インタビュー

「Xperia X Performance」開発陣が語るコダワリ

“百分の数ミリ”も見逃さないXperiaへの熱意

 「究極の集大成」と表現された「Xperia Z5」を超えて登場したソニーの「Xperia X Performance」。大手3キャリアから2016年夏モデルとして発売されるこのスマートフォンは、Xperiaシリーズのブランドを再定義する製品だ。Xperia Xシリーズのコンセプトから、意外なコダワリまで、Xperia X Performanceの開発陣にインタビューを行った。

 お話を伺ったのは、Xperiaスマートフォンの商品企画を統括する染谷洋祐氏、アートディレクターの久保田裕己氏(ハードウェアデザイン担当)と村井薫氏(カラーデザイン担当)、カメラ設計担当の遠藤由樹氏、機構設計担当の金子文稔氏。

コンセプトは「人に寄り添う」

――最初に、ブランドを刷新したXperia Xシリーズのコンセプトをお聞かせください。

染谷氏
 今回のXperia Xシリーズでは、「人に寄り添う」というコンセプトを、商品開発からデザインまで一貫して掲げています。「四角い一枚板」という“Xperiaらしさ”を残しつつ、お客様の手に違和感なくフィットして、手に馴染むような製品を目指しました。

染谷洋祐氏
久保田裕己氏(ハードウェアデザイン担当)

久保田氏
 デザインの上では「人に寄り添う」という大きなコンセプトの元に、3つのキーポイントをでまとめています。1つ目は、我々は「ジェントルフォーム」と呼んでいますが、ガラスやメタルといった異なる素材を、筐体に包み込むようにシームレスに組み合わせました。

 2つ目は、「ユニファイドカラー」と呼んでいるものですが、背面の色とフレームの色、そして前面のガラスの色をカラーマッチングさせています。ホーム画面まで同じカラーで揃えることで、「一枚板」を際立たせました。

 そして3つ目は「メタル」です。メタル素材は「Xperia Z1」からフレーム部に使用していましたが、今回は背面にも採用することで、より剛性を高くしました。持った時の満足度が高まるような加工を施しています。

――カラーリングではトレンドのローズゴールドも揃えていますね。

村井薫氏(カラーデザイン担当)

村井氏
 スタンダードなグラファイトブラック、ホワイトに加えて、今回はゴールドをテーマにした2色を追加しています。トレンド感もありますが、金属というマテリアルにマッチしている色を検討した結果でもあります。その中でも多くの方に好まれ、Xperiaのユーザー層を広げる色として、ライムゴールドとローズゴールドをラインナップに加えました。

久保田氏
 確かにゴールドは他社でもラインナップに加えていたりと、業界のスタンダードカラーになりつつあります。Xperiaではソニーらしい味付けを加え、“新しいゴールド”を提案しています。例えば、ライムゴールドは、柑橘系のテイストを加えて、新しい見え方を狙っています。

――国内メーカーではフィーチャーフォンが主流だった時期には、フロント面までカラーを統一することにこだわっていましたね。スマートフォンでその試みを蘇らせたのは、グローバルでもそういったコダワリを求める声があったのでしょうか。

久保田氏
 そうですね。デザインを決めるにあたって行った調査では、Xperiaのデザインを求めるお客様には、フロントまで統一されたカラーが好感触でした。

染谷氏
 発売してまだ3週間ですが、お客様からのファーストインプレッションでも、好感触をいただいています。本体のカラーを好んで買っていただいたユーザーさんからの支持をいただいています。

――どのカラーが人気でしょうか。

染谷氏
 想定した以上に割れています。定番のグラファイトブラックやホワイトがより多く販売されていますが、ゴールド系の2色も偏りなく出ています。

――ロック画面やホーム画面のカラーリングも筐体と一体感がありますね。

久保田氏
 製品デザインのチームでは、ハードウェア担当とUI(ユーザーインターフェイス)担当、カラーマネジメント担当が同じチームで働いています。最初に「カラーマッチングを徹底させる」という開発コンセプトを決めた段階から、強く連携しながら開発しています。

染谷氏
 例えばロック画面では、スライドさせてロックを解除する時に、裏面にホーム画面があるように演出しています。ロック画面に表示された時計が透けていて設定されたホーム画面が見えるようになっています。Xperiaの世界観を表現するため、こういったディテールに至るまで、開発段階からチーム全体で検討を重ねてきました。

――UIを作りこむと満足度があがる一方で、OSアップデートが困難になるように思えます。

染谷氏
 全世界的にひとつの機種を長期間利用するお客様が多くなっていると考えています。そのためXperiaでは、購入時の世界観で楽しめるよう、開発段階からオペレーターさんとも検討を重ねています。

ハードウェアは3キャリア共通仕様

――今回も3キャリアから発売となりますが、それぞれのキャリア向けのカスタマイズを加えているのでしょうか。

染谷氏
 各キャリアさま向けに求められるネットワーク性能のカスタマイズを行っていますが、基本的には共通仕様を元に、各キャリアさまに求められる仕様を満たすような設計としています。

――ハードウェアとしては同じものということでしょうか。

染谷氏
 そうですね。搭載するアプリは各キャリアさまによって違いますが、プリインストールアプリがあまり多くてもユーザー領域を圧迫したり、モッサリ感が出てしまったりと影響がありますので、キャリアさまと調整して極力ユーザー領域を残すようにしています。

――グローバル向けモデルでは背面パネル全体がメタル素材になっていますが、日本向けモデルでは下部のアンテナの部分だけ樹脂素材に変更されていますね。

染谷氏
 日本のキャリアさまの求められる性能を満たすために、アンテナの部分のみを樹脂素材としました。グローバルの中でも特に、日本のキャリアさまから求められるアンテナ性能の水準は高いレベルにあるためです。

 もちろん、目指すべきは「一枚板」のデザインですが、そもそもスマートフォンはコミュニケーションデバイスです。繋がっていることが第一と考えています。

「インテリジェンス」が盛り込まれたカメラ機能

――カメラ機能では、他社でも画素数以外の性能を強調する中で、「Xperia X Performance」は動体撮影機能を強化していますね。

染谷氏
 アウトカメラは2300万画素と、高い画素数は今回も搭載しています。その高画素を前提としてできる処理があります。それが、動く被写体を合成してブレをなくす、暗所でも明るく撮影するといった基本的な部分の性能を底上げするものです。

 カメラの新機能は他社さんからも出ていますが、基礎性能の面ではまだ有利だと考えています。

 Xperia X Performanceでは、「インテリジェンス」がキーワードになっています。その1つがカメラの「先読みオートフォーカス」です。

――「先読みオートフォーカス」について詳しく教えてください。

遠藤氏
 「先読みオートフォーカス」は、静止画の撮影時の機能です。動く被写体にピントをあわせてから、シャッターが切られるまでの移動を予測して、フォーカスを合わせるというものです。

――デジタルカメラから持ち込んだ機能でしょうか。

遠藤氏
 弊社のミラーレスカメラでの採用はありましたが、スマートフォンでは、Xperiaが初の試みになります。

染谷氏
 弊社の一眼レフカメラ「α」でも提供している技術です。「先読みフォーカス」機能は、αの開発部門と連携を取りながら導入しました。

遠藤由樹氏(カメラ設計担当)

遠藤氏
 ほかにも、側面のシャッターボタンを生かした「高速撮影」機能を搭載しています。構えてからシャッターボタンを押すと、画面が点灯していない状態から最速約0.6秒で撮影できます。

 この機能ではカメラ機能を画面表示より優先して動作させているため、ディスプレイに表示されるまでタイムラグがありますが、撮りたい時にボタンを押して、その瞬間を写せます。

 背面カメラだけでなく、フロントカメラも画素数が1320万画素に向上しています。一般的に高画素になるとセンサーサイズが小さくなりがちですが、今回はセンサーサイズも大きくしているので、これまで以上にセルフィー(自分撮り)を明るく撮れます。暗いシーンでは、複数枚重ねあわせてノイズを抑制する処理も行っています。また、高画素になったため、フロントカメラでもオートフォーカス機能を新たに搭載しています。

――セルフィー機能は中国系のメーカーが積極的に仕掛けているようですが、それ以外の地域でも利用されているのでしょうか。

遠藤氏
 日本でも撮影される方はいますし、ヨーロッパでも広まりつつあります。カメラ機能を開発する技術者は普段は自分の顔を撮影しないのですが、需要があるので極力撮るようにしています。そうすると、険しい顔のセルフィーがいくつも集まることに(笑)。

染谷氏
 機能比較の検討会で、評価用に撮影した、全く楽しくなさそうなセルフィーをいくつも並べて画質を比較してますね(笑)。実際、グローバルでもフロントカメラの画質を気にされる方は多いようで、「普通に写真を撮るときは綺麗だけど、セルフィーで撮るとガッカリ」と言われないように、背面カメラとの差分を無くすように強化しています。

 カメラの撮り方のトレンドも変わっていますね。以前、米国では「食べ物を撮るのは日本人だけだ」と言われていたのですが、セルフィーしかり、食べ物しかり、ここ数年で大きく変わってきました。抵抗感や障壁のようなものが、取り除かれてきていると感じますね。

――日本人にとっては食べ物もポピュラーな撮影対象ですよね。中には美味しそうに撮れなくて「メシマズ」と言われてしまう人もいますが、食べ物についてはいかがでしょうか。

遠藤氏
 食べ物を撮るときは背面カメラで撮ることが多いと思いますが、そこはあまり食べ物にこだわらず、色調や明るさの再現力を高める方向で改善しています。基本性能を上げる事に重きを置いています。

染谷氏
 食べ物としてはモードのひとつとして、食事の自然な色を引き出す調整を加えたモードを持っています。

――そのほか、AV機能に関する工夫はありますか。

染谷氏
 録音機能では、ノイズを除去してクリアに録音できるように改善を加えています。カメラの撮影品質が上がっているので、動画を撮影した時に音のクオリティが置いていかれないようにと強化したところです。

 撮影した写真を再生する機能では、コントラスト比の改善により、横から見た時の黒の発色を良くしています。緑の色域を強化することで、より緑のグラデーションを忠実に再現し、視野角の改善により、横から見た時でも白っぽくならず、引き締まって見えます。

Xperia Z5(奥)との比較。特に斜め下から見た時の違いが大きい

“少しずつ違う板”を比べて議論を重ねた筐体デザイン

――筐体のデザインでは、ロゴマークなどが最小限に抑えられているのが印象的でした。

久保田氏
 そうですね。なるべくシンプルにしていく方針で、実用上問題ないマークは極力筐体から外すようにしています。

――「四角い板」というXperiaのフォルムは残しつつも、今回はより丸みを帯びた形状になっていますね。

久保田氏
 Xperiaのデザインでも、今までのフォルムとバランスを取りながら、どうやって持ちやすさを実現していくかについてかなり議論しています。

 ここに持ってきたのは試作したうちのほんの一部ですが、板で模型を作って、どの形が「Xperiaらしくて持ちやすい」かを比較しています。

試作された模型の一部。完成品は中央とその右隣の中間の形という

――パッと見どこがどう違うのか区別が付きませんね……。

久保田氏
 角のRや薄さをちょっとずつ変えています。だいぶ変態的な話になってしまいますね(笑)。実際に採用されたのはこれ(右から2番目)とこれ(右から3番目)の間当たり……真ん中でもなく若干右寄りのフォルムですね……。

――側面のRで丸みを持たせるフォルムでは、ガラスに衝撃が伝わりやすいと思いますが、どのように強度を担保しているのでしょうか。

金子文稔氏(機構設計担当)

金子氏
 対策のひとつは、タッチパネルの方式を変更したことです。今まで採用していたセンサー・オン・レンズ方式では、ガラス自体にタッチのパターンを引くもので、それ自体でガラスの強度が若干下がっていました。今回から、液晶セル内にタッチ機能を組み込むインセル方式を採用したことで、ガラスの強度をあげています。

 また、ラウンドシェイプにしたことで、落とした時にガラスのエッジ部分から地面に衝突することを回避しています。

 さらに、市場調査の結果、やはり筐体の剛性が高い端末はガラスも割れづらい傾向にあったため、Xperia Xシリーズでは特に長手部分の剛性を背面パネルも含めて強化しています。

FeliCaアンテナが意外な位置に

――今回の「Xperia X Performance」ではFeliCaアンテナが前面に配置されているのが驚きでした。これまでの端末では背面の中央部が一般的でしたよね。

染谷氏
 はい。背面にメタル素材を採用すると決めた時点で、FeliCaアンテナをどこに配置するかは議論を重ねてきました。最終的に前面に配置しましたが、改札など背面でタッチしても通れるように検証を重ねています。アンテナの配置を変えたことで、交通機関の改札の流れを止めてしまうということでは困りますので。

――「FeliCaマークをはがせるシールにしてもいいんだ」という驚きもありました。

染谷氏
 そこも非常に大きな議論がありました。色を統一して表示するロゴも絞り込んでいく中で、前面にFeliCaの刻印を配置するのは目指していくところとは乖離してしまうと考え、最終的にはシールとしました。結果として、新しい取り組みになりました。

 その分、シールを見なかったお客様でも改札を通れるよう、内部構造を工夫しています。シールの位置はメーカー推奨のもっとも強いシグナルが出る位置ですが、背面をタッチしても利用できることを目指しました。

“ヘタらない”電池を実現するインテリジェンス

――今までも省電力機能に取り組まれていましたが、今回新たに、電池の持ちを良くする工夫をされていますね。詳しく教えてください。

染谷氏
 電池は端末の中でも非常に大きな面積を占めている部品でして、さまざまな技術を入れ込んでいます。今回取り組んだのは、「電池持ち」として想像される「何時間で電池切れになる」といったものではなく、リチウムイオン電池そのものの耐久性を改善する工夫です。これが、もうひとつの「インテリジェンス」になります。

 カリフォルニアのQnovo社と協力して、電池にかける負荷や電流の量を非常に細かく調整する技術を投入しています。また、電池そのものもあわせて強化しています。

 お客様からの不満の中でも「電池が持つから買ったのに、1年使っていたらヘタってしまった」といった声は大きかったのですが、今回の技術は「ヘタってきた」と感じまでの期間を2倍ほど長くする技術です(※Xperia Z2比。使用状況や環境により変動する)。グローバルでも買いかえサイクルが長期化する中で、ずっと快適にお楽しみいただけることを目指しています。

アルミパネルとFeliCaアンテナの移動で放熱効果上昇

――熱を持ちやすいと言われているハイエンドのチップセットを搭載していますが、放熱に関しての工夫はありますか。

金子氏
 チップセット周辺の熱を、銅製のヒートパイプを2本配線して下部に分散させています。このヒートパイプ2本構造はZ5から採用されているものですが、背面がアルミ素材となったことで、熱伝導率が向上して、効果的に発熱を緩和できます。

 FeliCaアンテナが前面に移動したことで、空間が空いた背面には、グラファイトシートを貼って、さらに放熱効果を高めています。

――全面で放熱することで、極端な発熱を抑えるというアプローチでしょうか。

金子氏
 そうですね。前面側はディスプレイが熱を持つので、基板の形状やチップセット、ヒートパイプの配置を工夫して、背面の放熱を分散させるようにしています。

 実は、チップセットの「Snapdragon 820」もリリース当初のものより発熱に関して改善されています。放熱についての工夫とあわせてより快適に利用できるようになりました。

――本体の構造でほかにはどのような工夫がありますか。

金子氏
 今回、5インチという大きさにバッテリーを詰め込んだことで、実装の余裕がかなり少なくなっています。そこで、小さい工夫ですが、SIMカードのトレイとキャップと一体化しました。

 今までは、SIMカードのキャップを本体に留めていたので、ヒンジの部分が面積を取っていました。今回、それがなくなったことでその部分の基板にも実装できるようになりました。取り回しもトレイを引き出すだけで済むので、楽になっています。

見えても違いが分からないコダワリ

――表から見えないけれど、すごくこだわっている、というところはありますか。

金子氏
 表から見えるところですが、背面パネルです。背面パネルはブラックとホワイトがヘアライン処理、ゴールド系はブラスト処理で仕上げています。

 試作を重ねるうちに発覚したことがありまして、同じ金型で加工していたら、ヘアライン処理よりブラスト処理のほうが百分の数ミリ程度大きく仕上がっていました。

 理由は単純で、金属は叩くと伸びるので、金属を打ち付けるブラスト処理では、ほんの少しが伸びていました。そこで、金型を変えました。

――見た目に違いがわかるのでしょうか。

金子氏
 そうですね。見た目に違ってくる可能性があるので、商品のクオリティを上げるためにも、金型を分けました。

曲がっちゃいるけど曲げられない

――筐体の設計で特に苦労されたところはありますか。

金子氏
 細かいところですが、デザイナーからすごく強い要望があったところが、背面のメタルと側面の樹脂のかみ合わせの部分です。このエッジ部分は、アルミの板金を内側に曲げて加工しています。

 一般的な板金加工では、曲げ半径(R)が大きいものになりますが、デザイナーからは「部品の隙間が大きくなり精度感に欠けて見える」とツッコまれました。

 そこで、板金加工を加えた上で、特殊な加工を施すことで、より小さな半径で曲げて、よりシャープに繋げるようにしています。量産性を保ったままどうしたら加工できるか、苦労したところです。

――上手く曲がっていますが、デザイナーとしては曲げられない部分だったのですね。

久保田氏
 そうですね(笑)。注文通りに試作してみたら、やはり仕上がりのクオリティが明らかに変わりまして、これは実現しようと、サプライヤーさんを巻き込んで試行錯誤しました。

金子氏
 ほかにも、「Xperia」のロゴの処理についても議論しています。今回はレーザーで処理をしていますが、レーザーにしても当てる時間や強さによって色味が変わってくるので、多くの条件でサンプルを作ってデザイナーと議論しながら決めています。

なぜ日本にはフラッグシップモデルだけ?

――グローバル向けには同じデザインコンセプトで「Xperia X Performance」「Xperia X」と「Xperia XA」の3モデルが発表されましたが、その中から「Xperia X Performance」のみを日本市場に投入した理由をお聞かせください。

染谷氏
 どの地域にどの機種を投入するかは、地域戦略に基づいて決めています。日本では、ハイエンドのチップセットや防水性能を求められることから、最上位の「Xperia X Performance」をキャリアさまの製品として提供しています。

 一部、キャリアさまを通さないマーケットで販売している国も含め、主にアジア圏で展開しています。ヨーロッパでは、一段下のチップセットを搭載する兄弟機「Xperia X」を核に展開しています。

大画面端末、MVNO向けの新機種投入は?

――Xperia Xシリーズは3機種ともディスプレイサイズが5インチですが、このサイズにどのような意味を込めたのでしょうか。

染谷氏
 まず、日米欧でテストをして、一番感触の良かった幅を調べました。どの地域でも好評だった幅に詰め込める最大のサイズが5インチでした。

 必ずしも今後もずっと5インチとは決めておらず、フィードバックを元により快適に使えるサイズ感を検討していきます。

――海外では6インチの「Xperia XA Ultra」のような大画面の端末も継続して提供していますが、日本では久しく見ていない気がします。

染谷氏
 どの端末を提供するかは、キャリアさまとの話し合いにもよりますが、日本ではフラッグシップモデルを提供する方がお客様の満足度が大きい傾向にあります。

 とはいえ、大画面モデルについては、一部のお客様からご支持をいただいておりまして、ソニーらしい尖ったものが欲しい、という声もいただいております。そういったモデルを提供するチャンスを伺っているという状況です。

――NTTドコモでは、フラッグシップの製品発表サイクルを1年周期にするとしていますが、メーカーとしてはどのように受け止めていますか。

染谷氏
 一般論で言いますと、全体のモデル数が減ることで、1つ1つの工数に集中して製品を深めることができます。

 ただ、我々は他の日本メーカー勢と違って、グローバルで広く展開しています。各国のキャリアさまによって新機種を求められるタイミングも違いますので、全体では年間数機種が登場するということもあり得ます。

――日本でもMVNO市場が成長してきましたが、MVNOを含めたリテール市場についてはどのように考えますか。

染谷氏
 日本だけの話ではなく、グローバルでMVNOや中古端末市場など、キャリアさまを通さない販路が拡大していると実感しています。現時点で決定しているものはありませんが、市場の動向に注目している状況です。

――キャリアから販売されていないモデルが登場すると面白いですね。

染谷氏
投入するモデルについては今後検討していきます。

――本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。