに下がり過ぎなくて済む。もちろん広角レンズなのでワイドで撮った感があるけどね。歪みは抑えているんだけど、全体像を見たときにワイド感は強調される。

石野
 もう1個レンズをつけて2倍ワイドにしてほしいな。

法林
 来年はトリプルカメラ(笑)。

石川
 それもアリだと思いますよ。あと地味に便利なのが、撮ったあとにTwitterなどのアイコンが出ること。記者会見ですぐに画像を上げたりするので……素早く共有できるUIがきちんとしているのは良い。

法林
 撮ったあとにアイコンがポロッと降りてくるのが可愛くていいよね。

石川
 撮影後に他のアプリを起動して、というのは面倒くさいですし。

法林
 メニューを押して……とかね。

――V30+と違って他のスマートフォンはGoogleのお作法通りというか、UIをさほど変えてきませんよね。

石川
 Googleに忠実なところもあっていいけど、こういう使い勝手でメーカーの違いが見えてくるのも良いね。

法林
 V30+は旅行に持っていって風景を撮ると本当に楽しいと思うな。

――撮り方を教えてくれる機能もありますね。画作りは凝りだすとキリがない面がありますが、誰でもちゃんと撮れるようにしている。

法林
 シャッターを押して撮るだけ、のカメラから一歩踏み出すための道を示してくれている。ガイド機能はやりたがらないメーカーもあるからね。V30+は良い取り組みをしているよ。ところで2人は子供をスマホで撮ってる?

石川・石野
 撮っていますよ。

石野
 静止画も動画もスマホで撮っています。

――おふたりのお子さんはまだですけど、幼稚園に行くようになるとさらに撮るようになりますよ。

石野
 喋りだしたとき、歩き出したとき、その都度撮っています。子供が成長してきたらポイントズームは学芸会とか運動会でいいでしょうね。今はまだポイントズームをしている間に逃げちゃうけど(笑)。

――そう考えるとCine Videoに子供向けモードがあってもいいですよね。シネマというテーマなので今回は無いんでしょうけど、動画の撮影モードと考えれば。

石野
 そうですね、運動会モードとかね。カメラを3つ4つ搭載して広角10倍とか、360度撮影とか。

――運動会はファインダー見ていると自分の子供がどこにいるかわからなくなりますしね。皆同じような背丈で。

石野
 デュアルカメラが進化すれば、撮影中に裏で広角側のレンズを動かして、AIで顔を検知してフォーカスして、どこにいるか教えてくれる、とかできないかな。

――遠くの子供を顔認識してくれるとか。

石川
 だったら子供に電波発信する機械つけちゃう? ビームフォーミングみたいにビビビとスマホのカメラが子供に向く。

一同
 (笑)。

背面ボタン、ロック解除、片手操作まで考えられた端末

――操作面ではどう感じられました?

石野
 背面の電源ボタン(兼指紋センサー)が押しやすいんですよ。LGは長く背面のボタンに取り組んでいるから良い位置を知っている。他のメーカーのスマホだと背面に指が届かない、届いても押せないのがある。

――カチッといかないスマホ、たしかにありますね。

石野
 それと電源ボタンが音量ボタンと同じサイドに並んでいると押し間違いがある。音量下げようとして電源ボタンを押しちゃうとか。

法林
 だけど編集長(聞き手の湯野)は背面ボタンが嫌いなんだよね(笑)。背面にあると車に乗ってホルダーに載せたときに押すのが大変だから。

――そうなんですけど、LGのスマホは「ノックコード」があるので画面をトントンとタップするだけでロックを解除できるので大丈夫なんですよ。背面にボタンを搭載するのなら最低限そういった機能は必要ですね。車だけでなく、デスクやテーブルの上に置いてあるときも、裏側にボタンがあるとそのままでは押せない。

法林
 とてもよく分かる。

電源ボタン兼指紋センサー
ノックコードでロック解除が可能

石野
 顔認証でロックの解除もできますしね。

法林
 使ってみたけど顔の検出も速い。顔認証でロックは解除できても、その後スワイプ操作が必要な端末があったりするけど、少なくともV30+は一発でそこが解除して画面が表示される。それに手に持ったときに軽いし、異様な縦長感も無い。

石川
 日本市場は片手で使えなきゃ、というのがあるのでこのサイズ感、軽さは良いと思います。縦長スマホは数あれど、これで片手操作するのはちょっとなあ、というのも多いので。

石野
 G6の発表ときにはGoogleの担当者も登壇して縦長ディスプレイでもアプリは対応します、と。今回は有機EL、Daydreamに対応したけども、ちゃんとGoogleの人も呼んでいるし、安心感があるよね。

石川
 DaydreamはGoogleのプラットフォームなのでコンテンツの広がりも期待できるでしょう。

法林
 標準プラットフォームとしてのVRを楽しめるからね。ドコモ版のV30+はVRゴーグル(Google Daydream View)も付いてくるし。

石川
 VRはメディアが盛り上がっているけど、世間ではまだまだ知らない人が多いし、VRゴーグルを一度体験してもらうには付属しておくのもいいかもしれない。au版は別売だけど、そもそもこれまでのisaiユーザーにとってはisai V30+という後継機が出てきてよかった、という面もあると思う。isaiユーザーなら安心して使えるから。もちろん幅広い人に受け入れられそうな端末だと思いますけどね。誰が買っても後悔しない、満足度の高いスマホ。

石野
 au版のisai V30+はカラーバリエーションにモロッカンブルーがあるんだよね。この色はドコモ版に無い。isaiといえばもともと水色っぽいブルーだったので、auにブルーのカラーがあるのは良いと思う。

――さらに防水、防塵なうえ、実はMILスペックなんですよね。

au版のカラーにはモロッカンブルー(右)も

V30+は完成度が高い! 逆に足りない部分は?

isai vivid LGV32(中央)

石野
 こう見ていくとV30+はまとまりが良い端末なんですよ。ただ、完成度は高いけどクセが無いのが気になる。これで良いという人ももちろんいるとは思うけど。

法林
 そうだよね「そつなくまとまっている」というのがピッタリ。これ(と言って本革モデルのisai vivid LGV32を取り出す)みたいな強烈な個性が無い。

石川
 そのへんはバランスが難しいでしょうね。LGの端末も個性が激しいときと完成度の高いときと年によって違う。

法林
 俺はisai vividが相当好きでしたけどね。

石野
 かつてのG5なんてガシャンって外せた(本体下部からバッテリーを外せるほか、モジュール機能あり)。それに比べるとV30+はおとなしい。G5の拡張の思想をどこかに活かせると面白いと思うんだけど。あとバズワード的にAIに対応してほしかったな、という。

――AIっぽさはたしかに無いですね。

石野
 もちろん「OK Google」とかできるし、Google Homeとか使えるんだけど。

石川
 ただ自分もそうですけど、誰もAIの本質を分かっていないじゃないですか。

法林
 あれをAIと言っていいのか、みたいな。

石川
 そうです。言ったもの勝ちみたいになっている。このV30+だってポイントズームが「実はAIです、機械学習でズームしています」って言われたら、そうかあってなっちゃう。

一同
 (苦笑)。

石野
 そうですね、顔を見分けてズームする、とか言われたら。

――画像系って実際そうですからね。大体こういう感じで目がきて、とか……そのあたり、個性もAIもLGの次期モデルで何か面白い試みがあることを期待、ということで。

三者が面白いと思ったポイントは?

――では最後に皆さんが個人的にV30+で面白いと思ったポイントを挙げてください。

法林
 「標準・広角」のデュアルカメラとポイントズームかな。カメラは画質、ボケ味って言う声もあるけど、広角って結構大事。全体が撮りたいっていうことはあるので。V30+のカメラは旅行好きには楽しいんじゃないかな。

石川
 取材で動画を撮ることが増えているので、動画の使い勝手がまず挙げられる。それと機能としては目立たないんだけど「HDオーディオレコーダー」が搭載されているんだよね。取材で録音するときにスマホを使うことも増えてきて、そんなときにきっちり録れてテープ起こしがラクそうだな、って思う。「撮る/録る」という機能が個人的には気になりましたね。

石野
 やっぱり動画。あとはDaydream対応かな。Daydream対応機自体少ないですから、VRの開発者にも訴求できただろうな、というのも評価していますね。

――V30+はハイエンド端末と考えていいんですかね。

法林
 肩肘張っていないんだけど必要な機能は全部載っているよね。素直な端末、普通に触っていたいスマホだと思う。他社の端末に劣っている部分があるわけでもないし、ムービーをはじめぜひ“遊んで”欲しいね。