DATAで見るケータイ業界
NTTドコモの3G停波は新たなネットワーク戦略再構築の節目となるか
2026年3月22日 06:00
NTTドコモは2026年3月31日をもって3Gサービス「FOMA」を終了する。今回は3G停波の動向を取り上げ、課題となっているネットワーク戦略の再構築につながるか、考察していきたい。
NTTドコモのFOMAは2001年に世界初の携帯向け3Gサービスとしてスタートし、『iモード』をはじめとするモバイルインターネットの普及を支え、日本の携帯通信の先進性を象徴する技術でもあった。しかしスマートフォンの普及と4G・5Gの高速通信の拡大に伴い、通信トラフィックの主役はすでに新世代ネットワークへ移行しており、今回の停波はモバイルネットワークの世代交代の最終段階とも言える。
『個人』&『法人』市場で終盤迎える3Gユーザーの争奪戦
総務省の「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」によれば、ドコモの2025年9月時点の3G契約は個人・法人合わせて約350万回線で、そのうち個人回線は約50万回線程度とされる。さらにNTTの決算データによれば2025年12月末の3G契約は約290万回線まで減少している。
個人向け3Gユーザーは主にシニア層や音声通話中心のライトユーザーが多く、移行促進のためにDM送付や電話による案内、郵便局員による訪問説明など多様な周知施策を行ってきた。料金や端末価格への不安を解消するため、3Gユーザー専用の「はじめてスマホプラン」を提供し、月額1078円(割引適用時)でスマートフォンへ移行できる環境を整備したほか、らくらくホンやDIGNOケータイなどの端末を実質0円に近い価格で提供するなどの施策を実施している。
さらに2025年12月頃からは最大55,000円の端末割引クーポンを配布するなど、長年の利用者を4G/5Gへ円滑に移行させる取り組みを強化している。
ドコモによる3Gユーザーのスムーズな移行は、親会社であるNTTの島田社長による「ドコモのシェア35%死守」にも直結する重要な経営課題だが、競合他社にとっては、当然だが顧客獲得の好機でもある。
KDDIはiPhoneやPixelシリーズを大幅割引する施策を実施し、ソフトバンク傘下のワイモバイルもPixelやAQUOSシリーズを1円で提供するキャンペーンを展開している。総務省も3G移行に限り端末割引の上限規制を緩和しているため、各社による顧客争奪戦が発生している。
一方、3G停波の影響は個人ユーザーだけでなく、産業用途にも及ぶ。3Gは通信速度こそ低いものの、低コストで小容量データを送る用途に適していたため、IoTの用途として自動販売機、駐車場精算機、遠隔監視システム、防犯カメラ、太陽光発電設備の監視装置など多くの設備で利用されてきた。3G停波に合わせ、たばこ自販機の年齢認証システム「taspo」がサービスを終了する一方、NTTドコモビジネスによる移行支援により、駐車場管理や自販機などで4Gや5G対応機器への更新が進められている。
特に、ドコモは自動車など特定分野向けに集中的に導入してきた競合他社と比較して、導入されている産業用途の幅が広いのが3G向けIoTの特徴だ。
3G転用の周波数を通信ネットワーク品質改善に寄与
今回のドコモによる3G停波は、単なるサービス終了ではなくネットワーク資源の再配置という意味でも重要な転換点である。ドコモが3Gで使用してきた周波数帯は主に800MHz帯と2GHz帯であり、上下合わせて約20MHz幅の帯域が利用されている。
特に800MHz帯は「プラチナバンド」と呼ばれ、障害物に強く屋内や地方でも電波が届きやすい。停波後はこの帯域を段階的に4Gおよび5Gへ転用する計画であり、例えば800MHz帯の3Gで使用していた5MHz幅をLTEへ転用することで、LTEの帯域幅は現在の1.5倍となり、通信容量や体感速度の向上が期待される。また2025年時点でドコモの3G基地局は約12万6千局存在しており、これらの設備を4Gや5Gへ転用することでネットワーク強化を進めていく方針だ。
こうした転用の動きは、当然だが通信品質の改善にはプラスに作用する。ドコモは2023年頃から通信品質への批判がSNSなどで広がったことを受け、ネットワーク強化に約300億円の先行投資を実施し、全国2000カ所で通信品質改善を進めてきた。5G基地局の整備も加速しており、2025年度下期の基地局構築数は上期の3倍ペースで進んでいる。これにより主要都市中心部の約90%で下り100Mbps以上の通信速度を実現しており、3G停波と周波数転用を契機に通信品質の改善をさらに進めることになる。
今回のドコモの3G停波は単なる旧世代サービスの終了ではなく、周波数資源の再配置、4G&5Gネットワーク品質の改善、そして産業IoTの世代交代を伴う通信インフラの大きな転換点と言える。特に800MHz帯などの重要な周波数を4G・5Gへどれだけ迅速に転用できるかは、今後の同社の通信品質と競争力を左右する要因となりそうだ。

