石野純也の「スマホとお金」

ワイモバイルが正式にデータ増量! 他社よりおトク? どう違う?

 ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルが、6月1日に「シンプル2 M」と「シンプル2 L」のデータ容量を、正式に改定しました。

 システム改修の時間稼ぎとして、これまではキャンペーンでデータ容量を増加し、ahamoなどに対抗していましたが、手動での容量追加が必要など、手間もかかっていました。この正式改定で、最初から付与されるデータ容量が増加しました。

 データ容量はシンプル2 Mが30GB、シンプル2 Lが35GB。容量増加前はそれぞれ20GB、30GBだったため、データ容量の差は縮まりました。一方で、シンプル2 Lには、1回10分間の音声通話が無料になる「だれとでも定額+」が無料でつきます。

 データ容量ごとに松竹梅で分かれていたワイモバイルの料金プランですが、改定後はややその役割が変化していると言えるでしょう。

ワイモバイルは、6月1日から正式にシンプル2 M/Lのデータ容量を改定した。料金自体は据え置きのままだ

 また、ワイモバイルがデータ容量の改定を正式化する間に、ドコモやauは小中容量の料金プラン/ブランドを改定。ソフトバンクが動かずとも、データ容量4GBの「シンプル2 S」に差がつく格好になりました。

 ここでは、データ容量改定後のシンプル2がどのような役割になっているのかを見ていくとともに、ワイモバイルと他社の類似プラン/ブランドとの違いを分析しました。

Lプランに10分音声定額をセット、ahamoやUQ対抗色を鮮明に

 ワイモバイルは、シンプル2 MとLのデータ容量を、それぞれ30GBと35GBに増量しました。お値段は据え置き。各種割引適用前の料金では、Mが4015円、Lが5115円になります。改定前と比べると、MとLの差が小さくなりましたが、代わりに、Lプランには10分間の通話が無料になるだれとでも定額+が0円でつきます。

 単なる容量の差だけでなく、音声通話定額の有無もプランの違いになったと言えるでしょう。

 これは、5分間の音声通話定額をセットにしたドコモのahamoや、ahamo対抗で10分間の音声通話定額をプランに含めたUQ mobileの「コミコミプランバリュー」に対抗した形です。

 元々、ワイモバイルのスタンダードとも言える料金プランは真ん中のMプランでしたが、音声通話定額をセットにすることで、より上位のLプランを主力にしようとしている意図が見え隠れします。

Lプランには、1回10分の通話が無料になるだれとでも定額+が無料でつく

 ただし、ahamoやUQ mobileのコミコミプランバリューほど、料金体系はシンプルではなく、あくまでも割引が前提。その意味では、従来型のスマホの料金プランに近いと言えそうです。

 つけられる割引は、「おうち割光セット(A)」と「PayPayカード割」の2つ。おうち割光セットの代わりに家族割引を適用することもできますが、こちらは2回線目からの割引で、かつ割引額も下がります。

 おうち割光セットの割引額は1650円、PayPayカード割は187円で、両方を適用するとMプランが2178円、Lプランが3278円まで下がります。光回線などが必要という条件はつくものの、金額的にはLプランがahamoより308円高く、データ容量は5GB多い格好。

 音声通話の無料ぶんも5分長いメリットがあります。UQ mobileのコミコミプランバリューとの比較では、550円安く、データ容量は同じになります。

主な料金プランとの比較(シンプル2 Lのみ、割引後)。他社の料金プランより、金額、データ容量、無料通話のいずれかで上回っていることが分かる

 割引前提の価格であることをどう捉えるかにもよりますが、家に固定回線などがあり、かつPayPayカードで支払ってもいいという人には、魅力的な料金プランと言えるかもしれません。

 また、家族で使う人であれば2回線目から1100円引きになり、PayPayカード割と合わせると2728円もしくは4928円になります。

忘れがちなLYPプレミアム特典、対ahamoではプランMも

 3社比較だと、UQ mobileの料金がやや割高に見えますが、これは、コミコミプランバリューが6月に導入された新料金プランのため。コミコミプラン+からバリューに変更されるにあたって、Pontaパスがセットになり、これまでの料金から550円高くなっています。

 では、Pontaパスのようなものがワイモバイルにないかというと、必ずしもそうではありません。

UQ mobileの料金が突出して高く見えるのは、Pontaパスがセットになっているためだ

 ワイモバイルの料金プランには、元々、LINEヤフー社の「LYPプレミアム」がセットになっているからです。こちらの料金は、単体で契約すると508円。

 お得さをどう捉えるかにもよりますが、Yahoo!ショッピングでのポイント還元率アップや、PayPayクーポン、LINEスタンプなどを加味すると、その価値はあるような印象です。

 UQ mobileがPontaパスぶんの値上げをしたため、ワイモバイルの安さが際立ったというわけです。17年から8年以上続いてきた特典のため、もはや当たり前になりすぎてしまってついていることも忘れられがちですが、元々有料のサブスクリプションがついていたのはワイモバイルの魅力と言えるでしょう。

ワイモバイルの料金プランには、LYPプレミアムが無料でつく。単体契約だと、508円かかる

 また、ahamoとデータ容量が同じMプランの比較ではワイモバイルが308円高くなりますが、Mプランであれば、逆にワイモバイルの方が792円も安くなります。

 ahamoと条件をそろえるため、だれとでも定額+をつけると3058円になり、再びahamoの方が安くなりますが、その差はわずか88円。だれとでも定額+の方が無料通話の時間がながかったり、LYPプレミアムがついていたりと、88円差を上回るメリットがあります。

あくまでワイモバイルは割引適用後だが、料金はほぼ同水準。通話の無料時間は10分と長く、ahamoより好条件と言えそうだ

 繰り返しになりますが、この料金はあくまで割引前提。ただし、固定回線とPayPayカードのみで条件は比較的少ないため、適用されるユーザーは多くなりそうです。ahamoに遅れて追随し、かつ他社が値上げしたこともあり、現時点では競争力の高い料金プランになっていると言えるでしょう。

 ソフトバンクの宮川潤一社長が、料金値上げにたびたび煮え切らない姿勢を示しているのも納得できます。下手に料金を改定すると、この競争力をそいでしまうおそれがあるというわけです。

料金値上げに迷いがあることを明かしていた宮川社長

小容量は“敵失”でワイモバ有利か、ただし条件を満たせればドコモも安い

 ワイモバイル自身は特段手を入れていませんが、他社が少量帯の値上げに踏み切ったことで、たなぼた的にSプランの競争力も自動的に上がっているように見えます。Sプランは、割引適用前の料金が2365円。おうち割光セットとPayPayカード割を適用すると、1078円まで料金が下がります。

 おうち割光セットの割引額が1100円と安いのですが、これは元々の料金が低いため。逆に、家族割引でも割引の減額はなく、2回線目から1078円で利用できます。

 まず、同じサブブランドのUQ mobileには、これから加入できる4GBプランが存在しません。新料金プランを追加する際に、4GBプランの「ミニミニプラン」を廃止してしまったからです。

 この受け皿となるのが、2段階制の「トクトクプラン2」。5GB以下の場合の料金は割引適用前で2948円です。

UQ mobileからは、4GBプランがなくなってしまった。結果として、割引前、割引後ともにワイモバイルの方が安くなる

 割引は2つで、「自宅セット割」で1100円、「au PAYカードお支払い割」で220円の割引になり、割引適用後の金額は1628円まで下がりますが、それでもSプランより高め。データ容量は1GB多いものの、敷居が上がってしまったことは否めません。

 ただし、自宅セット割はauでんきでもよく、固定回線などが必要なセット割より適用が簡単なことは念頭に置いておきたいところです。

 次に、ドコモは6月3日に新料金プランの「ドコモmini」を導入しました。小容量プランのirumoから、プラン数をザクっと削って4GBと10GBの2本立てに。前者の4GBが、ワイモバイルのSプラン対抗です。こちらの料金は、割引適用前が2750円で、ワイモバイルより385円強高めに設定されています。

 割引には「dカードお支払割」と「ドコモ光セット割」「ドコモでんきセット割」の3つがあり、ワイモバイルやUQ mobileより最低料金まで下げるハードルが高め。すべてを適用すると880円になり、ワイモバイルより198円安くなります。

 割引前の料金が高く、割引後が安いというのは、そのぶんだけ割引が多いということにほかなりません。

ドコモminiとシンプル2 Sの比較。割引前、割引後で価格が逆転する。これは、ドコモの方が条件が多いためだ
ドコモminiは割引が3つあり、かつdカードお支払割の比重が高い

 中でも、dカードお支払い割が高く、550円に設定されています。現状ではキャンペーンでカード種別は不問になっていますが、終了後は通常のdカードだと220円まで割引額が下がります。

 キャンペーン後は、GOLD以上のdカードや光回線、さらにはドコモでんきまで必要になり、ワイモバイルよりも最低料金で利用できるハードルは高いと言えます。他社の料金改定により、ワイモバイルのSプランの魅力が高まったということができそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya