【MWC19 Barcelona】
IIJ、MWC初出展で5GやeSIMサービスの展望を語る
2019年3月1日 19:56
今回の「MWC19 Barcelona」では、インターネットイニシアティブ(IIJ)がオンキヨー&パイオニアブースの一角を間借りする形で展示を行なっている。IIJがMWCに出展した狙いや、今後の事業などについて、同社のMVNO事業部長 矢吹重雄氏にグループインタビュー形式で話を聞いた。
そもそもIIJがMWCで展示を行なうのは初めてだが、矢吹氏らはこれまでのMWCにも参加し、いろいろなものを見たり探したりしているという。IIJは「フルMVNO」を開始しているが、フルMVNOならではのことをやっていくには、海外ベンダーや海外オペレーターとのコレクションが必要になってくる。MWCに出展すれば、ダイレクトにそうした企業の責任者と話をすることができ、日本のフルMVNOとしてビジネスをしていることをアピールする良いきっかけにもなる、ということで今回の出展に至った。
なぜオンキヨー&パイオニアのブースかというと、IIJでは端末で一緒にビジネスをしているなど協業関係があるからだという。来年以降がどうなるかについては、「我々のビジネスが今より広がっていないとダメだが、出展したいという意欲はある」とのことだ。
インタビューはMWCの3日目に行なったが、そこまで展示しての反響については、「意外とIIJの名前を知っている海外オペレーターの人が多く、フラっと寄ってもらうこともある。顔見知りも多いが、こういった展示を行なうというアナウンスはしていなかったので、予想より2倍3倍の良い感触を得ている」とのこと。
「eSIMは価格より利便性」
たとえばSIMプロファイルは、いわゆる「ソフトSIM」対応機器において、IIJのSIMプロファイルを書き込むことで、IIJのネットワークに繋げるようにするというもの。IIJのSIMプロファイルを海外事業者に販売したり、逆に海外事業者のSIMプロファイルを調達したりといった話をMWCでしているという。販売先は中国の事業者が多いとのことで、3社ほどいるという。しかし今回は欧州系MVNOとも話をしようとしているとのことだ。
eSIMは、iPhone XS/XRなどが搭載するeSIMにIIJのサービスを提供するというものだが、現在のところ、IIJはeSIMサービスを提供していない。
一方で、今回のMWCにおいては「Telna」という事業者が、プレス向けにeSIMを配布する(体験したいと希望すると、メールでeSIMプロファイルの入ったQRコードを送ってくれる)など、端末の登場とともに活用の幅は広がっている。
こうしたeSIMサービスの展開について矢吹氏は、「価格競争もあると思うが、どちらかというとeSIMのサービスは利便性が重要になると思う。まずは夏前にベータ版サービスを提供し、ユーザーに使ってもらってからサービスを磨き上げていきたい。ベータ版なので料金設定もIIJmioよりリーズナブルにして反応を見る。しかし現状、eSIMは対応端末が限定的で(日本国内ではiPhone XS/XR)、裾野が狭い。当初は商売をするというより、技術的なものを見るためにサービスを展開することになるだろう」と説明した。
eSIMは昨年、iPhone XS/XRが対応し、その瞬間から世界中の通信事業者が色めき立ったという状態だ。IIJはeSIMを提供するための条件でもあるフルMVNOとしての機能を持っているが、サービス開始1年目などということもあり、対応できていない。「すでにフルMVNOをやってる人が素早く走り始めたと言うところで、欧州事業者は有利だったかな、と。うちはリソース的に忸怩たる想い」と語った。
また、今回のMWCでは、2019年からMNO事業を開始する楽天も出展している。IIJはMVNOとしてすでにNTTドコモとauの2社のネットワークを使っているが、それに加えて楽天のネットワークとも提携するかについては、「もちろんあり得る」と答える。しかし一方で、楽天はまだサービスを開始しておらず、ユーザーに対してどのようなサービスを提供するかが見えていない。「楽天のネットワークが必要な理由と、それに対してかかるコストを考える。まだそこが見えないので判断できない」とも語った。
5Gへの対応「今はわからない」
世界各国で今年、商用サービスが開始される5Gも、今回のMWC全体のテーマとなっている。商用直前とあって、実際の商用端末によるデモも多数行なわれている。日本はやや遅れていて、これから周波数を割り当て、ネットワークを構築するという段階だが、今年中にプレサービスが開始される見込み。
こうした5GをMVNOであるIIJも使わせてもらうのか、という質問に対しては、「提供してもらえれば嬉しいな、という感じ」と語る。各MNOによる5GのMVNO向けサービスメニューは、「実際のところまだまだこれから議論」という段階。まだ具体的なことは見えていないという。
MVNOのサービスの世界では、MNOがネットワークパラメータを変更し、それがいきなりMVNOに適応されることもあるという。たとえば今回のIIJの展示では、柱の一つとしてCellular LPWA、LTEの小型機器向け仕様LTE-M(Cat.M1)が紹介されているが、実はIIJからすると、事前に通知があったにせよ、使えるようになる日に屋外で対応端末を持って待機し「おー、つながった」というような、唐突に使えるようになった状態だったという。
5Gについては「いろいろなシナリオがあり得ると思うが、今はわからない」とのことだった。