本日の一品
たった10㎝だけどメチャ可愛い竹のものさし
2020年5月11日 06:00
日本で著名な竹尺製造工房と言えば、滋賀県の甲賀にある岡根製作所の名前が最初にあがることが多い。今回ご紹介する「たけものさし 10cm」は、様々なプラスティック文具ジャンルの製品を開発製造販売している共栄プラスチックのORIONS定規と60年来、竹尺を製造している竹尺製造工房のコラボレーション製品だ。
古くから寸法を測る目的で使われてきた竹尺ではあるが、昨今、ものさしの素材として使われることの多い、プラスティックやステンレス、ガラス、カーボンファイバー、チタンなど、精度だけに注目すると、どうしても温度や湿度による誤差の科学的、技術的な話題に突っ込んでしまいがちだ。
しかし、たかだか10㎝くらいの長さのものさしを使って、人の眼で見て測っている限り、そして厳密には測られる側のブツも微妙に変化している限り、その誤差はほとんど無視しても全く問題ないレベルだろうと思っている。今回のたけものさしは、そんな“ものさし”という測定器としての立ち位置を少し離れて実際に手に取って指先の皮膚で直に感じて欲しい一品だ。
筆者もそうだが10㎝と聞いても、立体としてのサイズ感は意外とピンとこない。筆者愛用のスマートウオッチと比較していただくと、そのサイズ感は一目瞭然だ。いろんな街の文具店やネットを見ても、使用素材を問わず10㎝定規の種類は15㎝定規よりも圧倒的に少ないので実際に目の当たりにすることも少ない。
昨今市場にも徐々に増えつつある10㎝クラスの定規は、ものさし、あるいは定規という既成概念を離れて、素材の味や、経年変化、コンパクトなサイズから生まれる可搬性や可能性、そして楽しく、可愛く、企画者や製造者のこだわりを感じる道具としての立ち位置を打ち出そうとしている商品が多い。
素材に日本の伝統的な竹を選んだ10㎝の竹ものさしも、そこは同様だ。10㎝のたけものさしは、こだわりのある一部の人が懐かしく実用的な商品として注目しだしている30㎝の竹ものさしのリバイバル人気を背景にした実用性も備えたガジェット商品だ。
従来から、日本の伝統的な竹ものさしの特長は幾つかあるが、基本的には“ゼロスタート”(端っこがゼロで始まり余分な遊びが無い)だ。これが繰り返しものさしを当てて30㎝以上の寸法を測る時に大いに役立っている。そして5㎝刻みや10㎝刻みに“星”と呼ばれる寸法を早読みするための目安となる5個のドットを円で結んだシンボルマークが付けられている。
あとは基本的に目盛りの数値がものさし上に記されていないことだ。ゼロスタートゆえ、もし計測補助の為の数字をものさし上に均等距離に記すことを前提とすると、最初の0(ゼロ)と1の間隔が狭くなり、見た目の違和感が美しくない。
例外的に海外で作られたり販売されている竹ものさしには、星の代わりに、目安となる測定数値の記されたものも見かけることはある。しかし、日本の伝統的なゼロスタートものさしの場合には0(ゼロ)の表記は無く、もし表記がある場合はゼロスタートとなっていないのが一般的だろう。
今回の10㎝のたけものさしは、星は伝統的なイメージで焼き入れされているが、残念ながら、片側目盛りでも両側目盛りでも、伝統的な日本の竹ものさしには記されていることの無い1~9までの数字が記されている。
商品企画時に異論はあったかもしれないが、最終的には、たけものさし10㎝も、同社の別の商品である竹ものさし15㎝も数値入りになったようだ。30㎝ものさしと違い、たった10㎝のたけものさしでは、竹ものさしの最大の特長である星の配置も伝統を守れば1個だけなので、数値を記すことで商品としての“間延び感”を無くすプラス効果とも考えられる。
新しい世代の商品の使い勝手を犠牲にすることなく、どこまで伝統を反映させることができるか、過去の多くの経験から長年かけて作り上げてきた意匠を改悪しないかはなかなか厄介な問題だ。難しいことを考え出すとキリが無いが、筆者は10㎝のたけものさしを愛用の小さな手帳にブックマーク代わりに挟んで使っている。15㎝では少し邪魔な環境には10㎝はピッタリサイズだ。
竹という極めて日本的な素材だが、「機能はデザインだ!」的なロットリングやステッドラーなどの洋物筆記具との見た目の相性も抜群だ。もはや竹ものさしは日本のモノだけではなく極めてグローバルな存在になりつつあると思えてきた。
製品名 | 発売元 | 購入価格 |
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たけものさし 10cm | 共栄プラスティック | 800円(税別) |