法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Redmi 12C」、2万円前後で手軽にはじめられる4G対応スマートフォン

 オープン市場向けの魅力的なモデルをはじめ、”神ジューデン”スマートフォンなどのキャリア向けフラッグシップモデルまで、幅広いラインアップを展開するシャオミから、もっともリーズナブルな価格帯の4G対応スマートフォン「Redmi 12C」が発売された。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

シャオミ「Redmi 12C」、168.76mm(高さ)×76.41mm(幅)×8.77mm(厚さ)、192g(重さ)、ミントグリーン(写真)、グラファイトグレー、ラベンダーパープルをラインアップ

スマートフォンの価格帯

 約3年近く続いたコロナ禍もようやく一段落したが、この数年間でスマートフォンの売れ行きには大きな変化が見られた。iPhoneが半数近く占めている構図は相変わらずだが、iPhoneも普及価格帯の「iPhone SE(第3世代)」をはじめ、型落ちの「iPhone 12」シリーズや「iPhone 13」シリーズが売れ筋になり、最新モデルや上位モデルは売れ行きがかなり落ち込んだとされる。

 こうした市場動向の背景には、各社それぞれの事情があるが、共通して言えることは、やはり、販売価格の高騰が挙げられるだろう。当然のことながら、元々、ハイエンドモデルに比べ、ミッドレンジの方が売れる傾向にあるが、国内に限って言えば、数年前まで各携帯電話会社の販売奨励金によって、ハイエンドモデルが安価に購入できたため、価格とスペックのバランスが崩れた状況が続いていた。

 ところが、2019年の電気通信事業法改正により、端末購入時の割引が2万2000円に制限されたため、それまで以上にミッドレンジのモデルが売れるようになった。そこに、コロナ禍による半導体不足や物流の停滞、想定以上の円安など、さまざまな要素が重なったことで、端末価格の高騰を招いたうえ、デザインなどの画一化や没個性が指摘され、ユーザーの関心が薄れてしまった。

 各メーカーもフォルダブルなどの新しい方向性を打ち出したが、価格高騰の影響は大きく、昨年は各社共、ハイエンドモデルの売れ行きが大きく落ち込んでしまった。その一方で、市場ではリーズナブルな価格で購入できるモデルが求められ、各社のラインアップが拡充されつつある。

 今回、シャオミから発売された「Redmi 12C」は、国内で正式に販売されるスマートフォンとしては、おそらくもっともリーズナブルな価格帯のモデルに位置付けられる。シャオミの公式オンラインストアでの価格は2万3800円だが、MVNO各社では1万円台半ばで販売されており、MNPなどの条件が整えば、さらに安価に購入することが可能だ。

 シャオミは2019年に国内市場に参入して以来、オープン市場向けとキャリア向けの両方に幅広い価格帯のモデルを投入する一方、スマートウォッチやスマートバンド、完全ワイヤレスイヤホン、IoT製品などのラインアップも拡充しており、着実に市場での支持を拡大している。

 昨年末にはソフトバンク向けに“神ジューデン”スマートフォン『Xiaomi 12T Pro』を供給し、注目を集めたが、製品のラインアップとしては、上位モデルの「Xiaomi」シリーズ(従来のMiシリーズ)と普及価格帯の「Redmi」シリーズを展開しており、スマートウォッチなどにも同様のネーミングを採用する。今回の「Redmi 12C」は普及価格帯の製品であり、「Redmi Note」シリーズなどよりもさらにリーズナブルな位置付けの製品ということになる。

 こうした安価な端末は、基本的に「できるだけ負担を抑えて、スマートフォンを使いたい」というニーズに応えるための製品だが、昨年の各携帯電話会社の通信障害を受けた2台目需要に応えたり、2024年1月に控えているソフトバンクの3G停波に伴うマイグレーション(3G契約からの移行)端末としても有効だろう。コロナ禍において、リモートワークやテレワークが増え、もう1台の予備端末(回線)を用意しておきたいニーズにも合致する。

テクスチャー仕上げのスリムなデザイン

 まず、外観からチェックしてみよう。本体は幅76.41mm、薄さ8.77mmのスリムなデザインにまとめられている。特徴的なのは背面で、テクスチャー仕上げにより、指紋や手の跡が付きにくくしている。ガラス仕上げを採用し、高級感を打ち出す機種も多いが、逆に日常的に使う端末だからこそ、こうしたテクスチャー仕上げの方が扱いやすいという見方もできる。背面カバーや手帳型カバーを装着してもそれほど厚みを感じさせない仕上がりと言えそうだ。

背面にはカメラと指紋センサーを備える。背面パネルはテクスチャー仕上げにより、指紋や手の跡が付きにくい
左側面は上部側(右側)にピンで取り出すSIMカードスロットを備える
右側面はシーソー式音量キーと電源キーを備える。ボディの左右両端は少しラウンドしている

 耐環境性能はIPX2の防水、IP5Xの防塵に対応するとされているが、IPX2は降雨時に影響を受けないレベルなので、防水というより、防滴レベルと考えておいた方がいいだろう。特に、水没については考慮されていないので、水廻りでの取り扱いには注意したい。

 ディスプレイは720×1650ドット表示が可能なHD+対応6.71インチIPS液晶ディスプレイを採用する。輝度は標準で500nit、コントラスト比は液晶パネルということもあり、1500対1。アスペクト比は20.6対9のワイド表示に対応する。

 最近はミッドレンジのモデルでも有機ELを採用する機種が増え、解像度はフルHD+以上が標準であるため、スペックが抑えられた感は否めないが、HD+という解像度であるがゆえに、バックライト点灯による消費電力増を抑えることができ、後述する大容量バッテリーとも相まって、長時間の利用にはアドバンテージとなる。また、この価格帯としてはかなり大画面サイズということもあり、ブルーライトを抑え、目に優しい読書モードもサポートする。

 バッテリーは5000mAhの大容量バッテリーを採用する。シャオミのカタログ値によれば、34時間の通話、20時間の動画再生、13時間のゲームプレイを可能としているが、実際の印象もディスプレイを頻繁に点灯した使用にもかかわらず、バッテリー消費は緩やかな印象だった。充電は本体下部のmicroUSB外部接続端子を利用し、パッケージには10W対応充電器とUSBケーブルがが同梱される。「Redmi 12C」でもっとも気になる仕様とも言えるのがmicroUSB外部接続端子だろう。

 すでに、市場ではほとんどの新製品がUSB Type-Cに置き換わり、頑なにLightning端子を貫いてきたiPhoneですら、年内に発売される次期モデルでUSB Type-Cに移行すると言われている中、このタイミングでmicroUSB外部接続端子はちょっといただけない印象だ。もちろん、現状ではIoT機器などでもmicroUSB外部接続端子が採用されているため、まったく使われなくなったわけではないが、せっかくUSB Type-Cが普及した状況を鑑みると、残念な印象だ。

下部にはmicroUSB外部接続端子を備える。最近の製品ではほとんど採用されなくなりつつあるが……
上部には3.5mmヘッドフォンジャックを備える

 端子周りでは本体上部に3.5mmヘッドホンジャックを備える。シャオミでは「Xiaomi」ブランドと「Redmi」ブランドで、それぞれ完全ワイヤレスイヤホンをラインアップしているため、音楽や映像を再生するときはそちらを使いそうだが、Bluetoothヘッドセットやイヤホンが利用できないときに有線イヤホンが利用できるのは便利だろう。ちなみに、有線イヤホンを接続したときは、イヤホンをアンテナとして利用し、[FMラジオ]アプリでラジオを聴くこともできる。

 生体認証は背面のカメラ部横に指紋センサーを内蔵し、指紋認証に対応する。指紋認証のレスポンスそのものは十分だが、指紋センサーの位置が本体の背面側でもやや上部に備えられているうえ、指紋センサーのサイズもやや小さいため、筆者のように、やや大きな手のユーザーでなければ、端末を持ち直さないと、指が届かないかもしれない。また、インカメラを利用したAI顔認証にも対応するが、AI顔認証は指紋認証に比べ、安全性は低くなってしまうため、セキュアに使いたいときは指紋認証のみを利用した方がいいだろう。

指紋認証のほかに、インカメラを利用したAI顔認証にも対応。ただし、写真や似た顔でも解除されてしまうリスクがあるため、セキュアに使いたいのであれば、指紋認証のみで利用したい

4Gネットワークに対応

 チップセットはMediaTek製Helio G85を採用する。MediaTek製チップセットは国内での採用例がそれほど多くないが、昨年1月にモトローラが発売した「moto g31」でも採用されている。性能的には米Qualcomm製Snapdragon 6xxシリーズなどと同程度の性能を持つとされており、ブラウザやメール、SNSなどの一般的な用途であれば、ストレスなく使えるパフォーマンスが得られる。

 メモリーとストレージはRAM 4GBとROM 128GB、RAM 3GBとROM 64GBの2つのモデルが販売される。前者はシャオミ公式ストアやAmazonなどで販売されているのに体し、ヨドバシカメラなどの家電量販店やMVNO各社では後者のモデルが販売される。差額は数千円程度だが、予算が許せば、前者のモデルを購入した方が長く使うことができるだろう。外部メモリーは最大1TBのmicroSDXCメモリーカードを使うことができる。メモリーについては本体のストレージの一部を占有し、最大3GBをRAMとして追加できる機能も備える。

 ネットワークは4G LTE(TDD/FDD)/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5Gに対応していないのは残念だが、各携帯電話会社の4Gネットワークのパフォーマンスが十分なうえ、5Gのエリア展開が途上中である状況を鑑みると、価格とのトレードオフで、5G非対応の端末を選ぶという手もアリだろう。ただし、ある程度のパフォーマンスを求めるとなると、数年で買い換えたくなることも念頭に置いておきたい。

 「Redmi 12C」の通信関連で、もうひとつ注目しておきたいのは、SIMカードが2枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時に装着可能なトリプルスロット仕様である点だ。かつてはトリプルスロットの機種がいくつか販売されていたが、外部メモリーに対応する機種が減り、デュアルSIMも2枚目のSIMカードがmicroSDカードと排他利用が主流になり、トリプルスロットの機種はかなり選択肢が少なくなってしまった。

 今後はnanoSIMとeSIMによるデュアルSIMが一段と増えてくることが予想されるが、仕事や契約の関係上、2枚のnanoSIMカードを装着したいというニーズは一定数あると言われ、「Redmi 12C」はそういったニーズに応えられる数少ない機種ということになる。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPNの1ページ目。すでに新規受け付けを終了した「LINE Mobile」が残っている
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPNの2ページ目。「OCN mobile ONE」は新コースでグローバルIPアドレスを割り当てる設定が登録されている。プライベートIPアドレスで接続したいときは「ocn.ne.jp」へ変更する
出荷時に設定されてるau網のAPN。auの「LTE NET for internet」や「uqmobile」、「BIGLOBEモバイル タイプA」などが登録済みだが、かつてのLINEモバイルの「LINE」が残っている
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。「SoftBank 4G」や「Y!mobile」などが登録されている。かつてのLINEモバイルの「LINE」が残っているが、LINEMOのAPNは登録されていない
出荷時に設定されてる楽天モバイル網のAPN。SIMカードを装着し、APNを選んでも接続されなかったが、端末の再起動後に接続された
本体上部の左側面にピンで取り出すタイプのSIMカードスロットをを備える。SIMカードトレイには2枚のnanoSIMカードと1枚のmicroSDメモリーカードを同時に装着できる

 Wi-FiについてはIEEE 802.11a/b/g/n/acに対応し、「Wi-Fi6」とも呼ばれるIEEE 802.11axには対応しない。IEEE 802.11ac(Wi-Fi5)とIEEE 802.11ax(Wi-Fi6)は理論値の通信速度が1.5倍程度の違いがあるものの、実際には多数の機器を無線LANアクセスポイントに接続したときに差が出るとされており、実用面ではそれほど大きな差はないと考えていいだろう。

 ただし、パフォーマンスが求められるようなゲームを楽しみたいのであれば、Wi-Fi6対応の他製品を検討した方が良さそうだ。もっともその場合、無線LANアクセスポイント側もWi-Fi6対応製品が必要になるため、出費はかさむことになる。

5000万画素カメラを搭載

 カメラは本体背面に1/2.76インチ(型)の5000万画素イメージセンサーとF値1.8のレンズを組み合わせたリアカメラ、ディスプレイ上部の水滴型ノッチ内に500万画素のイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせたフロントカメラ(セルフィーカメラ)を搭載する。

 背面のカメラ部は、2つのレンズが見えるが、上部側が5000万画素メインカメラで、下側は8万画素(有効画素248×328)のQVGAレンズで、ポートレート用の補助レンズとして使われる。カタログでは「AIデュアルカメラ」と表記されているが、シングルカメラに補助レンズを組み合わせたものになる。ただ、5000万画素のイメージセンサーも2×2のピクセルビニングで撮影できるため、暗いところでは「ナイトモード」、逆光では「HDRモード」を使うことで、明るく撮影できる。動画についても前後面共に、最大1080P/30fpsでの撮影が可能となっている。

リアカメラは上部側は5000万画素のイメージセンサーを採用したメインカメラ。下側はポートレート撮影時に被写界深度を測る8万画素(有効画素248×328)のQVGAレンズ
薄暗いバーで撮影。やや色合いが薄い印象もあるが、ピクセルビニングの効果もあり、明るく撮影できている

Android 12ベースのMIUI 13を採用

 プラットフォームはAndroid 12ベースのMIUI 13を採用する。基本的な使い勝手は他のシャオミ製端末と同様で、ホーム画面はインストールされたアプリのアイコンが並ぶ「クラシック」、上方向にスワイプして、アプリ一覧を表示する「アプリドロワー」を選ぶことができたり、はじめてのユーザーにもわかりやすい「シンプルモード」もサポートされる。

 ただし、上位機種でサポートされている「クイックボール」や「ビデオ通話のビューティ」、同じアプリを複数のアカウントで使う「セカンド・スペース」などの機能はサポートされない。

ホーム画面にはインストールされているアプリのアイコンが並ぶ。左にスワイプすると、次のページが表示される
画面を下方向にスワイプすると、クイック設定パネルが表示される。Google Payのアイコンが表示されているが、おサイフケータイには対応しない
ランチャーは「クラシック」と「アプリドロワー」から選べる

 アプリについては他のAndroidスマートフォン同様、GmailやGoogleマップ、Googleカレンダーなどのアプリがプリインストールされているが、シャオミ独自の[Miブラウザ]や[Miビデオ]、[ミュージック]などのアプリも用意されるほか、カメラで撮影した写真は独自の[ギャラリー]アプリで確認できる。ユーザーの好みもあるが、写真を表示するアプリがGoogleフォトに統一されるなど、Androidプラットフォームのアプリが画一化されている状況を鑑みると、こうしたシャオミ独自のアプリは意外に貴重な存在と言えるのかもしれない。

ジェスチャー操作によるショートカットも用意される。ライトやカメラ起動、スクリーンショットなどはよく使うので、操作を覚えておきたい
Android 12ベースのMIUI 13を搭載。今回試用した製品はRAM 4GB/ROM 12GBのモデルで、すでに2023年3月のセキュリティアップデートが適用されている
本体のストレージの一部をRAMに割り当てる「メモリ増設」。RAM 4GBのモデルなので、最大7GBまで拡張できる

2万円前後ではじめられる4G対応スマートフォン

 登場から十数年を経て、スマートフォンは多くの人にとって、もっとも身近なデジタルデバイスとして、普及してきたが、国内では電気通信事業法改正による割引制限、半導体や物流コストの高騰、円安などの影響を受け、端末そのものの価格も全体的に高くなってしまった。

 今回、取り上げたシャオミの「Redmi 12C」は、そんな国内市場において、2万円前後というもっともリーズナブルな価格設定で販売される端末になる。スペックとしてはミッドレンジというより、エントリークラスに近いものだが、カメラやディスプレイサイズなどは必要とされるスペックを満たしており、一般的な利用であれば、十分に実用になるレベルに仕上げられている。microUSB外部接続端子やHD+対応ディスプレイなど、仕様面でやや物足りなさが残る部分もあるが、2万円前後で購入できるのであれば、ひとつの選択肢として検討できる一台と言えそうだ。

パッケージには本体のほかに、10Wの充電器、USBケーブル、クイックスタートガイドなどが同梱される。カバー類は同梱されない