【Mobile World Congress 2016】
「新たなコミュニケーションを提案する、Xperiaの第3章」
ソニーモバイル伊藤氏に聞く、Xperiaの新展開
(2016/2/25 14:05)
ソニーモバイルコミュニケーションズは、2月22日(現地時間)、スペイン・バルセロナで、Xperia Xシリーズ3機種と、Xperiaブランドを冠するスマートプロダクト4機種を発表した(ニュース記事)。
Xperia Xは、ブランドを刷新し、「スマートフォンとしての本質とは何かを追求した」(ソニーモバイルコミュニケーションズ 商品企画統括部長 伊藤博史氏)1台。カメラやバッテリーに「インテリジェントを取り入れた」といい、被写体の動きを検知して追従するオートフォーカスや、バッテリーの寿命を延ばす充電技術を導入した。
本質の追求は、デザインにも表れており、「持ったときに心地のいい」サイズ感を実現。金属筐体を採用しながら、「スマートフォンの場合、どうしてもアンテナのためにスプリットライン(分割線)が出てしまうが、技術の革新で、それがない」デザインを実現した。本体色と合わせる形で、ユーザーインターフェイス(UI)も一新している。
同時に、ソニーモバイルは、Xperiaブランドを、周辺分野にまで拡大していく。
Mobile World Congressで製品として発表されたのは、ヘッドセット型の音声エージェントとも言える「Xperia Ear」。コンセプトは、「画面に縛られず、外の世界を楽しめる」ということ。「不在着信や、まだ見ていないメッセージ、新しいニュース」を、耳に装着するだけで音声案内してくれるのが特徴となる。「ボイスコントロールと、パーソナルアシスタントで、新たなイヤーピースを提案した」製品とも言えるだろう。
参考展示ながら、洋服の胸ポケットなどにつけ、360度の映像を撮影できる「Xperia Eye」も発表した。「XperiaのCMOSカメラ技術を生かした」といい、顔認識や音声認識を駆使して、「盛り上がったときに、自動でシャッターを切る仕組みを導入した」という。
家庭内でのコミュニケーションに焦点を絞ったのが、「Xperia Projector」。「ソニーの超短焦点プロジェクターのいいところを生かし、投影した映像上でのタッチ操作機能、ジェスチャー機能、ボイスインタラクションを追加した」製品で、大画面で、スケジュールを共有したり、電話をかけたり、写真を楽しんだりといったことができる。
これらのコンセプトをさらに推し進めたのが、パーソナルアシスタントの「Xperia Agent」。「Xperia Earのボイスアシスタント、Xperia Eyeのインテリジェントなカメラ、Xperia Projectorの投影機能といった先進技術を合わせたとき、どういうことができるのか」に挑戦した製品となる。顔を認識して、その人に合った最適な情報を提案するというのが、Xperia Agentの主な機能だ。「マシーンラーニングで、人とリッチなコミュニケーションができる」ことも想定している。
“本質”とインテリジェンス、「新しいXperiaの始まり」
このXperia Xシリーズ、Xperiaスマートプロダクトについて、ソニーモバイルの伊藤氏が報道陣からの質問に答えた。その主な一問一答は、次の通りとなる。
――Xperia Xシリーズは、ターゲット層を変えようとしているのでしょうか。
伊藤氏
拡張しようとしています。拡張するにしても、スタンドポイント(立脚点)は重要です。今のXperiaを気に入っているお客様を大事にしながら、より幅広い層にアプローチしていきたいと考えています。
――Xperia Z4は「Xperiaの完成形」、Xperia Z5は「究極の集大成」でしたが、今回のXperia Xを一言で表すと?
伊藤氏
「新しいXperiaの始まり」です。スマートフォンを超えて、新しいコミュニケーションを提案したいというのが、我々の目指すところです。Xperia Z5では「究極の集大成」という言葉を使いましたが、これは、「Best of Sony」として、色々な機能をとにかく入れることをやってきて、それがある程度できたからです。
それ以上に、Xperia Xシリーズには、シンプルで使いやすく、より生活をサポートしてくれるものであってほしいという思いを持っています。そのために、できるだけ本質にこだわり、新たなエッセンスを加えました。
――「X」の意味を教えてください。アルファベットの順番的に、Zから前に戻ってしまいましたが……。
伊藤氏
Zは、ソニーのアセット(資産)を入れる究極を目指しましたが、ここでXperiaのブランドを再定義したい。コミュニケーションにこだわってきたXperiaなので、そこに変わりはありませんが、機能重視ではなく、使いやすさや、インテリジェンスで、スマートフォンの枠を超えていきたいですね。お客様に寄り添う形での進化を考えました。
Xは、Xperiaの頭文字というこだわりがあります。日本ではある程度知名度はありますが、ほかの地域では、まだまだブランドを広げていかなければなりません。もう1度、Xをフィーチャーして、ブランドそのものを広げてきたいと考えています。
また、これはオフィシャルに定義しているわけではありませんが、コミュニケーションとは、非常に広いものです。人とモノが会話しても、そこからは新しいコミュニケーションが生まれます。また、モノとモノのように、IoTの中で、コミュニケーションは段階的に広がっていきます。
人と人、人とモノ、モノとモノという、掛け算で生まれるエクスペリエンスがある。その「×」という意味もあり、オフィシャルではありませんが、開発陣がみんなそういう思いを持っています。Xperiaをもう一度再定義して、世界に冠たる代表的なブランドにしたいと考えています。
――Xperia Xシリーズは、すべてディスプレイが5インチです。今までより小さく、また他メーカーの機種も大型化が進んでいますが、これはグローバルで見たとき、リスクにならなかったのでしょうか。
伊藤氏
5インチというサイズを、先に決めたわけではありません。できるだけ多くのお客様に使っていただけることを目指し、全世界的にリサーチしました。スマートフォンには地域性もありますが、ソニーモバイルが強い日本と欧州に主軸を置いたとき、最適な横幅があります。その横幅の中に、どれだけ大きなディスプレイを入れられるかを考え、たどりついたのが5インチです。今までより一回り小さいですが、より多くのお客様に楽しんでいただけると思います。
――ディスプレイで言えば、Xperia Z5 Premiumで実現していた4K解像度がなくなってしまいました。
伊藤氏
新しい“チャプター3”(第3章/Xperia Xシリーズ)は、まだ第一歩目です。また、このタイミングで、Xperia Z5 Premiumがなくなるかというと、まだ(市場に)あります。具体的にはそれぞれの事業者(キャリア)との関係でポートフォリオの組み方が変わりますが、Xperia Z5 Premiumはまだ存在するため、そちらを気に入っていただけるお客様には、引き続きご提案していきたいと考えています。
――Xperia Z5のときは、チップセットが同じで画面やボディサイズが異なっていました。今回は逆に、サイズがほぼ同じで、チップセットが異なっています。考え方を変えたのでしょうか。
伊藤氏
本質を考え、まずは集中してこのサイズ感の中で、ファーストステップを踏み出したかった。ここでお見せしているのは、第一弾です。
――Xperia Z Ultraの後継機がないのは、寂しいですね。
伊藤氏
いろいろなお客様の声をいただくのは、うれしいことです。今回はエッセンスにこだわりましたが、これからの展開は、(スマートプロダクトのように)ホームファクターを超えて、ダイナミックに広がっていきます。いろいろなことをご期待いただけるのではないでしょうか。
ただ、Ultraをそのままとは、考えていません。過去のものは過去のもの、いいところを受け継ぎながら、新しいインテリジェンスを提供していきたいですね。
――Xperia X Performanceは日本での投入が発表されていますが、やはりプレミアムなモデルが重視される市場だからでしょうか。
伊藤氏
日本はプレミアムな市場だからというのもありますし、今までのお客様を大事にしたいというのもあります。
ただ、プレミアム感は、それぞれの市場で大事にしています。Xperia XAをスーパーミッドレンジと呼んでいるのもそれで、プレミアムにフォーカスすること自体は変わっていません。
――ちなみに、フラッグシップモデルは「Xperia X」ということでいいのでしょうか。スペックは「Xperia X Performance」が最上位ですが。
伊藤氏
Xperia XとXperia X Performanceは、プラットフォーム(チップセット)こそ違いますが、商品の目指しているものは基本的に一緒です。ただ、通信機能に関しては、受ける側(キャリア)の対応もあります。
日本に関しては、LTEの展開スピードが速く、このタイミングでカテゴリー9が十分レディーになります。国によって状況に近いはありますが、我々が目指している世界観は、すべてプレミアムです。
第一歩が“耳の拡張”、スマートプロダクトはアップデートで進化
――スマートプロダクトについては、なぜXperia Ear以外は参考展示なのでしょうか。
伊藤氏
スマートプロダクトは、新しいインテリジェンスへの挑戦で、Xperia Earでいうと、ボイスアシスタントがそれです。ただ、インテリジェンスに関しては、一足飛びに全部いくわけではありません。1つ1つ出して、インテリジェンスを高めていくことも必要です。Xperia Earに関しても、出して終わりではなく、お使いいただき、ソフトウェアアップデートでどんどん進化させる、継続的な取り組みが必要になります。
すべてを全部発表するより、1回こういった大きな展示会を生かし、お客様やパートナーのフィードバックを踏まえ、一緒に作っていくこともあると思います。Xperia Projectorでは、スマートキッチンやホームセキュリティなどの用途も考えられますが、ある領域ではパートナーと提携できれば、より魅力が増します。3つのコンセプトを展示して、いろいろなものを提案できればと考えています。
――まずはXperia Earだった理由は、どこにあるのでしょうか。
伊藤氏
画面から目を離すことを考えたとき、まず可能性があるのが、ボイスインタラクション、ボイスエージェントです。ファーストステップとして、耳の能力を拡張する。その次に目(Xperia Eye)、その先に家の中というようにやっていきます。これは、ステップバイステップですね。
――他のメーカーも、今年は周辺機器の発表が多かった印象があります。ソニーの違いは、どこにあるとお考えでしょうか。
伊藤氏
IoTの世界では、たくさんのデバイスが出てきます。場所やシチュエーションに合わせた商品がたくさん出て、多様性はこれからもっと増してくるでしょう。そのとき、どこが一番のスタンドポイント(立脚点)なのかが重要になります。我々については、コミュニケーションや、ソニーのエンターテインメントだと思っています。
――エンターテインメントという意味では、VRがありません。PlayStationブランドでやるので、そこは外しているのでしょうか。
伊藤氏
VRもこれから発展していく分野です。ソニー全体としては、まず魅力感じていただきやすい、PlayStationの分野で体験を高めることに、ファーストプライオリティを置いています。
――Xperia ProjectorはLife Space UXの超短焦点プロジェクターとかぶっていますが、すみ分けはどうするのでしょう。
伊藤氏
すみ分けというより、協力関係にあります。Xperia Projectorも、超短焦点プロジェクターで、かなり深く協力して作っています。Life Space UXのいいところはそのまま取り込み、より付加価値をつけたイメージですね。価格とのバランスや、使い方で、分かりやすい形になっているのではないでしょうか。
――参考展示については、どの程度“参考”なのでしょうか。
伊藤氏
我々がコンセプトとして出すときは、ある程度技術の見通しをつけてからやっています。このままの形で出すことをお約束しているわけではありませんが、技術のスタディなしにやっているわけでもありません。
――確かに、Xperia Projectorまではちゃんと動いてましたね。
伊藤氏
ニーズがある場所には、商品を提供したいと考えています。お客様の声を聞き、いろいろな可能性を検討して次のステップに進めたらと考えています。ただ、3年、5年というような遠い先のイメージでもありませんよ。
――本日はありがとうございます。