法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「Surface Go 2」は500gクラスの軽量ボディでモバイル&テレワークの世界を拡げる
2020年5月19日 06:00
マイクロソフトは5月7日、同社のハードウェアラインアップの「Surface」シリーズの最新製品を発表した。
10.5インチディスプレイを搭載した携帯性に優れた「Surface Go 2」、パワフルな「Surface Book 3」、オーディオジャンルの「Surface Headphones 2」と「Surface Earbuds」、Surfaceシリーズをサポートするアクセサリー類などがラインアップされる。
これらの内、モバイルユーザーに特に期待の高い「Surface Go 2」を試用することができたので、レポートをお送りしよう。
求められる新しいワークスタイル&ライフスタイルへの対応
この数カ月、新型コロナウイルスへの対策もあり、世界中に人々の生活は大きく変わってしまった。国内も緊急事態制限を受け、不要不急の外出を控えることが求められ、多くの人のオフィスワークは、在宅勤務やテレワークへとシフトすることになった。
筆者やケータイ Watchのスタッフも同様で、ほとんどの記者発表や説明会はオンラインでの開催となり、取材もビデオ会議が当たり前となっている。子どもたちや学生も3月から学校が休校となったため、在宅学習が中心になり、この春からオンライン授業を受けるところも増えてきているという。
ようやく一部の地域では緊急事態宣言が解除されることになったが、今後もウイルスとの戦いは継続するため、私たちのワークスタイルやライフスタイルは、それぞれの環境に合わせた新しいスタイルを考えていなければならない。
そんな新しいスタイルの中で、ひとつの課題となっているのがデジタルツールと通信手段だ。たとえば、在宅勤務となり、テレワークへのシフトが命じられたものの、自宅にはパソコンがなかったり、会社のパソコンは持ち出せないなどの理由から、この数カ月、パソコンの売れ行きは好調で、一部の店舗では商品が品切れになるほどだったという。パソコンだけでなく、タブレットも人気で、子どもたちや学生の在宅学習やオンライン授業のために購入するケースが増えてきているという。
この数年、もっとも身近なデジタルツールと言えば、スマートフォンが絶対的な存在で、何事も『スマホ・ファースト』と言われて久しいが、ここに来て、そこに「+α」する形で、パソコンやタブレットが新しいワークスタイル&ライフスタイルのために、再び必要とされている。
マイクロソフトのSurfaceシリーズ
マイクロソフトは2012年に2in1スタイルの新しいデバイス「Surface RT」を発表して以来、自社製品のブランドとして「Surface」シリーズを展開し、さまざまな製品を世に送り出してきた。
当初はタブレットとパソコンの中間的な存在として捉えられたこともあり、今ひとつフィットしていない印象もあったが、2014年発売の「Surface Pro3」や2015年発売の「Surface 3」などから国内でも徐々に人気が出始め、今や2in1スタイルのデバイスとしては国内外でもっとも高い人気のシリーズとなっている。
筆者自身もSurface Proシリーズを愛用し続け、今や出張や旅行に欠かせない存在となっており、最近では急増するオンライン説明会やビデオ会議の必須デバイスとなっている。
ちなみに、「Surface」というブランドネームは、2in1スタイルのデバイスに留まらず、クラムシェル型の「Surface Laptop」シリーズ、パワフルな2in1ブックスタイルの「Surface Book」シリーズ、クリエイターのニーズにも応えるディスプレイ一体型デスクトップの「Surface Studio」シリーズ、オフィスの会議室などに適したテレビ型ホワイトボードの「Surface Hub」などにラインアップを拡げている。
今回、マイクロソフトから発表されたモデルは、軽量コンパクトな「Surface Go 2」、パワフルな2in1スタイルのノートパソコン「Surface Book 3」、オーディオジャンルの「Surface Headphones 2」と「Surface Earbuds」となっている。これらに加え、Surface Go 3やSurface Proシリーズに最適な「Surfaceドック 2」や「Microsoft USB-Cトラベルハブ」も合わせて発表された。
これらの新製品のうち、今回はSurface Go 2を試用することができた。Surface GoはSurface Proシリーズよりもひと回りコンパクトなボディに仕上げられたモデルで、前モデルは2018年8月に発表されている。
今回のモデルは約1年半ぶりの新製品となり、ディスプレイサイズの大型化などが図られている。一般向けにはCPUやメモリー、ストレージの違いなどにより、3モデルが投入され、その内、1つにはLTE Advanced対応の通信モジュールが内蔵されたモデルもラインアップされている。ビジネスにも生活にも新しいスタイルが求められる今という状況に合った期待のモデルと言えそうだ。
500g台の軽量ボディ、キーボードなどを含めても約800g
まず、外観からチェックしてみよう。
前述のように、Surface Go 2は従来のSurface Goと同じサイズに仕上げられており、Surface Proシリーズよりもひと回りコンパクトなサイズとなっている。外寸はB5サイズの用紙よりもひと回り小さいサイズで、薄さも8.3mmと薄いため、携帯性に優れる。ボディはマグネシウム合金で作られており、色はシルバーのみとなっている。
ちなみに、このサイズはiPad Air(第3世代)や11インチiPad Proなどとほぼ同サイズだが、Surface Go 2の方がわずかに厚みがあり、側面が角張った形状であるため、手に抱えたときの印象は少し異なる。
本体重量はWi-Fiモデルで544g、LTE Advancedモデルで553gとなっている。ライバルとされるiPad(第7世代)やiPad Air(第3世代)、11インチiPad Pro500gがいずれも500gを切っていることを考えると、少し重いような印象を持ちそうだが、実際に持った感覚はそれほど差を感じさせない。
ちなみに、Surface Go 2はSurface Proシリーズ同様、カバータイプのキーボード(別売)を接続して利用するが、Surface Go 2の場合、Surface Signatureタイプカバーが242gで、Surfaceペン(別売)が20gなので、フル装備で約800g程度に収まる。対するiPadでは最近、11インチiPad Pro向けのMagic Keyboardが発売され、話題になったが、重量はキーボードだけで約600gもあり、本体と組み合わせると、軽く1kgを超えてしまうため、携帯性はかなりの差がある印象だ。もっとも従来のSmart Keyboard Folio(11インチ用)は300g程度なので、Surface Go 2はそこと同レベルと言えそうだ。
タイプカバーと呼ばれるキーボードについては、Surface Proなどと同じように、本体底部にマグネットで装着する。本体と同サイズで設計された「Surface Go Signature タイプ カバー」は、Surface Proシリーズ用に比べ、少しコンパクトだが、キーピッチは実測で18mm程度あり、それほど狭さを感じさせない。タイピングについては、こうしたカバータイプのキーボードとして標準レベルにある印象だ。一般的なノートPCほどのキーストロークがないため、長時間のタイピングはやや慣れが必要だが、一般的な利用であれば、それほどストレスを感じずにタイピングができる。
ボディ上部には電源キーや音量キー、右側面には3.5mmヘッドフォンジャック、Surface Connect接続ポート、下面にはSurfaceタイプカバーポート、背面には立てて使うときのキックスタンド、microSDXCカードリーダーを備える。
右側面のSurface Connect接続ポートはSurface Proなどとも共通のもので、別売のSurfaceドック 2はここに接続する。
Surfaceドック 2はUSB-Cポート×2、USB-C(Gen.2)ポート×2、USB-Aポート×2、1Gbps対応Ethernetポート、100-240V対応199W外部電源で構成されるドックで、Surface本体と接続すれば、Surface本体を充電しながら、これらのポートを自由に利用できる。
たとえば、自宅にはSurfaceドック 2を置いておき、外部ディスプレイや有線LANへの接続をしながら、外出時はSurface本体のほかに、必要に応じて、付属のACアダプターを携帯するといった使い方ができる。
10.5インチフルHD対応液晶ディスプレイを搭載
ディスプレイは1920×1280ドット表示が可能な10.5インチ液晶を採用しガラスはCorning Gorilla Glass3が使われている。従来のSurface Goが10インチで、ボディサイズが変わっていないことから、その差の0.5インチ分、狭額縁に仕上げられた形で、見た目にも少画面が大きくなった印象だ。
同じサイズのディスプレイを搭載するiPad Airなどに比べ、額縁はやや太いが、iPad Airが主に長辺を狭額縁にしたのに対し、Surface Go 2は長辺と短辺をバランス良く、狭額縁に仕上げている。このあたりは製品の方向性の違いと言えそうだ。
ディスプレイは10ポイントマルチタッチ対応で、別売のSurfaceペンによるペンタッチ操作もできる。余談だが、筆者は書籍などの校正をチェックするとき、Surface ProにSurfaceペンの組み合わせで利用しており、今や手放せない存在となっている。好みもあるだろうが、ペン操作が多いクリエイターなどに、ぜひ注目して欲しい機能のひとつだ。
CPUはIntel製Pentium Gold Processor 4425Y、第8世代Core m3プロセッサーを搭載するモデルがラインアップされる。搭載メモリーは4GBと8GB、ストレージはeMMCドライブ64GB、SSD 128GBが搭載されたモデルがそれぞれラインアップされる。今回試用したモデルはPentium Gold Processor 4425Yに、8GBメモリー、128GB SSDを搭載したモデルだったが、WordやExcel、PowerPointなどをストレスなく使うことができた。もちろん、扱う文書の内容にもよるが、モバイルや在宅勤務での利用であれば、十分なレベルに達していると言えそうだ。
バッテリー容量は明らかにされていないが、カタログスペックではWi-Fi接続時で約10時間、LTE-Advancedでも10時間の利用が可能としている。ちなみに、上位モデルのSurface Pro7も通常利用で最大10.5時間としており、使い方にもよるが、半日以上の利用は十分可能と見ていいだろう。
ディスプレイの上部と背面側にはそれぞれカメラが内蔵される。前面のカメラはWindows Helloの顔認証に対応した5Mピクセルのカメラで、1080pのビデオにも対応する。背面はAF対応の8Mピクセルカメラで、こちらも1080pビデオの撮影に対応する。
在宅勤務でビデオ会議の利用が増え、Webカメラが品切れになるほどの売れ行きだが、やはり、本体にカメラを内蔵したモデルの方が接続などの手間もなく、Windowsのログオンにも使えるので、非常に有効と言えそうだ。筆者もここのところのビデオ会議は内蔵カメラが使えることから、いずれもSurface Proを利用している。ちなみに、マイクについてもSurface Pro 7と同じように、デュアルスタジオマイクを採用しており、周辺のノイズを抑え、クリアな音質でビデオ会議に参加できる。スピーカーはディスプレイの両サイドにDolby Audio対応の2Wステレオスピーカーを内蔵する。
搭載されるOSとしては、一般向けのモデルにはWindows 10 Home(Sモード)が搭載され、Office Home and Business 2019(永続版)がバンドルされる。Windows 10 Home(Sモード)はWindowsのストアアプリのみが利用できるモードで、ユーザーが利用できる機能を制限したい教育市場向けや法人市場向けにも採用されている。ストアアプリ以外のアプリを使いたいときなどは、Windows 10 Home(Sモード)を解除し、Windows 10 Proに切り替えることができる。ただし、再びWindows 10 Home(Sモード)に戻すことはできない。
Officeについては米国などでOfficeがインストールされていないモデルを選べるのに対し、国内の一般向けモデルは全機種にバンドルされている。そのため、従来から価格が高くなることが指摘されていたが、今回もそのスキームが継承されている。
こうした組み合わせが採用される背景には、米国などではすでにサブスクリプション型の「Microsoft 365 Personal」(旧Office 365 Solo)が普及しているのに対し、国内はまだサブスクリプション型が十分に浸透しておらず、Officeがバンドルされていないパソコンは全般的に敬遠される傾向があるためだとされる。日本マイクロソフトによれば、「以前から検討はしているものの、Officeを搭載しないモデルをラインアップに加えると、モデル数が増え、結果的に割高になってしまう」との判断から、一般向けにOffice非搭載モデルの投入は見送られているという。今後の展開に期待しよう。
通信関係ではWi-FiがIEEE 802.11a/b/n/ac/ax対応となっている。最新のWi-Fi 6(IEEE ax)に対応しているため、対応アクセスポイントのもとでは複数ユーザーが居る環境でも安定した通信が期待できる。
また、今回は試用できなかったが、一般向けのモデルには前述のように、LTE-Advanced対応通信モジュールを搭載したモデルがラインアップされている。しかもeSIMと物理SIMのデュアルSIMとなっており、切り替えながら利用することができる。
対応するeSIMサービスについてはまだ明らかにされていないが、一般向けではSurface Pro 7のLTEモデルがIIJmioのeSIMサービスの動作確認機種に掲載されており、おそらく国内では同様の対応が採られることになりそうだ。たとえば、国内はIIJmioのeSIMサービスを契約しておき、海外などに渡航したときは(しばらくは難しいが……)、渡航先のプリペイドSIMカードを挿して利用するなどの運用が考えられる。いずれにせよ、日本マイクロソフトを含め、各携帯電話会社やMVNO各社の動作確認情報を期待したい。
一般向けモデルの価格はもっとも安いモデルが5万9800円(税抜)だが、「Surface Go Signature タイプ カバー」(別売:1万5400円)や「Surfaceペン」(別売:1万1800円)を組み合わせることになるため、最安値のモデルで8万7000円(税抜)、最上位のLTE-Advanced対応モデルは12万5000円(税抜)になる。何と比較するのかによって、判断は分かれるところだが、オフィスワークからビデオ会議、在宅学習、オンライン授業など、幅広い用途に活用できることを考えれば、十分に許容できるレベルの価格と言えそうだ。
テレワーク&モバイルワークをはじめる一台に最適
この数カ月、新しいワーキングスタイルとして、注目を集めることになったテレワークや在宅勤務。
政府が掲げる新しい生活様式においてもテレワーク推進が謳われているが、個人だけでなく、企業側の体制も含め、まだ十分な環境が整っていないという指摘もある。
そんな状況において、発表されたマイクロソフトのSurface Go 2は、ちょうどテレワークやモバイルワークをはじめる一台として、非常にバランスの取れた仕上がりとなっている。コンパクトで携帯性に優れ、Officeアプリも標準でプリインストールされており、パソコンとしてだけでなく、タブレットとしても活用できる。すでに、自宅にパソコンを持つユーザーの2台目需要にも適している。
また、東京の渋谷区が小中学校向けの全児童用として、1万2500台のSurface Go 2を導入することからもわかるように、子どもたちの在宅学習用としても活用することができそうだ。ライバルのiPadは、iPad OSがマルチユーザーをサポートしていないため、保護者との共用にはいろいろと制限や扱いにくいさがあるが、Windowsは言うまでもなく、簡単にマルチユーザーで使えるうえ、管理もしやすい。このあたりは「タブレットをパソコン化するiPad」に対し、Surfaceはパソコンをベースに、タブレットの携帯性や手軽さを組み合わせることで、生産性の高いデバイスに仕上げようとする方向性の違いが垣間見える。
今回はSurface Go 2を試用したが、このほかにも13.5インチと15インチディスプレイを搭載したSurface Book 3も同時に発表され、よりパワフルな環境を求めるユーザーなら、そちらを選択する手もある。テレワークやモバイルワークをはじめる一台として、Surface Go 2をはじめとしたSurfaceシリーズの各機種に今後も注目していきたい。