法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

ダブルレンズAIカメラ搭載のハイコストパフォーマンスモデル「HUAWEI Mate 20 lite」

 SIMフリー端末のオープン市場だけでなく、各携帯電話会社向けやMVNO各社向けのモデルを幅広い展開するファーウェイから、「Mate 20」シリーズの新モデル「HUAWEI Mate 20 lite」が発表された。ビックカメラグループ専売という新しい取り組みを実現したモデルだが、実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

ファーウェイ「HUAWEI Mate20 lite」、約158.3mm(高さ)×75.3mm(幅)×7.6mm(厚さ)、約172g(重量)、サファイアブルー(写真)、ブラックをラインアナップ

専売モデルというアプローチ

 現在、国内のモバイル市場は、大きく分けて2つの販売ルートが存在する。ひとつは各携帯電話会社による販売で、国内では8割から9割近くを占めるとされている。もうひとつがMVNO各社や家電量販店などを通じて販売される「オープン市場」で、ほとんどの端末はSIMフリーとなっている。『格安SIM』『格安スマホ』という言葉が消費者に浸透してきたこともあり、販売もここ数年でかなり勢いを増してきたが、それでも各携帯電話会社による販売数にはまだ遠く及ばない。

 そうした中、SIMフリーのスマートフォンの販売ルートには少し変化の兆しが見えてきている。たとえば先日、OPPOは普及価格帯のSIMフリースマートフォン「R17 Neo」をUQモバイルが独占販売すると発表した。UQモバイルが特定モデルを独占販売するのは初めてのケースである一方、OPPOとしてもKDDIのサブブランドという位置付けであるものの、特定のMVNOが専売で扱うのは同じく初めてのケースであり、どちらの面でも注目を集めた。

 そして、今回の「HUAWEI Mate 20 lite」は、家電量販店のビックカメラグループ専売という形で販売されるモデルとして発表された。ビックカメラについては改めて説明するまでもないが、傘下にはコジマやソフマップなどを持つ売上高で国内第2位の家電量販店グループであり、自らのブランドでIIJmioの回線(NTTドコモの回線)を利用した格安SIMも販売するなど、モバイル業界にも積極的に取り組んでいることでも知られる。こうした家電量販店グループが独占的に特定の端末を販売するケースは過去にほとんど例がないが、ファーウェイとしては今年、「HUAWEI P20 Pro」をNTTドコモ専売という形で供給するなど、これまでと違った形で、各携帯電話会社やMVNO各社、販売店と付き合おうとする姿勢をうかがわせる。

「HUAWEI Mate 20 lite」は家電量販店のビックカメラグループ専売という形で販売される

 「HUAWEI Mate 20」シリーズについては、今年10月に英国・ロンドンでグローバル向けに発表されたラインナップで、大画面ディスプレイと大容量バッテリーで進化してきた「HUAWEI Mate」シリーズの最新モデルになる。シリーズとしては「HUAWEI P」シリーズと並ぶ形になるが、「HUAWEI P」シリーズがカメラに強く、パーソナルユーザー向けの印象が強いのに対し、「HUAWEI Mate」シリーズはビジネスパーソンを強く意識したシリーズとされている。

 今年10月のグローバル向け発表会のプレゼンテーションでは、「HUAWEI Mate 20 lite」は扱われなかったが、発表会以降、いくつかの国と地域向けには出荷が開始されており、日本も取り扱い国のひとつに加わった形になる。ファーウェイは国と地域によって、さまざまなモデルを異なる名称で販売しており、昨年、国内で販売された「HUAWEI Mate 10 lite」は一部の国と地域で「HUAWEI nova 2i」という名称で販売されているモデルだった。

 今回の「HUAWEI Mate 20 lite」は、昨年の「HUAWEI Mate 10 lite」の後継に位置付けられ、これまでのシリーズ通り、大画面ディスプレイと大容量バッテリーを搭載し、ファーウェイ製端末の特徴のひとつであるダブルレンズカメラを前後面に搭載するなど、内容的にもかなり充実したモデルに仕上がっている。

6.3インチフルビューディスプレイ

 さて、外観からチェックしてみよう。前述のように、「HUAWEI Mate」シリーズは大画面ディスプレイと大容量バッテリーを重視したモデルとして展開されてきたこともあり、全体的にスクエアなデザインが採用されてきたが、今年10月にグローバル向けに発表された「HUAWEI Mate 20」シリーズはそれぞれのモデルがオリジナルのデザインを採用し、バリエーションを拡げている。

 HUAWEI Mate 20 liteは従来のHUAWEI Mate 10 liteに引き続き、フラットでスリムなボディに仕上げられている。ボディ幅は75.3mm、厚みは7.6mmに抑えられており、前後面共にガラス仕上げの美しいデザインにまとめられている。背面には指紋センサーやカメラがシンメトリーにレイアウトされており、指紋センサーの位置も操作しやすいポジションに配されている。重量も172gと、最近の大画面ディスプレイ搭載端末に比べ、軽量で持ちやすい。背面カバーなどを装着するユーザーにとっては、これくらいの軽さなら、カバー付きでも重さが気にならないだろう。ただし、フラッグシップモデルのHUAWEI Mate 20 ProやHUAWEI P20 Proと違い、防水・防塵には対応していないので、気をつけて扱うようにしたい。

左側面はSIMトレイが格納されている部分のみで、すっきりとした仕上がり
右側面は上側に音量キー、下側に電源キーの配置。他のファーウェイ製端末と共通
背面中央にはダブルレンズカメラ、指紋センサーが縦に並ぶシンメトリーなデザイン
下部にはUSB Type-C外部接続端子、3.5mmステレオイヤホンマイク端子を備える

 前面には2340×1080ドット表示が可能な6.3インチFHD+カラー液晶ディスプレイを搭載する。従来のHUAWEI Mate 10 liteは縦横比18:9の5.9インチディスプレイだったが、今回は縦方向にさらに拡大したことで、縦横比は19.5:9となっている。映像配信サービスを視聴するときには迫力ある画面で楽しめる。ディスプレイの上部には後述するダブルレンズカメラが内蔵されており、その両サイドまで液晶ディスプレイが覆うノッチのあるデザインを採用する。ちなみに、設定を変更することで、ノッチを隠す表示も可能だ。

 バッテリーは3750mAhの大容量バッテリーを搭載しており、付属のACアダプターを利用することで、9V2Aの急速充電にも対応する。

ディスプレイ上部のノッチは設定画面内で非表示に切り替えることも可能
バッテリー容量が大きいだけでなく、充電完了までの時間や残り動作時間なども表示されるほか、細かく動作モードを設定できる

 チップセットはKirin 710を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載する。最大256GBのmicroSDメモリーカードを装着可能だが、デュアルSIMカードの2枚目のnanoSIMカードと排他利用になる。チップセットのKirin 710は国内向けモデルでは初搭載になるが、2.2GHzクアッドコア+1.7GHzクアッドコアのオクタコアCPUとなっており、グローバル向けではnova 3iやhonor 8Xなど、コストパフォーマンスの高いモデルに搭載されている。従来のHUAWEI Mate 10 liteなどに搭載されていたKirin 659の後継に位置付けられ、12nmプロセスルールで製造された新開発のミッドレンジ向けチップセットになる。プラットフォームはAndroid 8.1、ファーウェイのユーザーインターフェイスはEMUI 8.2を採用する。

ホーム画面はこれまでのファーウェイ製端末を基本的には共通デザイン
ホーム画面のスタイルは「標準」と「ドロワー」から選ぶことができる
ナビゲーションキーはHUAWEI nova 3などと共通で、3種類から選ぶことができる
端末を持ったときの動きなどで機能が利用できる「モーションコントロール」も便利な機能

 セキュリティは背面に備えられた指紋センサーによる指紋認証に加え、インカメラを利用した顔認証にも対応する。ただし、HUAWEI Mate 20 liteに搭載される顔認証は、HUAWEI Mate 20 Proなどに搭載される3D顔認証ではないため、似た人物や物体などでもロックが解除されてしまうケースがある。よりセキュアに利用したいときは指紋認証の利用がおすすめだ。ちなみに、顔認証を操作しやすくするため、端末を持ち上げたときに画面が起動するように設定することもできる。

顔認証では端末を持ち上げたときに画面起動を有効にする設定が可能
顔認証は認証時の動作を設定できるほか、アプリロックへのアクセスも設定できる
指紋登録はグラフィックや文章でガイドを表示するなど、初心者にもわかりやすい
指紋の面を記録する形式のため、登録時はくり返し指を動かしながら、設定する

 ネットワークの対応通信方式と対応バンドは本誌記事及びスペック表を参照していただきたいが、デュアルSIM&デュアルVoLTEに対応しているものの、au VoLTEについてはバージョンアップでの対応予定となっている。今回はIIJmio タイプDのSIMカードとワイモバイルのSIMカードで、NTTドコモ網とソフトバンク網のネットワークによるVoLTE通話の動作が確認できた。

 ちなみに、ソフトバンク網については、ソフトバンクとワイモバイルのSIMカードのみでVoLTEが利用でき、「ソフトバンク網を利用したMVNO」各社のサービスではVoLTEが利用できないので、注意が必要だ。ソフトバンクグループ内となったLINEモバイルも同様の扱いになる。

SIMカードはnanoSIMカードを採用。nanoSIMカードとmicroSDメモリーカード、もしくは2枚のnanoSIMカードを利用できる
NTTドコモ網のAPN一覧。spモードがなくmopera Uが登録されている
au網を利用するAPNの一覧。ちなみに、mineoなどで利用されている一部のSIMカード(VoLTE対応前の黒いもの)を挿すと、「mineo(auプラン)」のみが表示される
ソフトバンク網を利用するAPNの一覧。開始されて間もない「LINEモバイル」のソフトバンク回線をはじめ、「mineo(ソフトバンクプラン)」も登録されている
「HUAWEI Mate 20 lite」(左)と「HUAWEI Mate 20 Pro(海外版)」(右)の比較。見た目のサイズ感はほとんど変わらない
「HUAWEI Mate 20 lite」(左)と「HUAWEI Mate 20 Pro(海外版)」(右)の背面の比較。HUAWEI Mate 20 liteの方がボディ幅がやや広いことがわかる

アウトカメラとインカメラ共にダブルレンズAIカメラ

 今や各社が複数のカメラを搭載するようになってきたが、本誌でも何度も触れてきているように、その先駆者はファーウェイだ。なかでもLeica(ライカ)との協業によって進化を遂げてきたLeicaダブルレンズカメラ、Leicaトリプルレンズカメラは、今までのスマートフォンにはない高画質を実現し、モバイル業界だけでなく、カメラ業界でもさまざまな賞を受賞するほど、高い評価を受けている。このLeicaとの協業によって培われたノウハウは、他のファーウェイ製端末にも活かされており、Leicaの名を冠さないモデルでも従来に比べ、着実に高品質な写真を撮影できるようになってきた。

 今回のHUAWEI Mate 10 liteには、背面のアウトカメラが2000万画素と200万画素、インカメラも2400万画素と200万画素の2つのダブルレンズカメラで構成されている。いずれも200万画素のイメージセンサーは深度を測るために利用されており、基本的には2000万画素、もしくは2400万画素のメインのイメージセンサーで撮影している。

 機能としては、ダブルレンズカメラを活かし、ボケ味の利いたポートレート撮影などが挙げられるが、AIを活かした撮影機能もサポートされており、AIがシーンを自動認識し、それぞれのシーンに合った最適な設定で撮影ができる。具体的にはアウトカメラが「青空」「フード」「パンダ」「猫」「犬」「花」「夜景」「花火」「植物」など、22種類のシーンを認識し、インカメラは「青空」「花」「夜景」「部屋」「植物」など、8種類のシーンが認識される。

 また、インカメラのみの対応になるが、セルフィーで逆光になってしまうようなシーンでは、HDR Pro機能により、顔をしっかりと捉えつつ、背景をぼかした写真を撮ることができる。さらに、アウトカメラ、メインカメラ共に、ポートレートを選ぶと、ポートレートライティング機能により、「ソフト照明」「バタフライ照明」「スプリット照明」「舞台照明、」「クラシック照明」の5種類から照明を選べるようにしている。

背面にはダブルレンズAIカメラを搭載。真下に指紋センサーを備える
被写体を認識して、最適な設定で撮影される。ミニカーも「自動車」と認識された

 この他にもAIで顔を認識させ、キャラクターに同期させることで、表情豊かな絵文字が作成できる「3D Qmoji」も利用可能で、作成した絵文字はGIFフォーマットで保存し、SNSに投稿することもできる。

カメラの「写真」モードでのファインダー画面、上段右から2つめの[AI]をタップすると、AIカメラの有効/無効を切り替えられる
標準やポートレート、ビデオなど主要のモード以外は、[その他]に登録されている。[アーティストモード]など、新しいモードも用意される
カメラの設定画面。スマイルキャプチャやオブジェクトトラッキングなどの機能もサポートされる
カメラで「AI Vision」を利用すると、ファインダー内で認識された対象物がAmazonで検索される

 今回は試用期間が短かったため、公開できるサンプル写真があまりないが、筆者が試した限り、従来のMate 10 liteを上回る完成度の高いカメラと言えそうだ。暗いところでの撮影も十分に及第点を付けられるレベルだ。

動きのあるイルミネーションを撮影。グラフィックが流れてしまうこともなく、撮影ができた。周囲のライトはややにじんでいるが、全体的に明るく撮影できている ※リンク先は5120×3840ドット

手頃な価格でダブルレンズAIカメラが楽しめる

 次々と新製品を国内市場に送り出すファーウェイだが、今回のHUAWEI Mate 20 liteはビックカメラグループ専売モデルという新しい取り組みをしたモデルになる。ファーウェイはすでに今年だけでも国内のオープン市場向けに、「nova lite 2」「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 lite」「HUAWEI nova 3」を送り出しており、かなり幅広い価格帯のラインナップを揃えている。

 今回発表された「HUAWEI Mate 20 lite」は今のところ、3万9800円(税別)で販売される予定で、価格的には「HUAWEI nova 3」と「HUAWEI P20 lite」の中間に位置付けられる。フラッグシップモデルのようなハイスペックや機能的な派手さはないが、必要十分なスペックを搭載しており、一般的な利用であれば、十分に満足できるレベルの構成となっている。なかでもカメラについては、アウトカメラ、インカメラともにダブルレンズで構成されており、AIの効果によって、さまざまなシーンで最適な撮影ができるように作り込まれている。手頃な価格で、AIを活かしたダブルレンズカメラを楽しめるスマートフォンとして、おすすめできる一台と言えそうだ。

【お詫びと訂正 2019/02/05 12:39】
 初出時、搭載されるチップセットの「Kirin 710」にNPUが内蔵されAI処理に対応している旨の記載がありましたが、「Kirin 710」にNPUは搭載されておらず、AI処理もCPUで行う仕様でした。お詫びして訂正いたします。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone XS/XS Max/XR超入門」、「できるゼロからはじめるiPad超入門 Apple Pencil&新iPad/Pro/mini 4対応」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるポケット docomo HUAWEI P20 Pro基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるWindows 10 改訂4版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。