【ワイヤレスジャパン2012】
ドコモの「グリーン基地局構想」、次世代に向けた新技術など
グリーン基地局 |
グリーン電力コントローラーのモニタリング画面 |
ドコモでは、「次世代グリーン基地局構想」を打ち立て、横須賀リサーチパーク(YRP)において実証実験を展開している。今回ブースでは、このグリーン基地局の模型が設置され、ドコモの次世代の取り組みが紹介されていた。
■ソーラーパネルでエコな基地局運用
グリーン基地局は、ソーラーパネルと蓄電池(リチウムイオン)を利用して、停電や災害で電力供給が途絶えた場合でも基地局の単独運転を実現する基地局設備だ。現在YRPに実験設備が置かれており、擬似的に電波を発した状態でフィールドテストが行われている。ブースに設置されていたノートパソコンは、この実験用基地局の動作状況をモニタリングしているもので、商用電源を切った状態で単独運転されていた。
実験用の基地局装置の消費電力は約300W、基地局の屋根には4面のソーラーパネルが設置されている。取材時にはこのソーラーパネルで380W前後を発電しており、太陽光で基地局を運転していた。4面のソーラーパネルで最大700Wの発電が可能という。
なお、ソーラーパネルからの余剰電力は蓄電池に蓄えられ、夜間は基本的にこの蓄電池に頼ることになる。昼間の天候不良が続いた場合も、商用電力が安くなる夜間に充電することでコストを抑える。基地局への電源供給は、グリーン電力コントローラーが制御し、効率の良い運用が図れる。また、電力ロスを少なくするために、ソーラーパネルからの電力は直流接続となっている。説明員によると、変換が必要な交流接続よりも1~2割ほど電力ロスが少ないという。
今回の設備は、実運用を見据えた形で実験が行われている。ソーラーパネルとグリーン電力コントローラーを基地局のラックなどに納めることで、既存基地局をグリーン基地局化できる。実際には、基地局の規模によって消費電力は異なるが、大きな基地局であれば、その分だけたくさんのソーラーパネルを設置することも不可能ではないとのこと。
なお、実験設備はドコモ単独で開発したものではない。携帯電話だけでなく、基地局設備なども提供しているパナソニック モバイルコミュニケーションズとの共同開発となっている。説明員によれば、グリーン基地局は2012年度末までに10局程度が敷設される予定という。
■基地局スマートグリッド
さらにドコモは、今回のグリーン基地局を利用した形で、電力供給の平板化にもチャレンジする。今回参考出展としてパネル展示が行われた。
グリーン基地局は、省電力化とインテリジェントな電力制御を取り入れたエネルギーシステムでもある。ドコモの構想は、全国展開されたグリーン基地局を制御するサーバーを用意し、気象データを元にした発電や消費電力を予測して、ある地域の基地局において電力が足りなければ、別の地域の余剰電力をそこに充当させて電力の供給不足を補っていこうというものだ。いわゆるスマートグリッドの考えを基地局に導入するもので、現在検討を重ねているという。
■遠隔操作でコンテンツ検証
また、コンテンツプロバイダー(CP)向けの検証環境についても今夏、新たな取り組みが導入される。CPがコンテンツを作る際、端末毎の微妙な見え方の違いなどをエミュレーターなどを介して検証する。
ドコモでは、コンテンツの検証環境をリモート化し、遠隔制御で検証できる環境を用意する。まずは、dメニューにコンテンツ提供するCP向けに、時間課金の料金体系で提供される。ネットワークを介したリモート環境を用意することで、時間や場所にとらわれずに動作検証できるという。
なお、この検証環境はアクセンチュアが設置したもので、アクセンチュア側でも独自にサービス展開される模様だ。
■透明なディスプレイで表と裏から端末をタッチ操作
このほかブースでは、透過型両面タッチディスプレイ端末を使ったユーザーインターフェイスの新たな試みも参考出展された。
これは、タッチ操作が可能な透過型ディスプレイを利用して、ディスプレイを表と裏の両面から操作できるというもの。背面では、ホーム画面のスクロール操作や通知バーの開閉操作が可能で、APIの追加により背面操作のアドオンアプリが開発できる。
なお、現状の携帯端末は、ディプレイパネルの部分にモジュールやバッテリーが配され、透過型ディスプレイを提供するには新たなデバイス設計が必須となる。ドコモでは製品化は未定としており、次世代のユーザーインターフェイスを検討する一環として研究を進める。
(津田 啓夢)
2012/5/30 20:08