【Mobile World Congress 2017】
「1兆個のIoTチップを供給」「契約数は10億に」孫氏が語るIoT&投資戦略
2017年2月28日 11:41
スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2017」では、業界各社のキーマンが集い、さまざまな基調講演が開催される。会期初日の2月27日(現地時間)には、ソフトバンクグループの代表取締役社長兼CEO、孫正義氏が登壇。欧州での基調講演を意識してか、ARMを買収した理由や、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの解説に時間が割かれた。持ち前のユーモアを交えながらの講演は、来場者の笑いを誘う場面も多く、基調講演終了後には孫氏の基調講演を高く評価する声も聞こえた。
基調講演では、まず「不都合な真実」(孫氏)が示された。孫氏が示した見通しによると、スマートフォンの出荷台数の伸びは2016年から2020年にかけ、37%から4%へと減少。同時に、1加入者からの平均収入(ARPU)も、過去10年で47%低下しているという。一方で、トラフィックは2022年までに8倍に増加。それに伴い、さらなる設備投資が必要になるという。
こうした悲観的な未来を提示する一方で、孫氏は「なぜARMを3.2兆円もの現金で買収したのかを話したい」と語る。その解決策が、IoTにあるというわけだ。孫氏は「将来、ARMが1兆個のチップを作ることになる」としながら、その理由をIoTだと話す。「スマートフォンはそこまで伸びないかもしれないが、IoTチップは伸び、1兆の契約者を得ることができる」(同)という。
一例として、孫氏は日本でもたびたび語っている、靴にチップが内蔵される将来像を示しながら、「人間の脳より賢い靴をはき、そのインテリジェンスがクラウドにつながる」と語った。ただし、同時に、さまざまなモノがネットワークにつながると、セキュリティの重要性が増す。「ハッキングの数は飛躍的に伸びていて、これはとても危険なこと」(同)だという。
ここで孫氏は車がハッキングされ、ハンドル操作を乗っ取られるビデオを流す。「今の時点でもすでに100のARMチップが搭載されているが、どれもセキュアではない。とても危険だ」(同)と語りながら、ARMの「TrustZone」を紹介した。IoT向けの取り組みとしては、NB-IoT対応モデムチップの「Cordio-N」を披露。これは2月に発表されたばかりの取り組みで、ARMが買収した2社の技術を活用したものだ。このチップは、2018年の出荷が見込まれている。
また孫氏は、10兆円規模を予定する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資案件の1つであるOneWebを紹介。「衛星がセルタワー(基地局の塔)のようになる」(同)と語り、下り最大200Mbps、上り最大50Mbpsという速度をアピールした。これによって、「10億の契約者が現実のものになる」(同)というのが孫氏の目論見だ。
最後に孫氏は、オックスフォード大学の学者が議論したという、人類にとっての12個あるリスクを紹介。そのうちの1つにAIが挙げられていたが、一方で「AIはよい志で使えば、我々のパートナーになる」(同)。孫氏が投資を加速させているのはそのためだといい、「パートナーを探している。ここにいる人たちは、その候補者です」と述べ、基調講演を締めくくった。