本日の一品

秋葉原バックストリートで600円のペーパーウオッチを買った

 コロナ禍の時代、衛生観念の変化と、必要に迫られた人々の考え方の急激な変化は、テクノロジーの進化以上にキャッシュレスワールドの後押しをしているようだ。ダイエットな生活や働き方が求められる今、数多くのキーワードが語られる中、一つのキーワードは”ライトウェイト”(軽い)だと考えている。

 筆者が、モバイルパソコンの商品企画に携わっていた頃に、大事にしていたキーワードも”ライトウェイト”だった。そんなライトウェイトを別の世界で実現する為に、友人達と超軽量でタフで防水性能の高いTYVEK素材の鞄などもいろいろ企画し、販売している。

 筆者個人的には、鞄と同じくらい腕時計が大好きで、お堅いサラリーマンなら着用できないような、怪しげで奇をてらった超チープな腕時計も幾つかコレクションしている。今回、ご紹介するペーパーウオッチも、その仲間に入ることのできる十分な条件や資格を備えている紙の腕時計だ。

コロナ禍の昨今、惹かれるモノは超軽量なモノばかり。懲りずにペーパーウオッチをまた買った
チープな腕時計や自作の腕時計には夢と愛着がある

 過去、筆者らも何度か超軽量ながらタフなTYVEK素材を使った腕時計を考えたが、残念ながらいまだ販売には至っていない。今回ご紹介するペーパーウオッチもその発売初期には我々と同じTYVEK素材のモノだったが、昨今の商品には、TYVEKでは無く単なる防水紙が使用されているのかもしれない。それ故、パッケージなどにも具体的素材名である”TYVEK”と記述されていない商品が多い。筆者が購入した一品も同様のモノだった。

 Swatchのようなクリアな細長いパッケージに入れられて秋葉原の裏通りで平置きでたくさん販売されていた防水ペーパーウオッチは600円。

 中身を取り出すと、長方形の紙を縦に3つに山折りして作ったベルトのような形状をしている。内部にはクォーツ腕時計のメカ部分+バッテリーと複数のマグネットが仕組まれており、尾錠にピン(つく棒)は無く、ベルトを尾錠に通して折り返し、マグネットで固定する仕組みのようだ。

ペーパーウオッチはよりチープなSwatchのようなパッケージで売られている
子供がたった今、折り紙を3回山折りして作ったような曲線の無いチープさが最高だ
最初のうちは、カクカクと曲がってフレキシブルさが無いが、使っているうちに柔らかく変化してくるだろう

 時刻表示の文字盤は、表示部の少し下側中央を押すことで、現在時刻や月日を表示する。

 日時の設定は1ボタンで、長押しを交えた操作で設定する。複数のボタンによる設定が一般的な時刻調整なので、最初は多少戸惑うが、慣れれば簡単だ。

 残念ながら、LED表示の明るさが、防水紙の厚さ一枚を透過するほどのパワーが無いため、薄暗い室内や夜間は良いが、快晴の屋外では、表示ボタンを押しても、時刻表示はほとんど見えない。

晴れた日の昼間の屋外では、視認性はあまり期待できない……

 ある程度使い込んでくると、紙製のベルト部もフレキシブルに変化する可能性もあるが、新しいうちは、腕に装着しても幾つか角が立ち、綺麗に腕の外周に沿わないのが多少残念だ。

 ペーパーウオッチと言えば、10年ほど前に登場したsuck UKのモノが有名だが、こちらはTYVEK製で、ユーザー自身でいろいろなイラストやメッセージを書き込んで、自分専用のオリジナルPaper Watchを作ることが目的の商品だ。ベルトもたった1枚の薄いTYVEK素材で作られており、腕への装着感は極めてナチュラルだ。金属部品は本体のデジタル時計アセンブリー以外には無い。

 一方、今回のペーパーウオッチは、本体クォーツモジュール部分を内部に包み込むために、一部の紙が3枚折りになって分厚くなっているので、最初はかなりカサカサ、ゴワゴワした印象で、腕への装着感がフレキシブルに良変化する為には、多少の時間が必要だろう。

suck UKのTYVEK腕時計(左)と比べると、腕時計の既成概念にとらわれないペーパーウオッチもなかなかシンプルで楽しい

 超安価なペーパーウオッチや、チープカシオを代表とするチープな腕時計も、伝統的なブランド腕時計も、その腕時計にとって最も重要なことは、単なるスペックや、デザイン、価格などでは無く、その腕時計についてまわる”物語”やユーザの”思い入れ度”や”メッセージ性”なのだ。今後もチープなペーパーウオッチには期待したい。

今や腕時計の最低・最高の格差は数十万倍以上はあるが、大事なのは、物語とメッセージ性、持ち主の思い入れだ
ペーパーウオッチ
価格600円
購入元秋葉原 浜田電機