石野純也の「スマホとお金」

「povo2.0」の新サービス「スマホギガトレード」、中古の下取りとどちらがお得か比べてみた

 あたかも買い物をしたときに付与されるポイントのように、「ギガ」がもらえた「povo2.0」。見方を変えると、これは 一種の「ギガ経済圏」とも言える でしょう。ポイントの代わりに、データ容量で来店や購入などのインセンティブを提供し、経済を循環させているからです。そんなpovo2.0から、新たなギガ経済圏とも呼べるサービスが登場しました。

 それが、「スマホギガトレード」です。このサービスがおもしろいのは、 下取りに出したスマホの対価を、ギガとしてユーザーに付与する ところにあります。お金やポイント、さらには値引きなどではない点が「ギガ活」を提供しているpovo2.0らしさと言えるのではないでしょうか。今回は、このスマホギガトレードを解説していきます。

SNSデータ使い放題トッピングなど、特徴的な期間限定トッピングをさまざまな形で投入しているKDDIのpovo2.0。この発表の翌日、スマホギガトレードが開始された

使い終わったスマホをデータ容量に変える“ギガ経済圏”的な取り組み

 スマホギガトレードは、いわゆる下取りサービス。ユーザーは、使い終わったスマホを下取りに出し、その対価を受け取ります。一般的な下取りとの違いは、その名の通り、スマホがギガに変わること。ユーザーは、査定に基づいたデータ容量のトレードコードを受け取ることができます。使い終わったスマホを 新しいスマホの値引きに使うのではなく、ギガに変える点に新しさがあります

 うたい文句は「最大640GB」。そんなにデータ通信しないよ……と思われるかもしれませんが、この容量はあくまで最大値で、かつ有効期限も3年(1095日間)と長期に渡って利用できます。下取りに出したスマホによっては、3年間、ほぼほぼ無料でデータ通信できるということです。

スマホギガトレードは、使わなくなったスマホをお金ではなくギガに交換するサービス

 3年で640GBと言っても少々イメージがつかみにくいかもしれませんが、均等に使った場合、1年間のデータ容量は約213GB。さらにこれを12で割ると、1カ月あたりのデータ容量が約17.8GBであることが分かります。20GBプランよりもやや少なめの、いわゆる中容量プラン相当のギガが付与されるというわけです。この試算はあくまで均等に使った場合の話。実際には640GBをまとめてもらえるため、極端な話、1カ月で使い切ることもできます。

 ただし、640GBものギガが付与されるのは、あくまで一部のケース。povo2.0では、買い取り金額ごとに還元するギガの容量を公表しており、これを見ると、その額が8万3701円~8万4480円相当だったときに限定されることが分かります。これを満たそうとすると、比較的新しい端末を下取りに出す必要があります。たとえば、iPhoneの場合、21年に発売された「iPhone 13 Pro Max」の1TB版が640GBに該当します。

povo2.0のサイトでは、各端末が何GBになるのかを調べられる。640GBになるのは、iPhone 13 Pro Maxの1TB版

 一方で、同じiPhone 13 Pro Maxでも、512GB版は580GB、256GB版は540GB、128GB版は500GBと、ストレージの容量に応じてもらえるギガが少なくなります。これは、ストレージ容量が大きいものほど、買い取り金額が高いからです。

同じiPhone 13 Pro Maxでも、ストレージ容量が少ないと、付与されるギガが少なくなる

 また、トレードコードの有効期限は付与されるギガの量に応じて異なります。たとえば、上記の 640GBや500GBは有効期限が3年間なのですが、320GBは2年間、160GBは1年間で、80GBは180日間 と短くなっていきます。40GBと20GBは、いずれも90日間です。付与されるギガの大きさに応じて、利用期間が長くなっていくというわけです。

買い取り価格ごとのデータ容量。実際には7段階ではなく、もっと細かくデータ容量が設定されている。基本的に、データ容量が多いものほど有効期限は長くなる

最新モデルの場合、中古店に下取りに出した方がいいケースも

 仕組みとしておもしろい「スマホギガトレード」ですが、当然ながら、povo2.0はトッピングを直接クレジットカードで購入することができます。「スマホギガトレード」のかわりに、端末を街中の中古店に下取りに出し、そのお金を使ってトッピングを買ってもいいと言えるでしょう。まさに、金は天下の回り物です。中古店から受け取ったお金を銀行口座に入れ、デビットカードで決済すれば、ほぼ同じようなことができてしまいます。スマホを直接ギガに変えるとなると、それなりのお得感も必要です。

 では、 一般的な中古の下取りと比べたとき、スマホギガトレードでもらえるギガはどの程度多いのでしょうか 。いくつかの代表的な端末と中古店が公開している下取り価格を比較しながら、それをチェックしてみました。まずは、先に挙げた「iPhone 13 Pro Max」の中から、256GB版をピックアップしてみます。この端末をスマホギガトレードに出すと、3年間有効な540GBが付与されます。

21年に発売された「iPhone 13 Pro Max」(右)。まだ比較的新しいこともあり、買い取り価格は高めだ

 これに対し、ある中古店は、同モデルの中古品に12万1000円の買い取り上限価格をつけています。別の中古店でも、買い取り価格の上限は12万2200円。小さな傷があり、減額されたとしても、大きな破損がなければ10万円以上の買い取り価格がつくことが予想できます。一方で、povo2.0のスマホギガトレードでは、540GB、7万620円相当のギガしかもらえません。

 仮に中古店の下取り価格が10万円だったとすると、有効期限が180日間の150GBトッピングだけでも、7回購入できます。トータルでのデータ容量は1050GB。スマホギガトレードの倍近いギガを購入できる計算になります。1TBに近いデータ容量が買えるというのは、なかなか衝撃的ではありますが、それだけ「iPhone 13 Pro Max」の下取り価格が高いと言えるでしょう。この場合、あえてスマホギガトレードの仕組みを使う必要性は薄くなります。

当然ながらトッピングはクレジットカードで購入可能。中古店に下取りに出し、受け取ったお金で購入した方が、直接ギガをもらうよりもお得になるケースがある

 次に、もう少し古いiPhoneを見ていきましょう。2018年に発売された、「iPhone XR」の128GBをチェックしてみました。販売開始から4年半が経過している端末のため、そろそろ機種変更を考えている人も多いはずです。このモデルを、スマホギガトレードで下取りに出すと、100GBが付与されるようです。

iPhone XRは100GB。状態にもよるが、こちらも、中古店の下取りの方が高い傾向がある

 一方で、中古店の買い取り価格上限は、SIMロック解除済みの場合で2万3000円~2万4000円ほど。傷などの減額を考慮すると、1万8000円程度まで下がることもあります。この1万8000円でトッピングを購入しようとすると、150GBトッピングが1回と20GBトッピングが1回、さらに3GBトッピングが2回ぶんになり、総容量は176GB。ここでも、やはり中古店に下取りに出した方がお得になります。ただし、先ほどの「iPhone 13 Pro Max」と比べると、ギガの差分が小さくなっています。この傾向を見る限り、古いモデルの方がお得になる可能性はありそうです。

古いモデルは下取り価格以上になるケースも、お得な端末を見極めるべし

 あくまで一般論ですが、iPhoneはグローバルにほぼ同一のモデルが展開されていることもあり、販路が広く、ニーズも根強いため、下取り価格が高いと言われています。これに対し、Android、特に国内で販売されるそれは、日本向けのカスタマイズが入っているぶん、グローバルでの需要が低下してしまうため、下取り価格は低くなる傾向にあります。このようなモデルで比較した場合、どうなるでしょうか。

 そこで、サムスン電子の「Galaxy S10」で付与されるギガをチェックしてみました。サイトによると、最大でもらえるギガは120GBとのことです。対する中古店の買い取り上限額は、SIMロックありの場合で2万2000円前後。傷ありだと、2万円を下回ることもあります。ここでは、20%減額だと仮定し、下取り額を1万7600円としてみました。この金額で購入できるのは、150GBトッピング1回です。

Galaxy S10は120GB。Androidでも、比較的新しい高機能モデルは、下取りの方がいいケースがある

 ただし、150GBトッピング購入後も4620円ほど余るため、20GBトッピング1回と、3GBトッピング1回も購入可能。さらに、1GBトッピングも2回購入でき、トータルのデータ容量は175GBになります。ここでもやはり、中古店に下取りに出したあと、自らトッピングを購入した方がお得になることが分かります。

 ところが、もっと古い端末だと話が変わってきます。「Galaxy S10」よりさらに2年さかのぼった「Galaxy S8」を例にしてみましょう。こちらは、SIMロックありの場合、買い取り上限額は6000円前後。減額ありだとすると、4000円程度まで下がることもあります。4000円で購入できるのは、20GBトッピングが1回と3GBトッピングが1回。合計しても、23GBにしかなりません。対するスマホギガトレードで付与されるギガは60GB。 買い取り価格よりも、お得になる ことが分かります。

Galaxy S8は60GB。買い取り価格が比較的安めの端末は、スマホギガトレードの方がもらえるギガが多くなる傾向がありそうだ

 また、楽天モバイルのオリジナルモデルである「Rakuten Mini」にも、20GBというギガがつきます。「Rakuten Mini」の買い取り価格は高くても3000円。傷があると、2000円以下に下がることもあります。2000円だと、3GBトッピングを2回しか購入できません。スマホギガトレードに出せば20GBですから、その差は大きいと言えるでしょう。

 こうした傾向を見る限り、新しい高機能モデルよりも、古くてあまり下取り価格がつきにくい端末の方が、ギガを相場より多くもらえる可能性があると言えそうです。

対応周波数の間違いなどで、すったもんだがあった「Rakuten Mini」。この端末も下取り対象で、20GBがもらえる。中古店に売却するよりお得だ

 その意味で、この仕組みはどちらかと言えば、タンスの中に眠っていた古い端末を下取りに出すモチベーションになると可能性があります。比較的新しめの端末を定期的に買い替えている人ではなく、長く1台を使ったあと、povo2.0に乗り換えるといった場合にも重宝しそうな仕組みです。通信費を安く抑えるための選択肢として、中古店での下取り価格と見比べながら、利用を検討することをお勧めします。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya