石野純也の「スマホとお金」

ソフトバンクの新料金プラン「ペイトク」徹底解説、PayPay使いまくりの人は契約するしかない

 ソフトバンクは、メインブランドのソフトバンクに新料金プラン「ペイトク」を導入しました。新規ユーザーは10月3日からですが、既存のユーザーは翌月適用になるため、まだ契約するか否かを迷っている人は少なくないでしょう。料金プランの特徴をザックリまとめると、値上がりするぶんPayPayポイントで元を取れる仕組み。還元率が大幅にアップするため、“PayPay経済圏”への依存度が高い人は、契約しない手はない料金プランと言えるでしょう。

ソフトバンクは10月3日に、新料金プランのペイトクを導入した

 一方で、還元には上限もあります。また、料金プラン自体は値上がりしているため、毎月の決済額が低いと、旧料金プランとの“損益分岐点”を割ってしまうリスクもあります。データ容量に200GBという上限はつきましたが、ほぼ料金が変わらない「メリハリ無制限+」も残っているため、こちらを選択する手も残されています。ここでは、その損益分岐点を計算し、ペイトクに移行した方がいいかどうかを検証していきます。

料金値上げで3本立てに、PayPay還元が最大の特徴

 ペイトクは、これまでの「メリハリ無制限」とは異なり、料金が無制限一択ではありません。同じペイトクの中に、30GB、50GB、無制限の3つが含まれており、ユーザーはデータ容量を選択することができます。ちなみに、新料金プランは200GBで速度制限がかかり、通信速度は4.5Mbpsまで下がります。同社によると、この上限を超えるのは全ユーザーの0.3%ほど。数にすれば影響は軽微に思えますが、累積のデータ容量を閾値に速度を絞るプランは一般的に無制限とは呼びません。ここでは、便宜的にソフトバンクのプラン名の表記にならって無制限と呼びますが、実態としては200GBプランに近いことは念頭に置いておきたいところです。

新料金プランの無制限は、200GBで通信速度に制限がかかる。制限後も4.5Mbpsと比較的速度は高いものの、スロットリングがかかるのも事実だ

 それはさておき、ペイトクの料金は、30GBのペイトク30が7425円、50GBのペイトク50が8525円、200GBのペイトク無制限が9625円です。ワイモバイルのような松竹梅の3段構えの料金体系ですが、ソフトバンクの場合、ここにPayPayの還元率と連動しないメリハリ無制限+と、段階制料金プランの「ミニフィットプラン+」が加わり、計5つの料金プランから選択が可能。さらに、5歳から22歳の新規ユーザーやフィーチャーフォンからの乗り換え、機種変更の場合は、「スマホデビュープラン+」を契約することもでき、ワイモバイルよりも選択肢は多彩です。

 メリハリ無制限の料金は、各種割引適用前で7238円。もっともデータ容量の少ないペイトク30よりも、187円安くなっています。これは、新料金プランに共通で「PayPayカード割」が新設されたため。PayPayカードに料金の支払いを設定すると受けられる割引で、同様の仕組みはドコモやKDDIも導入済みです。この割引を導入するために、187円ぶんを値上げしたということ。PayPay連動のないメリハリ無制限+もペイトク30と同じ7425円に設定されている事実も、これを裏づけます。

ペイトクは容量別に3つから選択可能。既存のメリハリ無制限を受け継いだメリハリ無制限+も用意する

 もし既存のユーザーが料金を同額に収めたければ、データ容量を30GBに抑えるしかありません。逆に、毎月30GB以下に収まっている人であれば、あえて無制限からペイトク30に切り替えることで、PayPayポイントの追加還元を受けることができます。また、同様にほぼ無制限のまま使いたいという人は、ペイトク無制限を選ぶ手もあります。こちらの料金は9625円で、メリハリ無制限からは2387円、メリハリ無制限+からは2200円の値上げになります。無制限を継続したいユーザーにとっては、この2200円をPayPayポイントの還元で取り戻せるかどうかが、お得感を左右すると言えるでしょう。

ペイトク無制限にPayPayカード割を適用した場合、メリハリ無制限との料金差は2200円になる

大容量ほど実質料金は安い、ペイトク30、50はトラップか?

 ペイトク30、ペイトク50、ペイトク無制限それぞれの還元率は、1%、3%、5%で、上限は1000円、2500円、4000円です。ペイトク無制限の場合、メリハリ無制限+との差額である2200円を取り戻すには、4万4000円ぶんのPayPay決済が必要になります。また、上限値の4000ポイント還元まで達するには、8万円(税抜き、以下同)の決済が必要。毎月4万4000円以上PayPayで決済し、かつ料金をPayPayカードで支払うようにすれば、既存のメリハリ無制限から変更すると実質的な料金が安くなります。

 還元の最大値である4000ポイントを料金割引と見なして実質価格を計算すると、料金はPayPayカード割のみ適用の場合で5438円。超大容量プランとしては、まずまずの安さと言えるでしょう。ここに、「新みんな家族割」や「おうち割 光セット」を適用すると、その実質価格は3128円まで下がります。あくまで実質価格ではありますが、PayPayでの決済をするだけでここまで料金が下がるプランはなく、比較的インパクトは大きいと言えます。

PayPay決済額ごとの実質料金の推移。4万4000円で損益分岐点を超える

 ただ、料金がほぼ同額だからと言って、ペイトク30を契約するのはなかなか悩ましいところ。還元率が低く、上限も1000ポイントだからです。1%の還元率で1000円に達するには、10万円ぶんの決済が必要。上限が1000円と低い割には、達成のハードルがペイトク無制限より高いと言えるでしょう。元々30GB以下しか使っていなかった人にとっては還元があるだけお得と言えますが、無理にここまでデータ使用量を落とす必要性は薄いような気がします。

ペイトク30の場合、がんばって10万円決済したとしても、実質料金は3928円までしか下がらない

 その間を取ったペイトク50ですが、こちらは還元率が3%で上限が2500円。上限に達するのに必要な決済額は、約8万3333円です。ペイトク30よりは上限に届きやすいものの、ペイトク無制限より3333円ほど多く決済しなければなりません。一般化すると、より安価な料金ほど上限が低く、その上限に達するまでの決済額も多く必要になるというわけです。ちなみに、上限いっぱいまで還元を受け、PayPayカード割を適用した場合の実質料金は5838円。全割引を適用し、PayPayポイントも加味した実質料金は3528円になります。

ペイトク50は両者の中間だが、上限まで還元を受けた場合、ペイトク無制限との差が小さくなる

 実質料金同士の比較だと、ペイトク無制限の方が400円安くなります。しかも、ペイトク50の場合、ペイトク無制限よりも上限に達するPayPayの決済額が3333円ほど上がってしまいます。こうした点まで加味すると、ペイトク50のメリットは薄いようにも見えます。松竹梅と3段階の料金プランが並ぶと、真ん中の人気が出るのが一般的ですが、ことペイトクに関しては無制限のメリットを大きく設定しているようにも見え、セオリー通りの比率にはならないような気もしています。

キャンペーン中の契約はあり、ただし出戻りNGには要注意

 8万円なり10万円なりの決済と聞くと、「そんなにPayPayで決済しない」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。ソフトバンクの常務執行役員 寺尾洋行氏によると、「今、PayPayを利用しているお客様の平均(月間利用額)が3万5000円」とのこと。平均をある程度上回っていれば、先に挙げた“損益分岐点”の4万4000円は達成することが可能です。9000円であれば、支払いのいくつかを意識的にPayPayに寄せることで達成できるでしょう。

 ペイトク発表時に寺尾氏が挙げたデータでは、2人以上の世帯の平均消費支出額が約29万円。ザックリ言えば、その1/3程度をPayPayで決済していれば、どのペイトクを選んでも、おおむね上限まで還元を受けることが可能になります。どのお店でもPayPayが利用できるわけではないため、簡単にできるわけではありませんが、対応している店舗が多いのがこのサービスの特徴です。

平均消費支出の1/3程度をPayPayに回せれば、上限まで還元を受けられる

 かく言う筆者も、ペイトクを契約するため、毎月PayPayでどの程度決済しているかを改めて確認してみました。ポイント還元率が0.5%アップする「PayPayステップ」の達成を狙っていることもあり、9月は10万円超。8月は海外滞在もあり、PayPayの利用は平均より少なめですが、それでも8万円は超えており、ペイトク無制限であれば上限いっぱいまで還元を受けられます。ただ、5月は別の決済サービスを中心に使っていたため、支払額は4万4000円強。偶然ながらペイトク無制限の損益分岐点に近い金額ですが、こちらは税込みのため、メリハリ無制限+の方が安い計算になります。

 とは言え、この調子でPayPayを使ってさえいれば、メリハリ無制限にとどまっているよりも、実質料金は安くなります。筆者の場合、PayPay無制限を契約しない手はありません。このように、PayPayでいくら支払っているかによって、ペイトクのお得度は変わってきます。PayPayはアプリ上で簡単に過去の支払額をグラフ化できるため、ペイトクへの変更を迷っているのであれば、一度自分がどの程度使っているかをチェックしておいた方がいいでしょう。

筆者の場合、PayPayステップ狙いで10万円を超えている月も多く、ペイトク無制限に切り替えた方がお得になることが分かる

 また、最短でも2月20日(20日〆の場合)まで、ソフトバンクでは「ペイしてトクトクキャンペーン」を実施中。期間中であれば、PayPayの還元率が3倍になります。あくまで期間限定ながら、ペイトク無制限の場合だと15%還元に。上限は据え置きですが、4000円を2万6666円超の決済で達成できる格好になります。毎日約900円程度の利用で上限に届くため、ランチをPayPayで支払うようにするなど、簡単な工夫で元を取る以上のお得感を味わえます。

キャンペーンで各プランの還元“率”が3倍にアップ。ただし、上限額は変わらない

 キャンペーン終了後に損益分岐点を超えないようであれば、メリハリ無制限+に変更してしまうのも手と言えます。ただし、メリハリ無制限に戻せない点には注意が必要です。ここで冒頭の話に戻りますが、新料金プランの無制限には200GB制限があるからです。規制対象になるのは0.3%ほどですが、このような使い方をしている場合、料金プランを行き来すると新たな制限が発生してしまいます。大多数のユーザーにはあまり関係のない話ですが、データ使用量が特に多い場合には注意が必要と言えそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya