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下り200Mbpsの次世代衛星通信がソフトバンク“10兆円ファンド”第1弾に
2017年2月8日 22:14
ソフトバンクグループは2016年度第3四半期の決算説明会を開催。代表取締役社長の孫正義氏は、2016年12月に投資した衛星通信企業OneWebや「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」のコンセプトについて紹介した。
なお、国内通信事業やスプリント事業については、別記事にてレポートしている。
衛星通信で「光ファイバー並の速度」のOneWeb
孫氏が特に時間を割いて紹介したのは、ソフトバンクが2016年12月に10億ドル(約1180億円)の出資を発表したOneWebだ。
OneWebは、低軌道の衛星を大量に打ち上げる、次世代の衛星通信技術を持つ企業。衛星通信によるブロードバンドサービスの提供を目指している。
その特徴は下り最大200Mbps/上り最大50Mbpsという通信速度で、孫氏は「宇宙から光ファイバー並みの接続で家庭にズドンとつながる」と表現。乗用車の屋根に衛星基地局を置き、どこでもLTE通信が利用できるようになるといった未来予想を示した。
加えて、孫氏がOneWebの設備投資効率の良さを強調。「携帯電話エリアの最後の2%をカバーするには、それまで98%分の設備投資にかかったもの費用と同じくらいかかる」として、中国の通信事業者の整備費用は年間2兆数千億円、米国では1兆5000億円と実例を紹介した。
その上で「このOneWebはいくらだと思いますか? 全世界をカバーするのにかかる固定費が、1000億円ちょっと」と、まるで通販番組のような語りで、固定費の安さを強調。「OneWebで通信革命を再び起こす」と意気込んだ。
ARM「買って良かった、喜びを噛みしめている」
2016年に買収したチップセット設計のARMについては、「ARM以後のソフトバンクは、“ソフトバンク2.0”と言えるぐらいの変化があった」と紹介。
ソフトバンクが理念として追求する「情報革命」の軸足がモバイル通信からIoTへフォーカスしていく中で、「最も重要なポジションを取れた」と語った。
ARMの設計を採用したチップの出荷数は2016年4月~12月で125億個となった。孫氏は「地球の全人類が1人2.5個くらい買った計算」と独特の表現でその浸透度を紹介した。
孫氏は「ARMの戦略やビジネスモデルに私自身、深く関わっていく」と、経営に関与していく方針を示した。
“10兆円ファンド”は、「300年成長し続けるための構え」
その資金規模から「10兆円ファンド」と呼ばれる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」。孫氏は「ファンド立ち上げ終盤戦、確実に組成される地点まで来た」とした。詳細については明かされなかったが、そのコンセプトが紹介された。
孫氏「最近は、この四半期、この1年よりは、10年後、30年後、300年後のソフトバンクはどうなのか。単純に後継者を探すというよりは、元気なうちにどういう構えを創業者として作っておけばよいのかということに、頭の中のかなりの部分を使っている」
その答えが「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」だったという。
IT技術の進化の中心がパソコン・モバイルからIoTへと移り変わる中で、孫氏は「これから30年間でまた100万倍になるだろう。あらゆる産業が再定義され、ものすごい“ビッグバン”が起きる」とIoTによる産業革命を予測する。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を、その“ビッグバン”のチャンスを生かすための「それぞれの分野で世界一となる力を持つ、志を共有した結合体」としたいと語った。
また、前述のOneWebへの投資は、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が成立後に移管される方針だと明らかにした。
質疑応答にて、ソフトバンク単体での投資との違いを聞かれた孫氏は「今までは投資できる金額に制約があり、『せめて3000億もあれば、あの会社にも投資したかった』と機会を逃すことが多かった」として、「これからは、やや遠いけど絶対伸びるよね、という会社に投資できる」と語った。具体例として医療分野で、AIを活用した予防治療への投資の可能性を挙げた。