みんなのケータイ
ファーウェイとクールパッド、CES取材前に見たアメリカ販売戦略の差
2017年1月6日 06:00
CES 2017取材のためアメリカへ。渡米中の筆者の楽しみはBestBuyなどの家電量販店や通信キャリアの店舗巡り。今回もCES開始前の余裕ある時間にいくつかの店舗を回ってみた。
最近はアメリカでもSIMフリー端末の販売が増えている。大手のMNOがスマートフォンの2年縛り、格安販売をやめて、端末は分割払いという販売スタイルに変えたことから、SIMフリー端末をクレジットカードの分割払いで買っても変わらない、と考える消費者の数が増えているのだろう。
BestBuyにもSIMフリー端末のコーナーがあるが、パッと見ではBLUなど地元をベースにしたメーカーの製品だけではなく、サムスンやソニーのSIMフリー機も目立つ。またアルカテルやZTEなどの製品もちらほらと見かける。
今や中国メーカーのスマートフォンは日本でも勢力を拡大しているが、BestBuyにはファーウェイのSIMフリー端末の姿は無かった。プリペイド・SIMロック端末では多数の製品を出しているファーウェイだが、SIMフリー機の上陸はまだこれからなのかもしれない。
そう思って自分の買い物を済ませようとレジに向かったところ、アジアでよく見かけるブルーの箱に入ったスマートフォンを買っているお客さんがいた。パッケージを見ると「honor」、そう、ファーウェイの別ブランドのhonorのスマートフォンだ。そういえばSIMフリー機販売コーナーには特にファーウェイのロゴは表示されていなかったが、この青いパッケージの製品は確かに目立つ位置に置かれていた。
レジで順番待ちをしていたところ、honorを買っているお客さんが、こちらがアジア人と知ると「この端末はいいぞ、デュアルカメラで大画面で399ドルだ」と嬉しそうに話しかけてきた。彼が買ったのは日本でも販売されている「honor 8」で、アメリカでの価格は399.99ドル。質感も悪くなく、高性能で価格も割安感があるとなれば、どこの製品であろうが構わないのだろう。
まだあまり名前の知られていない無名メーカー(ブランド)の400ドルの製品が売れる一方、苦戦している中国メーカーもある。数年前は中国でシェア上位を走っていたクールパッド(Coolpad)だ。半年前、2016年7月にアメリカの通信キャリアT-Mobileを通して販売がはじまった「Coolpad Catalyst」を、筆者は今回のCES 2017取材前、ラスベガスのショッピングモールで19ドルで購入した。わずか2000円ちょっとだ。
スペックはSnapdragon 210(1.1GHz、クアッドコア)、5型FWVGA、854×480ピクセルディスプレイ、RAM 1GB、ROM 8GB、リア500万画素、フロント200万画素カメラというエントリーモデル。発売時の価格はT-MobileのSIMロックありで99.99ドル、主にプリペイド向け販売だった。
しかし、同スペックの製品は他社からも複数のモデルが出ており、あえてクールパッドの端末を選ぶ理由は少ない。また、SIMロック品はキャリアの意向でいくらでも価格を変えることができる。同じスペックのファーウェイやZTEのSIMロック・プリペイド向け端末なら半額でも買えたのだ。
今回購入したのはT-Mobile傘下のMetro PCSだったが、T-Mobileで売れなかったことからパッケージを変えて再販売したということなのかもしれない。それにしても、そこそこ使えるスマートフォンが2000円台で買えるとは、展示されている値段を見てもちょっと信じられなかった。
中国各メーカーはプリペイド向けの低価格スマートフォンではアメリカ市場を賑わせているものの、ハイエンド端末ではiPhoneやGalaxyなど大手メーカー製品の大きな壁を崩せていない。ましてやSIMロックありの低価格を売りにしているだけに、SIMロック無しでハイエンドで高価なモデルはなかなか売りにくいところだろう。
だが、honorはアメリカで専用のWebページを開設し、機能など製品の良さを消費者に直接伝えている。また価格もSIMロックが無いことを説明することで、コストパフォーマンスに優れていることをしっかりとアピールしているのだ。
通信キャリア向けのプリペイド端末は一定量を買い取ってくれるだろうが、消費者へのアピールは値段だけとなってしまう上に、価格はメーカーがコントロールできない。一方、SIMフリー端末販売は価格設定からプロモーションまで全てメーカーが行うことができる。クールパッドは数年前にもアメリカ進出を図り失敗してるが、今回も同じ過ちを犯してしまっているように思える。これに対し、ファーウェイは製品を直接消費者に届けようと、地道な販売活動を行っている。2社の戦略を見ると、同じ「中国メーカー」としてひとくくりにできない、そう実感したのであった。