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キャリア各社における5G展開の行方

 キャリア各社の2023年度決算が発表され、そこからキャリア各社による2023年度の5G動向がおぼろげにみえてくる。今回は、2023年度の決算発表を踏まえ、各社の5G展開について考察していきたい。

キャリア各社の5G開設計画は2023年度が実質的な最終年度

 現状、総務省から2023年度の基地局数が発表されておらず、明確な動向は把握できていないが、ハイレベルな5G開設計画の達成に力を注いだKDDI(au)は旺盛な動きであったことが想定される。

 すでにキャリア各社は2022年度時点で5G開設計画を達成しているが、2023年度もクリアしたものとみられる。キャリア各社が総務省に申請した5G開設計画は2024年度が最終年度となるものの、2024年度は2023年度の計画と変化がないため、実質、2023年度が最終年度といえる。

5G人口カバー率95%のソフトバンクと5G人口カバー率90%超のKDDI(au)

 次にキャリア各社の動きを追ってみたい。NTTドコモは当初、2023年度末に5G人口カバー率90%を達成する目標であったが、現在のところ、リリースが発表されていないため、LTE周波数のNR化に苦労していることが見て取れる。5G人口カバー率90%を達成するには、LTE周波数のNR化が欠かせず、早々の5G人口カバー率90%達成の発表を期待したい。

 一方、KDDI(au)は2023年度にハイレベルな5G開設計画を遵守できたようで、5G開設計画は2023年度末に約94,000局、屋内を含めたsub6開設基地局数(3.7G/4.0GHz帯)も3万9000局に到達している。

 ソフトバンクは2023年度末に5G人口カバー率が95%を超えており、他キャリアに先駆け、5Gサービスの面的カバーを実現した。なお、5G基地局数は2022年度の6万5000局から、2023年度は8万5000局に達している。また、楽天モバイルは設備投資額を抑制した結果、2023年度は2022年度よりも消極的な展開となったものとみられる。

NTTドコモとソフトバンクはKDDI(au)並みの5G専用基地局数が必要

 最後にキャリア各社における今後の動きを考えてみたい。NTTドコモは2024年度以降もLTE周波数のNR化を推進し、5G専用周波数(3.7G/4.5G/28GHz帯)への積極展開に期待がかかる。KDDI(au)は2024年度以降、4.0G/28GHz帯への注力が予想される。

 ソフトバンクは大手3社で唯一、3.7GHz帯のみの保有になるため、4.9GHz帯の獲得に力を注ぐ可能性が高い。楽天モバイルは2024年度以降、1.7GHz帯のNR化が開始され、5G人口カバー率の上昇が期待される。

 また、2023年度の5G基地局申請数をみると、KDDI(au)は3.7GHz帯が3万9156局、28GHz帯は1万6302局となっている。KDDI(au)が他キャリアを凌ぐ5G専用基地局数を申請している以上、最終的にNTTドコモとソフトバンクもKDDI(au)並みの5G専用基地局数が必要になりそうだ。

 仮にNTTドコモとソフトバンクが5G専用周波数の展開に消極的な姿勢であれば、周波数の有効活用という観点から、総務省から注意を受ける可能性もある。ただ、これまで堅調に5G専用周波数を展開してきたNTTドコモに対し、ソフトバンクは5G専用周波数に消極的な姿勢であったため、今後の注力具合に期待がかかる。

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