DATAで見るケータイ業界
総務省データから見える携帯各社の基地局戦略
2026年2月1日 06:00
総務省は1月13日に「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査」の結果を公表した。今回は、同報告書に記載されている携帯各社の基地局展開の状況について、見ていきたい。なお、本レポートの情報は、 2025年3月時点の各社データに基づく点にご留意いただきたい 。
携帯各社の基地局数
報告書によると携帯大手4社の2025年3月末の携帯基地局数は113万6592局で、技術方式別では5Gは30万2118局(26.6%)、4Gは70万7643局(62.3%)、3Gは12万6831局(11.2%)だった。
これまで基地局市場は、単に設置する数を競ってきたが、今や「基地局をどう使い、どう収益につなげるか」ということが問われている。
上記のデータを技術方式別に整理したのが下記の表となる。
携帯会社別では、最も契約数が多いNTTドコモの基地局数は43万8371局で4社の中では唯一3G基地局が残っており、全体の3割近く(28.9%)を占めているが、依然として4G基地局が6割(59.1%)近くあるのに対し、主力の5G基地局が12%しかないのが特徴だ。
一方、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社はいずれも5G基地局が35%前後に達し、4G基地局は65%前後となっている。
すでに5Gの本格普及フェーズに入り、通信トラフィックの中心は5Gへ移行しており、5G基地局数が通信品質の差に影響を及ぼしていることが推測される。
5G基地局の動向
次に、その5G基地局について見ていきたい。
上記データを携帯各社ごとに周波数別で基地局数を整理したのが下記の表だ。
NTTドコモは5G基地局が5万2532局なのに対し、KDDIは11万37局、ソフトバンクは10万4441局と倍の規模を設置している。
これは、700-3.5GHz帯の基地局数が明らかなように、4G周波数の5G向け転用(NR)戦略でエリア整備を優先させてきたKDDIとソフトバンクに対し、NTTドコモは5G向け周波数の基地局展開を進めてきた。この戦略の違いが数字になって現れている格好だ。
データからも明らかなように、5G基地局数は増加を続けているが、通信トラフィックの伸びはサブ6帯(3.7~4.5GHz)が中心で、28GHzミリ波の利用は依然として限定的である。これは、5Gの主戦場が通信速度よりも“面のカバレッジと混雑耐性”にあることを示している。
5GデータトラフィックとSAの導入状況
最後に5GのデータトラフィックとSAの導入状況について見ていきたい。
上記グラフを、携帯各社ごとに5G周波数別に整理したのが下記の表だ。
5Gのデータトラフィックで特徴的なのが、NTTドコモが19万4337テラバイトなのに対し、ソフトバンクはその2倍弱の37万4915テラバイトも5Gに流れていることだ。
上記の表からも分かるように、NTTドコモは「700-3.5GHz帯」の4G周波数帯の5G転用が約15%なのに対し、ソフトバンクは約73%と5G転用を積極的に進めてきたことが、その背景としてありそうだ。
一方、KDDIの5G転用は32%程度で、主力の「3.7-4.9GHz帯」が約68%と5Gエリアのスピーディな整備と帯域が広い5G向け周波数の新規投資を戦略的に展開してきたことがうかがえる。
5G基地局数とデータトラフィックの関係では、NTTドコモが5万2532局なのに対し、KDDIはその2倍強の11万37局となっている。
しかし、5Gのデータトラフィックは逆にNTTドコモがKDDIの約1.2倍も多くなっており、こうした点も両社の通信品質の違いとなって現れているのではないかと分析される。
さらにKDDIとソフトバンクにはUQとWCPという別のワイヤレスブロードバンドのネットワークもあり、増加する通信トラフィックの受け皿として機能しているのに対して、NTTドコモにはそれがないことも大きい。
上記グラフを、SA基地局数を5G周波数別に整理したのが下記の表だ。
携帯各社の基地局戦略
携帯各社をみると、まずNTTドコモは契約者数・総通信トラフィック(3G・4G・5G)ともに最大規模であるが、5G基地局数やSA対応比率は相対的に低い(5G基地局数の27.1%)。
結果、基地局あたりのトラフィック負荷が大きく、通信品質に影響を及ぼしている可能性が高い。そのため同社では2025年度下期~2026年度にかけて、基地局建設を拡充することを明らかにしており、急ピッチで通信品質改善に取り組んでいる。
KDDIは5G基地局数が4社で最大であり、トラフィックを広く分散させる設計を採っている。SAは全域ではなく選別導入とし、投資効率を重視しながら安定した通信品質を確保している点が特徴だ。5Gそのもので高付加価値課金を狙うというより、5Gを土台に金融・コンテンツ・固定代替回線などを組み合わせ、ARPU全体を押し上げる戦略に繋がっている。
ソフトバンクは5G基地局数が多いだけでなく、SA対応比率がほぼ全面に達している点が際立つ。基地局あたりのトラフィック負荷が相対的に軽く、低遅延やQoS制御などSAの特性を活かしたネットワーク戦略が可能で、効率的な基地局投資と収益化モデルの結びつきが最も明確と言える。
楽天モバイルは契約者数・トラフィック規模ともに小さく、5G基地局数も限定的で、SAはこの時点では未対応である。5G品質での差別化よりも、価格やシンプルな料金体系による需要獲得を優先しており、今年はKDDIとのローミング契約の行方がネットワーク戦略の鍵を握ることとなりそうだ。
基地局市場は量的拡大の段階を超え、基地局数、SA対応比率、トラフィックの分散・制御を通じて、各社の事業戦略や収益モデルが明確に反映される局面に入っている。別の言い方をすれば、基地局を起点として、どれだけ効率的にトラフィックを処理し、「価値と収益に転換できるか」に競争軸が移行しつつあるようだ。








