スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

5000円程度で「スマホの小物撮影クオリティ」を格上げする方法

いまどきのiPhoneなら記事掲載用写真もシッカリ撮れるが……

現在使用中のiPhone 13 Pro Max。iPhoneシリーズ最高峰とも思える写真画質が気に入り、私用にも仕事にも使っている。

 最近の俺はWeb記事掲載用写真をiPhoneで撮ったりしている。以前はキヤノン「EOS 5Ds R」などのプロ系機材で撮っていたが、最近では「この被写体ならiPhoneでイケる」と思った場合はiPhoneで撮影。それほど、いまどきのiPhoneは画質が向上していると感じる。

 どんな感じの製品写真を撮れるのか? 実際に何枚か見てみよう。なお、以下の写真は撮影後にレタッチなどを加えている。

iPhone 11 Pro Maxで撮ったWebカメラの写真。よ〜く見ると「スマートフォンで撮ったのかな?」と気づく要素が見え隠れするが、よく見ないとわからないレベル。撮影日は2020年5月だが、iPhone 11 Pro Maxあたりから「これなら場合によってはWeb記事用写真に使えるな」と感じるようになり、その頃からiPhoneがWeb記事作成用の機材のひとつになった。
iPhone 12 Pro Maxで撮ったMac Proやキーボード。撮影日は2021年半ば。iPhone 12 Pro Maxになると、ノイズ感や色味もグッと改善された。「この被写体ならiPhoneでイケる」と思える頻度が増加した。
iPhone 13 Pro Maxで撮ったAppleデバイス各種。iPhone 13 Pro Maxではさらに画質が向上し、言われないとスマートフォンで撮った写真だということがわからないレベルの画質となることも多い。

 最近ではiPhoneやiPadで記事の原稿の下書きを(音声入力で)したり、下書き中にiPhoneで商品撮影をしたり。

 まあでも「EOS 5Ds R」で撮ることがまだまだ多く、原稿を仕上げるのはMac。

 でも近い未来、もしかしたらデスクトップPCやレンズ交換式デジカメに代わってスマートフォンやタブレットが主な仕事道具になるのかも? とかマジメに思う2022年の俺は「まさかこうなるとは」感で満タンなのであった。

 いや、写真については実際にデジタルカメラ専用機を使う機会が減りつつ、スマートフォンのカメラで済んでいるというケースも多い。たとえば先日のe-bike記事のためのロケ。e-bikeで初日の出を見に行こう的な記事である。

 この記事内の多くの写真はスマートフォンで撮っているが、日の出の写真を撮影していて「あら〜いまどきのスマートフォンってやっぱり凄い〜」と思い知らされた。

ニコンのコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX P950」で撮った日の出。じつは手前に道路があり、道路上には自転車もあって、非常に強い補助ライトで自転車を照らしている。「日の出とe-bikeを同時に撮りたいゼ!!!」と頑張って補助ライトを持参したが、太陽光と補助ライトの光量差があり過ぎて、うまく写らず。
ほぼ同じ光景をiPhone 13 Pro Maxで撮ったら、「そうそうこう写ってほしかったのだ」という写真になった。コンピュテーションフォトグラフィー、すごっ!!!

 スマートフォンのカメラがどんどんデジタルカメラ専用機の活躍領域に入り込んでいる感じ。まあでもソレはソレで大いにアリですな。写真撮影の可能性が広がっているわけだし。

 とか思うと同時に「iPhone 13 Pro Maxでの商品撮影をもっと高画質化してゆきたい!!!」とも思う俺。そしてここ数カ月、iPhone 13 Pro Maxでの商品撮影の高画質化にチャレンジしているのであった。

10インチのLEDリングライトと少々の機材が、現在の俺的結論

 商品撮影がけっこー好きだったりする俺の場合、より高画質な撮影結果が得られたりするとヒジョーに嬉しい。そんな趣味性もあり、あれこれと高画質化にチャレンジした。主にはライティング(被写体へ光を当てること)の最適化である。

左は天井の照明だけで撮った写真、右は天井照明に加えて補助光も使ってライティングを頑張った写真。どちらの写真も、元写真をなるべく美しくすべくレタッチ済み。単に撮った写真だと美しさアップの限界がすぐ訪れるが、ライティングを行ったほうは質感や色味やディテイルの精細さをよりよく引き出すことができる。

 ちなみに撮影場所は仕事場で、仕事場の天井照明は長い棒状LEDライトの光を天井に当てている間接照明だ。部屋全体に光がまわり、影の出かたも弱めという、もともと撮影には適した環境である。だが、上の写真のように改めてライティングを行うと、撮れる写真が全然違ってくるのであった。

 ということで、ライティングにはかなり凝った。デスクライトを複数使ったり、棒状LEDライトで被写体を囲むようにして照らしたり。だが、凝れば凝るほど、結局は「あーっ面倒!」ということに。

 まあ、撮影準備に時間がかかって、せっかくの「iPhoneでの手軽な撮影」に面倒が絡みついてくるわけですな。iPhoneで撮るためのライティングという手間もあり、早晩「これならEOS 5Ds Rといつものライティング機材を使って撮ったほうが手っ取り早いな」と思うに至るのであった。

 でもまだアレを試してなかったな、と思い当たる方法が。大きめのLEDリングライトを使ってのライティングだ。3年ほど前に試してなかなかイイ感じだったが、画質の良いiPhone 13 Pro Maxと大きめのLEDリングライトを組み合わせたら非常にイイのでは?

ライブ配信などでよく使われるLEDリングライトとiPhone 13 Pro Maxを組み合わせてテスト撮影している様子。
その撮影結果。キーボード全体を比較的に均等に照らせた。キーボードに付着した汚れやゴミまでしっかり写っていて、結果オーライ♪

 比較的に小さな被写体限定の撮影方法ではあるが、ライティングの光源とiPhoneが合体しており、iPhoneのカメラが向いた方向にいつも均等に光が当たる。ので、ライティングの手間がほぼない。また、LEDリングライトは直径10インチと大きめなので、被写体へ当たる光がムラになりにくいし、違和感のある影も出にくい。

 その後もいろいろな小物を上記LEDリングライトとiPhoneで撮ってみたが、いや〜お手軽。iPhone 13 Pro Maxだと、ある程度光量不足でも画質的に破綻しにくく、以前にLEDリングライト&スマートフォンで撮影したときよりずっといい結果が出まくった。そしてこの撮影方法が、現在の俺的結論となった。

 そっか。これで良かったのか。遠回りしてしまった。最初に試せばよかったゼ!!!

5000円くらいで作れるiPhoneブツ撮りシステム

 さて、俺的結論となった機材っていうか撮影システムをご紹介。使っているのは、3000円前後で買えるLEDリングライト(直径約10インチ)、1000円前後で買えるマジックアーム、1000円くらいで買えるスマートフォンホルダーだ。以下、どんな撮影システムなのか写真とともに見ていこう。

市販のLEDリングライト(10インチ)に、アームやホルダーを追加し、iPhoneをセットできるようにしている。撮影時はこのまま手に持って被写体に向けたり、別途三脚などを使って固定(自立)させて撮影している。
このLEDリングライトはUSBが電源で、光源色変更や光量調節にも対応。10インチ程度の大きさのLEDリングライトは3000円前後で購入できる。モノによっては1000円台のものも。写真のLEDリングライトも3000円くらいだったと思うが、どこで買ったどの製品かを失念してしまった。すまんス。
LEDリングライトをiPhone撮影用として選ぶにあたり、留意したのは三脚ネジ穴。LEDリングライトを三脚などに固定するネジ穴と、LEDリングライトにアームおよびiPhoneホルダーを装着するための2つのネジ穴だ。これらがないと、LEDリングライトの固定やLEDリングライトへのiPhoneの装着がかな〜り面倒になるのであった。
LEDリングライトにiPhoneを装着する際、LEDリングライトの中央にiPhoneのカメラレンズが来るように調整したい。中央にレンズがあると影や写り込みを最小限に抑えられるからだ。そのために、こういった小さなアーム(マジックアームなどの名称で市販されている)やスマートフォンホルダー(三脚ネジ穴付き)を使用している。アームやホルダーはそれぞれ1000円前後で手に入る(写真のものはマンフロット製ホルダーで1500円くらい)。写真のアームはAmazonのコレで、918円だった。
LEDリングライトにアームとホルダーを装着した様子。
iPhoneを装着した様子。アームには関節が2つあり、ホルダー上でiPhoneを少しズラすこともできるので、iPhoneのカメラレンズがLEDリングライト中央にくるように調節できる。

 撮影時はLEDリングライトのアームが付いている箇所の外側などを持つ。まあLEDリングライトのLED部分を握っちゃっても大丈夫だが。写り込みや影を抑えて後のレタッチ処理を少なくできるという点で、iPhoneのカメラレンズがなるべくLEDリングライト中央にくるようにセットするほうが重要だと思う。

手間なしで被写体を均等に照らせるのが便利

 上記の撮影システムっていうか撮影道具を使い、実際に小物を撮影した写真を見ていこう。写真はそれぞれ、LEDライトオフで撮影(リサイズのみ)、LEDライトオンで撮影(リサイズのみ)、LEDライトオンで撮ったうえにキレイに見えるようレタッチしたもの。

天井の照明でマウスを撮影。
LEDリングライトの撮影道具を使ってマウスを撮影。マウス全体が照らされ、下部の影も薄くなった。
さらにレタッチしたもの。
天井照明でミニ三脚を撮影。
LEDリングライトの撮影道具を使って撮影。三脚の細部形状が浮かび上がる。
さらにレタッチしたもの。
天井照明でiPhone 13 miniを撮影。
LEDリングライトの撮影道具を使って撮影。天井照明の写り込みを和らげられた。
レタッチしたもの。
天井照明でサングラスを撮影。
LEDリングライトの撮影道具を使って撮影。サングラス下部の影が薄らぎ、ピントが合った手前側の形状がより強調された。
それをレタッチしたもの。
天井照明で工具を撮影。
LEDリングライトの撮影道具を使って撮影。工具の細部までしっかり見えるようになった。
それをレタッチしたもの。

 前述のとおり、これらの写真を撮影した場所は仕事場で、仕事場の天井照明は長い棒状LEDライトの光を天井に当てている間接照明。なので、LEDリングライトの撮影道具を使わなくても、天井に1つだけ照明があるような一般的な部屋よりはかなりキレイに写真が撮れる。だがLEDリングライトの撮影道具を使うと上のとおり、大きく異なる見え方で撮れるようになる。

 撮影も簡単で、LEDリングライトの電源を入れ、被写体の見せたい部分を中心に光がうまく当たるようにしてシャッターを切るだけ。照明器具とカメラ(スマートフォン)を別々に操作しなくても、だ〜いたいキレイなライティングになり、非常にラクなのだ。

+αの小道具で写真をよりキレイ&確実に

 LEDリングライトの撮影道具を、三脚などに固定して使うと、あれこれと新しいメリットが生まれる。たとえばカメラクリップ。

市販のカメラクリップ。クリップに自由雲台が付いている撮影道具で、板やパイプにカメラを固定できる。
カメラクリップにLEDリングライトの撮影道具を装着した様子。
机上の定点撮影ができるようになる。被写体を次々と入れ替えて効率よく撮影可能。また、カメラ(スマートフォン)が固定されるので手ブレが抑えられる。撮影後に写真を見てみたら「アーッ!!! 手ブレしてる!!! 撮り直しーっ!!!」みたいなミスが抑えられるわけですな。

 それから、場合によってはトレース台が効果を発揮することがある。トレース台は光る机のようなもので、線画などを文字通りトレース(描き写す)ときに使う道具。ライトテーブルとも呼ばれる。

マウスが乗っているのがトレース台。A4サイズのLEDトレース台で、USB電源で光る。Amazonのコレで2280円だった。
トレース台のLEDをオフにした状態。
トレース台のLEDをオンにした状態。マウス下部の影がすっきりと消えている。被写体の下に落ちる影が気になる、無くしたいという場合、LEDトレース台が活躍する。

 てな感じのiPhoneによる商品撮影。まあiPhoneに限らず幅広くスマートフォンでの撮影に応用できるモノと方法であり、コンパクトデジタルカメラにも使える方法だ。もっとキレイに小物撮影したい〜(けど面倒なのはイヤ)と考えているなら、ぜひお試しあれ♪

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。