みんなのケータイ
2024年のスマートフォンは機種数こそ増えたが、多様性はなくなった気がする
2024年12月2日 00:00
この原稿が載る頃には2024年も12月を迎えているかと思うのですが、今年1年を率直に振り返りますと、スマートフォンが盛り上がらない1年だった……というのが正直な感想であったりします。
実は、2024年は投入されるスマートフォンの数が非常に多かった年でもあり、とりわけ5月のゴールデンウィーク明け頃はメーカー各社の新機種発表ラッシュが続きました。それゆえ筆者も取材やレビューの執筆が短期間に集中してしまい、とても大変な思いをしたことを覚えています。
ですが、円安や政府によるスマートフォン値引き規制の影響などで、スマートフォンの価格が大幅に高騰したこともあって、投入される新機種は売れ筋を狙ったミドルクラスが多くを占めるようになっていました。一方で値段が高いフラッグシップモデルは減少傾向にあり、これまで強い個性を打ち出していたメーカーも、個性を抑え確実に売れることに重点を置く傾向が強まった感があります。
もちろんそうした中でも、AI関連機能を強化したスマートフォンや、折り畳みスマートフォンを投入するメーカーが増えるなど、着実に市場に変化を与える機種をいくつか見ることはできました。ですが、国内市場全体を見渡すと、市場環境が非常に厳しいだけに確実に売れることに重きを置いた、無難なモデルが増えてしまったことが、端末数の割に盛り上がりを欠く要因となったのではないでしょうか。
その一方で、今年、筆者が「うらやましい」と感じたのがパソコンです。筆者は基本的にパソコンの取材はしていないので、その動向にあまり詳しいわけではないのですが、それでも今年はパソコン関連の取材や執筆に関わることが何度かありました。
そうした中で感じたのは、従来の売れ筋であるビジネス用途だけでなく、教育やゲーミングなど需要に応じて製品の幅がかなり広がっていること。それだけに個性的な製品も増えているようで、2024年にはジョイスティックを搭載したポータブルゲーミングPCの数が増え、注目を集めていました。
加えて中国の新興企業を主体として、非常に安価でコンパクトなミニPCも数多く投入され、盛り上がりを見せていたようです。無論、売れ筋は大手メーカー製の王道的なラインアップであることに変わりはないのでしょうが、それに加えてニッチな需要を埋める多様なデバイスが投入され、市場で一定の評価を得ていることが、年々個性が失われているスマートフォンの世界にいるとうらやましいと感じてしまう訳です。
もちろんそれは、スマートフォンより先にメーカーの淘汰が進む一方で、利用用途が広がり2~3台目の需要が開拓されるなど、市場の成熟が進んだ結果でもあります。
それゆえスマートフォンも市場の成熟がより進めば、多様なデバイスが受け入れられる可能性はあるのかもしれません。ですが、少なくとも現在の動向を見る限り、厳しい市場環境で販売力と資本力があるメーカーへの集約が進み、多様性が失われることでデバイスとしての面白さが失われているというのが正直なところ。
せめて、かつての「BALMUDA Phone」のように、賛否が分かれるほど強い個性を持ったモデルを投入するメーカーが出てくるくらい、余裕のある市場環境に戻ってくれれば……とも感じてしまいます。