【Mobile World Congress 2018】

5Gの商用製品を展示するエリクソン

eSIMではApple Watchのデモも

 2019年に、一部国でのスタートを控えた5G。Mobile World Congress 2018では、間近に迫った5Gの立ち上げを見すえ、商用化を前提とした製品が多数出展されていた。通信機器ベンダーのエリクソンも、その1社だ。

 ここ数年、5G関連の展示を行ってきたエリクソンだが、同社が2015年以降に出荷した基地局は、すべてソフトウェアのアップデートでLTEから5G NRに転換することができるという。それを示すため、エリクソンのブースでは、同じ3.5GHz帯の基地局をLTEと5Gで共用しているデモが展示されていた。どちらに周波数を割くかも、自由に設定できるという。

LTEと5Gで基地局を共有し、両方の電波を吹くことができる
ストリートマクロ用の基地局。アンテナとベースバンドユニットが一体化している

 また、ミリ波と呼ばれる28GHz帯を使ったソリューションも出展。「ストリートマクロ」と呼ばれる基地局の設置スタイルに対応した製品が展示されていた。28GHz帯の無線は、直進性が非常に強く、人や建物などの障害物を通りにくい。逆にこの特性を生かし、道路沿いに強いビームを出す基地局を設置していくことで、その道路上すべてをカバーエリアにすることができる。

 こうしてできたエリアは、車に乗る人がスマートフォンで利用できるほか、道路沿いにある家の窓にアンテナを取り付ければ、光ファイバーなどの固定回線の代わりにもなる。ストリートマクロは、そのようなユースケースを想定して作られた基地局だ。

 ほかにも、キャリア向けの新製品として、Sub 6と呼ばれる低い周波数帯向けで64の素子を持った無線装置や、2.8GHz帯で768個の素子を持った無線装置を展示。屋内用には、「Dot」と呼ばれる小型のアンテナ装置が用意されているが、この5G版もブースに置かれていた。LTE版よりもやや大型になるが、LANケーブルでベースバンド部分と接続できるのがDotの強み。日本では、LTEバージョンのDotをソフトバンクが導入している。

3.5GHz帯などに対応する「AIR 6488」
28GHz帯用の「AIR 5331」

 一方で、5Gが導入されても、当初のエリアは一部に限定される。LTEはLTEとして、高速化を図っておかないと、ユーザーにとっては不満の種になりかねない。こうした状況を考え、エリクソンの基地局は下り最大2GbpsのLTEもサポート。5波、各20MHz幅でキャリアアグリゲーションを行い、すべてに4×4 MIMOを適用するとこの速度になる。下り最大2GbpsのLTEは、2018年内にオーストラリアのテルストラが導入する予定で、NETGEAR製のWi-Fiルーターがまず対応するという。チップセットのサポートはクアルコムが、ネットワークをエリクソンが担当する。

LTEは、2018年内に下り最大2Gbpsまでスピードアップする予定

 5Gをどのように活用すればいいのかといった、ユースケースの展示も多かった印象だ。同社ブースの入り口には、インテルの5G端末を組み込んだロボットを展示。離れた場所にいる人と、ロボットに表示される高解像度の映像を見ながらコミュニケーションを取れるようになっていた。

 また、5Gには、利用するユーザーの要件に合わせてネットワークの機能を変える、ネットワークスライシングという仕組みが用意されている。超高速通信は必要だが、遅延はあまり必要ないというケースと、とにかく遅延だけは避けたいというケースを両立させるため、コアネットワーク側を分割(スライシング)するというわけだ。このユースケースの1つとして、エリクソンは工事現場の模型を展示。映像を送る速度が必要なネットワークと、建機を遠隔操作する低遅延のネットワークを分けるデモを行っていた。

ブースに入ると、5Gにつながったロボットが出迎えてくれた
ネットワークスライシングの必要性を示す工事現場の模型

 5G以外で目を引いたのは、eSIM関連の展示だ。デモを行っていたのは、eSIMにキャリアの設定情報を書き込むリモートプロビジョニング。プライマリーデバイス(主契約となるスマートフォン)を使ってアクティベーションサーバーにアクセスし、その端末経由でセカンダリーデバイス(主契約に紐づける2台目の端末)に搭載されたeSIMにキャリア設定を書き込むという仕組みを披露していた。

エリクソンの設備を使って、Apple Watch Series 3に契約者情報を書き込むデモも披露された

 デモでは、Apple Watch Series 3に、iPhone経由でキャリア設定を書き込んでいた。この実装は、アップルとエリクソンが「深く協力して実現した」(ブース説明員)ものだというが、仕様はeSIMの標準に則っているため、アップル以外のメーカーや、エリクソン以外のメーカーも利用できるという。日本でも、一部のキャリアはエリクソンの設備を利用し、Apple Watchのプロビジョニングに対応したそうだ。