インタビュー

HTCのChialin Chang氏が語るHTCユーザー像と日本市場

プロモーションに「攻殻機動隊」を使うのは未来的だから

HTC President of Smartphone and Connected DevicesのChialin Chang氏

 HTCは、同社のAndroidスマートフォンのフラッグシップモデルとなる「HTC U11」を発表したばかりだが、日本ではそれに加えて同端末に繋げて使用できるVRヘッドマウントディスプレイ「LINK」が販売される。

 台湾で5月16日に「HTC U11」の発表会を開催した同社だが、その翌日となる17日、President of Smartphone and Connected DevicesのChialin Chang氏が日本のメディア向けにブリーフィングを実施。以下、同氏が語った内容となる。

他人と異なる選択肢を求めるのがHTCユーザー

HTC U11

 日本市場はHTCにとって非常に重要な市場です。日本市場でも私たちのプレゼンスを広めていきたいと考えています。過去、HTC butterfly、HTC J butterfly、HTC J One、HTC 10などを出してきました。非常に忠誠心の強いファンがいます。

 数カ月前、たぶん年初だったと思うのですが、週末の夜、街を歩いていたら、ディンタイフォン(小籠包の有名店)の本店の前に観光客の長い列ができていました。だいたいは日本からの観光客です。その近くのチャイニーズパンケーキのお店に20代後半ぐらいの女性がいて、私は彼女の後ろに並んだのですが、彼女が後ろを向いて「何を売ってるの?」と北京語で話しかけてきました。どこから来た人なのか分からず、英語で答えたのですが、すると彼女はまた中国語で話してきたのです。途中で日本人だということが分かり、筆談でコミュニケーションしたのですが、彼女はそこで携帯を取り出してチャイニーズパンケーキの写真を撮り始めました。その端末がHTC M7(HTC J One)だったんです。私はとても驚きました。その時、私の情熱は10倍になりました(笑)。ディンタイフォンはもう行ったというので、近くのビーフヌードルのお店もおいしいよ、と紹介しておきました。

 そこで私は考えました。どのような消費者がHTCの端末を買うのだろうかと。なぜiPhoneよりも高いのにHTCの端末を買うのか。私の推論としては、彼女は中国語を勉強していた。おそらく一人で旅行していた。そして、ほかの人とは違うことをしたい、集団で旅行するのではなく、一人で旅行したい、視野を広げたいと思っている。彼女がHTCの端末を利用していたのには理由があると思うんです。異なる選択肢を求めている人たち、そして自分で何をやっているか分かる、意思決定ができる、これが非常に重要だと思うんです。このようなタイプの消費者がHTCのユーザーになるのだと思うのです。

日本は常に最先端を走る市場

本格的なVRを体験できる「LINK」

 今年はオペレーターと協力してHTCのベースをどんどん広げていきたいと考えています。同時に我々のターゲット顧客にきちんと訴求していって、スマートフォンのベースを広げていきたいと考えています。

 2020年には東京オリンピックがありますが、我々の理解ではオペレーターはその前に5Gのネットワークを整備しようとしています。5Gが始まれば、アプリケーションの種類も増えますし、データ量も増えていきます。その時にはもうスマートフォンが無くなっていると考えている人もいますが、それは正しくはありません。新しい技術が生まれると、新しいサービスや新しい製品がそれに付随して生まれるものです。日本の人々は新しいものや新しいサービスを使用するという点では、常に最先端を走ってきました。ですから、日本は我々にとって非常に重要な市場なのです。

 実際、私たちが赤い色のモデルをデザインしたとき、イメージしたのは日本と台湾です。鮮やかな赤い色は日本と台湾の若者向けの色なのです。スマートフォンだけでなく、今後出していく製品にとっても日本は重要な市場です。

「攻殻機動隊ARISE」でHTC U11やLINKをプロモーション

「攻殻機動隊ARISE」をプロモーションで使用

 今年、私たちは少し異なる試みを行っています。数年前、HTC J butterflyを出したとき、AK……ではなく、乃木坂46を起用しました。年を取ってしまったので48と46の違いが分からなくなってきましたが(笑)、いずれにしても日本の文化とHTCの文化を繋げるような試みをしています。今年は「攻殻機動隊ARISE」とのタイアップを考えています。

 なぜ攻殻機動隊を使うのかというと、日本で単に有名なだけでなく、非常にユニークなものであり、日本においてアイコンとして非常に価値があるものだと考えたからです。そして、未来的な考え方を持っている作品だからです。我々も未来を見据えた製品を作っている企業です。ですから、HTCと攻殻機動隊のイメージはフィットしています。これを通じて日本でのプレゼンスを高めていきたいと考えています。

 私たちは将来に備えています。今年、さらに新しいことを始めようとしています。それは日本でだけトライアルするものです。あまり盛り上がり過ぎると、台湾や米国のお客さんから「なぜ日本だけなんだ」と責められてしまうので、なるべく目立たない扱いでお願いしたいのですが(笑)、「LINK」というプロジェクトを行おうとしています。

 「LINK」は、スマートフォンと直接繋いで使用します。モバイルVRを体験できる製品です。あくまでプロジェクトという位置づけで、日本だけで行います。私たちとしては、少数のコンシューマーに売って、そこで気に入ってもらえれば、そこからさらに広げていきたいと考えています。なので、なるべく目立たないようにお願いします(笑)。