法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
デュアルカメラと深度エディタで写真が楽しい「Moto G5s Plus」
2017年10月17日 11:00
国内のSIMフリースマートフォンの市場に、次々と魅力的なモデルを投入するモトローラ(Motorola)。同社は10月2日、秋冬商戦期へ向けた新モデルとして、「Moto G5s Plus」を発表した。
「Moto G5s Plus」は今年3月に発表され、各方面で好評を得た「Moto G5 Plus」をベースに、背面のカメラをデュアルカメラに強化したモデルになる。筆者も実機を試すことができたので、デュアルカメラを中心に、ファーストインプレッションをお届けしよう。
主力モデル「Moto G」シリーズ
国内のSIMフリースマートフォン市場は、MVNO各社と各携帯電話会社との間の競争の流れと並行して、SIMフリースマートフォン中心のメーカーと各携帯電話会社向け端末を主力に位置付けるメーカーの争いも激しくなりつつある。
これまで各携帯電話会社が販売するモデルは、端末購入に伴う「月額割引」として端末購入補助金を付与することで、割安な価格で消費者に端末を販売してきた。しかし、昨年の総務省のガイドラインの影響もあり、徐々に販売奨励金が絞られる傾向にあり、今年は販売奨励金を適用しない代わりに、月額料金を割安にするプランも発表され、月々の利用料金と端末価格を絡めた各社の争いは、一段と激しさを増している。
ただ、ユーザーにしてみれば、どの携帯電話会社、どのMVNO各社でも広く利用でき、機能的には最新の技術やトレンドを積極的に取り込み、なおかつリーズナブルな価格で購入できる端末が望ましい。いくら高機能かつ最先端とは言え、やはり、一括価格で10万円を軽く超えるような価格帯の端末は、なかなか気軽に購入できるものではない。その意味でも今年は月々の利用料金と端末価格のバランス感覚が求められる一年と言えるのかもしれない。
今回、モトローラから発売された「Moto G5s Plus」は、まさにそんなバランス感覚を求めるユーザーのニーズに応えるSIMフリースマートフォンと言えそうだ。モトローラはここ数年、国内のSIMフリースマートフォン市場に積極的に新モデルを投入してきた。
そのシリーズは、ひとつが拡張モジュール「Moto Mods」に対応したハイエンド&フラッグシップに位置付けられる「Moto Z」シリーズで、もうひとつがハイエンドモデルの技術をうまく取り込みながら、より多くのユーザーのニーズに応えられる主力モデル「Moto G」シリーズという構成だ。Moto Gシリーズでは、今年3月に「Moto G5 Plus」と「Moto G5」が国内市場に投入され、好調な売れ行きを記録している。モトローラによれば、Moto Gシリーズはモトローラのラインナップでもっとも売れるシリーズであり、ユーザーの「あれもやりたい」「これも楽しみたい」といった幅広いニーズに応えられるシリーズと位置付けられているという。
今回の「Moto G5s Plus」は、今年3月に発売されたMoto G5 Plusをベースに、最近のスマートフォンのトレンドである「デュアルカメラ」を搭載し、被写界深度を活かした多彩な編集機能もサポートすることで、今まで以上に写真を楽しめる一台として仕上げられている。ちなみに、モトローラが今年のIFA 2017で発表した新モデル「Moto X4」もデュアルカメラを搭載している。今回のMoto G5s Plusには、Moto X4のデュアルカメラで利用するソフトウェアを移植されており、いち早く体験できる。
国内主要3社のネットワークに対応
まず、外観から見てみよう。ベースとなったMoto G5 Plusは、丸みを帯びた背面のボディで、手にフィットするサイズ感を実現していたが、今回のMoto G5s Plusは最薄部が8.04mmと、ごくわずかに増えたものの、Moto G5 Plusに比べ、少しフラットな背面に仕上げられたことで、手に持ったときのフィット感を継承しつつ、少しスリムになった印象を受ける。
前面には5.5インチでフルHDのIPS液晶ディスプレイを搭載し、ガラスは従来に引き続き、Corning Gorilla Glass 3(ゴリラガラス3)を採用する。ベースモデルのMoto G5 Plusは5.2インチでフルHDのIPS液晶ディスプレイを搭載していた。解像度こそ変わらないものの、画面サイズがひと回り大きくなったことで視認性も良くなり、幅広い世代のユーザーに受け入れられそうな印象だ。
ディスプレイ下には従来のMoto G5 Plusに引き続き、凹型の指紋センサーを搭載する。画面ロックの解除に利用できるほか、Androidプラットフォームの操作に欠かせないナビゲーションキー(戻るキー、ホームキー、履歴キー)の操作を再現することもできる。指紋センサーにナビゲーションキーを割り当てることで、画面内のキー表示をオフにして、画面を広く使うこともできる。Moto Zシリーズなどにも採用されている指紋センサーのロングタッチによるスリープへの切り替えも継承されるほか、長めの振動を感じるまでの長押しでGoogle アシスタントも起動でき、快適に使うことができる。
本体には3000mAhの大容量バッテリーを搭載し、15分の充電で最長6時間の駆動が可能なTurboPower充電にも対応する。Moto Modsのようにバッテリーの拡張はできないが、一般的な利用であれば、必要十分な連続稼働が可能だ。ちなみに、充電時に利用する外部接続端子は最近増えてきたUSB Type-Cではなく、ベースモデルのMoto G5s Plusと同じmicroUSBを採用する。本体は防水に対応しないが、撥水コーティングは施されており、ちょっとした雨などの水滴程度あれば、しのぐことができそうだ。
チップセットは最新のクアルコム製Snapdragon 625を搭載し、4GB RAMと32GB ROMで構成される。外部メモリーは最大128GBのmicroSDメモリーカードに対応する。プラットフォームは出荷時にAndroid 7.1がインストールされているが、Android 8.0 Oreoへのバージョンアップも予定されており、長く使いたいユーザーも安心して選ぶことができる。
モトローラ製端末と言えば、Moto G4 Plusのときから、いち早くDSDS(デュアルSIM&デュアルスタンバイ)に対応しており、今回のMoto G5s PlusもDSDSに対応している。加えて、今回から新たにauのネットワークへの対応がアナウンスされ、これにより、国内の主要3社のネットワークで利用できることになった。auのネットワークを利用したMVNOとしては、先駆者であるmineoをはじめ、IIJmioのタイプA、KDDI傘下のUQコミュニケーションズ、J:COMなどに加え、先日、新しいブランドロゴを発表したBIGLOBE Mobileもau 4G LTE回線を利用した「タイプA」のサービスを開始している。これらMVNO各社のサービスでも利用できることになる。
SIMフリースマートフォンはMVNO各社のSIMカードで利用することが多いが、DSDSについては既存のMNO各社のSIMカードを挿して、主に電話の着信などを受けつつ、データ通信は安価なMVNO各社のSIMカードを利用するといった使い方が多いため、こうした組み合わせに利用しやすくなったことはユーザーとしてもうれしいところだ。
また、モトローラ製端末ではすっかりおなじみとなった「Motoアプリ」も継承されており、「Moto Actions」と「Moto Display」にそれぞれ機能が提供されている。Moto Actionsには前述の指紋センサーを利用した「ワンボタンナビ」、2回振り下ろしてのライト点灯、手首を2回ひねってのカメラ起動などが継承されているが、Moto Dsiplayには新たに現地時間に基づいて、画面のブルーライトをカットして、暖色に変化させる「夜間表示」が追加されている。
デュアルカメラを楽しくする深度エディタ
今回のMoto G5s Plusが従来のMoto G5 Plus、ひとつ上位モデルのMoto Z2 Playなどと大きく異なるのは、メインカメラがデュアルカメラに変更されたことが挙げられる。背面には1300万画素のイメージセンサーによるデュアルカメラが搭載されており、片方はカラーセンサー、もう片方はモノクロセンサーという構成を採用する。
デュアルカメラについては各社が相次いで新製品に搭載してきているが、ひとつはiPhone 8 Plusの標準と望遠というように、焦点距離の異なるカメラを組み合わせる構成で、もうひとつがHUAWEI P10などのように、カラーセンサーとモノクロセンサーを組み合わせる構成が挙げられる。前者は離れた被写体を撮影しやすくしたり、広角を組み合わせて、ワイドな撮影を可能にするのに対し、後者はモノクロセンサーで得たダイナミックレンジの広い明暗の情報をカラーセンサーで得た被写体の信号に組み合わせることで、より質感の優れた写真を撮影できるという特徴を持つ。どちらが優れているというわけではなく、それぞれに目的と得意分野が異なるというのが実状だ。
また、デュアルカメラを搭載した多くのモデルは、被写界深度の差を活かし、メインの被写体の背景をうまくぼかすことで、メインの被写体を際立たせた写真を撮ることができる。俗に「一眼レフで撮影したような」と表現されることが多いが、スマートフォンらしからぬ写真に仕上げられることもあり、デュアルカメラの特徴として、広く認識されつつある。
今回のMoto G5s Plusはカラーとモノクロのセンサーで構成し、F2.0のレンズと組み合わせており、質感の優れた写真を撮れるほか、ボケ味を利かせた写真も撮影できるようにしている。従来モデルに比べ、暗いところでの撮影にも強くなった印象で、さまざまな設定を変更して撮影するプロフェッショナルモードを利用すれば、味のある写真を撮ることもできる。
ただ、今回のMoto G5s Plusは単純にデュアルカメラを搭載しただけではなく、撮った写真を面白く加工できるようにしている。写真撮影時にカメラモードの切り替えから[深度の有効化]を選んで撮影すると、3Dデプスセンサーにより、被写界深度の差を活かした撮影ができる。こうして撮った写真を[フォト]アプリで表示したとき、編集で[深度エディタ]を選ぶと、被写界深度の差を活かした写真編集が可能になる。
これまでの多くのデュアルカメラで撮影した写真のように、メインの被写体だけを際立たせて、背景をぼかすのであれば、「選択的フォーカス」を選ぶが、Moto G5s Plusの深度エディタでは写真の特定部分のみをカラーで残し、その他の部分をモノクロで仕上げる[選択的モノクロ]という編集ができたり、写真の特定部分のみを切り抜き、他の背景を組み合わせる[背景の書き換え]などの編集をできるようにしている。
これまでもスマートフォンに搭載された写真アプリや編集アプリで、さまざまな編集機能を利用できるようにしてきた例は数多くあるが、こうしたエフェクトや編集を手軽に利用できるようにしたのは注目に値する。この編集機能はIFA 2017で発表された「Moto X4」にも搭載されていたものであり、
Moto G5s Plusではその機能をいち早く取り込み、利用できるようにしているわけだ。ちなみに、Moto X4はIFA 2017発表時から国内市場向けに投入されることが明らかにされている。
手軽にデュアルカメラのポテンシャルを引き出せるMoto G5s Plus
この10年近い進化で、スマートフォンは成熟したとされることが多いが、スマートフォンの可能性は必ずしもチップセットの性能やメモリの容量、通信速度だけで決まるものでもないだろう。パソコンなど、他の製品がそうであるように、ハードウェアの性能もさることながら、ソフトウェアによって、どれだけ可能性が拡げられるかも重要なテーマのひとつだ。
今回、取り上げたモトローラのMoto G5s Plusは、スマートフォンの新しい注目ハードウェアのひとつであるデュアルカメラを搭載しているが、単に搭載するだけでなく、深度エディタという機能を提供することで、撮った写真をもっと楽しめるようにしている。ボケ味の利いた写真はもちろん、特定部分をモノクロにしたり、背景を差し替えるといった機能を誰でも手軽に楽しめるのは、評価できるポイントだろう。
これに加え、SIMフリースマートフォンではまだそれほど多くない国内3社のネットワーク対応を実現し、幅広い環境で利用できるようにしている。DSDSにも対応しているため、MNO各社の回線で音声通話を受けつつ、MVNO各社の安価な回線でデータ通信を割安に利用するといった活用にも適している。microSDメモリーカードの利用がデュアルSIMとの排他利用という制限はあるが、十分に実用度の高い機能と言えるだろう。
そして、これだけの機能を搭載しながら、実売価格が4万円を切るところに設定されているもの魅力的だ。はじめてSIMフリースマートフォンを手にするユーザー、他機種との併用を検討しているユーザーも手に取りやすいモデルと言えそうだ。