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基地局数からみた5Gの現状と今後の展望

 キャリア各社の5G展開は今後、どのような動きが想定されるだろうか。基地局数という観点で、22年度までの動きを振り返りながら、考えてみたい。

現状の5G展開~2022年度までの動き

 まず、キャリア各社における2021年度までの5G展開の動きをまとめてみたい。

 NTTドコモはLTE周波数のNR化を未導入で、5G専用が合計1万2600局になっている。KDDI(au)はNR化が7700局で、5G専用は合計4300局と5G合計で1万2000局となった。

 ソフトバンクはNR化が2万9000局で、5G専用は合計3500局と5G合計で3万2500局になり、2022年4月に5G人口カバー率90%を達成している。

 2021年の総務省からの行政指導を受け、2021年度は5G展開を積極化したものの、NR化がメインといえる。楽天モバイルは5G専用が合計9900局と健闘をみせた。NR化を含めた5G基地局数でいえば、ソフトバンクが他キャリアを圧倒している。

 一方、2022年度の動きはどうだろうか。NTTドコモは2022年度に5G専用展開が消極的な印象で、NR化も4000局程度と中途半端な印象を受けた。KDDI(au)はハイレベルな5G開設計画達成に向け、5G専用もNR化も本格化させている。

 ソフトバンクは2022年度に5Gネットワークを完成の域まで持っていく計画であるが、メインはNR化とみられる。楽天モバイルはNR化可能な周波数が1.7GHz帯のみであるため、5G専用に注力している。

 なお、2022年度の基地局数は「無線局等情報検索」からの免許情報を参考にしているが、キャリア各社とも、5G開設計画は達成もしくは近しい数値になっている。ただ、5G開設計画自体がKDDI(au)と楽天モバイルはレベルの高い計画であるのに対し、NTTドコモとソフトバンクはミニマムな計画になっている点が影響しているものとみられる。

想定される5G展開~2023年度以降の動き

 5G開設計画をみる限り、2024年度は2023年度と同数の計画であるため、キャリア各社は2023年度に5Gネットワークを完成させる意向とみられる。

 NTTドコモは現在、問題になっているエリアの不具合をエリア調整で対処しつつ、2022年度に消極的な動きをみせた5Gは計画未達成の北関東・信越はじめ、地方の展開を進めるため、積極姿勢に転じるとみる。

 KDDI(au)は2023年度に2022年度の積み残しを解消しつつ、5G専用、NR化ともに積極展開を図るが、ハイレベルな5G開設計画であるため、達成は2024年度にズレ込む可能性もある。

 ソフトバンクは5Gネットワークがほぼ完成しているため、今後は地道に少しずつ5G専用を展開していくものとみられ、抑制された設備投資額の中で5G投資が継続されるものとみられる。

 楽天モバイルはひとまず、4G展開をストップさせ、5G専用に注力する。

 2024年度以降、キャリア各社の5G展開における見通しは不透明であるが、拡大するトラフィックに対応するにはsub6を活用せざるを得ない状況であることは間違いない。現在、3.4G/3.5GHz帯でトラフィック対策をしているエリアが、将来的に3.7GHz帯(sub)に置き換わる転換期が到来する可能性も否定できない。

 また、キャリア各社はミリ波の展開に消極的であるが、国内版「iPhone」のミリ波対応で急展開する可能性があり、Appleに振り回される構図に変化はない。

 ただ、国内版iPhoneがミリ波対応しても、スタジアムや高トラフィックエリアなど局所的な展開にとどまるものとみられる。なお、KDDI(au)はハイレベルな5G開設計画を立案したが、最終的にNTTドコモとソフトバンクも最低限、KDDI(au)並みの局数が必要になるのではないだろうか。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/