石野純也の「スマホとお金」
イオンモバイルの新料金プラン「データ繰り越し+毎月のプラン変更」で安くなるか検証する
2024年3月21日 00:00
イオンモバイルが、4月1日に料金を改定し、「さいてきプランMORIMORI」に最大200GBのデータ容量を追加します。家族や複数デバイスとシェアしながら使うのが目的ですが、もう1つあるのが、データ容量の繰り越しです。
イオンリテールのイオンモバイル商品マネージャー 井原龍二氏は、「20GBにしておき、翌月1GBに変えて繰り返す人が圧倒的に多い」と語っていました。2カ月で21GB使う方が、毎月10GBにするより安くなるのがその理由だといいます。
ある意味、裏技的な使い方ですが、大容量プランが追加されることで、自由度はさらに上がりそうです。では、繰り越しを駆使すると一体どのぐらい安くなるのでしょうか。ここでは、4月1日以降に追加されるデータ容量も含めて、そのお得度を検証してみました。
繰り越しは翌月まで、プラン変更は月末でも可能
イオンモバイルの繰り越しは、「翌月まで」と定められています。繰り越せるデータ容量に上限はなく、翌月は、繰り越したぶんのデータ容量から消費されていきます。オプション的な扱いではなく、料金プランに標準装備されている仕様で、料金はかかりません。イオンモバイルによると、この繰り越しを上手に使うことで、料金を節約できるといいます。
ただし、注意点もあります。繰り越し可能なのはあくまで1カ月のため、数カ月分のデータ容量をまとめて買うために大容量プランに変更するといった使い方はできません。あくまで、2カ月間でお得度を高めるための裏技です。
また、料金プラン変更は月末でもできますが、変更期限が「毎月の最終日前日の18時59分まで」と定められています。音声プランからデータプランやシェアプランなど、種別をまたがって変更もできません。
その上で、井原氏が語っていた1GBと20GBのプラン変更を繰り返す利用パターンを見ていきましょう。
この場合、データ容量は2カ月間で合計21GB。1カ月あたりにならすと、10.5GBということになります。
イオンモバイルの料金プランで10GBは1848円。音声プランで、シェアをしない単独契約だとこの料金が適用されます。2カ月分だと、3696円がかかります。
これに対し、20GBプランは「さいてきプランMORIMORI」に属し、1958円で利用できます。逆に1GBプランは「さいてきプラン」の中にあり、858円で提供されています。
2つを合わせると2816円。10GBプランをそのまま契約するより、2カ月でなんと880円も安くなります。しかも、細かく見ていくとデータ容量は1GB多く、1カ月あたり0.5GB余分に使えます。若干ですがデータ容量が増え、料金が大幅に安くなると言えるでしょう。
より安価にしたければ、変更先を1GBプランではなく、0.5GBプランにするという手もあります。
こちらの料金は803円。20GBプランと合わせても、2761円にしかなりません。1カ月換算だと、1381円(小数点は四捨五入)になります。こちらの場合、料金差はさらに大きくなり、934円も安くなります。1カ月あたりの差は467円。
プラン変更の手間はかかりますが、毎月のルーティンとしてこなすだけで、年間にすると5000円以上の違いが出てきます。プラン変更が多いというのは、納得の結果と言えるかもしれません。
大容量プランでもプラン変更のお得さは健在、ただしその差はわずか
イオンモバイルの料金プランは現状、50GBが最大容量ですが、4月1日によりデータ容量が大きいプランが追加されます。
100GBまでは10GB刻み、それ以上は50GB刻みになります。60GB、70GB、80GB、90GB、100GB、150GB、200GBの7つが追加されるというわけです。これに加えて、30GB、40GB、50GBの料金がそれぞれ550円、1100円、1650円値下げされます。
このデータ容量追加と料金改定によって、先に挙げた繰り越し目的の料金プラン変更の組み合わせが、より柔軟に、しかも安価になります。
たとえば、大手キャリアのオンライン専用プラン/ブランドと同程度の20GBを利用したい場合、値下げされた40GBを選択したあと、翌月に0.5GBプラン変更するといった選択がしやすくなります。
上記の場合、料金は40GBプランの3058円と0.5GBプランの803円の合計になり、金額は3861円です。1カ月あたりの金額は1931円。
1958円で提供されている20GBプランよりも、わずかに料金は安くなります。使えるデータ容量も2カ月で0.5GB多くなるため、20GB必要な場合でも、月末にプラン変更をかけるようにした方がベターと言えるでしょう。
料金改定前だと、同じことができませんでした。現状の40GBプランは4158円。0.5GBプランの803円を足し、1カ月にならすと2481円になります。20GBプランより高くなってしまうため、プラン変更でお得という図式が成り立ちません。
30GBから50GBの料金を値下げした背景には、こうした利用を後押ししたいイオンモバイルの狙いが透けて見えます。
200GBは繰り越しで使える? 単独利用より家族利用がオススメか
では、ほぼほぼ無制限に近いような感覚で使える100GBの場合はどうでしょうか。
新設される200GBプランは、1万1858円で提供されます。これを0.5GBプランに落とした場合、料金は2カ月で1万2661円になります。1カ月あたりの金額は6331円。100GBプランを毎月継続すると6358円かかるため、わずかですが、料金は安くなる計算になります。
一方で、その金額差はわずか27円。手間がかかるうえに、料金プラン変更を忘れてしまい、2カ月分、200GBプランの料金がかかってしまうリスクもあることを踏まえると、手を出すメリットは薄いと言えそうです。これは、先に挙げた40GBプランの場合も同じです。
大容量になればなるだけ、そのリスクは高まるため、少々オススメしづらい使い方と言えるかもしれません。
また、2カ月で200.5GBの料金は、MVNOとして少々割高な水準と言えます。
たとえば、NTTドコモの「ahamo」は、データ容量が80GB追加される「大盛りオプション」を提供しており、これを適用した際の「ahamo大盛り」は、4950円で利用できます。MVNOとは異なり、ahamoはドコモ自身が提供しているため、お昼休みの時間帯などの速度低下が基本的にはありません(無線区間が混雑した速度低下は起こりえる……というか実際に起こっていますが、それはまた別のお話)。
そもそも、ドコモ自身もeximoとしてデータ容量無制限の料金プランを提供しており、こちらは3GBを超過した場合の料金を7315円に設定しています。イオンモバイルの100GBプランとは、わずか984円の金額差。しかもこれは素の料金で、3親等以内の“家族”にドコモユーザーがあと2人いれば、料金は6215円になり、イオンモバイルの100GBプランと金額が逆転します。MVNOではありますが、単独で大容量プランを契約する意義は薄いと言えそうです。
イオンモバイルも、「さいてきプランMORIMORI」は家族でのシェアを推しています。
たとえば、夫婦2人で100GBを使う場合、料金はシェアプランの1万2188円と2回線目の220円がかかり、合計額は1万2408円になります。1人あたりの金額は6204円。ドコモで「みんなドコモ割」が適用された場合の金額を、わずかですが下回ります。家族3人だと、1人あたりのデータ容量は約66.7GB(小数点第二位を四捨五入)になりますが、料金は1万2628円を三等分した4209円まで下がります。
こうした点から、大容量プランの「さいてきプランMORIMORI」は、一部を除いて「シェア前提」で設計されていることが分かります。
MVNOで大容量を選択できるようになったのは魅力的ですが、単独契約で選択してしまうと、損をする可能性もあります。一方で柔軟にシェアする回線を組めるのは、イオンモバイルの魅力。こうしたポイントを踏まえつつ、料金プランを選択するようにするといいでしょう。