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「価格破壊から「値上げ」競争に反転した携帯業界の新料金トレンド
2026年5月4日 00:00
注目されてきたソフトバンクとワイモバイルの新料金プランが4月に発表された。ソフトバンクの「ペイトク無制限」を現行の月額9625円(税込み)から月額1万0175円へ、サブブランド「Y!mobile」を6~7月にかけて220~330円引き上げるというもので、6月以降、順次値上げするという。
今回は携帯各社の新料金プランのトレンドについて、政府圧力によって料金引き下げがあった2020年頃から現在まで、その動向を分析していきたい。
料金トレンドが「価格破壊」から「値上げ」局面へ反転
国内の携帯料金は、政府による2020年の料金引き下げ圧力を契機とした値下げ競争の時代を経て、現在は実質的な値上げ局面へ移行している。携帯各社は単なる通信サービスの提供から、金融・コンテンツ・法人DXを含む「Beyond Carrier」への進化を目指している。
国内の携帯市場の構造を大きく変えた転換点となったのが、2020〜2021年の「値下げ競争期」だった。各社は従来の複雑な割引(家族割・端末割)前提の料金から、シンプルで安価なオンライン専用プランへ舵を切る一方で、2020年に楽天モバイルが正式に新規参入を果たし、「1GBまで0円(当時)」など極端な価格設定を提示してきた。政府の圧力の影響もあり、携帯の料金トレンドは下落傾向となり、通信事業の収益悪化につながった。
こうした状況を立て直すべく、料金・顧客・収益モデルの“再設計”に取り組んだのが、2023年〜2024年だった。携帯各社の価格競争は一巡し、20GB・約3,000円という基準が固定化。ARPU回復へ向け、各社が取り組んだのがKDDIの「マネ活プラン」やNTTドコモの「dポイント/d払い連動強化」、ソフトバンクの「PayPay還元」、楽天モバイルの「楽天経済圏との統合」といった「通信×非通信の統合」だった。
以下に2020年からの携帯各社の代表的な料金プランを整理した。
携帯4社の料金戦略と広がる今後の競争軸
2025年にはNTTドコモが料金戦略を旧eximo/irumo系から、新しい中大容量・ポイ活・小容量を柱に再編。単なるデータ容量の整理ではなく、dカード・d払い・Lemino・DAZNなどを組み合わせた「ドコモ経済圏」前提の設計とした。
開始から約5か月で「ドコモMAX」契約者数は150万を突破し、年度末300万を目標として移行を促進していると説明しており、狙いは明確に単価の高い既存顧客の維持・深耕にある。
KDDIは2025年6月開始の「auバリューリンクプラン」にて、無制限データに加えて「au Starlink Direct」「au 5G Fast Lane」「au海外放題」をセットし、さらにサブスク還元やPontaパスまで組み込むことで、“パッケージ価値”を前面に出してきた。
サブブランドのUQ mobileでは「コミコミプランバリュー」と「トクトクプラン2」を導入し、35GBや30GBへ容量を増やしつつ、Pontaパスや各種割引を組み合わせて中価格帯を強化してきた。これにより、メインブランドでは高付加価値化、サブブランドでは割引・容量拡大で裾野拡大という二層戦略を明確にしてきた。
ソフトバンクは2025年9月にワイモバイル(Y!mobile)で「シンプル3」を開始し、データ容量拡充、PayPayカード割の増額、海外2GB無料、LYPプレミアム付帯などを盛り込んだ。
一方、料金プランの値上げに慎重だったメインブランドでは、2026年4月に、PayPayポイント付与率を従来プランの2倍にした「ペイトク 2」、データ無制限の「テイガク無制限」、5GBまでの小容量プラン「ミニフィット2」を6月2日から提供する。
いずれも、SoftBank Starlink Directや海外データ放題(1カ月または5日)などの付加価値サービスをバンドルした。同社では決算Q&Aでも「純増数にはこだわらない」と明言しており、「純増よりARPU」「安売りよりロイヤル顧客化」へ転換したと言える。
それぞれにアプローチは異なるものの、大手3社が共に「収益回収フェーズ」への転換を目指す中、契約者拡大を急ぐ楽天モバイルは、シンプルで分かりやすい低価格無制限を保ちつつ、U-NEXTでARPU上積みを加速させている。
このように2020年の値下げ政策以降、単純な価格引き下げ競争は一段落し、現在は実質的な値上げ局面へと移行している。
もっとも、その手法は従来と異なり、ポイント還元やコンテンツバンドルなどを組み合わせた「付加価値型料金モデル」が主流となっている。
低価格戦略を武器とする楽天モバイルが市場に価格インパクトを与えた一方で、他社は金融や決済との連携を通じてARPUの最大化を図っており、競争軸は「通信品質」や「価格」から、「経済圏」「DX」「プラットフォーム」などの総合的価値へと大きくシフトしている。






