法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

OPPO A77、トリプルスロットで「まだまだ4G」のニーズに応える

 国内でリーズナブルな価格のスマートフォンやIoT製品を展開するOPPO。日本仕様に答えた主力モデルの「OPPO Reno7 A」が好調な中、もっともリーズナブルな価格帯に位置付けられる「OPPO A」シリーズの新モデル「OPPO A77」が発売された。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

オウガ・ジャパン 「OPPO A77」、163.7mm(高さ)×75.0mm(幅)×8.0mm(厚さ)、187g(重さ)、ブルー(写真)、ブラックをラインアップ

そろそろ5Gか、まだまだ4Gか

 国内では2020年3月に各社が提供を開始した5Gサービス。当初はエリアの展開に苦しんだものの、4G向け周波数帯域の一部を5G向けでも利用する「転用」がスタートしたことで徐々にエリアを拡げ、最近ではG対応端末でアンテナピクトに「5G」を見かけることが増えてきた。

 しかし、その一方で、5Gならではのサービスはこれといって目立ったモノがないうえ、パフォーマンスについてもピーク時を除けば、4Gネットワークでもまったくストレスなく使えるといった声も多く、「敢えて、まだ5Gにしない」という選択もあり得る状況になっている。また、auはすでに終了したものの、ソフトバンクは2024年1月、NTTドコモは2026年3月に3G停波を控えており、3Gユーザーの乗り換え先として、安価な4G対応端末の需要もあるとされる。

 今回、オウガ・ジャパンから発売された「OPPO A77」は、4Gネットワークに対応したモデルになる。OPPOの国内向けのラインアップとしては、フラッグシップの「OPPO Find X」シリーズ、主力となる「OPPO Reno」シリーズ、エントリーラインでもっともリーズナブルな「OPPO A」シリーズがあり、「OPPO A」シリーズとしては、これまでに「OPPO A73」や「OPPO A54 5G」、「OPPO A55s 5G」を展開してきた。

 2020年12月発売の「OPPO A73」は4G LTE対応だったが、「OPPO A54 5G」と「OPPO A55s 5G」はそのネーミング通り、5G対応端末となっており、今後は5G対応モデルへ移行するのかと思いきや、意外にも今回は4G LTE対応の「OPPO A77」を送り出してきた。しかし、前述のように、「まだまだ4G」と考えるユーザーも居るうえ、5Gを活かしたサービスなどが少ない状況を鑑みると、敢えて、このタイミングで4G LTE対応端末を選ぶニーズもありそうだ。

 また、価格面でのアドバンテージも大きい。オープン市場向けに展開される「OPPO A77」は家電量販店で2万円台半ば、MVNO各社での新規契約やMNPを利用した契約では1万円を切る価格でも販売されており、とにかくリーズナブルな端末が欲しいというユーザーにとっては、懐にやさしい価格設定となっている。

 ちなみに、販路についてはIIJmioやOCNモバイルONE、mineoなどのMVNO各社をはじめ、ヨドバシカメラやビックカメラなどの家電量販店、Amazon.co.jpやひかりTVショッピングなどのECサイト、Yahooショッピングと楽天市場のOPPO公式ショップ、オウガ・ジャパン自ら運営するOPPO公式オンラインショップがあり、幅広いルートで購入することができる。

OPPO Glow仕上げのスリムなボディ

「OPPO A77」(手前)と「OPPO Reno7 A」(奥側)。カメラ部は異なるが、基本的なデザインは同じようにまとめられている。背面の仕上げもOPPO Glowを採用

 まず、ボディからチェックしてみよう。OPPOのラインアップはそれぞれの時期のトレンドを取り込んだデザインを採用しているが、ここ数年を振り返ってみると、「OPPO Reno5 A」や「OPPO Find X3 Pro」など、滑らかな曲線を活かした背面デザインが特徴的だったが、今年の「OPPO Reno7 A」では側面をほぼ垂直に切り落としたようなソリッドなデザインを採用するなど、少しデザインのテイストを変えてきている。

背面は「OPPO Glow」と呼ばれるテクスチャー処理により、指紋や手の跡が目立たない仕上がり
「OPPO Glow」は表面にこうした細かい模様を付けている。写真はOPPO Find X3 Proの顕微鏡モードで撮影

 今回の「OPPO A77」もほぼ同じデザインを採用しており、「OPPO Reno7 A」に引き続き、背面を「OPPO Glow(オッポグロー)」と呼ばれる独特のテクスチャー加工に施すことで、指紋や手の跡など、汚れが目立ちにくく仕上げている。ボディ幅は約75mm、重さは187gと、ちょうど持ちやすいサイズ感に仕上げられており、手にしたときの印象は「OPPO Reno7 A」にかなり近い。

左側面にはSIMカードスロット、分割式音量キーを備える
右側面は指紋センサー内蔵電源ボタンのみを備える。電源ボタンの周囲は少し凹みが付けられている。カメラ部の突起はごくわずか

 防水防塵については、IPX4準拠の防水、IP5X準拠の防塵に対応する。上位機種の「OPPO Reno7 AのIPX8準拠の防水、IP6X準拠の防塵に比べ、やや性能が抑えられた内容だが、IPX4は雨などの水しぶきを受けても浸水しない防水性能を表わしており、日常的な使用での防水は、十分、確保できていると言えそうだ。ただし、水没は考慮されていないので、その点は注意しておきたい。また、MIL規格対応ではないものの、OPPOとして、耐久性にも配慮しているとのことで、1mからの落下テストをはじめ、各ボタン類の耐久テストなどもクリアしているという。

下部にはUSB TYpe-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える。イヤホンマイクを接続すると、[FMラジオ]アプリのアンテナとしても利用される

 ディスプレイは約6.5インチのHD+対応液晶ディスプレイを採用する。最近では普及価格帯のモデルでも有機ELを採用するモデルが多く、「OPPO A」シリーズでも従来機種で採用してきたが、今回はコスト面を考慮してか、液晶ディスプレイを採用している。ただ、液晶ディスプレイだから性能が劣っているかというと、そうではなく、最大60Hzのリフレッシュレート、DCI-P3準拠、NTSC色域96%の広域表示、輝度も通常時480nit、最大時600nitとなっており、目の疲れを軽減するブルーライトカットなど、実用的な機能と仕様を満たしている。

 本体前面の面占有率も89.8%とかなり広く、出荷時には実使用可能な保護フィルムが貼られている。解像度がHD+対応(1612×720ドット表示)というのは物足りないが、逆にフルHD+以上ではないがゆえに、バックライト点灯を含めた消費電力には押さえられており、バッテリー駆動時のロングライフに寄与することが期待できる。

指紋センサーは右側面の電源ボタンに内蔵。自然に触る位置で操作しやすい。レスポンスも良好
顔認証にも対応。「目を開く必要あり」をオンにしておくと、寝顔での顔認証を回避できる

 生体認証は本体右側面の電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証、ディスプレイ上部に内蔵されたインカメラによる顔認証に対応する。指紋認証によるレスポンスも良好で、ストレスなく利用できる。顔認証については寝顔での認証を防ぐため、目を開く必要な設定をしたり、暗いところでの認証時にはディスプレイの明るさを上げることで、顔を照らして、画面ロックを解除しやすくするなどの工夫も盛り込まれる。ただし、マスク着用時の画面ロック解除には対応しない。ちなみに、指紋認証と顔認証が画面ロック解除だけでなく、「アプリロック」や「プライベートフォルダ」などの機能にも利用できる。

SUPERVOOCによる最大33Wの急速充電が可能。同梱のACアダプターとUSBケーブルで接続すれば、画面上にもSUPERVOOCで充電していることが表示される

 バッテリーは5000mAhの大容量バッテリーを内蔵し、本体下部のUSB Type-C外部接続端子から充電する。充電については過去のOPPO端末でも採用されてきた独自の「SUPERVOOC」(最大33W)に対応しており、約5分間の充電で3時間の通話が可能な状態まで充電ができる。パッケージにはSUPERVOOC対応33W ACアダプターが同梱されており、付属のUSB Type-Cケーブルと組み合わせることで、急速充電が利用できる。過充電を防止する回路も組み込まれているという。ちなみに、接続するUSB Type-Cケーブルによっては、充電が通常速度になることがあるため、注意が必要だ。ワイヤレス充電などには対応していない。

 また、このクラスの製品では珍しく、ステレオスピーカーを内蔵する。本体を横向きに構え、動画を再生するときなどには迫力あるサウンドを楽しめる。

MediaTek Helio G35を搭載

 チップセットは台湾MediaTek製Helio G35を採用し、4GB RAMと128GB ROMを搭載する。RAMは本体ストレージの一部を割り当てる拡張機能により、4GBを追加し、最大8GBでの利用が可能になる。ストレージは最大1TBのmicroSDXCメモリーカードが装着可能。

 MediaTekのチップセットは国内で搭載例が少なく、5G対応のDimensityシリーズが「Galaxy A32 5G」や「motorola edge20 fusion」などに採用されている。これに対し、Helio Gシリーズはゲーミングスマートフォン向けのチップセットで、「OPPO A77」に採用されたHelio G35はメインストリーム向けゲーミングスマートフォンをターゲットにしており、MediaTek HyperEngineによって、パフォーマンスや電力消費、発熱など、ゲームプレイに影響するさまざまな要素をインテリジェントかつダイナミックに管理できるとされている。

 ただ、普及価格帯向けということもあり、パフォーマンスはそれほど高いものではなく、米Qualcomm製チップセットで言えば、Snapdragon 4xxシリーズと同クラスの製品に位置付けられる。Webページ閲覧やSNS、メール、カメラ、動画再生といった一般的な用途であれば、問題なく利用できるが、パフォーマンスやレスポンスを求めるようなシーンには、やや物足りないスペックと言えそうだ。

 ネットワークについては4G LTE/4G TD-LTE/3G W-CDMA(UMTS)/2G GSMに対応する。前述の通り、5Gを求めるのであれば、「OPPO Reno7 A」や「OPPO A55s 5G」などを選ぶことになるが、「OPPO A77」は「4Gで十分」と判断するユーザー向けということになる。ちなみに、Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応となっており、Wi-Fi 6及びWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)には対応しない。

ホーム画面は標準的なデザイン。GoogleアプリもGoogleフォルダーにまとめられている
ホーム画面はアプリが並ぶ「標準モード」だけでなく、上方向にスワイプして、アプリ一覧を表示する「ドロワーモード」も設定可能
画面分割モードを使うときに便利な「スマートサイドバー」も設定可能。動画を再生しながら、Chrome(ブラウザー)でWebページを閲覧することなどができる
通知パネルを表示すると、各機能のボタンが並び、カスタマイズも可能

最近では数少ないトリプルスロット搭載

本体左側面にSIMカードスロットを備える。2枚のnanoSIMカードと1枚のmicroSDメモリーカードを同時に利用できるトリプルスロットを搭載。SIMカードトレイが長いため、取り出すためのピンも少し長めのものが必要

 「OPPO A77」のネットワーク関連で、ひとつのアドバンテージとなるのは、デュアルSIMがトリプルスロットである点だろう。先般のKDDIのネットワーク障害によって、改めてデュアルSIMが注目されているが、多くのデュアルSIM対応端末は、2枚目のSIMカードがmicroSDメモリーカードと排他利用という仕様を採用している。

 最近ではnanoSIM/eSIMのデュアルSIM仕様の製品も増えてきたが、自分が契約する携帯電話会社やMVNO各社が必ずしもeSIMを提供しているとは限らないうえ、eSIMは故障や破損時に再発行の手続きが必要なため、継続性を重視するユーザーには扱いにくいと考える人も少なくない。こうした事情もあってか、トリプルスロット仕様のニーズは根強くあり、「OPPO A77」はそこに応える製品となっている。

 プラットフォームはAndroid 12ベースのColor OS 12を採用する。基本的なユーザーインターフェイスはAndroidプラットフォームの標準的なものに準じており、操作に戸惑うことはほとんどない。複数のアプリを切り替えながら利用するマルチタスクや3本指ジェスチャーによるスクリーンショットなど、Color OS独自の便利機能も充実している。

 過去24時間にどのアプリが個人情報にアクセスしたのかを確認できる「プライバシーダッシュボード」、SNSなどで写真をシェアするときに位置情報などを削除する「フォトデータプライバシー」などの機能も搭載される。プラットフォームのアップデートについては特にアナウンスがないが、原稿執筆時点では2022年10月版のAndroidセキュリティアップデートが適用されている。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。NTTドコモや主要なMVNO各社のAPNがカバーされている
出荷時に設定されてるau網のAPN。auの「LTE.NET」やUQモバイルをはじめ、ひと通り主要な各社のAPNが登録されている
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN。ソフトバンクやワイモバイルの項目はないが、両ブランドのSIMカードを挿したときは「Application」を選ぶと、接続が可能。個別にAPNを追加設定することもできる
楽天モバイルのSIMカードを挿したときは、自動的にAPNが設定される

5000万画素AIカメラを搭載

背面に5000万画素AIカメラと200万画素深度カメラを搭載する

 メインカメラについては5000万画素/F1.8の広角カメラ、200万画素/F2.4の深度カメラを搭載する。

「ポートレート」で撮影。モデル:るびぃ(Twitter:@hina1006ta_aoki、ボンボンファミン・プロダクション

 撮影モードは他のOPPO製端末同様、「写真」「動画」「夜景」「ポートレート」を標準で選ぶことができ、「その他」を選ぶと、タイムラプスやパノラマなども選べる。「写真」モードではAIビューティーによる効果を追加でき、0~100%の範囲で細かく設定できる。この他にもOPPO製端末ではおなじみだが、AIによる色補正を適用する「ダズルカラーモード」なども搭載される。

メインカメラで撮影。少し青空の色味が失われている印象
「夜景」で撮影。他製品に比べると、やや明るさが足りない

 インカメラは800万画素/F2.0で、ディスプレイ上部の水滴型ノッチに内蔵する。撮影モードは「写真」「動画」「ポートレート」を標準で選ぶことができ、「ポートレート」では背景ぼかし、「写真」ではメインカメラ同様のAIビューティーの効果をそれぞれ調整することができる。

インカメラで自分撮り。AIビューティーの効果も追加される

 撮影した写真や動画は、他のOPPO製端末同様、Color OS独自の[写真]アプリで管理する。もちろん、Googleフォトもインストールされているので、そちらを利用することもできるが、[写真]アプリの[編集]では「レタッチ」や「AIパレット」などのオリジナル機能が利用できる。管理されている写真データそのものは同じなので、目的に応じて、それぞれのアプリを使い分ければ、いいだろう。

パッケージには端末本体のほかに、クリアカバー、33W対応ACアダプター、USBケーブルなどが同梱される

リーズナブルに「まだまだ4G」を活用したいユーザーに

 ここ数年、コロナ禍の影響もあり、5Gへの移行は必ずしも順調に進んでいないと言われるが、スマートフォンにおいては5Gならではの機能やサービスがそれほど多いわけではなく、「まだまだ4Gで十分」と考える人も少なくない。今回の「OPPO A77」はそういった「まだまだ4G」を活用したいユーザーのための一台だ。もちろん、いずれは5G対応端末へ移行することになるのだろうが、ソフトバンクとNTTドコモはこれから3Gを停波しようとする段階で、1年や2年程度のスパンで考えると、一般的な用途であれば、4G LTEでも十分に使えるはずであり、端末のみで購入しても2万円台、新規契約やMNPによる割引を適用すれば、1万円以下でも購入も可能な価格設定は、費用的な負担も少ない。

 安価な端末は全体的に仕様がチープな傾向になってしまうが、本体の質感も人気モデル「OPPO Reno7 A」に準じており、カメラなどの撮影機能も楽しめる。実使用という点では、やはり、5000mAhの大容量バッテリーとSUPERVOOC 30W急速充電がアドバンテージであり、ロングライフを重視したい、バッテリーを短時間で充電したいといった忙しいユーザーにチェックしてみて欲しいモデルと言えそうだ。