石野純也の「スマホとお金」
ドコモ新料金プラン「ahamoポイ活」の”損益分岐点”を考える
2024年3月28日 00:00
NTTドコモは、4月1日に「ahamoポイ活」をスタートします。ahamoポイ活は、「ドコモポイ活プラン」の1つ。同じ枠組みの中に「eximoポイ活」も導入される予定ですが、ahamoに先行導入することでユーザーのニーズを探っていくといいます。 ahamoポイ活の特徴は、料金プランと決済サービスのd払いが連動しているところ にあります。
具体的には、d払いで決済した金額の3%が、dポイントとして付与されます。そして、夏ごろから、dカードGOLD契約者はこのポイントが5%になります。スタート直後は、キャンペーンで還元率が10%にアップ。いずれも上限は4000ポイントですが、そこに到達しやすくなるのがメリットと言えるでしょう。
とは言え、ahamoポイ活にはポイ活オプションの契約が必要で、料金はahamo大盛りから2200円上がってしまいます。契約するのであれば、やはり元を取りたいところです。ここでは、その 損益分岐点 を計算しました。
2200円のオプションでd払いの還元率アップ、当面は4万円で上限に
ドコモポイ活プランの第一弾となる「ahamoポイ活」は、d払いが連動し、ポイント付与率が上がる仕組みが最大の特徴です。より正確に言うと、その位置づけは料金プランではなく、ahamoのオプション。ahamoのデータ容量を80GB増量する「大盛りオプション」をつけている場合にのみ、「ポイ活オプション」を選択できるようになります。オプション単位の料金は2200円ですが、ahamoが2970円、大盛りオプションが1980円のため、トータルの料金は7150円かかります。
特典はシンプルで、d払いで決済した際に還元されるdポイントが上乗せされます。標準の上乗せ率は3%。dカードGOLDを契約している場合、この還元率が5%になります。ただし、dカードGOLDの判定が始まるのは8月ごろの予定。4月時点ではキャンペーンで、還元率が10%に設定されています。このキャンペーンの終了期間は未定。少なくとも、dカードGOLDでの上乗せが始まるまでは、10%還元が続く可能性は高いと言えるでしょう。還元額の上限は4000ポイントです。
決済サービスの還元率を上げる料金プランは、ソフトバンクが「ペイトク」として先駆けていますが、こちらは契約する料金プランのデータ容量に応じて還元率と還元上限が決まる仕組み。これに対し、ahamoポイ活は還元率も還元上限も一律。ahamo大盛りにつけるオプションという扱いのため、データ容量に選択肢はありません。オプションを契約するか否かの二択になるため、判断はしやすいと言えるでしょう。
まずは、損益分岐点ギリギリで元を取る場合に、d払いでいくら使えばいいのかを考えていきましょう。考え方として、元々の料金プランがahamoだった場合と、ahamo大盛りだった場合の2つのケースがあります。
すでに”ahamo大盛り”を利用している場合、ポイ活オプションをつけると、料金は2200円上がります。2200円ぶんのdポイント還元を受けるために必要な決済額は、キャンペーン期間中で2万2000円。1日あたりの金額にならすと、約733円です。ランチなど1食をd払いで払えばよく、達成は比較的簡単なように思えます。
逆に、還元を上限いっぱいまで受けたいときには、4万円ぶんのd払いが必要になります。この場合、4000ポイントの還元を受けられるため、差し引きすると1800円分のポイントが“儲かる”計算になります。 損益分岐点を迎えるd払いの決済額は2万2000円で、それを超えた分は4万円の決済まで、ユーザーの得になる と言えるでしょう。d払いをいくら利用するかにもよりますが、ahamo大盛りユーザーにとってはお得な選択になりそうです。
料金充当で100GBのahamo大盛りが実質2750円に、容量不足の人にもオススメ
一方で、ahamoからだと、大盛りオプションをつけたあと、ポイ活オプションを契約する必要があり、料金は4180円上がり、支払額は月額7150円になります。還元上限は4000ポイントのため、基本的に元を取ることもできません。大盛りオプションをつけているのでデータ容量は20GBから80GBにアップしていますが、普段20GBで十分足りている人にとっては無駄になってしまうおそれもあり、注意が必要です。
ただし、 付与されたポイントを携帯料金の支払いに充当した場合、話が変わってきます 。ドコモは、1月から期間・用途限定ポイントを料金の支払いに使えるよう、ルールを変更しています。携帯料金にdポイントを利用すると、そのポイント分だけ「税抜き」の料金が安くなります。消費税は、割引後の料金にかかるため、ユーザー視点では4000ポイント=4400円になるというわけです。この仕組みのお陰で、還元額の上限(4000ポイント)が大盛りオプションとポイ活オプションの合計(税抜き3800円)を超える形になります。
仮に上限までポイント還元を受け、携帯料金に充当する場合、損益分岐点は税込みで4180円になります。これは、税抜きで3800円分のポイントに相当します。10%還元のキャンペーン期間中は、3万8000円分の決済をして、携帯料金の支払いに充当すればトントンになるということです。また、上限いっぱいの4000ポイントまで還元を受けて携帯料金に充当すれば、ahamo大盛り+ポイ活オプションの支払額は2750円まで下がります。
このケースでは、金額的なメリットは少ないものの、 素のahamoと同じかそれより安い料金でahamo大盛りが使える ようになります。d払いで3万8000円~4万円程度決済すれば、ahamoのデータ容量が20GBから計100GBにアップするというわけです。現金や他の決済サービスで支払っていたぶんをd払いに回すだけで、金銭的な負担を最小限にしつつデータ容量を増やせるため、普段から20GBでは足りなかったユーザーにとっては悪くない選択肢と言えるでしょう。
先に挙げた、「もともとahamo大盛りだった」ケースでは、ポイ活オプション分の2000ポイント=2200円分だけを料金支払いに充当し、上乗せになる料金を帳消しにするという手もあります。この場合、料金そのままで2000ポイントが還元されます。毎月支払う金額が変わらず、単純に2000ポイントが増えるだけなのでお得度は高いと言えるでしょう。もともとahamo大盛りを使っていた人や、ahamoだけだとデータ容量が足りず、費用を抑えて大盛りオプションを契約したい人にはお勧めの料金プランというわけです。
キャンペーン終了後のハードルが一気にアップ、必要に応じて見直しを
ただし、ここまでの試算はあくまでキャンペーン期間中の話。終了期間は未定ですが、あくまでキャンペーンのため、いつかは終わりが来ます。また、ユーザーの動向次第で還元率が途中で下がる可能性もゼロではありません。少なくとも開始時点のように還元率が一律10%だと、dカードGOLDで還元率を2ポイント上乗せする必要はなくなるため、8月ぐらいには何らかの見直しがあると考えていいでしょう。
還元率が3%まで落ちてしまった場合、ahamo大盛りでも元を取るのがかなり大変になります。ポイ活オプションの2200円ぶんポイント還元を受けようとすると、d払いでの決済が約7万3333円必要になります。これでようやく、トントンになるというわけです。上限である4000ポイントまで還元を受けようとした場合に必要な決済額は、13万3334円。ahamoのメインターゲットである20代、30代だと、かなり厳しい金額です。
消費者庁の「令和4年版消費者白書」によると、世帯主が30歳未満の消費支出は、19年度で17万円をわずかに下回っています。このうち、割合の高い家賃などの住居費に関してはd払いで払えないため、還元を受けられません。また、モバイルSuicaにチャージすることで交通費の支払いは可能ですが、これに関しては還元の対象外。公共料金の支払いも可能ですが、同様に還元の対象外です。満額の4000ポイントを受けるには、その他の支出のほとんどをd払いにしなければならず、正直なところ現実的な金額とは言えません。
dカードGOLDが適用された場合でも、還元率は5%。ahamo大盛りユーザーが元を取るには、4万4000円の支払いが必要になります。これだけなら何とかなりそうですが、上限いっぱいまで還元を受けようとすると必要な決済額は8万円まで跳ね上がってしまいます。通常時の3%よりは現実的な金額にはなりますが、これでもまだまだハードルは高いかもしれません。還元額を試算してみると、キャンペーン終了後の還元率が低すぎるような印象も受けます。
もっとも、ポイ活オプションはあくまでオプション。不要であれば外すまでです。比較的ハードルの低い10%還元キャンペーン中だけ契約して様子を見つつ、終了時期が来たら条件を見て再考するようにすればいいでしょう。キャンペーン中は、d払いに支払いを寄せて、いくら使えるのかを確認する期間になりえます。
また、 ポイ活オプションは即時適用が可能なため、一時的に大きな買い物をする直前につけ、翌月からやめてしまう といった手もあります。スマホやタブレット、PCなどのガジェットや、コート、スーツといったファッションアイテムなど、比較的単価が高めの商品を購入する時にポイ活オプションをつければいいでしょう。グループで食事した際の建て替え払いがある月にも有効です。このように柔軟な運用ができるのは、オプションならでは。キャンペーン終了後は、常時つけておくのではなく、必要に応じて契約する手間を惜しまない方がよさそうです。