法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

おすすめ3機種を軸に展開するドコモ2013年冬~2014年春モデル

 10月10日、NTTドコモは2013年冬商戦及び2014年春商戦へ向けた新しいラインアップとして、スマートフォン11機種をはじめとした全18機種を発表した。今年9月、かねてから噂されていたアップルのiPhone導入に踏み切り、これまで厳しい戦いが続いてきた各社との販売競争において、反転攻勢をかけたい構えだ。2013年夏モデルではいわゆる「ツートップ」戦略が注目を集めたが、今回はどのような施策を打ち出すのかも含め、非常に注目されるところだ。発表会の詳細については、本誌の速報記事を参照していただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方と各製品の印象などについて、解説しよう。

スマートライフのパートナーを目指す

 モバイル業界の主軸がケータイからスマートフォンにシフトしたことで、携帯電話会社を中心とした業界の構図は大きく変化した。国内メーカーが上位を占めていた端末の販売ランキングには、海外メーカーがずらりと並び、各キャリアごとのオリジナルモデルが並んでいたラインアップには共通のモデルが供給されるようになり、コンテンツサービスも各社公式メニューからインターネット上で展開されるオープンなサービスへ移行が進んだ。どんな業界にも大きく変化する時期はあるものだろうが、ここ数年のモバイル業界ほど、ドラスティックな変化はなかなか体験できないものだ。

 そんなドラスティックに変化する市場に対応するため、各携帯電話会社も端末ラインアップやサービス、料金プランなどを時代に合わせ、さまざまな形で拡充してきた。しかし、スマートフォンを基本とするビジネスの展開では、どうしても各社とも端末ラインアップやサービス、料金体系は似通ってしまうため、なかなか個性を打ち出しにくいのが実状だ。

 こうした状況に対し、NTTドコモでは最近、「スマートライフのパートナーを目指す」というキーワードを掲げ、さまざまな形でスマートフォンを軸にしたユーザー体験を拡げようとしている。そのジャンルも「健康」「買い物」「学び」「コミュニケーション」「お出かけ」「エンターテインメント」「安心・安全」「環境・エコ」と幅広く、まさに人々の生活や社会を広くカバーしていこうという構えだ。そして、これを支えるものとして、「R&D」「ネットワーク」「ドコモショップ」にも注力していく。事業への取り組み方は各携帯電話会社によって、少しずつ違うが、やはり、約6000万という最大のシェアを持つNTTドコモならではの責任感や使命感がうかがえるアプローチと言えそうだ。

ツートップ戦略の裏側

 ところで、NTTドコモと言えば、2013年夏モデル発表時、いわゆる「ツートップ戦略」を打ち出し、業界内の注目を集めた。特定の2機種については積極的におすすめし、販売価格も大きく割り引くという方針だが、賛否両論のある中、NTTドコモとしては一定の成功を収めたという見方だ。何をもってして「成功」とするのかは議論のあるところで、一部のメディアでは「iPhone導入のための地ならし」「主要メーカー以外の排除」という指摘もあったが、筆者自身は少し違う見方をしている。

 夏モデルで採られたツートップ戦略は、実は端末の在庫適正化のために採られた施策で、その裏側には販売奨励金を有効活用したかったというNTTドコモの思惑が見え隠れする。今回、NTTドコモが発表した2013年冬~2014年春モデルは、発表会後から来春にかけて、順次販売されるが、夏モデルについては毎年6月に頃に販売を開始されるため、冬モデルの発売までの約4カ月間が主戦場になる。なかには意図的に継続販売される製品もあり、スマートフォンになってからはGALAXY Sシリーズなどのように、大きなモデルチェンジは1年に1回のみという機種も多い。これに対し、国内メーカーの端末はユーザーの細かいニーズに合わせて作り込まれることもあり、発表会ごと、あるいは商戦期ごとに新製品が登場する。さらに、新しい市場を狙って、今までにない製品にチャレンジしたり、他社との対抗策上、新製品を出すようなケースもある。一時期、市場がまだ起ち上がるかどうかも微妙だった時期に、タブレットのラインアップがかなり充実したこともあった。

 こうなってくると、春商戦では冬モデルと春モデルの新製品が並ぶ一方、夏モデルの在庫分も並ぶことになり、どうしても夏モデルは分が悪くなってしまう。そこで、しかたなく、スマートフォンとセットでタブレットを販売したり、夏モデルに多くの販売奨励金を注ぎ込んで、在庫を調整することになる。そこで、NTTドコモでは夏モデルの調達を決めるとき、各メーカーから調達する機種に強弱を付け、主力とされた機種以外は冬商戦や春商戦までずれ込んでも在庫が残らないようにした。主力のモデルについては、従来、他機種で使っていた販売奨励金を振り分け、しっかりと販売奨励金を注ぎ込むことで、できるだけ実質価格を下げ、積極的に売っていこうとしたわけだ。残念ながら、機種ごとの調達台数や販売実績、販売奨励金の金額などはわからないが、年度末になれば、販売奨励金が有効に使われた結果が見えてくるはずだ。

 この分析が本当に正しいかどうかは定かではないが、少なくともユーザー側から見れば、ツートップ戦略は強制的に売れ筋の端末を「買わされる」ような施策であり、まったく歓迎できないものだった。しかし、それでも夏モデルの商戦では他機種よりもスペックが抑えられた「Xperia A SO-04E」が圧倒的な売れ行きを記録し、その影響もあって、この商戦期を最後に、NECカシオやパナソニックはスマートフォンから撤退することになってしまった。

 こうした状況を受け、2013年冬~2014年春モデルではどのような販売施策を打ち出すのかに各方面の注目が集まったが、今回は「○○トップ」という呼び方ではなく、「おすすめ3機種」という打ち出し方をしている。具体的には、事前の噂通り、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「ARROWS NX F-01F」「Xperia Z1f SO-02F」が選ばれた。「○○トップ」という呼び方をしなくなったことについて、一部のメディアでは「iPhoneを扱うから、言えなくなった」といった分析をしているが、少なくとも筆者が見る限り、NTTドコモとアップルの関係において、そういった他機種の扱い方にまで及ぶような制約は受けていないという印象だ。むしろ夏モデルの「ツートップ戦略」という言葉だけが思いの外、ひとり歩きしてしまい、あまり評判が良くなかったため、「おすすめ」という表現に落ち着いたのではないかと推察される。どうせ言い方を変えるのであれば、サッカー用語の「ツートップ」に対し、3機種を並べて、「クリーンナップ」と呼ぶくらいのアイデアが欲しかったところだが、そういう言い方をすると、今度は発表会の質疑応答などで、「どれが四番ですか?」といったムダな質問が飛んできそうな気もする。

スマートフォンは全機種実使用時間2日間以上に

 今回の2013年冬~2014年春モデルの全体の傾向としては、昨年冬モデルあたりからAndroidプラットフォームを含めた完成度が高まってきたこともあり、実用性と個性を意識したラインアップになってきたという印象だ。

 まず、スマートフォン11機種については、実使用時間2日間以上を達成し、その内の5機種については3日間以上の実使用を可能にしている。この実使用という評価は、NTTドコモが2013年夏モデルから公開しているもので、一般的に想定されるスマートフォンの利用として、Web閲覧などを約40分、メールや電話を約20分、ゲームや動画、音楽を約15分、その他のアラームなどを約5分の合計約80分を、1日の利用の目安にしている。スマートフォンを積極的に活用しているユーザーにしてみれば、「もっと使ってるよ」と言いたいところだが、ライトなユーザーを含めた利用ということで評価しているようだ。ちなみに、実使用時間は基本的に発売時、もしくは発売直前に公開され、すでに発売されているモデルの中では「ARROWS NX F-01F」が最長となる約97.1時間を記録している。スマートフォンの実使用時間の評価はなかなか難しいところがあるが、旧機種を使っているユーザーも自分の機種の連続使用時間や連続通話時間などと最新機種を比較し、実使用時間を見れば、現在使っている旧機種と比較して、新機種がどれくらいロングライフになりそうなのかは把握できるだろう。もっともこうした評価は、各携帯電話事業者が共通の指標を持ち、消費者に提供していくようにするべきであり、各社の連携が期待される。

 第二の特長としては、スマートフォン8機種、タブレット1機種、モバイルWi-Fiルーター2機種がXiの受信時最大150Mbpsに対応したことを挙げている。この受信時最大150Mbpsのサービスは1.7GHz帯を利用したもので、東京や神奈川、愛知、大阪、京都、兵庫の一部エリアで2013年10月からサービスが開始される。ただ、この受信時最大150Mbpsという値はあくまでも理論値でしかなく、実際の利用シーンにおいて、恩恵を受けられるのは限られたシチュエーションになるかもしれない。もちろん、今の時期に購入するのであれば、対応機種を選ぶのが自然だろうが、150Mbps対応のために買い替えるというほどのアドバンテージがあるかどうかは微妙なところだ。

 端末ラインアップの内容については、前述の通り、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「ARROWS NX F-01F」「Xperia Z1f SO-02F」がおすすめ3機種として選ばれ、スマートフォンではグローバル向けモデルベース、日本市場向け企画モデル、コラボレーションモデルなどが並び、フィーチャーフォンも2機種が新たに発表されている。

 メーカー別ではシャープがコラボレーションモデルなどを含めて4機種、富士通がタブレットを含めて3機種で、これにソニーモバイルとサムスン、LGエレクトロニクスが2機種ずつ、NECカシオとパナソニックモバイル、ファーウェイが各1機種ずつという構成になっている。これらはスマートフォン、タブレット、モバイルWi-Fiルーター、フィーチャーフォンなど、すべてをまとめての分布になるが、スマートフォンについてはシャープと富士通が国内ユーザーのニーズをしっかりとフォローできるモデルを供給し、グローバル市場で強いメーカーはグローバル向けのフラッグシップモデルに日本仕様を取り込む形で着実にトレンドを押えるという構成のようだ。ある意味、非常にスキのない充実したラインアップと言えそうだ。

 スペックについては、CPUが一部のモデルを除き、Snapdragon MSM8974でほぼ統一されている。CPUのクロック周波数は2.2GHzと2.3GHzのモデルがあるが、実質的には体感できるほどの差はないと考えていいだろう。ROM/RAMについては、スマートフォンのほとんどの機種が32GBのROM、2GBのRAMという構成で、コンパクトな「Xperia Z1f SO-02F」と「AQUOS PHONE EX SH-02F」は16GB ROMとなっている。

 バッテリーは「ARROWS NX F-01F」と「GALAXY Note 3 SC-01F」の3200mAhがもっとも大きいが、その他の機種もコンパクト系の2機種を除けば、全機種が3000mAh前後の大容量バッテリーを搭載している。バッテリーについては「GALAXY Note 3 SC-01F」と「GALAXY J SC-02F」のみが着脱式で、その他の機種はいずれも固定式を採用する。ACアダプタ04による急速充電については、「Xperia Z1f SO-02F」のみが未定としているものの、他のスマートフォン(スマートフォン for ジュニアを除く)はいずれも対応している。ただ、おくだけ充電に対応したモデルが1機種もなく、卓上ホルダも「Xperia Z1 SO-01F」と「Xperia Z1f SO-02F」に同梱されるのみで、他機種についてはまったく用意されていない。2013年夏モデルではおくだけ充電や卓上ホルダ設定モデルが多かったことを考えると、やや不親切な印象は否めない。

 ディスプレイサイズについては、他社では「ファブレット」(TabletとPhone中間を指す)にカテゴライズされることもある「GALAXY Note 3 SC-01F」の5.7インチを筆頭に、5.0インチが5機種、4.7インチ、4.5インチ、4.3インチが各1機種ずつという分布になった。もはや主力モデルは5インチが標準になった印象だ。その代わり、ボディ幅は拡がり、5インチ以上の機種はいずれも70mm以上になっている。

 意外に機種ごとの差が見えるのが重量だ。「GALAXY Note 3 SC-01F」はディスプレイサイズやバッテリー容量が最大級ということもあり、重量も約172gと最重量級なのだが、5インチディスプレイを搭載するモデルを比較して見ると、「Xperia Z1 SO-01F」の約171gから「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」の約139gまで、かなり開きがある。スマートフォンの持ち方にもよるが、170gクラスになると、男性の胸ポケットに入れてもちょっとシャツが歪んでしまうような印象もある。おそらく、多くのユーザーがカバーなどを付けて持ち歩くことを考慮すると、本体重量についても少し気にするべきタイミングと言えるのかもしれない。

ホームアプリ「docomo Live UX」を搭載

 その他の端末に関わるところでは、新たにホームアプリとして、「docomo Live UX」が搭載されることになった。詳細については、別途、「ケータイしようぜ!」などで紹介したいが、少し説明をしておくと、ホーム画面にアプリやウィジェットを設定するとき、画面の上側からホーム画面に重ねるようにアプリ一覧を表示し、アプリのアイコンなどをドラッグして、配置する流れになる。ホーム画面は最大7枚のページから構成され、「マイマガジン」と呼ばれる雑誌形式の検索サービスも実装されている。

 ただ、正直なところを書いてしまうと、このdocomo Live UXは仕様にかなり違和感がある。たとえば、特長のひとつであるホーム画面にアプリを貼り付けるとき、アプリ一覧が画面の上側からホーム画面に重なるように表示されるという動きだが、スマートフォンのディスプレイサイズが大きくなり、片手では画面の上半分に指が届かないと言われている中で、こういう動きをするのは、さすが不親切だろう。

 また、アプリ一覧からホーム画面にアプリのアイコンを貼り付けると、何とアプリ一覧からはそのアイコンが消えてしまうという仕様になっている。つまり、ホーム画面に貼り付けているのは、ショートカットではなく、アプリそのもののアイコンという見た目になる。ホーム画面に貼り付けたアイコンをアプリ一覧にドラッグして戻すこともできるが、戻すと、位置はアプリ一覧の最後のページに移動してしまう。この点について、発表会のタッチ&トライで説明員に指摘したところ、ショートカットを配置するという手法はパソコン的な考えであって、NTTドコモの調査では「アプリのアイコンが移動する方がわかりやすい」と判断したのだという。

 しかし、ホーム画面は前述のように、複数ページが並んでいるわけで、もし、ユーザーが意識せずに普段表示しないページにアプリのアイコンを移動すると、ホーム画面のページを切り替えなければ、アプリのアイコンを探せなくなってしまう。ホームアプリについては各社とも工夫を凝らした独自のホームアプリを開発してきているが、docomo Live UXは「なぜホーム画面なのか」「アプリ一覧はどういう位置付けにあるのか」といったホームアプリの基本的な要素をあまり考えていない印象で、個人的にはあまりおすすめしたくないというのが本音だ。ホームアプリを開発するという取り組みは歓迎するが、これまでNTTドコモ向けに端末を供給してきた各社のホームアプリには、もっと素晴らしいものがあり、もし、開発するのであれば、それらのホームアプリと並ぶレベルのものを仕上げて欲しいところだ。

「docomo Live UX」

 端末以外ではdocomo IDの活用、「ドコモメール」、キャリアフリーの多彩なコンテンツサービスが発表された。docomo IDについては、これまでもWi-Fi経由やパソコンなどで、NTTドコモの各サービスやお客様サポートのページにアクセスする際に利用されてきたが、今回の2013年冬~2014年春モデルから端末内にIDを管理するための「docomo ID設定」が追加され、ここで管理できるようにしている。同様の取り組みは、auが早くから「au ID」のアプリを提供していたが、NTTドコモとして、ようやくこれに追随した形とも言える。「ドコモメール」については、発表会後に発売された機種をはじめ、いくつかの機種で利用が開始されたが、クラウドにメールが保存されるWebメール形式のメールサービスで、既存のspモードメールから移行することになる。ちなみに、発売済みの「GALAXY Note 3 SC-01F」や「Xperia Z1 SO-01F」では、購入後、アプリ一覧画面などのドコモメールのアイコンをタップすると、ダウンロードページにアクセスし、インストール後、利用できるようになる。既存のspモードメールで送受信した内容については、バックアップから復元されたものも含め、端末上に保存されているものを閲覧するが、今後の機能向上で改善が図られる見込みだ。

 そして、多彩なコンテンツサービスについては、すでに提供されているdビデオやdヒッツ、dブックなどのラインアップをいずれも2014年3月までにキャリアフリー、つまり、他キャリアのユーザーでも利用できるようにして、さらに「d fashion」「dトラベル」「dキッズ」の3つのサービスを開始されることが発表された。この発表内容の内、キャリアフリーで利用できるという点についてだが、正直なところを書いてしまうと、本当にどれだけの需要があるのかがちょっとわからないという印象だ。

 というのもこうしたサービスは元々、各携帯電話事業者が持つ決済サービスの利便性を活かし、コンテンツを提供していこうというもので、当然のことながら、対抗策上、映像サービスで言えば、NTTドコモの「dビデオ」に対し、auは「ビデオパス」、ソフトバンクは「UULA」を提供している。もちろん、NTTドコモの「dクリエイターズ」のように、他社が対抗サービスを提供していないジャンルもあるが、映像や音楽、ゲーム、電子書籍といった基本的なジャンルは各社とも提供しているうえ、映像では「Hulu」、音楽では「iTunes」(アップル)や「Music Unlimited」(ソニー)、電子書籍では「Kindle」(Amazon)や「GALAPAGOS」(シャープ)など、独自に展開しているサービスも存在する中で、わざわざ「キャリアフリー」を謳ってまで、オープンな方向に展開する必要があるのだろうか。むしろ、他の独自サービスでコンテンツサービスに興味を持ったが、支払いを簡単かつ安全にしたいということで選ばれるのがキャリアの提供するコンテンツサービスという流れにならないのだろうか。10月24日にauが別途、コンテンツサービスの発表会を開催したが、その内容とは非常に対照的な印象だ。

スマートフォンを中心に全16機種をラインアップ

 さて、以下では各モデルの印象や気になるポイントなどについて、説明していこう。すでに発売されているモデルの内、筆者が購入したモデルについては、参考までにその印象も少し補足しておく。また、未発売のモデルについては、最終的な製品との際があることをご理解のうえ、ご覧いただきたい。各機種の詳しい機能や仕様については、本誌レポート記事で解説されているので、そちらを参照されたい。

AQUOS PHONE ZETA SH-01F(シャープ)

 5.0インチのフルHD対応IGZO搭載液晶を採用したフラッグシップモデル。従来のIGZO搭載液晶に比べ、新開発のエンジンとカラーフィルターを採用することで、省電力性能を一段とアップしている。シャープ製スマートフォンでおなじみのユーザーインターフェイス「Feel UX」もデザインが変更されている。従来モデルでは上部にあった電源キーは右側面に移動し、上部中央にはステレオイヤホン端子が備えられている。今回発表された5.0インチ以上のディスプレイを搭載したモデルの中では、もっとも軽量で、厚さは8.9mmとスリムに仕上がっている。ボディデザインは非常にすっきりとした印象で、全体的にクセがなく、幅広いユーザーに受け入れられそうな印象だ。特徴的な機能としては、本体の下半分の左右側面に内蔵されたタッチセンサーにより、ボディを持ったときに自動的に画面がオンになる「グリップマジック」が搭載されている。「おすすめの3機種」に選ばれており、実質価格でのアドバンテージもあるため、この冬、もっとも人気が期待できるモデルと言えそうだ。

SH-01F DRAGON QUEST(シャープ)

 「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」をベースにした「DRAGON QUEST」とのコラボモデル。「ドラゴンクエストVIII」がプリインストールされるだけでなく、背面パネルにキャラクターをあしらったデザインを採用し、着信音や背景画像などをドラゴンクエスト仕様にするほか、歩数計やメールの着信に連動するアプリを用意するなど、内容的にもかなり凝っている。3万台限定だが、これまでの限定モデルよりも幅広い年齢層をカバーしているため、確実に購入したいときは、予約をした方がベターだろう。

ARROWS NX F-01F(富士通)

 2013年夏モデルで「ReBORN」を果たしたARROWS NXの後継モデル。NTTドコモのおすすめ3機種に選ばれており、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」と並んで、この冬、もっとも人気が期待できるモデル。特長は「WhiteMagicディスプレイ」で、従来モデルに比べ、直射日光の下でも見やすく、消費電力を約45%に抑えている。WhiteMagicディスプレイは、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色に加え、W(白)のピクセルを追加することで、バックライトの透過率を向上させ、全体的なディスプレイの明るさを向上させると共に、バックライトの消費電力を抑えられるという特長を持つ。すでに発売された実機を屋外で利用してみたが、最近、使った端末の中ではもっとも明るい印象で、非常に視認性が優れていた。ボディは従来の「ARROWS NX F-06E」までが直線的なデザインだったのに対し、今回は丸みを帯びたデザインでまとめられ、全体的にやさしいイメージに仕上がっている。ボディはキズに強く、耐久性のあるダイヤモンドタフコートが採用されている。背面には富士通製端末でおなじみの指紋センサーが内蔵されているが、ボディカラーに合わせたカラーが使われるなど、デザイン面にこだわりを見せる。電池容量もこのクラスとしては最大の3200mAhを搭載し、ヒューマンセントリックエンジンによる省電力技術により、90時間を超える実使用時間を達成している。

Xperia Z1f SO-02F(ソニーモバイル)

 IFA 2013で発表された「Xperia Z1」のコンセプトを継承しながら、約4.3インチのHD対応ディスプレイを搭載することで、コンパクトなサイズに仕上げたモデル。ディスプレイやバッテリー容量(2300mAh)など、サイズに関連するものを除けば、基本的には「Xperia Z1 SO-01F」に近いスペックを実現しており、フラッグシップモデルをコンパクトサイズに凝縮したモデルという印象だ。違いとしては、赤外線通信、フルセグ、NOTTVに非対応であることなどが挙げられる。実際に手に持ったサイズ感も5インチクラスのディスプレイを採用したモデルに比べ、ひと回り以上、コンパクトになった印象で、女性など、あまり手が大きくないユーザーにもラクに持てるサイズ感だ。カメラは2070万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用しており、フラッグシップモデル同様、「Info-Eye」や「ARエフェクト」といったカメラを活かした機能が搭載されている。グローバル向けのXperiaに搭載されながら、国内向けモデルでは採用が見送られてきた「スタミナモード」が国内向け仕様として搭載される予定で、最終仕様の製品で実使用時間がどれくらいになるのかが気になるところだ。今回のおすすめ3機種に選ばれているが、発売時期が12月下旬に予定されているため、どちらと言えば、春商戦で本格的に展開されることが期待できるモデルだ。

Xperia Z1 SO-01F(ソニーモバイル)

 IFA 2013で発表されたソニーモバイルの2013年度下半期のフラッグシップモデル。「Xperia Z SO-02E」の流れを受け継いだオムニバランスデザインを採用するが、Xperia Zに比べ、ボディの4つの角の丸みを帯びた形状でデザインされ、手に持ったときにボディの角が手のひらに刺さるような印象が薄れた。本体の仕様はグローバル向けモデルのものを継承し、おサイフケータイやワンセグ/フルセグ、赤外線通信などの日本仕様を搭載する。ボディカラーは「Xperia Z SO-02E」同様、3色がラインアップされるが、パープルはXperia Zのものよりも明るめで、少し目立つ印象だ。カメラは2030万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用し、Cyber-shotなどのソニー製デジタルカメラに搭載される高性能レンズ「Gレンズ」が組み合わせられる。1/2.3型と大きなイメージセンサーに、F値2.0の明るいレンズ、ソニーのデジタルカメラで培われた技術を活かした画像処理エンジン「BIONZ for mobile」を搭載し、スマートフォンのデジタルカメラとしては最高峰を狙う仕様となっている。「Info-Eye」や「ARエフェクト」などのカメラ機能はグローバルモデルのものを継承する。グローバル向けモデルで実装されている「スタミナモード」には対応しない。発売後に公開された実使用時間は約57.7時間となっており、他の同クラスのモデルに比べ、やや短めの値となっている。

GALAXY Note 3 SC-01F(サムスン電子)

 IFA 2013において、グローバル向けに発表されたGALAXY Noteシリーズの最新モデル。NTTドコモでは2012年4月発売の「GALAXY Note SC-05D」、2012年11月発売の「GALAXY Note II SC-02E」を発売してきたが、今回の三代目モデルはauと共に扱うことになった。基本的な仕様はグローバル向けのモデルをベースにしており、日本向けモデルはワンセグとおサイフケータイに対応する。ディスプレイサイズは従来モデルよりも大きい5.7インチのフルHD有機ELが採用されているが、ボディ幅は従来モデルよりも1mm狭い約79mmに抑えられている。GALAXY NoteシリーズでおなじみのSペンは本体下部に格納されており、手書き入力などに対応するほか、ディスプレイに近づけて、ボタンを押したときに扇形にメニューが表示されるエアコマンドをはじめ、スクラップブックやオートシェイプなど、新しいユーザビリティを実現している。大画面を活かしてのマルチウィンドウも実用的で、スマートフォンの機能性を重視するユーザーにおすすめできるモデルだ。ウェアラブル端末「GALAXY Gear」はブラックのみが扱われるが、NTTドコモ扱いのオプションとして設定されているため、電池パックなどと同じように、全国のドコモショップで購入することができる。在庫がなければ、注文して、取り寄せることが可能であることも安心できる点だ。

GALAXY J SC-02F(サムスン電子)

 サムスン電子が日本市場向けに開発したオリジナルモデル。日本のユーザーに好まれるスクウェアなボディは、周囲にメタリックなフレームをあしらい、ストラップホールを備えるなど、これまでのGALAXYシリーズとは大きくイメージを変えている。ボディカラーも日本向けのオリジナルカラーで、ピンクなどは日本のユーザーの好みを十分に考慮したものが選ばれたという。スペック的には2013年夏モデルの「GALAXY S4 SC-04E」をベースに、CPUなどは最新のSnapdragon 800シリーズに変更し、日本仕様として、ワンセグやNOTTV、おサイフケータイに対応する。ソフトウェアではひらがなとアルファベットを併用する日本語の特長を考慮した8フリック入力を新たに開発し、搭載する。プラットフォームは今回発表された中で、「GALAXY Note 3 SC-01F」と並び、Android 4.3を採用する。これまでのGALAXYシリーズはハイスペック指向のモデルばかりが続いていたが、もう少しカジュアルに使いたいユーザーの期待に応えられるモデルと言えそうだ。

G2 L-01F(LGエレクトロニクス)

 今年8月に米国ニューヨークで発表されたLGエレクトロニクスのフラッグシップモデルをベースに、ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様を取り込んだモデル。ボディ前面や側面にボタン類がなく、背面中央に電源キーと音量キーを組み合わせたRefined Rear Keyを備える。右手と左手のどちらで持っても人さし指がフィットする位置にレイアウトされており、非常に使いやすい。ボディもバッテリーを固定式にしたことにより、スリムに仕上げられている。G2のボディの厚さは約9.2mmで、今回発表されたモデルには約8mm台の機種もあるが、ラウンドさせた背面のボディ形状により、手に持った印象は他機種よりも確実に薄く感じられる。ディスプレイは他機種よりも大きい5.2インチのフルHD対応IPS液晶を採用するが、ボディの幅はほぼ同等の約71mmに抑えている。カメラも光学手ブレ補正機能を内蔵した1320万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーを採用し、インカメラとの同時撮影などの機能も備える。発売時に公開された実使用時間は約73.1時間を達成しており、実力派の一台と言える。

AQUOS PHONE EX SH-02F(シャープ)

 約4.5インチのフルHD対応IGZO搭載液晶を採用し、487ppiという世界最高クラスの高精細を実現したコンパクトなモデルだ。ボディサイズはiPhoneとほとんど変わらないが、ディスプレイは4.5インチとひと回り大きく、視認性も格段に優れる。ボディ幅も約65mmとスリムなため、手の大きくないユーザーにも持ちやすいが、重量も約122gと軽量であることも特筆に値する。CPUなどのスペックは「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」に準じており、フラッシュROMの容量が16GBであること、カメラが1320万画素の裏面照射型CMOSセンサーであることなどが異なる。日本仕様についてはワンセグ、NOTTV、赤外線通信、おサイフケータイ、防水・防塵など、フル対応となっている。特徴的なのは固定式バッテリーを採用しながら、背面カバーを着脱式にしており、交換用のリアカバーがオプションで販売されることだろう。発売は2014年1月なので、春商戦向けモデルという位置付けになる。ライバルはほぼ同クラスの「Xperia Z1f SO-02F」だが、スペック的にはリードしている部分も多く、市場での評価が気になるところだ。

Disney Mobile on docomo F-03F(富士通)

 カラフルなデザインに、多彩なディスニーコンテンツをプリセットしたモデル。ディズニーモバイルとしては、2013年夏モデルに「Disney mobile on docomo F-07E」がラインアップされていたが、今回はボディ背面のデザインを一新すると共に、ディスプレイもTFTカラー液晶から有機ELに変更するなど、ほぼリニューアルされている。内蔵されるコンテンツのフォントやカメラのフレームなど、さまざまなところにミッキーを登場させるなど、遊びゴコロを感じさせる内容となっている。パッケージにはミッキーヘッド型のスマホピアスが同梱されており、従来モデル同様、スマホピアスの装着に合わせ、画面内で連動する専用アニメーションが表示される。ディズニーファンなら、ぜひともチェックしておきたい一台だ。

N-01F(NECカシオ)

 昨年の「N-01E」から1年ぶりに登場するフィーチャーフォン。NECカシオとしては、スマートフォン事業から撤退したため、今回はこのフィーチャーフォンが唯一の供給モデルということになる。Nケータイでおなじみのハイスペックスリムの路線を継承したモデルで、ディスプレイに約3.4インチのフルワイドVGA液晶を採用するなど、同時に発表されたP-01Fよりもハイスペックな仕様となっている。ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信に対応するほか、IPX5/7の防水にも対応する。バッテリーは1010mAhの電池パックが装備される。800時間という連続待受時間はスマートフォンよりも少し長い程度だが、待機時の動作などが異なるため、スマートフォンよりも確実に長くなる見込みだ。フィーチャーフォンでハイスペックなモデルを継続して利用したいユーザーにおすすめの一台だ。

P-01F(パナソニックモバイル)

 昨年のP-01Eの後継モデルに相当するフィーチャーフォン。NECカシオ同様、スマートフォン事業から撤退したため、パナソニックとしてはこのモデルのみを供給することになる。約3.4インチのフルワイドVGA液晶を採用し、パナソニック製端末でおなじみのワンプッシュオープンも備える。今回のモデルでは新たにBluetooth 2.0+EDRに対応し、Bluetoothヘッドセットなどでの利用が可能になった。ワンセグと赤外線通信には対応するが、おサイフケータイには対応していない。国際ローミングのWORLD WINGも3Gのみに対応するなど、全体的に見て、スペックが抑えられたフィーチャーフォンという位置付けになる。

スマートフォン for ジュニア2 SH-03F(シャープ)

 2013年春商戦向けに発売されたスマートフォン for ジュニアの後継モデル。従来モデルではフィルタリング適用などのため、敢えてWi-Fi非対応としていたが、逆に自宅などでの利用時にWi-Fiが利用できないなどの要望が聞かれたため、今回のモデルではWi-Fiに対応する。Wi-Fiアクセスポイントについても保護者が設定したWi-Fiアクセスポイント以外に利用できないようにするWi-Fi接続先制限も搭載される。フィルタリングについては、ネットスターのブラウザ「ファミリーブラウザ」を搭載することで対応する。従来同様、アプリの利用も制限することができるが、ダウンロードアプリ制限が新たに設定されている。Google Playには非対応だが、NTTドコモが提供するアプリ、microSDメモリーカードに保存したアプリはインストールすることができる。ジュニアユーザーが安心して利用できるだけでなく、保護者が管理しやすく、フレキシブルに対応できるように作り込まれている印象だ。

ARROWS Tab F-02F(富士通)

 2560×1600ドットのWQXGA表示に対応した10.1インチ液晶ディスプレイを搭載したタブレットだ。au向けに供給されるモデルと基本的な仕様は共通となっている。10インチクラスのタブレットはモバイルノートPCの対抗に位置付けられていたものの、重量があまり軽くないうえ、通信費の負担が大きかったため、今ひとつ奮わない印象だった。この「ARROWS Tab F-02F」は9600mAhの大容量バッテリーを搭載しながら、約519gという軽量に仕上げられているうえ、料金面ではスマートフォンといっしょに契約することで、「プラスXi割」の適用が受けられるため、若干、割安に利用できる計算だ。WQXGA表示に対応した液晶ディスプレイを活かすため、ワンセグだけでなく、フルセグの受信にも対応する。本体前面には指紋センサーが内蔵されており、ロック画面からのユーザー切り替えにも対応する。家族で共有するときなどに便利なモデルと言えそうだ。

フォトパネル 06(東芝)

 ワイドVGA表示に対応した約9.0インチTFTカラー液晶を搭載したフォトパネル。ワンセグだけでなく、フルセグの受信にも対応し、東芝のテレビ「REGZA」で培われた高画質技術が活かされている。3Gデータ通信に加え、Wi-Fiにも対応しており、DLNAを利用したLAN上のレコーダーに録画した番組の再生にも対応する。防水にも対応しているため、キッチンなどの水を使うところでの利用も可能にする。緊急地震速報にも対応するなど、シルバー世帯に設置しておく端末としても有効なモデルと言えそうだ。

Wi-Fi STATION L-02F(LGエレクトロニクス)

 Xiの受信時最大150Mbpsのサービスに対応したモバイルWi-Fiルーター。タッチパネル対応の3インチのディスプレイを採用しており、電波状態やデータ通信量などをすぐに確認することができる。3600mAhというスマートフォンを超える大容量バッテリーを搭載しており、スマートフォンに給電するモバイルチャージャー機能も備える。その分、重量はやや重めで、スマートフォンとほぼ変わらない約154gとなっている。公衆無線LANサービスへのブリッジ接続にも対応するほか、Wi-Fi部分は一般的な2.4GHz帯に加え、クレードル装着時には5GHz帯も利用できる。ちなみに、付属のクレードルは有線LANのポートも備えている。データ通信量の制限はあるが、ひとり暮らし世帯のブロードバンド回線としても利用できる環境を整えたモデルだ。

Wi-Fi STATION HW-01F(ファーウェイ)

 Xiの受信時最大150Mbpsのサービスに対応したモバイルWi-Fiルーター。タッチパネルに対応した2.4インチのディスプレイを採用し、電波状態やデータ通信量などをすぐに確認できるが、「L-01F」よりもコンパクトに仕上げられ、ボディカラーも2色をラインアップするなど、ライトに利用したいユーザーのニーズにも応えられるモデルだ。本体ディスプレイに表示されるQRコードを読み取ることで、接続情報を設定できるスマートフォン向けアプリが提供される。Wi-Fi部分は一般的な2.4GHz帯に加え、5GHz帯の屋外の利用もサポートしているが、気象レーダーとの干渉を避けるため、レーダー波を検出したときは電波送信を停止し、他の空きチャンネルを探す仕様となっている。

ライバルとの差別化を図れるか

 冒頭でも触れたように、NTTドコモはこれまで他社との販売競争やMNP獲得競争において、やや後れを取ってきた印象は否めない。他社のアドバンテージであるiPhoneの扱いをはじめたことで、今後、緩やかにMNP獲得競争などで巻き返しをすることになりそうだ。今回発表された2013年冬~2014年春モデルは、内容も充実しており、NTTドコモの反転攻勢を期待させるラインアップと言えそうだ。

 ただ、今回のソフトバンク、au、NTTドコモと続いた発表を振り返ってみると、NTTドコモのラインアップは必ずしも盤石とは言い難い部分もある。

 たとえば、NTTドコモがこれまで自社のみ、もしくは自社中心で扱ってきたGALAXY Noteシリーズ、Xperiaシリーズのフラッグシップモデルを、auも扱うことになったからだ。なかでもGALAXY Noteシリーズについては、元々、同じシリーズを継続して購入するケースが多いと言われ、初代GALAXY Noteから約1年半が経過したことを考えると、ユーザーによってはGALAXY Note 3はNTTドコモからauへMNPして購入するといった動きも考えられる。Xperiaシリーズについても同様だろう。しかも実際の店頭価格を見てみると、ややNTTドコモ扱いのモデルの方が割高になっており、単純に価格だけを比較したとき、これも他社に流れてしまう可能性がある。

 また、その他のモデルについても他社と共通、もしくはほぼ同等と言えるモデルが並んでおり、NTTドコモのみで扱うスマートフォンは「Xperia Z1f SO-02F」くらいしかない。NTTドコモがiPhoneの取り扱いをはじめ、国内の3事業者が揃って、iPhoneを販売するため、逆にiPhone以外をどう揃えていくかがカギになるはずなのだが、今回のラインアップは十分な差別化ができているとは言いにくい。

 そこで、NTTドコモとしては差別化要因のひとつとして、dマーケットを充実させ、docomo IDをオープン化することで、他社からもユーザーを取り込んでいこうという構えなのだろう。しかし、この点については本稿でも触れたように、ビデオや音楽、書籍をいった主要サービスはNTTドコモ以外でも展開しており、内容もそれほど大きく変わらないため、他キャリアのユーザーがわざわざNTTドコモにdocomo IDを登録して、dビデオなどを利用することは少し考えにくい。もちろん、dビデオはコンテンツによって、ダウンロードして利用できるなど、実用面でのアドバンテージはあるが、それは比較して利用したうえで、初めてわかってくるものだ。

 もしかすると、これはNTTドコモとしての悪いクセなのかもしれないが、利用環境を整えれば、ユーザーが動いてくれると考えていないだろうか。たとえば、キャリアフリー化やオープン化をすれば、他社のユーザーもdocomo IDを取得し、dマーケットのコンテンツを楽しんでくれるに違いないと考えていないだろうか。

 もちろん、家族や友だちがすでにdマーケットのコンテンツを楽しみ、積極的に勧めていれば、他キャリアのユーザーが利用してくる可能性は十分にあるだろうが、実際にはなかなかそう簡単には契約してくれそうにない。こうした部分も含め、NTTドコモとして、オープン化を進めていくのであれば、もっと他キャリアのユーザーを中心に、コンテンツに触れる機会を増やすなどの施策を採っていく必要があるはずだが、今回はそういった部分についての説明をまったく聞くことができなかった。自社の顧客だけでなく、全国民向けにサービスを告知していきたいのであれば、もう少し明確にタッチポイントを増やすなどの工夫を考える必要があるだろう。

 さて、今回発表された2013年冬~2014年春モデルは、発表会直後から順次、販売が開始されており、すでに店頭でも実機が試用できる環境が整っている。2013年夏モデルのツートップ戦略ほどの価格差はつかない見込みだが、それでも「おすすめ3機種」として挙げられたモデルについては、他機種よりも1万円以上、割安に購入できている。本誌では今後、各機種のレビュー記事や開発者インタビューなどが掲載される予定だが、ぜひ、それらも参考にしながら、読者のみなさんのお気入りの一台を探していただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。