DATAで見るケータイ業界
ティーガイア買収で再編が進む携帯代理店業界
2024年10月14日 07:00
キャリアショップを運営する携帯代理店業界の地殻変動が続いている。2022年12月に家電量販店のノジマが約854億円を投じて携帯販売代理店業3位のコネクシオを完全子会社化することを発表したのに続き、今年10月には米ベインキャピタルが最大手のティーガイアを買収し、非公開化すると発表した。
今回は、ティーガイア買収の動向について取り上げ、携帯代理店業界の動きについてアップデートしていきたい。
キャリアショップ削減の流れを加速させた「ドコモショップ」の3割削減計画
端末買い替えサイクルの長期化やコロナ禍による来店頻度の減少、携帯会社のオンライン販売強化など、販売代理店業界を取り巻く環境は厳しさを増している。
なかでも業界に大きな影響を与えたのが、NTTドコモが2025年度までに全国に約2300店舗ある販売店「ドコモショップ」について、3割程度(約700店舗)削減する方針を明らかにしたことだろう。これによって、競合他社でも削減の動きが広がり、携帯代理店業界の再編が加速していった。
弊社が定期的に調査しているキャリアショップ数の推移では下記のようになっている。
NTTドコモが「ドコモショップ」削減を明らかにしたのが、2022年2月22日に開いた販売代理店向け説明会だったことから、それ以降はショップ数の減少トレンドが鮮明になっていることがわかる。
しかし、足元では2024年8月から店頭でもahamoの端末の取り替えができるサービスをドコモショップや一部の量販店でも提供し始めるなど、事実上の3割削減を撤廃しており、再びリテール強化へと軸足を移している。
ティーガイア買収の業界へのインパクト
今回のティーガイアへのベインキャピタルのTOBでは買収総額は約1400億円を見込み、買収に伴い同社株は上場廃止となる。買収の詳細についてはすでに既報の通りなので、ここでは割愛するが、ティーガイアの業界におけるポジションでは1,781店舗(キャリアショップ1006店舗、その他ショップ775店舗 2024年3月時点)を擁するトップ企業である。
ここで弊社が定期的に発行しているキャリアショップのデータを母数に上記のティーガイアのキャリアショップ数の割合を計算したのが下記データである。
2024年3月時点における国内のキャリアショップ数は7339店舗だが、そのうち約14%(1,006店舗)を1位のティーガイアが占め、2位の光通信が約1000店舗、3位のコネクシオが約400店舗と続いている。
もともとティーガイアは2008年、MSコミュニケーションズ(住友商事・三菱商事系)とテレパーク(三井物産系)の対等合併により誕生した。当時(2008年3月期)、合併前の両社の年間携帯電話販売台数の合計は約760万台で、市場全体の約15%のシェアを占めていた。その後、2012年2月に三井物産がティーガイアの株式17.56%分を売却、2016年2月には三菱商事が16.57%に相当する全株を売却している。現在の大株主である住友商事や光通信は、今回のベイン買収に保有株売却の予定だとしている。
関係者によれば、ティーガイア買収について夏くらいから一部噂が流れたようだが、ファンドが買収するという点については、驚きを持って受け止められるようだ。ここ数年、ティーガイアなど大手携帯代理店の業績は伸び悩んでおり、伊藤忠系のコネクシオや今回のティーガイアは親会社が株を売却したが、丸紅はTOBでNECモバイリングを子会社化し、傘下のMXモバイリングと合併させて上場廃止を選択している。
ティーガイア以外にも今年4月には兼松コミュニケーションズが東京・茨城・長野を地盤にNTTドコモの販売代理店としてドコモショップ15店舗を展開するCCDを買収した。一方、「地場系」を中心に事業破綻の動きが続いている。2023年8月に愛知県を中心にピーク時には約30店舗を展開してきたアミックテレコムが破産したのに続き、5月には大阪を地盤に二次代理店だった、日本テレメックスが破産を申請している。
「商社系」が「メーカー系」や「地場系」を取り込むカタチで変化してきた携帯代理店業界だが、今後の市場成長が不透明ななか、「商社系」自らの生き残り競争が本格化していきそうだ。