DATAで見るケータイ業界
本格的なショップ削減を前に再編加速する販売代理店業界
2023年1月20日 00:00
昨年12月、家電量販店のノジマが約854億円を投じて携帯販売代理店業3位のコネクシオを完全子会社化することを発表した。今回は、再編が進む業界の動向について述べていきたい。
実は、昨年末くらいより一部関係者の間では、『コネクシオの異変』について話題となっていた。「いつもキャリアの評価制度でトップクラスにいるのに、ランクを下げている。どうしたのか?」「拠点を集約してランクを上げるのかと思っていたが、全く変化がない」といった声だ。
コネクシオは伊藤忠商事を親会社に1997年に設立(当時はアイ・ティー・シーネットワーク株式会社)されたが、そもそも伊藤忠商事は1992年10月に全国初のドコモショップを八王子に出店するなど、業界を代表する一角でもあった。
2006年3月に東証二部に上場後、2006年8月のイドムココミュニケーションズ買収を皮切りにM&Aを加速させる。2008年7月には日立モバイル、2012年10月にはパナソニックテレコムを吸収合併し、2021年4月にはケーズホールディングスの連結子会社であるケーズソリューションシステムズが手がけるドコモショップ事業の譲渡を受けるなど、勢力を拡大してきた。
今回のノジマによるコネクシオの完全子会社化は株式公開買い付け(TOB)で行われるが、コネクシオに約60%出資する伊藤忠商事は応募に応じ、コネクシオもTOBに賛同しているという。ノジマは2014年3月にはケンウッド・ジオビットのキャリアショップ(ソフトバンク、ウィルコム)を取り込んだのに続き、2015年7月には投資ファンドの日本産業パートナーズなどから全株を取得しITXを買収している。
当時、ITXの買収に関しては、小(ノジマ)が大(ITX)を飲み込んだ買収劇としても注目を集めたが、ITXも今回のコネクシオもドコモショップに強みを持つ点は共通している。いずれにしても、ノジマがドコモショップで一定の影響力を持つことになりそうだ。
これまでにも弊誌では販売代理店業界の動向についてお伝えしており、前回は最大手のティーガイアによる富士通パーソナルズ買収のタイミングで取り上げた。
今回の発表を受け、改めて業界マップをアップデートしたのが、上記の図となる。
端末買い替えサイクルの長期化やコロナ禍による来店頻度の減少、携帯会社のオンライン販売強化など、販売代理店業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、それに拍車をかけそうなのがこれから本格化する携帯会社によるショップ削減の動きだ。
NTTドコモは全国に約2300店舗ある販売店「ドコモショップ」について、2025年度ごろまでに3割程度(約700店舗)削減する方針を明らかにしている。弊社が定期的に発表しているキャリアショップに関する調査データhttps://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mca/1456017.htmlによれば、2022年8月下旬時点の4キャリア(ワイモバイル、UQ mobileを含む6ブランド)が展開するキャリアショップは、全国に7978店舗存在しているが、半年前(2022年2月)の8026店からは48店減少している。新規参入の楽天モバイルを除く3社のメインブランドだけでみると、半年前の6719店から31店減少して6688店舗だった。
今後、同レポートでもキャリアショップ削減の報告を行うこととなりそうだが、本格的なショップ削減を前に地場ショップを中心にM&Aが行われている。全国商社系による地場ショップ買収のケースでは、兼松コミュニケーションズが2021年3月に東北地方でドコモショップとソフトバンクショップを展開するNSC、4月には兵庫県を地盤にドコモショップを展開するキンキテレコムをそれぞれ買収している。
一方、すでに息絶えてしまったケースもある。2022年10月には埼玉県でauやソフトバンクの携帯ショップを運営していたトーツーが特別清算の開始決定を受けて経営破綻した。また、熊本県では9月にニーズワンが破産手続きの開始決定を受けている。
サブブランドを持たず、オンライン販売のahamoが主力となっているNTTドコモと、店舗での接客メインでありながら格安のKDDI(UQモバイル)、ソフトバンク(ワイモバイル)では自ずとショップ戦略は異なる。しかし、NTTドコモがショップを3割カットした場合のコスト削減額は1000億円前後とされ、その効果は決して小さくない。NTTドコモのショップ削減の動きにKDDIとソフトバンクが追随するのか、それとも維持して行くのか2023年の1つの注目点となりそうだ。