【2013 INTERNATIONAL CES】

Snapdragon 800シリーズの実力をアピールするクアルコム

 クアルコムのブースでは、CES開催前日のプレキーノートで発表された、「Snapdragon 800シリーズ」のデモが行われていた。

Snapdragonを応用した事例紹介が中心のクアルコムブース

 ブースにはシアタールームが設置され、Snapdragon 800シリーズを搭載したタブレットから、テレビに出力した映像やオーディオを楽しむことができた。この映像は、4K(幅4000ドット前後)解像度で出力したもの。7.1チャンネルのDTSに対応し、一般的なヘッドホンを装着した状態でも臨場感あふれるサウンドを楽しめる。ブースにいた説明員によると、Snapdragon 800シリーズでは、4K映像のデコードとエンコードの両方を行える。タブレットやスマートフォンへの普及が進めば、カメラで撮影した高解像度の動画を、HDMIなどでテレビに出力するといった利用スタイルも一般的になるかもしれない。

タブレットから出力した4Kの映像や、7.1チャンネルのサウンドを楽しむことができた
映像やサウンドは、Snapdragon 800シリーズを搭載したタブレットから出力されている

 プロセッサのパワーを活かした応用事例も、ブースで紹介されていた。GPUの処理能力を示す代表例として展示されていたのが、映像処理のアプリ。選択した範囲の対象物を消し、周囲の映像にあわせて背景を自動的に作り出すことができる。こうしたアプリはすでにスマートフォン、タブレット向けのものが存在するが、処理をスムーズに行えるのが「Adreno 330」を搭載したSnapdragonの実力というわけだ。

映像合成のように、GPUパワーが必要な処理もスムーズに行えることをアピール
H.264の約半分のデータサイズで同等の画質を実現できる「H.265」にも対応。通信量の抑制にもつながるため、キャリアからの関心も高いという

 SnapdragonのISP(イメージ・シグナル・プロセッサ)をアピールするコーナーでは、顔認識機能を使い、メインカメラでの“自分撮り”を簡単にするアプリが展示されていた。音声にしたがって端末を動かしていき、あらかじめ決めておいた場所に顔がきて笑顔になるとシャッターが切れるという仕組みだ。また、インカメラで読み取った手の動きでアプリを操作するデモも行われていた。

顔認識を活用し、画質の高いメインカメラで自分撮りを行うデモの様子。ファインダー画面が見えなくても、あらかじめ決めておいた枠内に顔が収まるよう、音声でガイドされる
手の動きを認識して、タブレットをタッチせずに動作させることが可能

 LTE関連では、「カテゴリー4」に対応したチップで高速な通信を行う様子を確認できた。また、2012年のMobile World Congressなどに出展された「eMBMS」という、LTEを使った同報配信のデモも確認できた。テレビなどと同様、1対多の情報配信を実現するための規格で、通信が込み合うスタジアムのような場所でも輻輳しないのが特徴。eMBMSに使う帯域もキャリアが自由に変動させることができる。なお、今回は、デモに作ったデモ用の通信網ではなく、すでにサービスインしている米国キャリア・VerizonのLTE網で映像を配信しているという。

「カテゴリー4」のLTEで通信しているところ。デモはチップの処理性能を確認するためのもので、データは有線で送受信されていた
「eMBMS」で、映像を端末に一斉配信している様子。同報配信に利用する帯域は、キャリアが自由に設定できる

 このほか、ブースにはクアルコムが注力する電気自動車の給電システムや、AR関連のプラットフォームを活用した応用事例などが展示されていた。

「halo」という電気自動車用給電システム。クアルコムは英国・ロンドン市で行政と協力して実験を行っている
充電器から発生している磁界を、ARでタブレットに表示させたところ
車載用の通信モジュールも開発している
「Vuforia」というARプラットフォームの活用事例。画面に表示された文字と一致するものを探し、カメラで読み取る知育ゲームのようなアプリ
「AllJoyn」という機器をピア・トゥ・ピアで結びつける仕組みを応用したアプリ。テレビとタブレットが相互に連動し、インタラクティブな映像を楽しめる
クアルコムが開発し、電通、リクルート、ブログウォッチャーが日本で利用を開始している「Gimbal」というソリューションも展示されていた。位置情報や興味関心を端末側で推定し、パーソナライズ化された情報の配信を可能にする技術

石野 純也