法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

プラチナバンドLTEで攻勢をかけるau 2013年冬モデル

 10月2日、auは2013年冬商戦へ向けた新ラインナップと新サービスの発表会を開催した。9月20日から発売されたiPhone 5s/5cの販売競争では800MHz帯のプラチナバンドでの4G LTEネットワーク展開の効果もあって、好調ぶりが伝えられていたが、その勢いを駆って、今回発表する冬モデルで一気に攻勢を強めたい構えだ。発表会の詳細については、本誌のレポート記事を参照していただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方と各製品の印象などについて、解説しよう。

プラチナバンドLTEで攻勢

 携帯電話にとって、もっとも重要なことと言えば、やはり、「つながること」だ。前回、取り上げたソフトバンクは言うに及ばず、自らのネットワークの「つながりやすさ」について、各社とも積極的にアピールを続けている。「電波は水物」と言われるだけに、なかなか一概にどこがつながりやすいかという評価は簡単にできないが、それでも確定的な要素を積み上げた条件だけで比較すると、現在のauには大きなアドバンテージがあると言われる。それは言うまでもなく、「プラチナバンド」と呼ばれる800MHz帯を利用した「au 4G LTEサービス」のネットワークが着実に拡大し、ユーザーにも一定の評価を得つつあるからだ。

auは800MHz帯を利用した「au 4G LTE」をアピールする

 今から約1年前、auは先行するNTTドコモに2年遅れながら、ようやくLTE方式を採用した高速データ通信サービス「au 4G LTE」をスタートさせた。サービス開始に合わせ、au 4G LTE対応端末10機種を発表し、ほぼ全機種を一斉に発売するなど、かなりの意気込みを見せていた。しかし、その一方で、iPhone 5の4G LTEエリアを広告で誤表記をしたり、ネットワーク障害を起こしてしまうなど、残念ながら、いくつかトラブルも散見された。KDDIの田中孝司代表取締役社長は、「4G LTEサービスを垂直起ち上げ」と力強く語っていたが、その後の状況を見る限り、やはり、急速なサービス起ち上げであったがゆえの歪みが出てしまった感は否めない。

 あれから1年が経過し、さまざまなトラブルも落ち着き、ネットワークもかなり充実してきたこともあり、auとしてはいよいよ本格的にau 4G LTEサービスによる攻勢を強める時期を迎えつつある。なかでもiPhoneについては、iPhone 5s/5cがプラチナバンドでのLTEサービスに対応したこともあり、かなり積極的にプロモーションをかけている印象だ。今回はNTTドコモがiPhone導入を決めたことで、これまでNTTドコモから転出していたユーザーがauやソフトバンクに戻るのではないかという見方もあったが、10月7日に発表されたTCAの集計を見る限り、iPhoneについてはわずか10日間の集計ではあるものの、auのアドバンテージは続いているように見受けられる。

 そして、4G LTEで攻勢をかけるauにとって、次なる武器となるのがUQコミュニケーションズが展開する「WiMAX2+」だ。WiMAX2+は「もうひとつのLTE」として注目を集める「TD-LTE」との互換性を確保し通信規格で、今年7月にUQコミュニケーションズが追加割り当てを受けた2.5GHz帯を使い、受信時最大110Mbpsという通信速度を実現するサービスだ。9月30日に催されたUQコミュニケーションズの発表会では、KDDIの田中社長が登壇し、今回の発表会の前振りをする一方、WiMAX2+対応製品の初号機として、au 4G LTEと組み合わせたモバイルWi-Fiルーターが発表されるなど、密接な連携を見せている。後述するが、まったく同型のモバイルWi-Fiルーターは今回の発表会でも発表され、auのラインナップにも加わることになった。

モバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi WALKER WiMAX2+」(HWD14)

 こうした動きを受ける形で迎えたのが今回の2013年冬モデルの発表会ということになるわけだが、ここで少し注意したいのがNTTドコモやソフトバンクとの発表会の対象期間の違いだ。ソフトバンクとNTTドコモの発表は、いずれも冬商戦と春商戦を対象にしたもので、ソフトバンクが6機種、NTTドコモが18機種(いずれも回線契約を伴う商品の合計)を発表している。これに対し、今回のauは冬商戦のみを対象にした発表で、スマートフォン6機種、フィーチャーフォン1機種(他に発表済みを1機種)、タブレット、モバイルWi-Fiルーター、フォトフレーム、GPS端末を1機種ずつの合計11機種を発表している。数が多ければいいというわけでもないが、スマートフォンだけでなく、フィーチャーフォンやタブレットなど、他のジャンルの端末もきっちりと揃えるなど、冬商戦へ向けた体制を万全に整えている。ちなみに、今回の発表会のプレゼンテーションでは、春商戦へ向けたモデルを別途、用意している旨を明らかにしており、さらに攻勢を強めていこうという姿勢が強く感じられる。

豊富なラインアップと新しい料金割引サービス

 au 4G LTEネットワークを強化し、さらに攻勢を強めようというauだが、端末のラインナップについてもかなり注目点が多い。

 まず、最近の国内でのスマートフォンの注目すべき点として、iPhoneをはじめとするグローバル市場で強いモデルが一定の支持を集める一方、国内メーカーはNECカシオやパナソニックのスマートフォン事業撤退により、メーカーの数が少なくなり、結果的に日本仕様を採用したモデルが減りつつある。特にauの場合、元々CDMA方式を採用していることもあり、なかなかグローバルメーカーが積極的に参入しにくい状況にあった。

 そんな中、今回、auはグローバル市場でも注目を集めているサムスン製の最新モデル「GALAXY Note 3」、ソニーモバイル製の最新モデル「Xperia Z1」をいち早くラインナップに加えてきた。改めて説明するまでもないが、この2機種は9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2013で発表されたばかりのモデルであり、それらがおサイフケータイやワンセグなどの日本仕様もしっかりとサポートした状態で登場することになる。発表会の日程の関係上、NTTドコモよりも先に国内市場への発表を明らかにしたことになるが、これらのモデルがNTTドコモ向けと変わらないタイミングで、auユーザーにも展開されたことは、ユーザーにとってもうれしいところだろう。

 また、ソニー以外の国内勢としては、シャープ、富士通、京セラがそれぞれにスマートフォンを供給し、富士通はタブレット、京セラはフィーチャーフォンやGPS端末も供給することになった。これらもラインアップの展開として見ると、スマートフォンはNTTドコモと同レベルになり、ソフトバンクが堅実に販売を伸ばしているGPS端末についてもしっかりとキャッチアップしてきた格好だ。

 さらに、オプションについてもNTTドコモでは1色しかラインアップされない注目の「GALAXY Gear」をau +1 Collectionの扱いで、5色を揃えたり、S View Coverも全7色を扱うなど、ユーザーがスマートフォンを楽しめる環境を整えている。

 そして、今回の発表で、もっともauがプッシュしたのがオリジナルモデルの「isai」だ。メーカーはLGエレクトロニクスで、ハードウェアとしては8月に米国で発表されたG2をベースにしているが、かつてのau design projectやiidaを彷彿させるデザイン端末で、auとLGエレクトロニクスがしっかりと作り込んだモデルとして仕上げられている。

 逆に、今回の発表でラインアップに存在しなかったメーカーもある。それはHTCやパンテックのことだ。なかでもHTCについては、これまでauとしてもかなり積極的に関わりを持ち、HTCのイベントにKDDIの田中社長が登場するなどの蜜月ぶりを見せていたが、田中社長は発表会後の囲み取材で「今回はちょっとなかっただけで、これで終わりにはなりません」と答えていた。HTCは国内の販売だけでなく、海外でもさまざまなニュースが伝えられており、今後、日本市場にどのように関わっていくのかも含め、注目が集まる。パンテックについても同様で、海外では身売りの噂などがニュースで伝えられており、au向けの簡単ケータイなどのモデルがどのようになるのかが気になるところだ。

 一方、料金面では新しい取り組みとして、「auスマートバリュー mine」が発表された。auひかりや各地のFTTHサービス、JCOMのCATVインターネットとの組み合わせで、スマートフォンの月々の利用料金を割り引くauスマートバリューは、サービス開始以来、着実に契約数を伸ばし続け、今やKDDIの人気サービスの一つとして定着しつつあるが、単身世帯には固定回線を契約しない人も多く、このサービスの恩恵に預かれない人もいる。なかでも女性の単身世帯はパソコンの利用率が高いにも関わらず、固定回線を契約せず、モバイルWi-Fiルーターを契約するユーザーが24%もいるという。

 こうした状況を踏まえ、今回発表されたのが単身世帯が契約できる「auスマートバリュー mine」で、スマートフォンとモバイルWi-Fiルーターとの組み合わせで、auスマートバリューと同様の割引を実現しようというわけだ。4年契約、もしくは2年契約という契約期間はちょっと長すぎる感もあるが、元々、パソコンやタブレットと組み合わせて利用するために、モバイルWi-Fiルーターを契約するユーザーは多く、なかでもUQ WiMAXについてはデータ通信量に制限がないということで、自宅のブロードバンド回線として利用している人が多い現状を考えると、新生活ユーザーの契約だけでなく、既存のモバイルWi-Fiルーターの乗り換えも出てくることになるかもしれない。以前、本コラムで複数回線を持つユーザーに対しての各社の取り組みの甘さを指摘したことがあったが、多少なりともその方向性のプランが出てきたことは評価できる。

スマートフォン6機種を中心にラインアップ

 さて、ここからは今回発表されたスマートフォン6機種とその他の機種について、それぞれの印象を踏まえながら説明しよう。ただし、いずれも開発中の製品を試用した範囲の印象であり、最終版の製品とは差異があることをお断りしておく。また、各製品の詳しい内容については、本誌のレポート記事が掲載されているので、そちらも合わせて、ご覧いただきたい。

isai LGL22(LGエレクトロニクス)

 5.2インチの大画面ディスプレイを搭載したauオリジナルのデザインモデル。ハードウェアの仕様としては、グローバル向けのG2をベースにしているが、ボタン位置なども含め、外装パーツはまったくの別物になっている。薄型のボディながら、周囲を金属フレームで囲むことにより、全体的な質感を高めている。ホームアプリは独自の「isaiスクリーン」が採用されており、左右にフリックすることで、ニュースやトレンド、SNS、動画のジャンルのコンテンツを楽しむことができる。縦方向のフリックは時系列でニュースが閲覧できる。LGエレクトロニクス製スマートフォンでおなじみの「Qスライド」などの機能も搭載されている。かつてのau design projectやiidaのような強い個性はないが、質感の高いスリムボディに、視認性と操作性に優れたユーザーインターフェイスを組み合わせることで、日本のスマートフォンらしい仕上りとなっている。

Xperia Z1 SOL23(ソニーモバイル)

 IFA 2013で発表されたソニーモバイルの2013年度下半期のフラッグシップモデル。基本仕様はグローバル向けモデルをそのまま継承しており、おサイフケータイやワンセグ、フルセグ、赤外線通信などの日本仕様にも対応する。Xperia Zの流れをくむオムニバランスデザインだが、ボディ周囲の4つの角が少し丸くなり、手のあたりもグッと良くなった印象。国内向けXperia Zでは採用が見送られたスタミナモードに代わり、今回は独自の省電力モードを採用する。実利用で、どの程度の持ちが期待できるのかは未知数だが、少なくともNTTドコモ向けのXperia Zで不評だった電池の持ちは少しは改善されると期待して良さそうだ。グローバル向けモデルを試用したとき、非常に面白かった「Info-Eye」や「AR Effect」なども継承されており、今までと違ったカメラを楽しむことができる。ちなみに、レンズスタイルカメラ「DSC-QX10」もau +1 Collectionで扱われることになっており、端末と同時購入で割賦による支払いも可能。

GALAXY Note 3 SCL22(サムスン)

 IFA 2013でグローバル向けに発表されたサムスンの新モデル。auとしては、スマートフォンとタブレットの中間を意味する「ファブレット」と位置付けている。GALAXY NoteシリーズはこれまでNTTドコモ向けに初代モデルと2代目モデルが供給されてきたが、今回はauも同じモデルを扱うことになる。基本的な仕様はグローバル向けをベースにしており、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信などと日本仕様に対応する。従来モデルに比べ、ディスプレイサイズはひと回り大きい5.7インチになり、解像度もフルHDに対応するなど、かなりスペックは向上している。GALAXY NoteシリーズならではのSペンもボタンを押してのエアコマンドをはじめ、スクラップブックやオートシェイプといった機能を搭載する一方、大画面&高解像度を活かしたマルチディスプレイの実用性も高く、かなり完成の領域に達した印象だ。GALAXY Gearについては、前述の通り、5色がau +1 Collectionで扱われるが、auショップの店頭にはほとんど入荷しておらず、auオンラインショップなどで買うのがもっとも簡単というのが実状。本体に装着可能なフリップタイプのS View Coverもオプションで用意され、GALAXY S4などと同じ小窓付きタイプもラインアップされる。

ARROWS Z FJL22(富士通)

 2012年冬モデルのARROWS f以来となる富士通製スマートフォン。ARROWSシリーズのau向けハイエンドモデルである「ARROWS Z」の名が冠されている。かつてはハイスペックを追求しながら、発熱など、多くのトラブルで話題になったが、NTTドコモ向けの2013年夏モデルで設計を一新し、高い評価を得ており、au向けでも再スタートを切るべく供給されるモデル。従来のARROWS Zは背面こそラウンドさせながらも全体的に力強さが強調されたデザインだったのに対し、今回はボディ周囲と背面をラウンドさせたフォルムにまとめ、クリアとカラーの2色成型のような質感に仕上げ、メインカラーもホワイトにすることなどにより、ハイスペックモデルながらもあまりクセのなく、全体的にやさしいイメージでまとまっている印象だ。背面には富士通製端末おなじみの指紋センサーを搭載し、指紋センサー部もボディカラーと同じカラーに仕上げるなど、細かい部分にもこだわりを見せる。機能的にはWi-FiとLTEの同時通信で、利用はWebブラウザに限られるが、実用性は高そうだ。急速充電についても同様で、2.6Aという高出力のACアダプタと卓上ホルダが必要だが、残量が15%の状態でも10分の充電で約1日分の容量まで充電できる。実使用時間については今のところ、公開されていないが、RAM搭載カラー液晶の採用など、省電力にもかなり気が配られている。auのラインアップではAQUOS PHONE SERIEなどと並び、もっともロングライフになることが期待される。

AQUOS PHONE SERIE SHL22(シャープ)

 約4.8インチのIGZO搭載液晶を採用したAQUOS PHONE SERIEの最新モデル。au向けスマートフォンでは2013年夏モデルでIGZO搭載液晶をはじめて採用し、auのスマートフォンではもっともロングライフを実現していた。今回のモデルは解像度がHDからフルHDになり、バッテイー容量もわずかに減ったが、シャープ製端末ではおなじみのエコ技をはじめとした省電力技術の見直しなどにより、同等以上の性能を実現できるとしている。ワンセグ/フルセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水防じんなど、スペック的にはほぼフルの状態で搭載されている。ユニークな機能としては、ボディ左右に内蔵されたタッチセンサーを利用することにより、画面オフの状態でも端末を手に持ったときに点灯する「グリップマジック」が挙げられる。他事業者向けのものも含め、シャープ製端末には共通で搭載される機能だが、加速度センサーとも連動しており、実際に手に持ったときにすぐに画面が点灯し、使いはじめることができる。デザイン的には前面のディスプレイ下部のロゴが独特の処理でアクセントになっており、フラットで周囲の角を落としたシンプルなデザインながら、製品としての『顔』をきちんと表現しようとした印象だ。

DIGNO M KYL22(京セラ)

 約5インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載しながら、スリム&軽量を実現した防水スマートフォンだ。ほとんどの防水対応スマートフォンが150g前後であるの対し、DIGNO Mは最軽量となる135gにまとめられている。このサイズを実現するため、本体側面の最薄部は3mmしかなく、そこから背面中央へ向けて、ゆるやかにカーブを描くラウンドフォルムで仕上げられている。液晶ディスプレイの左右も狭額縁で、ボディ幅の約69mmに抑えられている。5インチクラスのディスプレイを搭載したスマートフォンはかなり増えてきているが、女性のように、手の大きくない人にも持ちやすいサイズ感と言えそうだ。また、外見で特徴的なのは側面や前面にキーがなく、背面に「サーメット」による電源キーが備えられ、デザイン的なアクセントになっている。急速充電に対応したACアダプタ一体型の卓上ホルダも同梱されており、30分の充電で約50%までの充電が可能だという。このほかにも従来モデルから好評を得ているスマートソニックレシーバーをはじめ、省電力モードやインテリジェントWi-Fiなどの機能も継承しており、美しいデザインの実力派の1台と言えそうだ。

MARVERA(京セラ)

 9月発売の同じ京セラ製のフィーチャーフォン「GRATINA」に続く、2機種目のモデル。GRATINAが3.0インチのQVGA液晶を搭載し、どちらかと言えば、コストパフォーマンスを重視したモデルであるのに対し、MARVERAは3.2インチのフルワイドVGA液晶を搭載し、防水防じんに加え、MIL規格対応耐衝撃性能を備えるなど、ややスペック重視のモデル。デザインも比較的、落ち着いたイメージでまとめられている。フィーチャーフォンのニーズは相変わらず、健在だと言われており、そこに2機種のモデルをラインアップしてきたことは、現在、フィーチャーフォンを利用しているユーザーにとっても安心材料と言えそうだ。ちなみに、両モデルはKDDIがフィーチャーフォン向けの共通プラットフォームとして開発したKCP(GRATINA)およびKCP+(MARVERA)を採用しているが、かつてauがフィーチャーフォンのKCP+移行を推し進めていたとき、最後までKCP+採用を見送っていた京セラがスマートフォン全盛となった今日、KCP+でauのフィーチャーフォンのラインアップを支えているというのも不思議な巡り合せと言えるかもしれない。

ARROWS Tab FJT21(富士通)

 2560×1600ドット表示が可能な10.1インチのディスプレイを搭載したau 4G LTE対応タブレット。auとしては、2012年冬モデルの「AQUOS PAD SHT21」に続き、通信モジュールを搭載したタブレットということになる。これまで10.1インチクラスのタブレットは、どちらかと言えば、モバイルノートPCの対抗という位置付けからか、サイズも重量も少し大きめのモデルが多かったが、今回のモデルは9600mAhの大容量バッテリーを搭載しながら、510gと軽量に仕上げている。iPadなどが650g程度であることを考えると、スマートフォン1台分程度の差があり、この軽さなら、自宅用やオフィス用としてだけでなく、外出時にも持ち歩く気にもなれそうだ。とは言うものの、子どもと共用するときのための「キッズモード」、シニアやビギナー向けの「かんたんスタイル」など、ホームユースも十分に考慮されており、ユーザー識別についてはホームボタンに内蔵された指紋センサーを利用することも可能。ワンセグやフルセグに加え、DTCP+にも対応しているため、バスルームでテレビや映像コンテンツを楽しむといった使い方もできる。スマートフォンやフィーチャーフォンとの2台持ちで料金の負担が増えることについては、auが2014年春から本格的に展開を予定している「データシェア」で割安に使えるようにするとのことだ。

あんしんGPS(京セラ)

 GPS機能に特化した端末で、登録されたスマートフォンから遠隔操作で位置情報を確認することができる。歩数計やカロリー計で消費カロリーを計算する機能などを搭載するほか、緊急ブザーを押して、登録済みのスマートフォンに位置情報を伝えることができる。連続稼働時間は2週間程度の目標に開発しているとのことだ。主な対象ユーザーとしては、やはり、シルバー世代になるが、非常にサイズが小さいため、クルマやバイクなどに搭載しておき、簡易的な盗難防止用端末として活用することもできそうだ。外部からの電源供給がしやすい環境が整えば、法人向けにも個人向けにも応用できるソリューションはかなり拡がるのではないだろうか。

PHOTO-U TV(ZTE)

 1024×600ドット表示が可能な10.1インチの液晶ディスプレイを搭載したフォトパネルだが、ワンセグに加え、フルセグの受信にも対応し、録画機能も搭載され、防水防じん、バッテリー駆動にも対応する。Miracastでのペアリングにも対応しているため、Miracastに対応したスマートフォンの映像をそのまま出力することもできる。リモコンも付属する。最大32GBのSDHCメモリーカードに保存された写真が動画を再生できるほか、au Cloudにスマートフォンからアップロードされた写真を再生することもできる。人感センサーにより、人がいないときは画面をオフにできる。auとしては「防水の小さいテレビ」という位置付けとのことだが、使い方次第では防水メディア端末のようにも活用できそうだ。

Wi-Fi WALKER WiMAX2+(ファーウェイ)

 UQコミュニケーションズが10月31日からサービスを開始する「WiMAX2+」に対応したモバイルWi-Fiルーター。WiMAX2+のほか、UQコミュニケーションズのWiMAX、auの4G LTEに対応し、動作モードを本体前面のタッチパネル対応ディスプレイで切り替えることができる。ディスプレイには電波状態などのほかに、データ通信量も確認でき、設定も変更することが可能だ。ワイヤレス充電(Qi)にも対応し、スマートフォンに給電する機能も持つ。基本仕様はUQコミュニケーションズが販売するものと同じで、料金も「WiMAX2+おトク割」が適用されることで、月額3880円で利用ができる。当面、4G LTEで接続したとき以外は制限なく利用できる。今回発表された「au スマートバリュー mine」での利用を意識したモデルだ。

「ツナガルチカラ」は何のため?

 10月7日に発表されたTCAの集計にも表われているが、今、auは非常に好調な時期にあると言えそうだ。本稿でも説明したが、昨年の4G LTEサービスの開始当初は「垂直立ち上げ」と意気込んだものの、ネットワーク障害や広告の誤表記などでつまづき、今一つ本領を発揮できなかった。それがここに来て、4G LTEネットワークも充実し、iPhone 5s/5cで『プラチナバンドLTE』がサポートされたこともあり、ユーザーへの認知度も着実に向上してきている。資本関係を持つUQコミュニケーションズは2.5GHz帯の追加割り当てを受け、TD-LTE互換とされる「WiMAX2+」のサービスも開始され、auでもUQコミュニケーションズでも対応端末がラインアップされることになった。おそらく、来年にはモバイルWi-Fiルーター以外の商品も登場してくるだろう。

 そして、今回発表されたスマートフォン6機種は、ライバルであるNTTドコモが主力としてきたソニーモバイルのXperiaシリーズとサムスンのGALAXYシリーズの最新機種をいち早く扱うことになったほか、日本仕様をしっかりとサポートするシャープや富士通、京セラの端末に加え、LGエレクトロニクスのグローバル向け最新モデルと同等スペックのオリジナルモデルを開発するなど、ユーザーの幅広いニーズに答えられる充実のラインアップを取り揃えている。これらに加え、フィーチャーフォンやタブレット、モバイルWi-Fiルーターなどもひと通り揃え、ラインアップ全体としては、iPhoneも加え、非常に隙の少ない品揃えになったという印象だ。

 また、サービス面では昨年3月にスタートしたスマートパス構想が着実に浸透し、auスマートバリューについても新たに単身者向けの「auスマートバリュー mine」を加え、NTTドコモやソフトバンクがなかなか真似のできない環境を整えつつある。コンテンツについても「うたパス」「ビデオパス」「ブックパス」など、一連の『パス』シリーズを取り揃えている。

 こうして見ると、まさに「旬の時期」を迎えた印象のあるauだが、その一方で、現在のauの現状を危ぶむ声もある。たとえば、2013年夏モデル発表時のレポートでも指摘した販売面の歪みだ。auは現在、MNP純増No.1を続けており、今回のiPhone 5s/5c発売で、その勢いはさらに増すことが予想できる。しかし、販売の現場を見ると、かなり無理な販売が目立つようになってきている。以前から指摘している「MNPユーザーを厚遇するMNP偏重の販売施策」などはまだマシな方で、今回のiPhone 5s/5c発売時には他社からのMNPユーザーに対し、一度、iPhone 5を販売し、すぐさまiPhone 5s/5cに機種変更しつつ、買ったばかりのiPhone 5を下取りにすることで、iPhone 5s/5cを実質0円で販売するようなケースが見られたという。別に法に触れることをしているわけでもなければ、このタイミングでiPhone 5の在庫を減らしたいという販売店側の心情も十分に理解できるが、それでも商慣習的に見て、あまり褒められた販売方法とは言えないだろう。

 また、販売店などの反響を見てみると、オプションサービスの契約などを含めた販売施策の強化は一段とキツくなってきており、機種変更をしにきたユーザーに対し、「翌日の解約でもいいから、○○と△△に入って欲しい。これらに入っていただかないと、この値段では販売できない」といった対応をするケースが多いという。もちろん、こうしたオプションサービスの契約は、auに限ったことではなく、NTTドコモでもソフトバンクでも多かれ、少なかれ行われていることなので、一概にauだけが責められることでもないが、ユーザーとしては「面倒だ」と感じてしまっている。

 さらに、ショップでの対応状況を見ても相変わらず、iPhone偏重の販売が続いている印象で、Androidスマートフォンを指名買いに行ってもiPhoneを強く勧められてしまうケースも多いという。決して、iPhoneが悪いというわけではなく、非常に素晴らしい商品なので、その取り組みは間違っていないのだろうが、どうも販売店によっては、「iPhone売っておけば、大丈夫」的な姿勢が見え隠れするようなこともある。

「GALAXY Gear」

 そして、この販売面でもう一つ気になるのがオプション品やau +1 Collectionなどの扱いだ。諸般の事情により、本稿の仕上がりが遅れたため、今回発表された冬モデルの内、すでにGALAXY Note 3は発売されているが、これと連携するウェアラブル端末「GALAXY Gear」がau +1 Collectionで扱われているとしているものの、店頭にはブラックとグレーのいずれかが1台程度、自動的に送られてくる程度で、ユーザーが特定のカラーのGALAXY Gearが欲しくてもauショップから指定して注文できない状況にある。これはGALAXY Gearに始まったことではなく、他のau +1 Collectionについてもauショップで注文しても入荷するかどうかがわからないケースがあるという。

 こうした状況は、かつてケータイの全盛期、auショップが卓上ホルダなどのオプション品の在庫を持たなかった状況によく似ている。一時期、auは防水対応端末であるにも関わらず、卓上ホルダを同梱、もしくはオプションとして用意しないことがあったが、その背景にはオプションとして扱うと、販売店は在庫を持たなければならず、それがau自身と販売店の負担になるため、卓上ホルダの設定を見送ったという指摘もあった。おそらく、au +1 Collectionについても同様で、各店舗がある程度の在庫を持つことになれば、au自身にも販売店にも負担が大きくなるから、それを避けたという見方ができる。

 もし、これが本当なら、これはもう販売の姿勢として、本末転倒に近い。auは2013年夏モデルの発表会において、「ユーザーがスマートフォンを使いこなせるようにサポートしたい」としているが、ユーザーが欲しいモノをきちんと入手できる環境を用意していない状況で、サポートも何もないだろう。少なくともGALAXY Note 3のようなモデルであれば、一定数のユーザーがGALAXY Gearを試してみたいはずで、できるだけ入手しやすい環境を作るべきではなかったのだろうか。一応、au Online Shopで扱っているため、全国各地から注文できる状況にあるが、そのことはauショップに告知されていないため、ショップのスタッフでも指定の色がどこで購入できるのかがわからない状況にある。

 先月、iPhone 5s/5cの販売方法について、ユーザーからは「なぜ、事前に予約ができないのか」「平日の20日から店頭で予約なんて無理」といった声が数多く聞かれたが、今回のGALAXY Gearに関して言えば、iPhoneのような特殊な事情があったわけでもなく、少なくともau自身がある程度、コントロールできたはずだ。カラーは1色しかないが、NTTドコモは標準オプション品として取り扱うため、ユーザーが注文をすれば、きちんと入手できる状況にあり、そのことを考慮すれば、auは自らに甘い販売姿勢が問われてもしかたがないだろう。

 auは4G LTEサービスのネットワークが充実してきたことを受け、この秋から「ツナガルチカラ」をコピーにプロモーションを展開している。確かに、ケータイにしろ、スマートフォンにしろ、タブレットにしろ、ネットワークにつながること、それらを介して、人々とつながることは大切だ。つながってこそ、多彩なサービスが受けられ、多様なコミュニケーションが実現できるわけで、だからこそ、各社とも自社のネットワークの優位性を積極的に訴えている。ただ、auに関して言えば、敢えて問いたいのは「つながって、どうするのか」ということだ。

 たとえば、NTTドコモは最近、「スマートライフのパートナー」というキーワードを使い、自社の端末やサービスを使うことで、ユーザーの生活を豊かにしたいという方向性を明確に打ち出してきている。ソフトバンクもいろいろと指摘されることは多いものの、以前から「情報革命で人々を幸せに」という言葉を掲げ、インターネットを軸にしたサービスを次々と打ち出してきている。auは「あたらしい自由。」というコピーを掲げ、一連の『パス』シリーズをはじめとしたサービスを展開してきているが、auとして、ユーザーをどういう方向性に導きたいのか、社会をどうしていきたいのかが今一つ見えてこない印象だ。MNP純増No.1が続き、今は「イケイケ、ドンドン」なのかもしれないが、それはキャリア側の事情であって、既存のauユーザーから見れば、異常とも言えるMNP偏重の販売施策やユーザーのニーズをきちんと対応できない販売店の状況など、ユーザーにとって、auとお付き合いすることが本当に幸せなのかどうかが疑問に感じられる状況になりつつある。ネットワークが充実し、端末ラインナップが揃い、豊富なサービスが提供できている今だからこそ、もう一度、ユーザーがauをどう見ているのかを分析し、その期待に応えるような取り組みを検討するべきではないだろうか。

 さて、今回発表された2013年冬モデルは、すでに10月3日より、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオ、愛知・名古屋のau NAGOYA、大阪・梅田のau OSAKAで展示を開始しており、一部のモデルについては、すでに販売が開始されている。auの販売姿勢については厳しい意見を述べたが、ラインナップとしてはグローバル向けモデルからオリジナルモデル、タブレット、GPS端末に至るまで、豊富なバリエーションを揃えており、ユーザーの幅広いユーザーのニーズに応えられる状況にある。本誌でも開発者インタビューやレビュー記事を掲載する予定なので、こちらもご覧いただき、店頭などでデモ機も試しつつ、自分にフィットする1台を選んでいただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。