【Mobile World Congress 2017】

5Gまであと3年、エリクソンが「遠隔手術」「遠隔運転」など実用例を紹介

5Gの具体像を提示していたエリクソン

 エリクソンのブースでは、5GやIoTに関連する実験内容、ユースケース、各種機器などが紹介されていた。5Gの商用化まで、あと3年ほどとなっており、これまでに比べ、展示内容もより具体的になってきた印象を受ける。

 5Gのユースケースとしては、遠隔手術や遠隔運転を披露していた。遠隔手術は、その名の通り、患者とは離れた場所にいる医師が、ロボットアームを使って手術をするというもの。映像はVRのヘッドマウントディスプレイに送られ、感触などのフィードバックも装着したグローブで得られる。映像を送るためには、高速・大容量の通信が必要となり、手術の精密さを求めるには低遅延も必須となる。そのため、「4Gだと遅延が大きすぎ、手術自体が難しい」(解説員)。

遠隔手術の実証実験。ミッションクリティカルな手術には、5Gの要件が欠かせないという

 遠隔手術のユースケースは展示用の環境だったが、遠隔運転に関しては、50km離れたコースに実際の車を置き、5Gの無線ネットワーク経由でそれを運転できるというものだった。エリクソンブースにはハンドルやアクセル、ブレーキなどが置かれており、来場者が乗って試すことができた。

50km離れたコースに置かれた車を、5G経由で遠隔運転できた

 筆者も試乗してみたが、アクセルを踏むと、すぐに車が走り出した。ハンドリングにもきちんと追従しており、まるで、カーレースのゲームを遊んでいるような感覚を覚えた。触覚による振動のフィードバックもあるため、これで映像がより精細なら、あたかも本当に車を運転しているような感覚を覚えたかもしれない。エリクソンの説明員によると、このデモでの遅延は3ms程度。まさに5Gの低遅延を生かしたユースケースと言えるかもしれない。

低速ではあったが、あたかも本当の車を運転している感覚で、コーンを倒さずコースに沿って走ることができた

 5Gに関しては、無線の実験結果なども公開していた。そのうちの1つが、28GHz帯を活用したビームフォーミング。従来のビームフォーミングは、基地局側端末を追いかけてビームを送っていたが、今回展示されていたのは、端末側も基地局の向きに合わせてアンテナを自動的に調整するというもの。

 これによって、より効率的に、ビームフォーミングの電波を受けることが可能になる。実験は、エリクソンがインテルの端末を使い、共同で行っている。日本ではドコモも含め、3社の枠組みで同様の検証を実施する方針だ。

端末側がビームフォーミングに追従することで、よりスループットを向上させることができる

 実験やユースケースの模索が進む中、実際の通信機器も、徐々に5Gの対応を始めている。エリクソンのブースには、「5G NR」に対応した装置が展示されており、MWCに合わせ、中帯域や広帯域をカバーする新たなラインナップも発表している。いずれもベースバンドユニットのソフトウェアに、5Gのプラグインを導入するだけで、4Gから5Gへと通信方式をアップグレードすることが可能になる。アンテナは128、512と多素子になり、「Massive MIMO」や「マルチユーザーMIMO」に対応する。

MWCに合わせ、5G対応の無線装置のラインナップも大幅に拡大した。左から、2.5GHz帯、3.5GHz帯、28GHz帯対応

 このほか、エリクソンブースでは「NB-IoT」や、LTEの「カテゴリーM1」を使った、ユースケースも展示されていた。前者は工場で使う電動ドライバーの品質を管理するというもの。後者はブドウ園の水分や温度、湿度といったデータを送るもので、IoTの導入によるコストの削減や、生産品質の向上などがうたわれていた。

「NB-IoT」を使った工場の管理
ブドウ園に「カテゴリーM1」を導入して、各種環境を見える化する実験も紹介された