法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「moto z3 play」は3キャリア対応&「moto mods」拡張で楽しめる

 本体の背面に拡張モジュール「moto mods」を装着することで、ハードウェアの拡張という楽しみを実現したモトローラのMoto Zシリーズ。

モトローラ・モビリティ・ジャパン「moto z3 play」、約156.5mm(高さ)×76.5mm(幅)×6.75mm(厚さ)、約156g(重量)、Deep Indigo(写真)をラインアップ

 その最新モデルとなる「moto z3 play」が発売された。実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

ケータイの機能を決めるハードウェア

 あらためて説明するまでもないが、スマートフォンは基本的に設計時に決められたハードウェアによって、利用できる機能が決まってしまう。

 たとえば、ワイヤレス充電非対応の機種をワイヤレス充電器に載せても反応しない。シングルカメラの機種をデュアルカメラにすることもできない。

 かつてのケータイ時代もそうだったが、ワンセグやおサイフケータイなど、ハードウェアの機能差によって、販売が大きく左右されることが多い。各携帯電話会社も端末メーカーもとにかく『全部入り』で開発することを第一に考えてしまいがちだった。

 しかし、ハードウェアによって実現される機能が増えれば、自ずと端末は重厚長大路線を突き進むことになり、ボディの大きさや重さから持ちにくくなったり、価格も高くなってしまう。

ハードウェアを拡張する楽しみを提案する「Moto Z」

 そんなジレンマに拡張モジュールという機能によって、ひとつの解を導き出したのがモトローラの「Moto Z」シリーズだ。

 2016年6月に米国でグローバル向けのフラッグシップモデルとして発表された初代モデル「Moto Z」は、同年9月に国内市場への投入が発表され、同年10月から販売が開始されている。

 本体の背面には「moto mods」と呼ばれる拡張モジュールが装着可能で、初代モデル発表時にはプロジェクターの「moto insta-share projector」、バッテリー内蔵スピーカーの「JBL SoundBoost」、光学10倍ズームとキセノンフラッシュを備えた「Hasselblad True Zoom」、バッテリーとワイヤレス充電機能を備えた「Incipio offGRID Power Pack」などがいっしょに発表され、話題となった。

 ちなみに、筆者自身も「Hasselblad True Zoom」を購入し、旅行などにも持ち歩いている。

光学10倍ズームとキセノンフラッシュを備えた「Hasselblad True Zoom」

 翌2017年6月には二代目モデル「Moto Z2 Play」が発表され、国内向けにも発売された。moto modsもさらに種類が増え、ワイヤレス充電を可能にする「ワイヤレス充電キャップ」、バッテリーを内蔵した「Turbo Power パック」、方向キーなどを備えた「Motoゲームパッド」などが追加された。

360度のパノラマ撮影ができる「Moto 360カメラ」

 その後も360度のパノラマ撮影を可能にする「Moto 360カメラ」、撮影した写真をプリントできる「Polaroid インスタプリンター」などもmoto modsのラインアップに加わり、ユーザーが利用シーンに応じて、ハードウェアを拡張する楽しみを提供している。

 さらに、米国では米Verizon向けに5Gネットワークに接続が可能なmoto modsも発表され、モバイルネットワークの拡張にも対応可能であることを示している。

Moto Zシリーズは三世代目に

 今回発表された「moto z3 play」は、その名の通り、「Moto Z」シリーズの三世代めのモデルということになる。

 moto modsの拡張性は継承しながら、ディスプレイを大型化し、国内向けのMoto Zシリーズでは初のデュアルカメラを搭載するなど、着実に進化を遂げたモデルだ。

 Moto XシリーズやMoto G6 Plusで好評を得た写真の編集機能をさらに進化させることで、撮るだけでなく、撮った写真を加工して楽しめる環境を整えている。

 端末としてはSIMフリーモデルで、オープン市場向けに販売され、国内家電量販店やオンラインストア、ケーブルテレビ各社、MVNO各社で販売されるほか、モトローラの直販サイト「Motoストア」(直販価格:5万6800円(税抜))でも販売が開始されている。

6.75mmのスリムボディに6.01インチフルHD+対応OLEDを搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。

上部にはSIMカードトレイのスロットがある。カメラは突起しているので、Style Shellなどのカバーを装着して利用したい

 「Moto Z」シリーズと言えば、従来モデルから金属パネルのようなスリムでソリッドなボディが特徴的だったが、今回のmoto z3 playも6.75mmというスリムなアルミ製ボディで美しく仕上げられている。

下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。3.5mmイヤホンマイク端子はない

 従来モデルと少し違うのはボタン類のレイアウトで、左側面に電源キー、右側面に音量キーと指紋認証センサーをレイアウトしている。一般的に電源キーは右側面に備えられていることが多く、やや操作に戸惑う。

左側面に電源ボタンが備えられる。右側面の機種が多いので、少し慣れが必要
右側面には音量キーと指紋認証センサーを備える。指紋認証の操作はしやすい

 待機状態から画面をオンにするには、後述するMotoアプリで手を近づけたら、オンに切り替えられるように設定できるので、問題ないが、利用を終えて、一時的に画面をオフにするときに、本体の左側面の電源キーを押さなければならず、少し慣れが必要だ。右側面の指紋認証センサーの長押しやスワイプなどで、画面オフにできる機能が欲しいところだ。

背面は上側にデュアルカメラ、下側にmoto modsの接続端子を備える。moto modsはマグネットで固定される

 背面にはデュアルカメラやmoto modsの接続端子、前面のディスプレイの上の部分にはインカメラを内蔵する。背面のカメラ部は突起しているため、moto modsにラインアップされているカバーの「Moto Style Shell」を装着しておくのがおすすめだ。

シンプルに背面をカバーできる「Style Shell」は一枚、持っておきたい
本体背面に「Style Shell」を装着。普段はこの状態で持ち歩くと、スリムで使いやすい

6.01インチの有機ELディスプレイ

 本体前面には2160×1080ドット表示が可能な6.01インチのフルHD+対応有機ELディスプレイ(OLED)を搭載する。前面のガラスには2.5DのCorning Gorilla Glass3を採用する。

 ここのところ、上部にノッチを備えたデザインのモデルが増えているが、moto z3 playは縦横比18:9の標準的なディスプレイの形状を採用し、上下のベゼル(額縁)を狭額縁にすることで、美しく仕上げている。

 ノッチはデザイン上のアクセントとして面白いが、やはり、こうしたスタンダードなデザインは落ち着きがあり、外観も美しい。

3000mAhのバッテリー、moto modsでワイヤレス充電も

 本体にはスリムなボディながら、3000mAhの大容量バッテリーを搭載しており、一般的な利用で、ほぼ1日の利用が可能になる。

バッテリー残量がない状態でも付属の18W USB-C TurboPower充電器による30分の充電で、半日の利用が可能になるとしている。

 ワイヤレス充電には対応していないが、moto modsにラインアップされている「ワイヤレス充電キャップ」を装着すれば、Qi及びPMA方式によるワイヤレス充電が利用できる。

 バッテリー容量が足りなければ、同じくmoto modsの「Turbo Powerパック」(3490mAh)や「Incipio offGRID Power Pack」(2220mAh)などで拡張することも可能だ。

主な仕様

 チップセットは米クアルコム製Snapdragon 636(SDM636)を採用し、4GBのメモリー(RAM)と64GBのストレージ(ROM)を搭載する。

 プラットフォームはAndroid 8.1.0を搭載し、ユーザーインターフェイスは「ピュアAndroid」とも呼ばれるAndroidプラットフォームの標準に準拠している。クセもなく、はじめてのユーザーでもすぐに慣れるユーザーインターフェイスと言えるだろう。日本語入力はGoogle日本語入力を採用する。

DSDS対応、3キャリアのネットワークも利用できる

 最大2TBのmicroSDメモリーカードをサポート。SIMカードはnanoSIMカードを採用し、デュアルSIM&デュアルスタンバイ(DSDS)に対応する。

SIMカードトレイには2枚のnanoSIMカード、もしくは1枚のnanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを装着可能

 ネットワークの対応については、NTTドコモ、au、ソフトバンクの主要3社のネットワークに対応し、いずれのネットワークでもVoLTEが利用できる。

NTTドコモのネットワークを利用したAPNの一覧
auのネットワークを利用したAPNの一覧
ソフトバンクのネットワークを利用したAPNの一覧

 ただし、2枚のSIMカードを装着したとき、VoLTEで着信に応答できるのはモバイルデータ通信を有効にしたSIMカードのみ。

 もう片方のSIMカードは3Gで着信する。つまり、DSDV(デュアルSIM&デュアルVoLTE)ではなく、DSDSまでの対応になる。

右側面に指紋認証センサー、顔認証も

 moto z3 playは前述のように、右側面に指紋認証センサーを内蔵しており、指紋によるロック解除が可能だが、新たに顔認証にも対応する。

 端末を持ち上げたとき、画面をオンに切り替える設定が用意されているため、これと顔認証を組み合わせれば、端末を手に持ち、普段、使うときと同じように、顔の前に持ってくれば画面ロックが解除され、すぐに使える状態になる。

 ただし、顔認証はよく似た人の顔でもロックが解除される可能性があるため、その点は注意が必要だ。普段は顔認証で画面ロック解除などをしておき、よりセキュアな認証を利用したいときは指紋認証センサーを利用するといった使い分けが必要になる。

1200万画素デュアルカメラを搭載

 現在、国内外のスマートフォンではデュアルカメラが全盛だが、モトローラはすでに2017年発売の「Moto X4」や2018年発売の2018年発売の「Moto G6 Plus」などでデュアルカメラに取り組んできた実績があり、それらのモデルに搭載されたデュアルカメラとほぼ同じものがmoto z3 playにも搭載された。

背面にはデュアルカメラを搭載。1200万画素イメージセンサーと500万画素深度センサーで構成される

 本体背面の上部に備えられたカメラは1200万画素のデュアルピクセルイメージセンサーにF1.7のレンズを組み合わせ、これに500万画素の深度センサーとして構成することで、ボケ味の利いた美しい写真を手軽に撮影できるようにしている。

 500万画素のイメージセンサーは深度センサーとして利用しつつ、明暗情報なども補足的に利用しているようで、暗い室内などでも明るく撮影できるようにしている。

夜景を撮影してみたが、左側のタワーのライトアップがややにじんでしまったが、手前側はしっかりと撮影できている
ポートレートで撮影。被写体がしっかりと捉えられ、背景はうまくボケている。モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)
薄暗いバーでグラスとボトルをポートレートで撮影。グラスとボトルが際立ち、背景のランプや棚がきれいにボケている

 写真モードで「ポートレート」「カットアウト」「スポットカラー」「Cinemagraph」を選んで撮影すると、さまざまな効果を加えた写真を撮ることができる。

 「ポートレート」はフロントカメラでも利用できる機能で、主な被写体にしっかりとフォーカスを合わせつつ、背景をぼかすことで、メインの被写体が際立った写真を撮ることができる。

 撮影した写真はGoogleフォトで表示し、編集アイコンをタップして、[ポートレートエディタ]を選ぶと、背景のボケ具合を調整したり、特定部分以外をモノクロの変換するといった機能が利用できる。

カメラを起動し、右方向にスワイプすると、「写真モード」や「動画モード」を選べる
「ケータイしようぜ!」でおなじみの吉川ひとみさんにご協力いただき、カットアウトで撮影し、背景をビーチに差し替える編集画面

 「カットアウト」は主な被写体を切り抜き、他の写真に貼り合わせることができ、「スポットカラー」は被写体の特定の色のみを捉え、その他の部分をモノクロで撮影できる。

「スポットカラー」を使い、後ろ側の黄色いクルマのみのカラーを残し、他の部分はモノクロに変換できる

 「Cinemagraph」は動く被写体を動画として撮影し、その一部をGIFアニメーションに保存できる機能になる。実際の動きは11月21日公開の「ケータイしようぜ」でも取り上げているので、そちらを参照していただきたい。

 なかなか面白い撮影機能だが、それぞれのモードで撮影したときしか機能が利用できないのが少し面倒な点だ。たとえば、ポートレートモードで撮影した写真を「カットアウト」で切り抜いて、他の写真と組み合わせたり、「スポットカラー」で印象的な写真を作るといった使い方ができない。

 ユーザーとしてはあらかじめどういう写真を作り出したいのかを意識する必要があるわけだ。今後のバージョンアップに期待したい。

オリジナル機能が充実した[Moto]アプリ

 モトローラ製端末は前述のように、「ピュアAndroid」に近いAndroid標準のユーザーインターフェイスを採用している。

 しかし、何も工夫がないのかというと、そうではない。実は、ユーザーインターフェイスのカスタマイズやオリジナル機能はプリインストールされている[Moto]アプリにまとめられている。

Motoアプリを起動すると、現在、推奨される機能が「候補」に表示される
タブを「機能」に切り替えると、3つのグループが表示される。「Motoボイス」は日本語に非対応のため、利用できない

 [Moto]アプリは「Motoアクション」「Motoディスプレイ」「Motoボイス」の3つのグループにまとめられているが、これらのうち、「Motoボイス」は残念ながら、日本語に対応していないため、今のところ、利用できない。

 「Motoアクション」には端末を持ち上げたときに顔認証と連動して画面ロックを解除できる「持ち上げてロック解除」、端末を持った状態で手首をひねるように動かしてカメラを起動する「手首をひねってクイックキャプチャー」、端末を手に持ち、2回振り下ろすと、フラッシュライトを点灯できる「フラッシュライト操作」などが利用できる。

 いずれの操作もチュートリアルが表示され、体験操作も用意されているので、どのように操作するのか、どんなときに便利なのかが初心者にも理解しやすい。

「Motoアクション」のグループ内には「持ち上げてロック解除」などの機能が並ぶ
「ワンボタンナビ」は画面最下段のジェスチャーバーを操作して、ナビゲーションキーの操作が利用可能。アプリ内で試すことができるのも便利なところ

 「Motoアクション」の機能のうち、新しいものとしては「ワンボタンナビ」が挙げられる。「ワンボタンナビ」は従来モデルにも搭載されてきた機能だが、従来モデルは本体前面に備えられた指紋認証センサーで操作をAndroidプラットフォームのナビゲーションキーの操作を代用できるようにしていた。

 ところが、moto z3 playは前面に指紋認証センサーがないため、画面最下段に「ジェスチャーバー」と呼ばれる短いバーを表示し、そこをタップしたり、左右にスワイプすることで、ナビゲーションキーの機能を割り当てている。少し慣れが必要だが、ワンボタンナビを有効にすることで、画面を広く使えるというメリットがある。

「親切ディスプレイ」は画面を見ているとき、暗くなったり、スリープにならない機能
「Motoディスプレイ」で「手を伸ばして起動する」を有効にすると、机に置いているときも手を近づけると、一時的に画面が表示される

 また、「Motoディスプレイ」は「夜間表示」「親切ディスプレイ」「Motoディスプレイ」の3つの機能が並ぶ。

 「夜間表示」は夜間に画面のトーンを自動的に変更して、安眠ができるようにするもので、一般的なブルーライトカットと同じ機能だ。

 「親切ディスプレイ」はユーザーが画面を見ているときは画面をオンのままにするという機能になる。

 「Motoディスプレイ」は画面がオフのときに、フェードイン/フェードアウトで通知を表示したり、ユーザーが手を近づけると、ホーム画面の丸いウィジェットに似たものが黒い画面に浮かび上がるように表示できる。

 つまり、画面を触らなくても手先を近づけるだけで、バッテリー残量や日時が確認できるわけだ。ちなみに、ホーム画面に表示される丸いウィジェットはモトローラ端末でおなじみだが、外周がバッテリー残量を表わし、時刻をタップすればアラームなどが設定できる「時計」、日付をタップすれば「Googleカレンダー」、天気アイコンをタップすれば「天気」のアプリをそれぞれ起動できる。モトローラユーザーなら、ぜひ覚えておきたい機能のひとつだ。

moto modsで拡張する楽しさをちょうどいい価格帯で実現した「moto z3 play」

 スマートフォンは使う人によって、求める機能も利用スタイルも異なる。ある人は必要十分な機能で満足するかもしれないが、ある人はもっと高機能を求めるかもしれない。

 モトローラがMoto Zシリーズで展開する「moto mods」は、そんな幅広いユーザーのニーズに応えることができるものだ。本体の背面に装着するだけで、あるときはプロジェクター、あるときはスピーカー、あるときは光学10倍ズーム搭載のデジタルカメラに変貌する。バッテリーパックやワイヤレス充電アダプターなど、実用的なモジュールもラインアップされており、楽しく使うだけでなく、堅実に使うことも可能だ。

 しかし、moto modsがあれば、それで十分ということではなく、やはり、moto modsを装着する端末そのものの基本性能や完成度、仕上がりも重要になってくる。

 今回発売された「moto z3 play」はデュアルカメラを搭載し、撮った写真を楽しむための機能も充実させる一方、大画面のディスプレイを搭載しながら、スリムで持ちやすい形状を実現し、価格は6万円前後に抑えられている。

 昨今、10万円前後を皮切りに、ヘタをすれば、20万円を超える高価格の端末も登場しているが、moto z3 playはユーザーが手にしやすい価格帯で、主要3社のネットワークにも対応するなど、実用的な機能をしっかりと充実させた端末に仕上げられている。SIMフリー端末がはじめてのユーザーにも安心して、おすすめできる一台と言えるだろう。

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法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。