本日の一品

芯が折れない!?最強の日本式鉛筆削り器「634」(ムサシ)

鉛筆外径が7㎜、8㎜、10㎜の3種類のピッタリの穴があり。各穴には第1工程用と第2に工程用の穴が用意されている

 「こだわり」をもって物事や製品を眺めてみると、いろいろ面白い発見がある。今から約70年ほど前に葛飾区で設立した鉛筆製造の老舗である「北星鉛筆株式会社」も鉛筆や鉛筆削りに長い間、情熱を注いできた下町企業だ。

 北星鉛筆と聞いてもピンとこない人でも、「大人の鉛筆」と聞けば知っている読者諸兄も居るかもしれない。大人の鉛筆は、同社の創業60周年を記念して、同社が1954年に“削らない鉛筆”として開発した「ノーカット鉛筆」の新ブランド名だ。

 一般的には“芯ホルダー”と呼ばれるカテゴリーに属する商品だが、木軸や2㎜径の鉛筆のような芯、全体的なデザイン、専用の芯削り器など、同社独特のこだわりが”芯ホルダー”ではなく”大人の鉛筆”と命名している大きな理由かもしれない。

鉛筆削りの穴が6個も付いている風変わりな「日本式鉛筆削り634」というのを買ってしまった

 今回ご紹介するのは、木軸を削らない鉛筆も発売している同社が、鉛筆を削る際にうっかり芯を折ってしまって、実際には、芯を100%使いきれずにいる現状に注目して“削り中に芯の折れない鉛筆削り”として開発した「日本式鉛筆削り634」だ。

 同社が注目したのは、片手に鉛筆削り器、もう一方の手に鉛筆をもって、鉛筆をクルクル回転させながら削る過程だ。鉛筆削り器の鉛筆を差し込む穴の直径と鉛筆の実直径の誤差による削り時の木軸の“ブレ”が大きな原因だと突き止めたようだ。

 今回は、そんなこだわり満載の日本式鉛筆削り634を通りがかった文房具屋さんで買ってみた。日本式鉛筆削り634の同梱品は、本体である削り器と、交換刃の付いたユニット、削り器の使用開始日記入用シールの4点だ。

 毎日、鉛筆を削っている人だと、削り器の刃が古くなり削り具合が鈍化すると、すぐに分かるのかもしれないが、筆者はそれほど鉛筆のヘビーユーザーでは無いので、今までその辺りはあまり感じたことがなかった。今回は今後の検証のために使い始めた日を記入した。

交換替え刃や、刃を変えた年月日を書くシールも付属する極めて真面目な商品だ
削り器自身は刃のユニットを含めて4つのパーツから出来上がっている
最上部の蓋の側面には穴が2個しかなく、目的の鉛筆外径に合わせて取り付け角度を変える度を

 削り器本体は交換ユニットを含め、ユニット固定のフレーム、削りカス収納器、削り器の蓋の4点だ。削り器には鉛筆を挿入する6個の穴が用意されている。穴の直径は鉛筆の種類によって異なる木軸の太さである7㎜、8㎜、10㎜の3種類。

 一般的な鉛筆は直径8㎜の穴で削る。7mは眉墨やアイブロー用鉛筆、キャラクター鉛筆などが該当するそうだが、筆者はいずれも使ったことが無いので分からなかった。一方、10㎜の太いタイプはデッサン用の太い三角軸鉛筆など、筆者もいくつも持っている。

第1工程用の刃(左)、第2工程用の刃(右)の2種類がセットされている。従来の削りは第2工程用の刃だけだった感じがする

 7㎜、8m、10㎜の各軸サイズに、1の穴と2の穴という具合に穴が各2個用意されている。これは両者が削り出す結果のスタイルが異なるからだ。日本式鉛筆削り634を使う時には、この2つの穴を使って、第一工程で木軸の部分を削り、第二工程で芯を削るという“2段階削り”をすることによって、削っている最中に“芯を折らない”を実現できる仕組みだ。

 まず最初は、1の穴で、鉛筆の中心にある芯には一切触れることなく特別の位置に配置された小さな鉋(かんな)のような専用刃で皮を剥ぐように鉛筆の軸の直径を一回り小さいサイズの鉛筆にまで削る。

第1工程では、鉋(かんな)の様な特殊な刃で鉛筆の木軸を一回りスリムに削る

 続いて、2の穴を使って今度は細くなった鉛筆軸の先端部分を円錐形にもう一度削って、今度は芯を露出させ、芯先のとがり具合を見ながら、お好みの芯のとがり具合で削るのをやめることで鉛筆削りの作業を終える。

第2工程では、スリムになった木軸の先端部分を従来と同じ円錐形に削って芯先を露出させる

 この2段階削りを行う事で鉛筆削りの途中で芯を折ることなく、理想的なとがり方を実現できるのだ。

実際に数本の鉛筆を削ってみたが確かに芯は一回も折れなかった
2段ロケットみたいな鉛筆の先になったが筆記感覚は全く同じだった

 前述したように、従来の鉛筆削り器は先端に比べて削り器の丸い入り口は隙間がある為に削るときに上下・左右にブレたりすることが多い。また刃が鈍ってくると切れ味が悪くなり、つい鉛筆を削りの奥に押し込みすぎたり想定外の大きな力が加わることで、芯先の木軸が薄くなっている部分が、中心の芯を守れなくなって折れてしまう。

従来の鉛筆削りの構造
日本式鉛筆削り634の第2工程の構造

 ブレを抑え込んで上手く鉛筆を削り、とがってくると鉛筆の先端は削り器の内面の円錐形状にピッタリと合致して固定されるが、鉛筆を挿入している入り口付近(図1の赤丸部分)が支点となり、少しのブレのはずが、てこの原理で芯先に大きな力がかかり木の薄くなっている木の少し中で芯が折れてしまう。繰り返しになるが、多くの鉛筆の芯は削っている途中で折れてしまうことが多いのだ。

 繰り返しになるが、日本式鉛筆削り634は、第一工程で内蔵された2つの刃の一方を使い軸を細くし、その後の第二工程で、もう一方の刃で芯を削るという2つの工程を連続するという削り方をする。このように、2つの工程を分けることで、木軸が細くなった鉛筆の支点が先端に近づき多少のブレが生じても芯先に加わる力は減少し芯が折れる確率は低下する(図2の赤丸部分)。

 削り器本体のハードウェア的仕組みと2つの工程が統合的に機能することで、鉛筆削り作業の途中で鉛筆の芯が折れるという従来のリスクをミニマイズできる。日本式鉛筆削り634は、まさに鉛筆屋さんが考えた“鉛筆愛にこだわった鉛筆削り”なのだ。

製品名発売元購入価格
日本式鉛筆削り634北星鉛筆1296円(税込)