法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Xiaomi 12T Pro」の『神ジューデン』は日本のユーザーにどこまで響くか?

 昨年12月8日、シャオミとソフトバンクはフラッグシップモデル「Xiaomi 12T Pro」の国内向け発売を発表した。19分で100%まで充電できるハイパーチャージ(急速充電)を『神ジューデン』と名付け、ソフトバンクとオープンマーケット向けに展開する。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

ソフトバンク/シャオミ 「Xiaomi 12T Pro」、163mm(高さ)×76mm(幅)8.8mm(厚さ)、205g(重さ)、ブルー(写真)、ブラックをラインアップ

120W急速充電対応の『神ジューデン』スマホ登場

 あらためて説明するまでもないが、スマートフォンを動作させるには、当然のことながら、『電気』が必要になる。この『電気』を本体に内蔵されたバッテリーに蓄える動作を『充電』と呼ぶ。スマートフォンが登場したばかりの頃は、かつてのケータイ(フィーチャーフォン)に比べ、電力消費が著しく、丸一日は使えない製品が数多く存在した。AndroidもiOSもプラットフォームでの省電力技術が改良され、ディスプレイやチップセットなど、スマートフォンを構成するデバイスでも省電力性能に優れたものが登場し、大容量バッテリーが搭載されるようになったことで、徐々にバッテリー駆動時間に対する不満は改善されつつある。

 バッテリー駆動時間を延長化するため、大容量バッテリーを搭載したモデルが増えたが、電気を蓄えておくための『器』が大きくなるということは、そこに電気を蓄える『充電』に必要とされる時間もおのずと長くなる。かつては10W程度のACアダプターで充電していたが、2012年に米QualcommがSnapdragon搭載端末向けに急速充電技術「Quick Charge(QC)1.0」を提供した頃から、徐々に急速充電が注目されるようになり、最近ではほとんどのスマートフォンが20W程度で充電できる。ちなみに、Quick Chargeについては、本誌の「ケータイ用語の基礎知識」の「第812回:Quick Charge 4/Quick Charge 4+とは」で解説されているので、そちらをご参照いただきたい。

 今回、シャオミとソフトバンクから発売された「Xiaomi 12T Pro」は、シャオミが昨年10月にグローバル向けに発表していたフラッグシップモデル「Xiaomi 12T」シリーズの国内向けモデルで、おサイフケータイに対応するなど、日本仕様を一部、サポートしている。今回の「Xiaomi 12T Pro」でもっとも強くアピールされているのが19分で100%まで充電できる急速充電だ。

 年末年始にテレビCMなどを見かけた人も多いだろうが、ソフトバンクは「Xiaomi 12T Pro」の急速充電を『神ジューデン』と名付け、積極的にプロモーションを展開している。ソフトバンクとしてはかつてのJ-フォンの『写メール』と同じように、『神ジューデン』を共通の訴求ポイントとしてアピールし、今後は「Xiaomi 12T Pro」以外にもラインアップを拡大していきたい考えだという。

 今回の「Xiaomi 12T Pro」は、携帯電話会社としてはソフトバンクが独占的に取り扱うものの、シャオミとしても公式ストアをはじめ、家電量販店やMVNO各社を通じて、オープンマーケット版を販売する。ソフトバンク版とオープンマーケット版は基本的にストレージとプリインストールされるアプリのみで、それ以外の仕様は共通となっている。

 価格はソフトバンク版の14万3280円に対し、オープンマーケット版は10万9800円で、販路によってはポイント還元などが提供される。ソフトバンク版は「新トクするサポート」での購入が可能で、月々2985円の48回払いのうち、24回支払い後、端末を返却すれば、実質負担額は7万1640円に抑えられる。同等のチップセットを搭載した他社製品に比べ、割安な価格が設定されているが、オープンマーケット版との差額は3万円強と大きいものの、1月31日までの購入であれば、抽選で最大3万円相当のPayPayポイントがもらえるキャンペーンも実施している。

マットな仕上がりが美しいボディ

背面は指紋や手の跡が残りにくいマットな仕上がり。サラッとした触り心地

 まず、外観からチェックしてみよう。現在、シャオミは国内向けに「Xiaomi」シリーズと「Redmi」シリーズを展開しており、ボディの基本的なデザインコンセプトは共通化されている。背面は両側端へ向けて、わずかに湾曲した形状で、指紋や手の跡が残りにくいマットな仕上がりとなっている。パッケージにはクリアタイプの保護ケースも同梱されている。重量は205gだが、このクラスの端末としては標準的なものであり、胸ポケットなどに入れておいてもそれほどかさばる印象はない。

本体左側面には何もボタン類がない。背面は側面へ向けて、わずかに湾曲している
本体右側面には電源ボタン、シーソー式音量キーが並ぶ。カメラ部の突起は本体よりも3.4mm程度(実測)。同梱のクリアケースを装着すれば、気にならないレベル

 ディスプレイはフルHD+対応6.67インチCrystal Res有機ELディスプレイ(AMOLED)を搭載し、出荷時には実使用が可能な保護フィルムが貼られている。リフレッシュレートは最大120Hzで、出荷時は利用状況に応じて、動的にリフレッシュレートを調整するように設定されている。カスタム設定を選ぶことで、60Hzと120Hzのいずれかで動作させることも可能だ。タッチパネルのタッチサンプリングレートは最大480Hzに対応する。

 常時オンディスプレイにも対応し、端末を持ち上げたり、ダブルタップでスリープを解除する設定もできる。画面に表示するコンテンツに合わせ、色彩やテクスチャを見やすく調整する「読書モード」、ディスプレイの色彩を時間帯や好みに合わせて変更する「ライトモード」「ダークモード」などもサポートされる。

本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える
本体上部にはマイクやスピーカーが内蔵される。カメラ部側の黒い楕円は赤外線ポートで、[Mi リモート]アプリで家電製品のリモコン操作が可能

 耐環境性能としては、IPX3防水とIP5X防塵に対応する。IPX3はソフトバンクが「鉛直から両側60度の範囲から水を噴霧しても本商品としての機能を有する」とうたっているため、防水というより、防滴レベルだと考えた方が良さそうだ。降雨時の利用は可能なものの、風呂での使用や水没などは避けるべきだろう。シャオミとしては「Redmi Note 10T」でIP68準拠の防水防塵に対応しているので、今後のモデルはぜひ同レベルの対応を期待したいところだ。

 生体認証はディスプレイに内蔵された光学式指紋センサーによる指紋認証に対応する。従来の「Xiaomi 11T Pro」は側面の電源ボタンに指紋センサーを内蔵していたが、画面内指紋センサーに切り替えたことになる。ディスプレイに内蔵された光学式指紋センサーは、指先の状態によって、2~3回、当て直すこともあるが、実用面では電源ボタン内蔵の指紋センサーと比べ、それほど大きな差はない。ただ、「Xiaomi 12 Pro」の指紋センサーは、画面内の位置がやや下側に寄っている印象で、その部分は少し慣れが必要になるかもしれない。ちなみに、[設定]アプリの[特別な機能]-[心拍数]を選ぶと、光学式指紋センサーに指先を当てて、心拍数を計測できる。

画面内指紋センサーを利用した心拍数の測定も可能

19分でフル充電ができる『神ジューデン』

 さて、今回の「Xiaomi 12T Pro」でもっとも強くアピールされている機能と言えば、やはり、充電だろう。本体には5000mAhの大容量バッテリーが内蔵されており、パッケージに同梱された120W専用急速充電器とUSBケーブルを使うことで、19分で100%まで充電できる急速充電に対応する。

 ソフトバンクは前述のように、この急速充電を『神ジューデン』と名付け、杉沢亮さんと杉咲花さんを起用したCMを制作。「♪ジューデン、ジューデン、ジューデン、神ジューデーン♪」という歌を交えながら、充電を忘れても身支度をしている間にすぐに充電できたというシーンを描いている。少し話を脱線すると、このCMで使われている楽曲は、1960年頃に放映された西部劇「ローハイド」のテーマ曲「ローハイド」(歌:フランキー・レイン)のメロディをベースにしたもので、元の楽曲では「ローレン、ローレン、ローレン♪」とリフレインされていた部分を「ジューデン」に置き換えている。筆者は少し世代が合わないが、さまざまなアーティストにカバーされた楽曲なので、耳にしたことがある人も多いだろう。

 話を充電に戻すと、実はシャオミが急速充電に対応するのは、今回の「Xiaomi 12T Pro」がはじめてではなく、従来の「Xiaomi 11T Pro」も5000mAhの大容量バッテリーを搭載し、同梱の120W有線充電器を使い、17分で100%の充電を可能としていた。充電時間に2分の差はあるが、これは「Xiaomi 11T Pro」が2つの2500mAhのセルで構成されていたのに対し、「Xiaomi 12T Pro」は1つの5000mAhのバッテリーセルが採用されていることに起因するようだ。いずれにせよ、今回の「Xiaomi 12T Pro」でも従来の「Xiaomi 11T Pro」とほぼ同等の仕様が継承されたわけだ。

 高出力での充電については、バッテリーへの負荷などが気になるが、シャオミによれば、本体には9個の温度センサーを内蔵し、42の安全機能によって、800回の充電サイクルを保証するとしている。単純に計算して、1日1回の充電で2年以上は使えるわけだ。スマートフォンの電源周りでは充電時の熱対策が重要とされ、他メーカーでも温度センサーの数や配置を細かく調整して監視すると話しており、「Xiaomi 12T Pro」も同様の対策を施したことになる。過充電の保護などについても対策しているとしており、ソフトバンクでも安定した動作を確認したとコメントしている。

同梱の120W専用充電器とUSBケーブルを使い、『神ジューデン』を試してみた。ほぼ放電した状態では、画面中央に表示されるアイコンにも残量が表示されない。計測はXiaomi Watch S1のストップウォッチ機能を利用

 気になる実際の充電時間についてだが、今回は筆者が購入したオープンマーケット版を使い、「Xiaomi 12T Pro」をバッテリー切れの状態にしてから、同梱の120W専用充電器とUSBケーブルで充電をしてみた。まず、端末本体と充電器をUSBケーブルで接続したところ、本体が放電しきった状態のため、画面には何も表示されず、電源ボタンを短く押すと、バッテリーがないことを表わすアイコンが表示された。

充電を開始して、2分を過ぎると、「mi」アイコンが表示された後、ようやく画面に残量がアイコンとともに表示された

 充電開始から2分ほど経つと、画面にシャオミの「mi」ロゴが表示された後、バッテリーのアイコンが残量の「2%」といっしょに表示された。その後、充電は進んでいくが、端末の電源は切れたままで、自動的に電源が入ることはなかった。画面表示も消えてしまうため、電源ボタンを短く押し、画面を点灯させながら、バッテリー残量を確認した。10%程度まで充電するのに約4分弱、50%程度までが約10分程度、80%までが約18分程度で、最終的に100%まで充電するには約23分30秒だった。謳い文句の「19分で100%」には及ばないが、これはカタログ値が2%~100%までの最短充電時間を表わしているためで、今回のように端末のバッテリー残量がなくなり、電源が切れた状態では、充電時間が少し長くなるためだろう。

充電開始から16分経過で、約71%まで充電できた
充電開始から23分30秒程度で、100%表示になり、充電完了。カタログ値と違うのは、スタート時のバッテリー残量や周囲の温度などの違いによるものと推測される

 実際の利用環境を考慮し、条件を変えた状態でも『神ジューデン』を試してみた。1回目は充電器を接続してから充電が完了するまで、端末の電源は入っていない(Androidが起動していない)状態だったが、2回目は前夜に充電を忘れた人の実使用に近い環境を考慮し、充電開始から10分経過後、端末を起動し、充電を継続してみた。電源投入時のバッテリー残量は40%で、端末を起動していないときに比べ、やや充電の速度が落ちたものの、23分弱で80%、28分で充電完了という結果になった。

条件を変えて、充電を開始して、10分経過後に電源を入れ、端末(Android)を起動。このとき、バッテリー残量は41%だった
端末を起動していないときの充電に比べ、少し時間はかかったものの、19分の段階で68%まで充電ができた
10分経過後に端末を起動しても約28分で充電は完了。本体もほんのり暖かくなる程度で、発熱はほとんど気にならなかった

 これらのことからもわかるように、実際に充電するときの環境や端末の状態によって、多少の差があるものの、「Xiaomi 12T Pro」は早ければ20分程度、端末が起動した状態でも30分もあれば、フルに充電できると言えそうだ。

 では、『神ジューデン』と名付けられた急速充電の実用性をどう考えるか。CMでも説明されているように、前夜に充電を忘れてしまったようなシチュエーションでは、朝の身支度を調える間に、短時間で充電できるため、かなり有用と言えるだろう。シャオミ製端末に限った話ではないが、Impress Watch Video「法林岳之のケータイしようぜ!!」でも以前から急速充電対応の端末を説明するとき、MCの篠崎ゆきさんと菅谷はつ乃さんが「朝、着替えて、お化粧する間に充電できますね」とコメントしており、今回のソフトバンクのCMは、まさにその表現がそのまま活かされた印象だ。

 ただ、いくつか気になる点もある。「Xiaomi 12T Pro」は5000mAhの大容量バッテリーを搭載しているため、朝、フル充電にしておけば、一般的な利用の範囲なら、おそらく終日は持つだろう。しかし、日中に動画やゲームをたくさん楽しんだり、朝の段階でフル充電にできなかったときは、夕方以降にバッテリー残量が心許なくなることも考えられる。

同梱の120W専用充電器とUSBケーブルで充電をすると、「120W」の表示とともに、バッテリー残量は小数点以下2桁を含めた表示で、グングンとカウントアップしていく

 そんなときは『神ジューデンで!』と行きたいところだが、意外にその負担が大きい。まず、同梱の120W専用急速充電器はプラグが折りたたみ式ではなく、サイズも64mm×60mm×28.5mm(プラグを除く)と大きいうえ、重量も約180g(実測)とやや重め。『神ジューデン』には同梱のUSBケーブルも必要で、こちらは約32g(実測)なので、外出時に『神ジューデン』をするには、合計200g強のアイテムを持ち歩く必要がある。旅行や出張であれば、これらのセットを持っていくのも手だが、普段は同梱の120W専用急速充電器とUSBケーブルを自宅用として使い、外出時にはもう少しコンパクトな市販のUSB充電器などを持ち歩いた方がいいだろう。最近は65W出力に対応したGaN(窒化ガリウム)採用のUSB PD対応USB充電器とUSB Type-Cケーブルの組み合わせても4000円程度で購入できるので、AmazonなどのECサイトをチェックしてみるといいだろう。

 また、これはユーザーの使い方次第だが、一般的に圏外と圏内が頻繁に切り替わるなど、ネットワークが不安定な環境ではバッテリー残量も減りやすい傾向にあるが、国内主要3社のネットワークは諸外国に比べ、十分なエリアを確保されており、圏外になってしまうケースも限られている。それに加え、国内のカフェなどでは電源コンセントや充電用USBポートが用意されており、飛行機や長距離バスなどの公共交通機関でも充電用USBポートが備えられているなど、USBケーブルが1本あれば、いつでも充電できる環境が整いはじめている。そのため、ユーザーにどれだけ『神ジューデン』が響くかは、まだ未知数だ。

パッケージには本体のほかに、120W専用充電器、USB Type-Cケーブル、クリアカバーなどが同梱される

米Qualcomm製Snapdragon 8+ Gen1を搭載

 その他のハードウェアもチェックしてみよう。チップセットは現在のフラッグシップに位置付けられる米クアルコム(Qualcomm)製「Snapdragon 8+ Gen1」を採用し、メモリーとストレージはオープンマーケット版が8GB RAMに128GB ROM、ソフトバンク版は8GB RAMと256GB ROMで構成される。外部メモリーカードには対応していないため、より多くのコンテンツを保存しておきたいのであれば、ソフトバンク版を選ぶことになる。

 ネットワークは5G NR/4G LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応しており、4×4 MIMOに対応する。5Gについては国内各社のバンドに対応するが、NTTドコモの「n79」には対応しない。SIMカードはnanoSIMとeSIMのデュアルSIMで、シャオミのグローバル向けWebページによれば、日本国内でのeSIMの利用については、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルをサポートするとしている。ただし、実際の利用はついては、各社の対応状況を確認することをおすすめしたい。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetoothは5.2に対応する。

本体下部にnanoSIMカードを1枚のみ、装着可能なSIMカードトレイを備える。2枚目のSIMカードはeSIMで利用できる
出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。OCNモバイルONEは新コースのAPNが登録されているが、2022年6月に発表されたプライベートIPアドレスが割り当てられるAPN(ocn.ne.jp)は登録されていない。バッテリー消費を抑えたいときはプライベートIPアドレスが割り当てられるAPNへの変更がおすすめだ
出荷時に設定されてるau網のAPN。auの「5G NET」をはじめ、「IIJmio」や「mineo」など主要MVNO各社のAPNも登録されている。UQモバイルも一覧に表示されているが、UQモバイルのSIMカードを挿すと、自動的に認識され、au網を利用した他のAPNは表示されない
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ソフトバンクとワイモバイル、「mineo」が登録されているが、2021年3月末に新規受け付けを終了したLINEモバイルの「line.me」が残っている一方、「LINEMO」は登録されていない。ソフトバンクでも扱うのだから、LINEMOのAPNは出荷時に登録しておくべきではないだろうか?
楽天モバイルのSIMカードを挿すと、自動的に楽天モバイルのAPNが設定された

 サウンドはHarman Kardonによってチューニングされ、Dolby Atmosに対応する。本体にデュアルスピーカーを内蔵するが、3.5mmイヤホンマイク端子は備えていない。有線イヤホンを利用したいときは、本体下部のUSB Type-C外部接続端子に3.5mmイヤホンマイク端子変換コネクタなどを接続する。ちなみに、本体にはDACを内蔵しているため、DACのないUSB Type-C/3.5mmイヤホン変換アダプタやイヤホンマイクを接続してもサウンドは再生される。

ホーム画面は従来のシャオミ製端末とほぼ同じデザイン。右上に天気、左上に日時が表示され、それぞれをタップすると、[天気]アプリと[時計]アプリが起動する

 プラットフォームはAndroid 12ベースの「MI UI 13」を搭載する。ユーザーインターフェイスは基本的にAndroid標準に準拠しており、ホーム画面はホーム画面にアプリが並ぶ「クラシック」、ホーム画面を上方向にスワイプしてアプリ一覧を表示する「アプリドロワー」が選べる。「クラシック」を選んだ状態では上方向にスワイプすると、[検索]が表示されるが、設定をオフにもできる。[システムナビゲーション]は[ボタン]と[ジェスチャー]が選べたり、ホーム画面のアイコンサイズやレイアウトも変更できるなど、カスタマイズがしやすいため、他機種からの乗り換えユーザーのニーズにも応えられる。

ホーム画面のモードは「クラシック」と「アプリドロワー」から選ぶことができる
テキストやアイコンを大きく表示する「シンプルモード」も設定可能。[設定]アプリの[特別な機能]-[シンプルモード]で設定できる
コントロールセンター(通知パネル)は画面右上から下方向にスワイプすると、表示される。左上から下方向へのスワイプは通知が表示される。[設定]アプリの[通知とコントロールセンター]-[コントロールセンターのスタイル]でカスタマイズ可能
[設定]アプリの項目や表示順は一般的なAndroidプラットフォームと少し異なるが、慣れてしまえば、それほど気にならない

 [設定]アプリの一覧表示は、相変わらず、Android標準に比べ、内容や並びが異なるが、項目を確認すれば、それほど迷うこともない。便利な独自機能も充実しており、[設定]アプリの[追加設定]-[ジェスチャーショートカット]では、[背面タップ]で[カメラ]や[電卓]を起動したり、[スクリーンショットを撮影]が設定できる。同じく[設定]アプリの[特別な機能]では、通知を長押しして、アプリをウィンドウ表示する[フローティングウィンドウ]、画面の側面からタップして、よく使うアプリの起動などができる[サイドバー]などの機能も利用できる。

Androidプラットフォームのシステムナビゲーションは、[ボタン]と[ジェスチャー]を選べる
背面を2回タップ、3回タップに、[スクリーンショットを撮影]や[カメラを起動]などの機能を割り当てられる
[サイドバー]を有効にすれば、画面の左端から内側にスワイプしたときに、サイドバーを表示可能。よく使う機能などを登録しておくと便利だ
通知を長押しして、プルダウンすると、アプリをフローティングウィンドウで表示することが可能

国内初の2億画素カメラ搭載

 『神ジューデン』による急速充電ばかりがアピールされている「Xiaomi 12T Pro」だが、本来、この端末でもっとも注目すべき点は、国内初の2億画素イメージセンサーを採用したカメラかもしれない。

背面のカメラ部はもっとも口径の大きなものが2億画素イメージセンサーを利用した広角カメラ。その下に備えられているのが800万画素広角カメラと200万画素マクロカメラ

 背面に搭載されたトリプルカメラは、2億画素/F1.69の広角カメラ、800万画素/F2.2の超広角カメラ、200万画素/F2.4のマクロカメラで構成され、ディスプレイ上部のパンチホール内には2000万画素/F2.24のフロントカメラが搭載される。

[カメラ]アプリを起動し、右上のメニューをタップすると、アイコン表示の設定メニューが表示される。画面は[写真]モードの設定メニュー。三段目の[設定]をタップすると、[カメラ設定]の画面が表示される
[ビデオ]モードで右上のメニューをタップしたときに表示される設定メニュー。従来の「Xiaomi 11T Pro」からシンプルな構成に変更された。より詳細な設定は三段目の[設定]をタップすると、表示される

 撮影モードとしては「写真」「ビデオ」「ポートレート」「夜景」などのほかに、露出やシャッタースピードなどを細かく設定できる「プロ」、文書の撮影に便利な「ドキュメント」があり、「もっと見る」をタップすると、「ウルトラHD」「Vlog」「デュアルビデオ」など、多彩なモードを選ぶことができる。

[カメラ]アプリを起動し、設定メニューから[設定]を選ぶと表示される[カメラ設定]の画面。[モーショントラッキングフォーカス]はグレーアウトしているが、[ビデオ]の設定メニューで[30fps]を選ぶと、設定できる
[カメラ]アプリを起動し、撮影モードの切り替えで[もっと見る]を選び、[ウルトラHD]を選ぶと、2×2ビニングで撮影が可能。このときの解像度は「6144×8192ドット」

 まず、背面の広角カメラは、国内初の2億画素イメージセンサーを採用する。画素数が多ければ、高画質になるわけではないが、最近のスマートフォンに搭載されるイメージセンサーには、大きく分けて、2つの方向性がある。ひとつは「AQUOS R7」や「Leitz Phone 2」のように、コンパクトデジタルカメラに匹敵する1インチ(1.0型)イメージセンサーに代表される大型センサーで、ソニーが製造している。もうひとつはイメージセンサーを高画素化する方向で、昨年、いくつかのスマートフォンのカメラに採用されたサムスン製の1億800万画素イメージセンサーなどが代表例だ。今回の「Xiaomi 12T Pro」には、この1億800万画素イメージセンサーの後継となる2億画素イメージセンサーが搭載されたわけだ。

[カメラ]アプリを起動し、撮影モードの[もっと見る]で[ウルトラHD]を選んだ後、画面上段の[200MP]をタップすると、2億画素イメージセンサーでビニングを使わずに撮影できる。画面上段に「環境が明るいことを確認してください」と注意が表示される。このモードでの撮影時の解像度は「12288×16384ドット」

 一般的に、イメージセンサーが高画素になれば、より細かな情報を記録できるというメリットがある反面、限られたイメージセンサーのサイズ(面積)ではひとつの画素で取り込める光の量が少なくなるため、室内では暗くなってしまったり、感度を上げることで、ノイズが増えるなどのデメリットがある。そこで、格子状に並んだイメージセンサーの画素の4つ(2×2)や9つ(3×3)をひとつの画素として使い、より多くの光を取り込めるようにする「ビニング」や「ピクセルビニング」と呼ばれる機能が搭載されており、ソニーの「Quad Bayer」カラーフィルター配列などが知られている。

 このビニング機能を持つイメージセンサーのカメラでは、5000万画素のイメージセンサーの場合、ビニング機能を使わないときは「6144×8160ドット」(5013万5040ドット)の画像が生成されるのに対し、ビニングを有効にしたときは「3072×4080ドット」(1253万3760ドット)の画像が生成される。解像度としては4分の1になるが、より多くの光を取り込めるため、暗いところで撮影しても明るく撮影できるわけだ。

カメラのユーザーインターフェイスでは、他社製品でも知られている表示だが、被写体の眼にフォーカスを合わせた表示が実装されている

 今回の「Xiaomi 12T Pro」の広角カメラに採用された2億画素イメージセンサーは、センサーサイズが1/1.22インチと大きく、画素ピッチは標準で0.64μmだが、2×2のビニングでは画素ピッチが1.28μm、4×4のビニングでは2.56μmで撮影することが可能。[カメラ]アプリを起動した状態では4×4ビニングで撮影されるが、[もっと見る]で[ウルトラHD]を選ぶと、2×2ビニングの「5000万画素超HDモード」で撮影され、さらに[ウルトラHD]選択後の画面上段の[200MP]を選ぶと、ビニングを使わない「2億画素超HDモード」状態で撮影されるというしくみだ。ちなみに、[200MP]を選んだときはファインダーに「環境が明るいことを確認してください」と表示されるが、これは前述のように、2億画素のまま、撮影すると、暗くなってしまうことを注意するためだ。

周囲のブルーのイルミネーションの影響を受けたが、背景がうまくボケたポートレートを撮影できた。モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション
被写体に少し寄って、ポートレートで撮影
少し離れた位置からポートレートで撮影。被写体の全身をしっかりと捉えつつ、背景をぼかした写真を撮ることができた
インカメラで撮影。手のひらを拡げて撮影する「手のひらシャッター」も利用可能

 今回は晴天時の午後から夕刻にかけて撮影したが、「2億画素超HDモード」でもそれほど暗くなることはなく、十分な解像感の写真を撮ることができた。標準の4×4ビニングでも非常にきれいで、イルミネーションをバックにしたポートレートなども背景の明かりが丸くぼけ、雰囲気のある写真を撮ることができた。

[カメラ]アプリを起動し、撮影モードで「写真」を選んだ状態で撮影。4×4ビニングで撮影されるため、撮影解像度は「3072×4096ドット」になる
[カメラ]アプリを起動し、撮影モードの切り替えで[もっと見る]を選び、[ウルトラHD]を選んだ状態で撮影。2×2ビニングで撮影されるため、撮影解像度は「6144×8192ドット」になる
[カメラ]アプリを起動し、撮影モードの[もっと見る]で[ウルトラHD]を選んだ後、画面上段の[200MP]を選び、「2億画素超HDモード」で撮影。ビニングを使わずに撮影され、撮影解像度は「12288×16384ドット」になる。ファイルサイズは約50MBと大きい

 撮影した画像は従来のシャオミ製端末同様、[ギャラリー]アプリで確認でき、トリミングやフィルター、調整、落書き、モザイクなどの編集機能を使うことができる。Googleアカウントを設定すれば、Googleの[フォト]アプリを使うことも可能だ。

いつもの薄暗いバーで撮影。カクテルグラスをくっきり捉え、背景もぼかして、撮影できている
撮影した写真は[ギャラリー]アプリで確認できる。1~6枚の写真を選んで作成できる「コラージュ」をはじめ、[切り抜き]や[アート]などの編集機能も利用できる

『神ジューデン』だけじゃない! 内容充実のフラッグシップモデル

 冒頭でも触れたように、スマートフォンを使うには『電気』が必要になる。ケータイからスマートフォンへの移行がはじまった頃は、電池持ちの悪さ(バッテリー駆動時間の短さ)を嘆く声が数多く聞かれたが、端末やプラットフォームの省電力性能が改善され、バッテリーの大容量化が進んだことで、ほとんどのモデルが丸1日程度、利用できるようになってきた。しかし、『電気』を蓄えるための『充電』については、USB PDによる急速充電やQi準拠のワイヤレス充電などが注目されてきたものの、製品として、急速充電を積極的に訴求する端末はそれほど多くなかったのが実状だ。

 そんな中、今回の「Xiaomi 12T Pro」は従来の「Xiaomi 11T Pro」に続き、120W対応USB充電器による急速充電を搭載し、19分で100%まで充電できる環境を整えている。ソフトバンクもこの急速充電を『神ジューデン』を名付け、積極的にアピールする構えだ。前夜に充電器にセットすることをを忘れてしまったとき、朝の身支度を調える短時間で充電できるのは、忙しいユーザーにとって(うっかりなユーザー!?)、魅力的な機能と言えるだろう。ソフトバンクとして、今後、「Xiaomi 12T Pro」以外にも『神ジューデン』対応のスマートフォンのラインアップを拡充していくのも楽しみだ。

 ただ、「Xiaomi 12T Pro」の魅力は『神ジューデン』だけでなく、フラッグシップのチップセットであるSnapdragon 8+ Gen1を搭載しながら、10万円強で購入できるコストパフォーマンス、国内初登場となる2億画素イメージセンサーを採用したカメラなど、さまざまな魅力がある。防水ではなく、防滴対応であること、出荷時のAPN設定など、細かい部分に気になるポイントもあるが、それを補って余りある魅力を持ち合わせたモデルと言えるだろう。『神ジューデン』だけじゃない「Xiaomi 12T Pro」の充実した機能を一度、チェックしてみていただきたい。