本日の一品

3年ぶりにリニューアルした「クリーンノート Kaite2S」を手に入れた

初代機から3年経って後続機種のKaite2Sの大きい方のA4サイズを手に入れた

 文具メーカー「プラス」が発売する“磁性体メモ”と呼ばれるジャンルの商品がある。紙のメモからデジタルメモまで、メモ大好き人間の筆者は3年ほど前にその第1号である「クリーンノート Kaite(カイテ)」という商品を買った。

3年前にはKaite初代機のA4サイズモデルとB5サイズモデルの両方を買った


 「クリーンノート Kaite」は専用ペンで自由に描けて、消しても消しカスが出なくて繰り返し使え、インク切れもない。良いことずくめなのに加えて、書き心地も良いというのが第1号機の発表当時からの宣伝コピーだった。それは今も変わっていない。

 製品のメカニズムは極めてシンプルなモノだ。ライトグレーの薄い磁性シートの内部には直径100~300μmのマイクロカプセルが封入されている。さらにマイクロカプセルの中には微細な鉄粉が数多く詰まっている。

 薄い磁性シートの上を先端が磁石で作られた専用の筆記ペンでなぞると、マイクロカプセル内の黒くて微細な鉄粉が、ペン先の磁石に引きつけられて表面側に移動する。その結果、表面から見ると微細な黒いドットが連続した筆跡となって見える仕組みだ。

 従来からある、磁石ペンで細かな鉄粉を吸い上げて子供が絵を描くお絵描き磁石ボードと基本原理は同じだ。より細かい多数のマイクロカプセルを磁性シートの中に配置することにより、鮮明で滑らかで細かい筆記線を表現することを実現した、面白い商品だ。

 初代の登場から3年後の昨年秋に登場した「クリーンノート Kaite2S」は、その性能をリファインして、ペンの形状を自然な人が持ちやすく使いよい形状に改良したモノだ。従来のペンはクリスタル軸でペン先に三角形の透明ディスクが付属した細字(0.5~0.6mm)と反対側には“部分”イレーザー兼用の白いキャップを被った中字ペン(0.8~0.9mm)が隠されていた。

今回購入したKaite2S A4サイズ(右)と専用フェルトケース(左)Kaite2Sの外形はA4サイズH297×W211×D3mm 有効筆記面積は253mm×206mmと15%ほど小さい
初代モデルはタブレットスタイラスと似た形状のクリスタル系のペンだった
今回の万年筆系ペン(中央)と専用イレーサー(上)キャップ(部分消しゴム)

 Kaite2S付属の新しいペンはペン先が万年筆型でオレンジ色のラインを上に向けて筆記することでペン先の磁石が筆記面に最適な角度で接するよう考えられたモノだ。今回は0.5mmの細字だけとなった。指先でつまむペン軸は三角軸でホールド性能は抜群だ。キャップが消しゴムの役目をするのは前作と同様だ。

今回の付属ペンはグリップ性能も良く見た目もごく普通の筆記具スタイル。軽量7g
万年筆のニブの様な特徴的なデザイン。小さな丸い磁石が見える

 昨今のICT系ステーショナリー世界ではレガシーな紙のメモに加えてKaite2Sのようなアナデジ系“手書きボード”の市場が活況を呈している。代表的な商品は「Boogieboard」だが多くのBoogieboardはボールド(太字)文字をコントラスト良く描けるのが特徴だ。Boogieboardの仲間にも細かな小さな文字を綺麗に描ける商品もたまに見かけるが数は少なくなかなか貴重な存在だ。

筆記文字のコントラストは優位だが細かな文字の不得手なBoogieboard。ある程度の細かな文字には対応出来そうだがコントラストが甘いKaite2S

 一方、今回ご紹介する電池不要で磁性シートだけを利用したKaite2Sの仲間はマイクロカプセルや磁石のペン先の改良で細かな文字も描けるがコントラスト比は従来商品も今回の商品もそれほど大きくは変わらず薄いグレーのシートに少し濃いグレーで文字を筆記する感覚で視認性が高いとは言えない。

 初代のKaiteが既に手元に無いので新旧比較はできないが、今回のKaite2Sも実際に付属のペンで筆記してしばらく(数秒~10秒程)すると最初に描いた時点より文字や筆記線の色が薄くなってゆく。実際に文字を描いた上にジグザグ線を描いてみたらジグザク線は以前書いた文字より遥かに濃い色で表示されている。しかしこのジグザグ線もあと数秒したら文字と同じように少し薄くなった。

筆者が思うKaite2Sの最大の欠点は筆記後数秒~10秒くらいで筆記した文字や線が理由は不明だが薄く変化することだ。文字は線を引く少し前に書いたもの。線を引きながらスマホで撮影してみた

 Kaite2Sに描いたアナログデータをスマホ上で動作する専用アプリ“Kaite”を使用してデジタイズできることは従来モデルと同様だ。今回筆者はメインスマホである「Pixel 6 Pro」にGoogle Playからダウンロードして使ってみた。もちろんiOSにも対応している。

 アプリを導入したら、昨今のようにアカウント登録なんて面倒な手続きはなしで即スタートできるのが小気味よい。スマホカメラを筆記済みのKaite2Sの方向に向けると筆記面を自動認識し必要な補正を行いキャプチャして結果を画面表示してくれる。結果のデータに文字や線などの追加やレタッチも可能だ。

従来と同じ専用アプリ“Kaite”をダウンロード、導入したスマホでKaite2Sに筆記した画像をカメラスキャンしてスマホに保存したりクラウドサービスやSNSで共有できる

 もちろんデータをスマホに保存したりクラウドサービスにアップロードして仲間と共有することやSNSにアップロードすることも簡単だ。今回はDropboxとLINEでの手書きデジタル化データの共有をやってみたが極めて簡単だった。手書きデータをSNSやクラウドサービスで共有する方法にはさまざまなものが存在するがKaite2Sもその手段の一つとして使えそうだ。

 昨今はファックスと並んで印刷出力の価値は以前ほどではないが、自宅やオフィスにプリンターを所有している人なら共有メニューからプリンターを選択することでKaite2Sに描いた手書きデータを印刷出力することも可能だ。専用アプリでデジタイズした後の画面上の表示よりコントラストもはっきりしていて使い勝手は意外に良さそうだ。

もちろん共有機能でプリント出力も可能だ。画面で見るよりコントラストはグッドだ

 今回Kaite2Sを購入する時に“ぴったり収納! しっかり保護!”が宣伝文句のKaite専用フェルトケースも同時に手に入れてみた。どうも商品のウリは「落下防止」とあるように、消しゴムボックスの側面に差し込んで固定したはずのペンのうっかり落下防止らしいが、ペンはしっかりカチッと音がする奥まで挿せばロックがかかり簡単には落下しそうになかった。

専用ペンの落下防止が目的だと思うが筆者のケースではそんなに落下紛失の雰囲気は無い。デザイン的に残念な方向に向かっているのは惜しい蛇足ゴムだ

 フラットなゴム紐のストラップは何度か付けたり外したりしている内にゴムがヨレヨレと伸びてくるのが簡単に想像できる。せっかく余計なモノが無いスッキリとしたデザインのフェルトケースなのにゴム紐ストラップの斜め掛けがKaite2Sのスッキリしたデザインに比較してあまりにもノーセンスで蛇足に思えてしまった。

 Kaite2Sは初代の発売から3年後に登場したリニューアル商品だが、現在では同類のデジタイズ可能な筆記系アイテムの世界は選択の幅が多くどれか一つを選ぶには使う側に明快な使用目的が必要だ。昨今では従来のごく普通のリーガルパッドにボールペンで記述してもDropboxやOneNoteのスキャン機能を活用すれば全く同じことができてしまう。

手描きデジタイズデバイスの世界は“レガシーな紙とペン”の世界からデジタル技術だけでまとめ上げた最新の製品まで玉石混交の世界だ。ユーザの目的とデバイスの長所をマッチングして最適のデバイスを選びたいものだ

 また“永久に使える”ということをテーマに考えるなら、元祖手書きデジタル化ボードであるBoogieboardも1~2年に1度のバッテリー交換さえ気にならなければ、スマホによるスキャンやクラウド共有など、ほぼ同じことが簡単にできてしまう。

 Kaite2Sの最大の特長はその薄さ(3mm)と軽量性(約230g:ペン&イレーザー含む)だ。専用ペンもたった7gと全てが軽量。軽量さを活かしいつでもどこでもスマホによるスキャンと保存、クラウドアップロード共有するオペレーションが目的なら十分価値を発揮しそうだ。ただ筆跡の濃淡の感じ方には個人差がありそうなので心配な人は購入前に実機で確かめた方が良いだろう。

製品名発売元実売価格
Kaite2S KA-202G-JP2プラス4620円
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