【CES 2020】

血圧や心電図を測定、スマホでイヤーチップ作成まで――CES Unveiledで見つけたウェアラブルデバイスたち

 1月7日よりラスベガスで開催される総合見本市「CES 2020」の開催に先立ち、CESに出展する一部企業が製品をプレス向けに公開する「CES Unveiled」が開催された。

 CES Unveiledでは大手メーカーはあまり出展せず、中小規模のメーカーあるいはスタートアップメーカーが中心だ。それだけにニッチな用途を意識したような、ユニークな製品が多いのも特徴となる。

心電図や酸素飽和度を測定できるWithingsの最新モデル

ScanWatch

 WithingsはCESのタイミングで発表した新製品「ScanWatch」を展示していた。Withingsはこれまでにもアナログ針を持つ腕時計タイプのアクティビティトラッカーを展開しているが、今回発表された新製品では心電図(ECG)計測や酸素飽和度(SpO2)の計測機能を搭載し、心房細動の異常や睡眠時無呼吸症候群を検出する。また、運動中は最大酸素摂取量を測定して運動スコアを記録することもできる。

 医療機器に近くなるため、まずは先行して欧州とアメリカから発売予定で、そのための各国の認証を現在取得中だという。発売は今年の第2四半期を予定していて、価格は38mmモデルが249ドル、42mmモデルが299ドル。日本での展開についても検討しているが、日本の医療機器の認証取得は難しいため、具体的な予定については未定とのことだ。

裏面。センサが増えている
デザインバリエーションを豊富に備えているのもWithingsのスマートウォッチの特徴

スマホで手軽に耳型採取。1週間で完成するカスタムイヤーチップ

 こちらはフランスのMyFit Solutionsが手がけるカスタムイヤーチップだ。スマホの専用アプリでユーザーが自身の耳をさまざまなアングルから撮影すると、その映像を元にMyFit Solutionsが耳の立体形状を解析し、それを元にユーザーの耳型にあわせたカスタムイヤーチップを作成する。

アップルAirPodsにイヤーチップを装着したところ

イヤーチップは主要なイヤホンメーカーのイヤホンに装着できるようになっている。イヤーチップはやや柔らかいシリコン製で、3Dプリンタで作成されるという。イヤーチップを交換できるタイプのイヤホンはもちろん、イヤーチップを交換できないアップルのAirPods向けのイヤーチップも作成できる。3月ごろよりAirPods Proにも対応予定とのこと。

 ユーザーの耳型にあわせるカスタムインイヤーモニターイヤホンは、耳鼻科などで耳にシリコンを押し当てて耳型を作成し、それを元に鋳型を作って固い樹脂で作成するものが一般的で、耳型を作成する手間や数週間以上の時間、さらに数万円~数十万円という高いコストがかかる(イヤホンと一体型しているため、イヤホン自体が高性能だとコストも高くなる)。

 そうしたカスタムインイヤーモニターは、遮音性が高く、固いのに装着感が良いのが特徴で、MyFit Solutionsとはコンセプトがやや異なるが、MyFit Solutionsのこちらの製品は、価格は59ユーロもしくは65ドルで、耳型作成もユーザーが自分で行なえるなど、手軽に作れるのがポイントとなっている。日本への発送も行なっている(送料は8.9ユーロ〜)。

表面仕上げや色、デザインは選択できる
AirPods以外のイヤホンにも対応する

血圧も測定できるスマートウォッチ

 韓国のCharcareが手がける「H2-BP」は、血圧が測定できるスマートウォッチだ。

H2-BP

 血圧は腕を締め付ける機構が必要なため、小型機器への実装は難易度が高いが、こちらのH2-BPはデザインとしてはリストバンド型で、やや厚みがあるものの普通のスマートウォッチよりもコンパクトなサイズ感に収まっているのが特徴だ。

 常時血圧を測定するのではなく、血圧測定はその性質上、着座して安静状態をしばらく保ち、測定部位を心臓に近い位置に上げて行なう必要がある。とはいえ、据え置き型の血圧計とは異なりいつでも身につけられることで、毎日数回の計測するといったことも簡単になるのが特徴だ。

 こちらはすでに商品化されていて、アメリカと韓国で350ドルあるいは399000ウォンで販売されている。日本での展開は決まっていない。

 同様の製品としては、日本では、オムロンが2019年末より「HeartGuide」という血圧計内蔵のスマートウォッチ(7万9800円、税別)を発売している。

消費カロリーだけでなく摂取カロリーも推測できるスマートウォッチ

 HEALBEの「GoBe3」は、摂取カロリーを推測できるスマートウォッチだ。前モデルの「GoBe2」は日本でも販売されていて、「GoBe3」も日本での展開を予定しているという。価格は189ドルで今年中に発売予定。

GoBe3

 GoBeシリーズは身体の水分を測定するセンサーなどを備え、糖代謝を推測して摂取カロリーを推測するという。食べた食事の種類や商品名を入力するといった手間が不要なのが特徴。ストレスレベルの測定や睡眠トラッキングなども行える。

 GoBe2はLEDドットによる表示しかなく、スマートウォッチというよりもスマートバンドだったが、GoBe3はディスプレイ部を備え、スマートウォッチとして利用できるようになっている。

着用者の状態を自動解析する Tempo Series 3

 CarePredictの「Tempo Series 3」は、高齢者などが装着し、遠隔地から生活状態を監視するためのトラッキングバンドとなっている。遠くで一人暮らしする親に装着してもらう、というような用途を想定している。

Tempo Series 3。カートリッジ式バッテリはチャージャーに差し込んで充電する

 Tempo Series 3は着用者の状態を測定するセンサーに加え、家に設置するビーコンもセットになっていて、着用者が自宅内のどこにいるかも計測できるようになっている。転倒を検知したときはすぐにアラートを出すこともできる。センサーやビーコンのデータは自動的に解析され、スマートフォン上に何をしていたかというデータになって表示される。スピーカーとマイクも搭載されていて、通話機能も搭載している。

 Tempo Series 3自体はスマートフォンを必要とせず、Wi-Fiで直接インターネットに接続する。睡眠時などにも外す必要がないように、バッテリーは着脱できるカートリッジ式になっている。

 すでに販売中の製品で、充電器や4つのビーコンがセットで449.99ドルとなっている。日本では製品展開をしていない。

セットに含まれているビーコン
アプリ上では1日をどう過ごしたかを簡単に確認できる

安価に導入できるスマート補聴器

 Olive Unionがてがける「Olive SmartEar X」は補聴器だ。正式な補聴器ではないが、アプリとの組み合わせにより、同等の機能を安価に提供しているのが特徴となっている。

Olive SmartEar X

 補聴器は通常、購入時には専門家にユーザーの聴力にあわせたチューニングをしてもらうため、数十万円のコストと長時間のチューニングの手間がかかる。しかしOlive SmartEarはスマートフォンアプリでユーザーの聴力をテストするため、チューニングにかかるコストと手間を大幅に省くことができる。

 片耳タイプの「SmartEar」はすでに3万円程度の価格で販売中だが、CESでは両耳タイプの「SmartEarX」が発表された。Olive Unionは韓国発のスタートアップだが、オフィスは東京にあり、日本でも製品を展開している。

チューニングなどを行なうアプリ。会話やテレビに特化したモードに切り替えることもできる
片耳タイプのSmartEar。デザインはほぼ同じ

スリープトラッキングができる寝間着や部屋着

 東大発のベンチャー企業、Xenomaは睡眠計測などができるパジャマや部屋着などを展示している。

 Xenomaは衣類に配線や回路を組み込む技術を開発していて、それによりスポーツ向けのトラッキングウェアを展開している。今回の新製品は非スポーツの一般分野となり、寝間着デザインに睡眠計測機能を埋め込んでいる。

 睡眠計測というと腕時計型やシート型が多いが、それに比べると旅先などでも使いやすく、普段から着用しやすいのがポイントだ。

 寝間着デザインの製品は、アパレルブランドのアーバンリサーチから製品化される予定。アーバンリサーチブランド以外での製品展開も予定しているという。

 睡眠計測できるパジャマに加え、転倒検知などができる部屋着も展示している。こちらは主に高齢者向けの製品として展開する。

 パジャマも部屋着も、布に埋め込まれているのは主に温度センサーや配線で、加速度センサや通信機能の入ったモジュールをポケット内に装着するようになっている。Xenomaの製品は耐久性に優れ、普通に洗濯しても布の繊維と同じくらいの強度を持っているという。

パジャマ型のスマートウェア。おへそあたりの白い帯が布状の配線回路
こちらは転倒検知機能を持つ部屋着型のスマートウェア