石野純也の「スマホとお金」

iPhone/スマホの買い替え、手間無く安心して“高く売る”フリマサイトや中古店の活用術

 高価格化するスマホの負担感を軽減するため、機種変更前の端末を下取りに出すのは徐々に一般的になりつつあります。

 本連載でたびたび言及している、2年なり4年なりの割賦の半分前後を免除するキャリアのアップグレードプログラムもその1つ。こちらは、将来の下取りをある意味“予約”するような形で、価格を引き下げていると言えるでしょう。また、アップル(Apple)のようなメーカーも、下取りの有無購入時に選択できるようにして、負担感の軽減に努めています。

 前回触れたように、中古販売店の買い取りを利用するのも、そんな手段の1つです。下取り価格は需給や競合状況に応じて決まるため、iPhoneのように人気があり、海外流通しているモデルの場合、アップル自身の下取りより買い取り額を高く提示しているケースもあります。ただ、査定額によっては満足いかない結果に終わることもあります。

 このような時に活用したいのが、メルカリなどのCtoCフリマプラットフォームです。

スマホを売れるのは、キャリア・メーカーの下取りや中古販売店だけではない。金額重視なら、フリマアプリも視野に入れておく必要がある

スマホはフリマアプリで人気ジャンル、中古店以上に高く売れることも

 メルカリでは、スマホなどのデジタル製品は人気ジャンルの1つ。エンタメ・ホビーやファッションに次ぐ、3位を占めています。

 また、特に新しいiPhoneが発売されることの多い9月~10月にかけては、流通総額が拡大するとのこと。月ごとの推移を見ていくと、この時期がメルカリ内の売買が活発化していることがよく分かります。新モデルを購入し、それまで使っていた端末をメルカリに出品している人が多い証左と言えるでしょう。

スマホは3大人気ジャンルの内の1つ。特にiPhoneやPixelの登場する9月、10月は取引が活発になる

 一般的に、中古販売店はユーザーなどから買い取った端末を店頭に並べたり、海外向けの販売業者に売ったりすることで利益を得ています。そのため、当然ながら店頭で販売されている中古端末よりも、買い取り価格は何割か安くなります。

 たとえば、ある中古販売店では、「iPhone 14 Pro」の128GB版を約14万円で販売しています。これに対し、この店舗が買い取り額として提示しているのは最大で12万円。2万円ぶんが店舗の収益になるというわけです。

 これに対し、メルカリのようなCtoCプラットフォームでは、ユーザー同士が直接やり取りをするため、販売側が提示した額が直接、他のユーザーの購入価格になります。売買が成立した際には、10%の手数料をメルカリに支払う仕組み。

 先に挙げたiPhone 14 Pro、128GBを例に取ると、13万5000円で出品した場合、1万3500円が手数料として売上げから除かれます。出品側に入るのは、12万1500円。10%の手数料を納める必要はありますが、売り手はより高く売れ、買い手はより安く買えることになります。

メルカリは販売手数料が販売価格の10%。フリマアプリの中では高い方だが、中古販売店に比べると関与の度合いが少ないぶん、“中抜き”は少ない

 上記はあくまで小傷程度の「Aランク」品での比較ですが、傷がある場合などは、よりフリマアプリの方が有利になることがあります。

 筆者の場合、約12万円で購入したソニー版の「Xperia 1 II」を売却した際にその差が大きくなりました。1年使用後に中古店に買い取りを依頼したところ、ディスプレイのガラスに傷がついていたため、最低で大幅減額に。1万円程度の買い取り価格が提示されました。

 ただ、傷といってもガラスが割れているようなレベルではなく、筋が1本入っていた程度。査定に納得ができなかったため、そのままメルカリに出品したところ、5万円で買い手が現れました。

 手数料と送料を差っ引いても4万4625円になり、まずまずの価格に満足したことを覚えています。傷や使用感をどう見るかにもよりますが、相手が納得してくれさえすれば、より高い価格で買い取ってもらえることもあるというわけです。

筆者がXperia 1 IIを売却したときには、中古販売店よりも大幅に高い金額がついた

 実際、メルカリによると、スマホの平均取引価格は、キャリアの下取り最高額を上回っていることが多いようです。

 同社が提示した事例では、「iPhone 13」の128GB版が平均8万3048円、「iPhone 8」の64GB版ですら、1万2623円で取り引きされていることが分かります。前者は、キャリア下取りの最高額が5万1150円、後者は6000円と安いため、メルカリに出品した方が高く売却できることが分かります。

メルカリによると、キャリアの下取り額より高く売れているケースが多いという

中古店の方が楽なケースも、メルカリは出品のユーザー体験にも注力

 一方で、比較的新しい端末でかつ人気が高い場合、中古店とメルカリでの価格に大きな差がないこともあります。

 先に挙げたiPhone 14 Proの事例もその1つですが、中古販売店とメルカリの差額は1500円。これは、中古販売店もギリギリの価格設定で仕入れをしているためとみられます。メルカリの場合、自ら梱包し、発送しなければならず、一定程度の手間はかかります。また、いつ売れるかは価格設定やそのときの状況次第。運にも左右されます。

 これに対し、中古販売店は大都市圏であれば、比較的店舗も多く、査定が終わればすぐにその代金を受け取れます。こちらも筆者の例ですが、「iPhone 15 Pro」への機種変更に伴い、発売日にiPhone 14 Proの256GB版を中古店に売却しました。

 その際についた買い取り価格は、クーポンなども含めて約11万円。まずまずの美品ではありましたが、ディスプレイにやはり5cm程度の小さな傷がついていました。メルカリで近い状態のiPhone 14 Proを検索したところ、12万円から13万円程度で販売されていました。そこからメルカリの手数料を差っ引くと、中古販売店での買い取りと大差がないか、中古店の方が高くなります。

iPhone 14 Proは中古販売店に売却したが、査定の減額もあり、買い取り額は約11万円に。メルカリならもう少し高く売れた可能性もあるが、入金前に1時間もかからなかった手軽さは中古販売店に軍配が上がる

 しかも、いつ売買が成立するのかは神のみぞ知るといったところ。

 一方の中古販売店は、20時に予約して下取りの手続きを済ませたところ、40分後には査定が終わり、金額も決定していました。筆者が利用したのはソフマップが運営するラクウルですが、このサービスでは、ウォレットに入金する場合、再来店が不要。アプリでポチポチとボタンを押していけば入金され、銀行振り込みもその日のうちに完了しました。1時間程度ですべてが終わり、非常にスムーズでした。

 フリマアプリも万能ではなく、このようなメリット・デメリットを天秤にかける必要はあると言えるでしょう。

メルカリで3日以内に売買が成立する割合は64%と高い。ただ、配送や評価まで含め、実際に入金される期間はどうしても中古販売店の買い取りより長くなる

 ただ、メルカリもスマホは売れ筋の商材なだけに、出品に必要なポイントはかなり押さえています。

 パッケージのバーコードを読み取って商品情報を自動で入力できるほか、AIによるサポートもあります。また、スマホならではの情報である、IMEI(製造番号)やバッテリー最大容量の残量などを、出品するフローの中で入力できるよう、配慮されています。

 こうしたユーザーインターフェイスのよさは、メルカリならでは。あくまで筆者の経験ですが、ユーザーの規模が大きいため、ほかのフリマアプリより売れやすい実感もあります。

出品をサポートする機能が充実しており、初心者でもスマホを売りやすい

データ消去サービスも開始、フリマアプリも選択肢の1つに

 スマホならではの不安にこたえるため、出品時に専門業者がデータを消去する仕組みも導入しました。「あんしんデータ消去」が、それです。

 こちらは、伊藤忠グループで中古端末を取り扱っているBelongと提携することで実現したサービス。あんしんデータ消去を利用する場合、売買が成立したあと出品者は商品をBelongのオペレーションセンターに送付。ここでデータが完全に消去され、Belongから買い手に、その端末が発送されます。

9月にスタートしたあんしんデータ消去は、伊藤忠グループのBelongとの提携で実現。出品者は売買が成立したあと、まずBelongのセンターに商品である端末を送付する。そこでデータが消されて、購入者に配送される

 もちろん、初期化することでスマホのデータは消去できますが、専用ツールで復元できてしまう心配は残ります。Belongでは、専用ツールを使って完全な消去を行っているため、その点ではきちんとした中古販売店に買い取りに出すのと同じような安心感があります。

 ただし、あんしんデータ消去をつけると、1400円が売上げから引かれます。この利用料は出品者側の負担になります。

 現在、あんしんデータ消去はキャンペーン中。10月17日までに出品を済ませ、11月5日までに取引を完了させると、利用料の1400円相当がメルカリポイントとして還元されます。端末の流通総額が増える9月、10月を狙い、利用を促進するキャンペーンといえるでしょう。

 また、10月17日まで、スマホの出品に対し、販売手数料を30%、1000円分までメルカリポイントで還元するキャンペーンも実施中。お得にスマホを買い替えたい人は、利用を検討してみてもよさそうです。

データ消去サービス実質無料キャンペーンに加え、スマホの出品で30%還元(1000円分まで)を受けられるキャンペーンも実施中。流通額が上がる、9月、10月ならではだ

 ちなみに、あんしんデータ消去とは別に、「スマホかんたん買取」というサービスも提供されています。

 少々紛らわしいのですが、こちらはBelongが直接ユーザーのスマホを買い取る仕組み。メルカリの特設ページで紹介されてはいるものの、サイト自体はBelongが運営しており、仮見積もりや査定もすべてBelongが行います。メルカリからの誘導はありますが、オンラインで中古販売店に売却するのと、大きな差はないと言えるでしょう。

Belongがスマホを買い取るサービスも導入した。ただし、こちらは一般的な中古販売店の買い取りとほぼ同じ仕組みだ

 フリマアプリはメルカリだけではありません。ヤフーの運営する「PayPayモール」や、楽天の「楽天フリマ」などもあり、いずれもスマホが出品されています。手数料がメルカリより抑えめなところもあります。

 規約次第ですが、重複出品が可能なこともあるので、複数サービスを使い比べてみてもいいかもしれません。ものによってはお得になることもあるため、査定額に納得できないときなどの選択肢として検討してみることをお勧めします。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya