石野純也の「スマホとお金」

ドコモの新しい特典「爆アゲ セレクション」、そのポイント還元率やおトク度はいかほど?

 ドコモは、6日に各種映像配信サービスの月額料金に対してポイント還元を受けられる特典の「爆アゲ セレクション」を発表しました。サービス開始は4月1日からで、最大還元率は20%。これまでドコモが取り扱ってきた「ディズニープラス」や「DAZN for docomo」に加え、新たに「Netflix」や「YouTube Premium」を取り扱うようになるのも、本特典のニュースと言えるでしょう。

 また、dTVをリニューアルして開始する新しい映像配信サービスの「Lemino」も、爆アゲ セレクションの対象です。映像配信サービスの料金体系はさまざまですが、値上げの結果、3700円と比較的高額になったDAZN for docomoのようなサービスでも20%還元を受けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。その詳細をチェックしていきましょう。

ドコモは、3月6日に爆アゲ セレクションを発表した。サービス開始は、4月1日から(写真提供:NTTドコモ)

映像サービスの契約でdポイントを最大20%還元

 爆アゲ セレクションとは、ドコモと提携した映像サービスを契約することで、dポイントの還元を受けられる特典。最大還元率は20%です。現在、ドコモが提供しているディズニープラスとDAZN for docomoは4月1日から、Netflixは4月5日から、YouTube Premiumは4月下旬以降、新サービスのLeminoプレミアムは4月12日からの提供開始になります。

 いずれのサービスも、ドコモ回線と一緒に申し込めるのがメリット。現在でも、ディズニープラスやDAZN for docomoは「my docomo」やドコモショップで簡単に手続きができますが、対象日以降、NetflixやYouTube Premium、Leminoプレミアムも同様になります。ドコモが取り扱う映像サービスに対して、ポイントを付与することで利用を促進する取り組みと言えるでしょう。

対象となる映像サービスは5つ。ドコモが現在提供しているディズニープラスやDAZN for docomoは4月1日から、それ以外は順次サービスを開始していく

 還元率は、最大20%です。ただし、これはあくまで“最大”である点には注意が必要です。たとえば、ディズニープラスやDAZN for docomo、YouTube Premiumは一律で20%還元の対象になっていますが、Leminoプレミアムは10%に設定されています。また、Netflixは加入するNetflixのプランや、ドコモの料金プランの加入状況によって、ポイント還元率が10%か20%のどちらかが適用されます。

 ポイント還元率ではなく還元額で見てみると、たとえば3700円で20%還元のDAZN for docomoは、毎月673ポイントをもらえます。990円のディズニープラスも180ポイント。YouTube Premiumは215ポイントです。映像サービスの加入でここまで大きなポイントをもらえることは少ないため、ドコモ回線のユーザーにとっては魅力的な特典と言えるでしょう。各サービス提供元にとっては、加入を促進できるのがメリットです。

付与ポイントの具体例。DAZN for docomoのように、元々の料金が高いと還元額は673円相当にもなる

【お詫びと訂正 2023/03/09 12:43】
 記事初出時、YouTube Premiumの還元ポイント数を誤って記述しておりました。お詫びして訂正いたします。

主な条件はギガホかahamoへの加入、ただしNetflixは幅広く還元

 爆アゲ セレクションでポイント還元を受けるためのもう1つの条件は、ドコモ回線を契約していて、かつ特定の料金プランに入っていることです。たとえば、YouTube Premiumは、料金プランとして「ギガホ」か「ahamo」への加入が条件に挙げられていますが、段階制料金プランの「ギガライト」は対象外。それ以外も、Netflix以外は、基本的にはギガホやahamoが条件として定められています。

YouTube Premiumや、ドコモがすでに提供する2サービスは、ギガホかahamoへの加入で20%還元を受けられる

 一方で、Netflixはポイント還元の仕組みがほかよりもやや複雑です。まず、映像の解像度がHD(720p)に抑えられているNetflixベーシックの場合、いずれの料金プランでも還元率は10%。これに対して、フルHDのNetflixスタンダードや4Kまで見られるNetflixプレミアムは、ケースによって10%か20%かが変わってきます。20%になるのは、ギガホかahamoを契約している場合です。

 ただし、ドコモ光の契約があれば、ギガホやahamo以外でもNetflixスタンダードやNetflixプレミアムは20%還元の対象になります。ギガライトなど、より低容量の料金プランでもいいというわけです。Netflixのような映像サービスは、必ずしもスマホに特化しているわけではなく、テレビなどの固定回線にぶら下げるデバイスでも視聴できます。モバイルの料金プランだけでなく、ドコモ光が対象になっているのは、Netflixのユースケースに即していると言えるでしょう。

Netflixは、他のサービスと異なり、料金プランを問わずに還元が受けられる。さらに、ギガホ、ahamoに加えて、ドコモ光の契約でも上位2プランの還元率がアップする

 ドコモ回線の料金プランがギガホ、ahamo以外で、ドコモ光の契約もない場合、還元率は10%まで下がってしまいます。とは言え、ギガライトなどの小容量の料金プランで、モバイルだけの単独契約でもdポイントが還元されるため、他のサービスよりもお得な印象を受けます。

 一方で、Netflixを直接契約するのとは、選択できるプランに違いもあります。ベーシック、スタンダード、プレミアムは金額も同じですが、ベーシックに広告をつけ、料金を790円に抑えた「広告つきベーシック」は選択できません。同様に、DAZN for docomoにも2カ月ぶんがお得になる年払いがないなど、映像サービスごとに細かな差分もあります。

22年11月に日本でもスタートした広告つきプランは、ドコモ経由だと選択できない

中・大容量プランへの加入促進が狙いか、auとは芸風の違いも

 料金プランがギガホやahamoに限定されているのは、スマホでの映像視聴を想定しているからでしょう。ドコモにとっては、こうした中・大容量プランの加入を促進できるのがメリットです。実際、映像コンテンツの利用拡大を受け、ドコモの中・大容量プランは契約数が拡大傾向にあります。22年第2四半期(22年9月)には、ギガホ、ahamoの契約者数は合算で1000万を突破。前年同期比で30%増と、伸びています。

ユーザーのデータ通信量増加に伴い、ギガホやahamoといった中・大容量プランの契約者が増えている

 同社の代表取締役社長、井伊基之氏は、その理由として「YouTubeなどの無料の動画コンテンツ」を挙げていましたが、爆アゲ セレクションは、それをドコモと提携した有料の動画配信サービスに波及させる取り組みとも言えます。拡大するdポイントの経済圏を生かしている点では、ドコモの強みを生かした格好です。

 同様の動画サービスをセットにする動きは、他社も強化しています。代表的なのは、KDDIのau。同社は、データ容量が使い放題の「使い放題MAX」と、映像サービスなどをバンドルした「○○パック」という料金プランを用意しています。こちらは、ポイント還元ではなく、セット料金で提供することでトータルでの割安感を訴求しています。

KDDIは、auの使い放題MAXと各種サービスをパックにした料金プランを展開

 たとえば、先に挙げたNetflixがセットになった「使い放題MAX Netflixパック」は、Netflixのベーシックプランと月額618円のTELASA、さらにAmazonプライムがついて、料金は各種割引適用前で8338円。家族割プラスで3人以上の場合で、かつauスマートバリューが適用され、「au PAYカードお支払い割」も加わると、料金は6028円まで下がります。使い放題MAX単体の料金は7238円ですが、ここに1100円プラスするだけで、NetflixとTELASA、Amazonプライムがついてくるというわけです。Netflixベーシックは単体で990円、Amazonプライムは月額500円のため、これだけで元が取れてしまいます。

単体でそれぞれのサービスに加入するよりもお得になる計算

 一方で、ドコモの爆アゲ セレクションのような、組み合わせの自由はありません。上記のプランだと、Netflixに入りたい一方で、TELASAやAmazonプライムは不要という場合には対応できないのが難点。使い放題MAXとNetflixベーシックの合計額に20円足せばTELASAとAmazonプライムがついてくる料金体系は、お得と言えばお得なのですが、ポイント還元のような割安感がないのはネックです。

 また、爆アゲ セレクションは、ギガホだけでなく、中容量のahamoも対象になっている点が違いとして大きいと言えるでしょう。若年層に強いahamoでも特典を受けられるのは、使い放題MAXとのセットプランしかないauとの比較では強みになります。逆に、爆アゲ セレクションはあくまでポイント還元で、料金に対する割引はありません。選択肢も、auの○○パックと比べると、やや少なめ。現状では音楽配信サービスなども含まれていません。こうした一長一短は、2社のサービスの“芸風の違い”と言うこともできそうです。

今後、音楽やゲームもラインナップに加えていくというが、現状では映像中心の爆アゲ セレクション
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya