法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「AQUOS R5G」が目指す“5Gの定番”、8KビデオとPro IGZOディスプレイの魅力

NTTドコモ/シャープ「AQUOS R5G SH-51A」、約162mm(高さ)×約75mm(幅)×約8.9mm(厚さ)、約189g(重量)、オーロラホワイト(写真)、ブラックレイをラインアップ。au/シャープ「AQUOS R5G SHG01」はアースブルー、オーロラホワイト、ソフトバンク/シャープ「AQUOS R5G 908SH」はアースブルー、ブラックレイ、オーロラホワイトをラインアップ

 新型コロナウイルスの影響で、やや静かなスタートとなったNTTドコモ、au、ソフトバンクの5Gサービスだが、これら主要3社に揃って、供給されるのシャープの「AQUOS R5G」だ。

 ここ数年、フラッグシップの「AQUOS R」に続き、「AQUOS sense」シリーズで安定した人気を得てきたシャープは、その実績が評価され、唯一、主要3社に揃って、5Gサービス開始から利用できる端末となった。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

5Gに何を求めるか

 ここ数年、モバイル業界は5Gサービス開始へ向けて、さまざまな動きを見せてきた。

 延期にはなってしまったものの、2020年に開催される予定だった東京オリンピックを目標のひとつに掲げ、国内への展開はもとより、訪日外国人にも日本の完成度の高いモバイルサービス、モバイルネットワークを披露したいと考えていた。残念ながら、その目論見は新型コロナウイルス感染症の影響で、2021年以降に持ち越されることになったが、それでもここ数年間の各社の意気込みは、かなりの熱気が感じられた。

 しかし、その一方で、各社の5Gに対するさまざまな取り組みを見る中で、ややその内容が空回りしているような雰囲気があったのも事実だ。

 というのも「5Gならではのメリット」をいろいろと提案しているものの、実際には対法人(B2B)、あるいは法人を介したコンシューマ向け(B2B2C)など、今ひとつ直接、ユーザーにメリットが感じられるものが見えてこなかったからだ。たとえば、5Gを使い、遠隔地の建設機械を動かせることはスゴいが、だからと言って、一般消費者は自分のモバイルライフに影響があるわけではなく、「ふーん、スゴいね」という他人事のような捉え方をしていた。遠隔操作に限らず、遠隔医療やドローン、自動運転など、いずれに対してもそういう思いを抱いていた人は少なくないはずだ。

 「5Gならではのメリット」を模索してきたのは、キャリアばかりではない。当然のことながら、コンシューマーが利用する端末を開発するメーカーもさまざまな検討を重ねてきた。しかし、実際には『スマートフォン』という基本線を変えることはできないため、各社とも搭載される機能や対応するサービスなどで差別化を図ろうとしている。

 今回取り上げるシャープのAQUOS R5Gは、シャープの十八番である液晶ディスプレイに省電力性能に優れた「Pro IGZO」を採用し、8K動画も撮影できる4眼カメラを搭載することで、5Gのネットワークパフォーマンスを活かしたエンターテインメントが追求できる端末だ。冒頭でも少し触れたように、今回、NTTドコモ、au、ソフトバンクの主要3社が3月下旬から順次、5Gサービスをスタートさせる中、いずれにも揃って、供給された唯一の端末であり、日本の5Gサービス開始を代表する一台になったと言えるだろう。

 また、シャープは2017年からフラッグシップを「AQUOS R」シリーズに統一し、主要3社に供給することで、ユーザーの高い評価を積み重ねてきたが、その一方で、普及価格帯では今や定番モデルとなったAQUOS senseシリーズ、ゲームユーザーのニーズにも応える有機ELディスプレイ搭載の「AQUOS zero」シリーズをそれぞれ展開し、これらのモデルも各方面で高い評価を得ている。Androidスマートフォンでは3年連続でシェアNo.1を獲得し、名実共に日本を代表するブランドとして、認知されてきた印象だ。

 そういった背景のある中で、シャープとしては満を持して投入したモデルがフラッグシップの「AQUOS R5G」になる。新型コロナウイルス感染症の影響で、5Gサービスインが今ひとつ盛り上がらない状況になってしまったが、各社の端末はほぼ予定通りに販売が開始され、筆者もAQUOS R5Gをサービス開始時にいち早く購入し、外出自粛規制の中、毎日のように利用してきた。

 ちなみにAQUOS R5Gの価格は、いずれも5Gサービスへの契約変更を伴い、従来の環境によっては、SIMカードの変更を求められるケースもある。購入や契約変更の手続きはオンラインショップでの申し込みが可能で、SIMカードの変更が必要な場合はSIMカードがいっしょに送付されてくる。

 価格的には4G時代のハイエンド端末と同等か、1割増し程度に収まっており、各社の販売プログラムを利用すれば、ある程度、負担を抑えることはできそうだ。とは言うものの、各社の5Gサービスが十分にアドバンテージをアピールできていない状況を鑑みると、例年のようなスタートダッシュは難しい状況にある。もっともそれはAQUOS R5Gに限らず、ほとんどの5G対応端末に関して言えることだが……。

キャリア価格販売プログラム適用の支払額
NTTドコモ AQUOS R5G SH-51A11万1672円7万781円(2949円×24回)
au AQUOS R5G SHG0112万9145円7万4405円(3235円×23回)
ソフトバンク AQUOS R5G12万9600円6万4800円(5400円×12回)
6万4800円(2700円×24回)

10億色表示に対応した6.5インチPro IGZO搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。ボディはAQUOS RシリーズやAQUOS senseシリーズなどの流れを継承したスタンダードなデザインに仕上げている。

背面左側にカメラを4つ並べたデザイン。NTTドコモ向けは背面中央に「docomo 5G」のログがプリントされている

 ボディサイズもAQUOS R3と比べ、幅で1mm、高さで6mmの増加に抑えられ、厚さはまったく変わらない。

左側面にはピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを装備

 しかし、細部のデザインは変更されており、机に置いたときに手がかりがいいとされていた側面の凸型形状は凹型形状に変更されている。

右側面は電源キーとシーソー式の音量キーを装備。スタンダードな配列で使いやすい

 端末を手にしたときの印象も変わっているが、後述する放熱構造とも関係がありそうだ。背面の仕上げはUVパターンと蒸着による軽量樹脂パネルで仕上げられており、光の当たり方によって、見え方が変わるデザインとなっている。

上部には3.5mmイヤホンマイク端子を備える。音楽再生には上部が良さそうだが、ビデオ会議などを考慮すると、下部がいいという意見もある
下部はUSB Type-C外部接続端子などを装備。やや背面寄りに備えられている

 ディスプレイはQHD+(3168×1440ドット表示)対応6.5インチPro IGZOディスプレイを搭載する。最大10億色の表示に対応し、スマートフォンAQUOSではもっとも明るい1000cd/m2を実現している。画質もシャープ独自のリッチカラーテクノロジーモバイルにより、明るいシーンでは豊かな階調で表示しつつ、暗いシーンでは黒いところを黒く表示するなど、常に最適なコントラストで表現している。5Gではデータ通信量の制限が実質的になくなるため、映像配信サービスの視聴が増えることが予想されるが、そういったニーズにもしっかりと応えようというわけだ。

 IGZOについてはすでに何度も説明されてきているので、あらためて説明しないが、一般的な液晶ディスプレイが毎秒60回(60Hz)の書き換えを行なっているのに対し、IGZOは毎秒120回(120Hz)の書き換えを行ないつつ、画面が静止しているときは書き換えを毎秒1回に抑える「液晶アイドリングストップ」によって、なめらかな表示と電力消費の抑制を両立させている。筆者は個人的に利用頻度が高いNTTドコモの回線で、しばらく有機ELディスプレイを搭載した他社製端末を利用していて、今回、IGZO液晶搭載の環境に戻ってきたが、使いはじめたタイミングはぬるぬると吸い付くようにスクロールする画面のレスポンスに、思わず「そうそう、これ!」とうなってしまった。数日間、使い続ければ、この環境に慣れてしまうが、この快適さはなかなか他の端末で体験できないレベルの仕上がりだ。120Hz駆動などを部分的に実現した他製品も発売されたが、やはり、なめらかなスクロールとレスポンスに優れたタッチパネルには、シャープ製端末に一日の長があると言えそうだ。

ディスプレイの下側にノッチを設けて、指紋認証センサーを搭載。ホームキーとしても利用できる

 ディスプレイの上部には半円型のノッチ、下部には指紋センサーによるノッチがあるデザインとなっており、ディスプレイを最大限、大きく使えるようにしている。指紋センサーについてはAQUOS sense3などと同じレイアウトで、指紋センサーをホームボタンに割り当てることもできるが、これはちょっと好みの分かれるところだ。

 というのも指紋センサーは、端末のロック解除だけでなく、NTTドコモのdアカウントのように、オンラインサービスなどの生体認証に対応するケースが増えている。

dアカウントで生体認証を登録してあると、この画面が表示される。この状態で指紋センサーにタッチすると、ホーム画面に戻ってしまう

 たとえば、dポイントのサイトにアクセスし、dアカウントの認証で生体認証をするため、指紋センサーにタッチしたところ、ホーム画面に戻ってしまったということが少なからず起きる。ユーザーによって、こうしたシチュエーションに当てはまるか否かは異なるが、もし、こうしたケースに当てはまるようであれば、[設定]の[AQUOS便利機能]-[指紋センサー]で[ホームキーとして使う]をオフに切り替えると、誤操作を減らすことができる。

指紋センサーをホームキーとして使うかどうかは、[設定]アプリの[AQUOS便利機能]-[指紋センサー]で設定が可能

受信時最大1Gbpsオーバーを記録

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 865 5Gを採用し、RAM 12GBとROM 256GBで構成される。最大1TBのmicroSDXCメモリーカードにも対応する。バッテリーは3730mAhの大容量バッテリーを搭載する。ワイヤレス充電には対応していない。

左側面に装着するSIMカードトレイ。SDカードの隣に、「この面が画面側」と書いてある

 これらの基本スペックの内、メモリーやストレージは5G対応端末ということもあり、かなりハイスペックだ。チップセットについては発熱などが心配されたが、AQUOS R5Gの開発者インタビューでも触れられていたように、新たに設計された放熱構造が採用されている。

シャープの資料より

 具体的には、純度95%超の銅製放熱ブロック・シールドによる放熱構造を採用し、チップセットで発生した熱をすばやく移動させて放熱させ、安定した動作を実現している。シャープによれば、AQUOS R3に比べ、CPUに4Wの負荷をかけ続けてきたときのCPU内部温度は約20度も低く、最高性能が持続する時間も約25倍になっているという。AQUOS zero2などで採用されてきた2つの充電ICによるパラレル充電にも対応しており、充電しながらの利用についてもAQUOS R3に比べ、発熱を約40%も軽減している。

シャープの資料より

 実際の利用については、端末の初期設定時、端末を充電しながら、数多くのアプリをダウンロードすることになるため、端末がかなり熱を持つことが多いが、AQUOS R5Gはこうしたシチュエーションでもディスプレイの一部が少し熱を持つ程度で、最後まで安定した動作を示した。ちなみに、同時にセットアップしていた他の5G対応端末は、明らかにAQUOS R5Gよりも熱く、放熱設計の差を実感できた。

NTTドコモ版のホーム画面。右上のアンテナピクトの隣に「5G」の文字が表示される

 通信についてはあらためて説明するまでもないが、各社の5Gネットワークに対応しており、5G対応エリアでは4Gネットワークを大きく上回る超高速通信が利用できる。5GはSub6と呼ばれる6GHz以下の周波数帯のみに対応し、ミリ波には対応していない。

ソフトバンク版のホーム画面は「5G LAB」と「5Gサービス」のフォルダが設定されている
ソフトバンクの5G LABのサービス画面

 もっともミリ波が利用できる場所はかなり局所的になる予定で、現時点では対応していなくてもそれほど気になることはなさそうだ。

 現時点での5Gサービスについては、筆者は外出自粛前に早朝の羽田空港に出向き、出発ロビーで試してみたところ、1Gbpsを超えるダウンロード速度を記録した。

ドコモスピードテストで計測したところ、受信時に1.1Gbps超を記録した

 ちなみに、少し話が脱線するが、同時に発売されたGalaxy S20 5Gでも同じ場所でNTTドコモの5Gネットワークに接続してみたところ、AQUOS R5Gの方がアンテナピクト横の「5G」の表示は大きく、「おー、5Gでつながってるわ(笑)」感が強かった。実用的にはあまり意味がないかもしれないが、まだエリアの狭い5Gネットワークなのだから、こうした表示(演出?)で楽しめるのはいいかもしれない(笑)。

 通信関連ではWi-FiがIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax準拠になり、いわゆる「Wi-Fi 6」に対応している。対応する無線LAN製品も徐々に増えてきており、端末が対応していれば、今後、無線LANアクセスポイントを交換したときにもメリットを享受できる。

 プラットフォームはAndroid 10が採用され、日本語入力はシャープ製端末オリジナルの「S-Shoin」がプリインストールされる。多くのAndroidスマートフォンが日本語入力にGoogleの「Gboard」を採用する中、シャープはこだわりを持って、S-Shoinを搭載し続けている。

 一時期、ユーザーインターフェイスが変わり、「英数カナ」変換がなくなったりしたが、現在はS-Shoinの設定画面でさまざまなカスタマイズができるようになっており、ユーザーの幅広いニーズに応えられるように作り込まれている。

 Androidのバージョンアップについては各機種のページに何も記載がないが、シャープのWebページには「発売から2年間、最大2回のOSバージョンアップをお約束します」と明記されており、この機種も今後2年間のバージョンアップは受けられそうだ。ちなみに、3月に発売された後、ソフトウェア更新も公開されており、原稿執筆時点でAndroidのセキュリティパッチは2020年2月1日版が適用済みとなっている。

ホーム画面を上方向にスワイプすると表示される「アプリ一覧画面」。画面はソフトバンク版
今や少数派となった感もあるオリジナルの日本語入力「S-Shoin」。今後も継続して、搭載して欲しいところだ

AQUOSスマートフォン初の4眼カメラを搭載

 主要3社の5G対応端末として、揃って販売が開始されたAQUOS R5Gだが、シャープは「5Gならでは」のアピールポイントとして、「8K」対応を掲げてきた。8Kについては国内でも放送が開始されているが、シャープはいち早く8K対応テレビを発売し、国内外の市場でも8Kの魅力を数多くアピールしてきた。この流れをスマートフォンにも活かそうというわけだ。

背面に備えられたクアッドカメラ。最上部から「1220万画素望遠カメラ」「4800万画素超広角カメラ」「1220万画素広角カメラ」「3D(ToF)カメラ」の順に並ぶ

 まず、カメラについては背面に4つのイメージセンサーで構成するクワッドカメラシステムを搭載する。まず、最上段が1220万画素/F2.7の望遠カメラ(焦点距離:52mm)で、光学手ぶれ補正を搭載し、少し離れた被写体の動画や静止画を撮影できる。

 2つめは4800万画素/F2.9の超広角カメラ(19mm)で、電子手ぶれ補正を搭載し、Quad bayerと呼ばれる4つの画素を1つに束ねて撮影する技術により、暗いところでも明るい動画を撮影できるようにしている。

 上から3つめは1220万画素/F1.7の広角カメラ(26mm)で、デュアルピクセルセンサーにより、高速に被写体にフォーカスを合わせ、光学式手ぶれ補正により、ぶれを抑えた美しい動画や静止画を撮影することができる。

 そして、最下段に位置するのが被写界深度を測定する3D(ToF)センサーで、背景をぼかした動画や静止画を撮影しやすくしている。

夜、建物の入口付近を撮影。内部の照明もバランス良く撮影できている
薄暗いバーで撮影。かなり雰囲気のある写真に仕上がった

 この4つのカメラがユニークなのは、撮影モードごとに最適な組み合わせで利用されている点だ。たとえば、ポートレート写真は望遠カメラと広角カメラ、ポートレートビデオは広角カメラと3Dセンサーといった具合いに利用される。

 また、8Kでの動画撮影については、8Kワイドとして、超広角に撮影できるだけでなく、再生時にAIによる判断で、主な被写体をズームアップするフォーカス再生も搭載されている。これまでの多くのスマートフォンでもピンチ操作などによるズーム撮影は利用できたが、動画の場合、特定の被写体にフォーカスするときも全体像を把握しておく必要があるうえ、動きの速い被写体はフォーカスしてもすぐにフレームアウトしてしまい、それを追いかけると、今度は手ぶれが起きやすいというリスクがある。AQUOS R5Gはユーザーが8Kワイドで動画を撮影しておけば、フォーカス再生を利用することで、こうした動画撮影の難しさを回避できるようにしているわけだ。

 撮影した動画について、シャープは従来から「AIライブストーリー」という機能を搭載し、撮りっぱなしからの脱却を提案しているが、今回のAQUOS R5Gでは5G対応の最上位モデルらしく、これをさらに強化した「AIライブストーリーPro」が搭載されている。

動画再生時、最上段に表示される「フォーカス再生」を選ぶと、AIが認識したメインの被写体がクローズアップされる

 内容としては、クアッドカメラの超広角カメラを活かし、ワイドで撮って、ズームをしたり、マルチフレームにバリエーションを持たせるなど、さまざまなエフェクトを強化している。実際にプロの映像関係者にもAIライブストーリーのエフェクトや構成に参加してもらうなど、「Pro」のネーミングに相応しい仕上がりだとしている。

 さて、実際の撮った印象についてだが、まず、AQUOS R5Gの主題である「8K」については、ちょっと判断が難しいという印象だった。確かに、スマートフォンで8Kの動画を撮影できることはスゴいのだが、ファイルサイズはわずか10秒でも100MB前後になってしまうため、かなりストレージを圧迫することになる。もちろん、大容量のmicroSDメモリーカードを用意しておく手はあるが、いずれはパソコンやクラウドなどに保存することを考える必要がある。また、8Kで撮影した動画をフォーカス再生などで楽しむことはできるが、8K本来の解像度で再生するには、8K対応の家庭用テレビなどを用意する必要があり、なかなかすぐには8K本来の画質を確認することができない。将来的に、8K対応テレビが手頃な価格になったときには「あの当時、こんなにきれいに撮影できて良かった」と思うかもしれないが、それも数年先の話だろう。

8Kワイドで撮影した動画。確かにきれいなのだが、再生できる環境が限られている

 ただ、こうした8K動画の撮影をどう捉えるかは、ユーザー自身の環境にも大きく左右される面もある。たとえば、筆者は普段の作例を見てもわかるように、食事やカクテルの写真を撮ったり、旅先の風景を撮ることが多いが、人によっては子どもやペットを撮りまくり、動画もたくさん撮るというユーザーも数多く居る。そういったユーザーにとっては、8K動画の撮影は非常に魅力的だろう。

 また、もうひとつ気になるのは、8Kで動画を撮影することにフォーカスされていることは素晴しいものの、スマートフォンに搭載するカメラとして、サポートして欲しい撮影モードがあったような印象も残る。たとえば、AQUOS R5Gはカメラを起動したときの撮影モードは「8Kワイド」「ビデオ」「写真」「タイムラプス」に限られており、「スロー」や「夜景」といった撮影モードはサポートされていない。決して、暗いところでの撮影に弱いわけではなく、暗いところで雰囲気のある写真も撮影できているのだが、昨今のスマートフォンのカメラのトレンドを考慮すると、こうした撮影モードもサポートしておくべきだったかもしれない。

インカメラは半円タイプのノッチに内蔵。ノッチのサイズはかなり小さい

5G対応スマートフォンの定番を狙う一台

 数年前から期待されながら、新型コロナウイルスの影響などで、静かにスタートすることになった主要3社の5Gサービス。利用できるエリアは狭く、サービスもまだ十分に展開できていない印象だが、NTTドコモとauはデータ通信の使い放題を実現し、ソフトバンクもそれに近い環境の料金プランを提供している。在宅勤務やテレワークへの移行が注目されている中、5Gサービスはデータ通信が存分に使えるという意味でも有用な選択肢のひとつになりつつある。

 今回発売されたシャープのAQUOS R5Gは、5Gサービスの提供を開始した主要3社に、揃って供給された第一弾端末になる。5Gサービスを活かすために、8K動画の撮影を軸にしたクアッドカメラ、美しい映像をなめらかに再現できるPro IGZO液晶ディスプレイを搭載する一方、独自の放熱設計による安定した動作と高い省電力性能を兼ね備え、従来のAQUOS RシリーズやAQUOS senseシリーズなどで培ってきたユーザビリティの高さもしっかりと活かされており、5G対応端末の定番を狙う一台と言えそうだ。

 ただ、8K動画の撮影はスマートフォン内でこそ、フォーカス再生などで活かせるものの、パソコンやテレビなど、スマートフォン以外の利用環境が限られているうえ、8Kで撮っておきたいと感じる被写体が居るかどうか(あるかどうか)によって、ユーザーの反応が変わってくる感もあり、正直なところ、やや評価が難しい。おそらく、小さいお子さんやペットなど、撮りたい被写体が居るユーザーはかなり楽しめるだろうだが、日常的な風景を撮りたい筆者のようなユーザーには機能的な物足りなさを感じてしまいそうだ。

 とは言え、主要3社の5Gサービスの第一弾端末としてラインアップされているということは、それだけ各社の信頼も厚く、安定した動作が期待できる一台であることは間違いない。5Gサービスへの移行を検討するユーザーなら、ぜひチェックしておきたいモデルと言えるだろう。

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