ケータイ用語の基礎知識
第747回:USB PDとは
(2016/3/8 12:08)
USB経由の電源供給の規格
「USB PD」とは、規格上、最大100Wの電力を送れる、USBを使った電源供給の規格です。USB PDの「PD」とは、電源供給を意味する「Power Delivery」の略です。
多くのスマートフォンでは、microUSBケーブル、あるいはiPhoneであればLightingケーブルで充電できるようになっています。これは、これまでのUSBの規格でも、ある程度、電力の供給ができるようになっていたからです。
たとえばUSB 2.0では2.5W、USB 3.0では4.5Wまで供給できます。さらにUSB BC(Battery Charging) 1.2では、7.5Wまでの電力供給が可能となりました。USB BCは、主にバッテリーへの充電を主な用途とした規格で、USB DCP(Dedicated Charging Port、専用充電ポート)と言って、USBとして通信しない充電方式も定義されています。これにより、たとえばパソコンに繋いでもUSB機器としては認識されませんが、その分、安価な充電用の製品を作れます。
しかし、これまでUSBでは利用できなかったような、大きな電力を使いたいという要望が増えてきています。たとえば、ハードディスクのようなストレージを使いたい、あるいはタブレットやノートパソコン、あるいはディスプレイといったパソコン用周辺機器にもUSBを電源として使いたいというアイデアが拡がり始めているのです。
そこで、USB経由でも大きな電力を供給できるような仕様が、2012年頃から検討されるようになりました。その結果、策定されたのが「USB PD」です。
USB PDに対応した製品は、今のところパソコン関連でいくつか登場してきています。ZenFoneシリーズを手がけるASUSは「USB 3.1 UPD PANEL」というパソコン用の増設インターフェイスパネルを販売しています。これは、USB 3.1 Type-Cの増設パネルで、Z170チップセットを搭載するASUS製マザーボードに接続し、かつWindows 10/8.1/8/7(各64bit/32bit)で動作させると、USBケーブルを経由して、最大100Wでの電力供給が可能になります。
USB PDは、他のUSB規格と同じく、業界団体のUSB.orgで仕様が定められています。現在の最新規格は、2012年に策定されたUSB PD 1.0です。
USBは、2014年8月、USB 3.1 Gen2規格にUSB Type-Cが加わりました。同時にUSB 2.0にもType-Cが加わっています。USB 3.1 Type-CとUSB 2.0 Type-Cではコネクタ形状は同じなのですが、内部で使用されているピンは異なります(USB 3.1 Type-Cは1ケーブル内に15本、USB 2.0 Type-Cは5本の配線)。
USB PDは、USB 3.1 Type-C、USB 2.0 Type-Cの両方に対応しています。USB 2.0 PDのマークは電池にUSBの接続のマークですが、USB 3.1、USB 3.1 Gen2のUSB PDでは、これに「SS」「SS10」といった記号が追加されています。
最大100W、つなぎ替えずに機器から機器へ給電可能に
USB PDの大きな特徴は、先に挙げたように最大100Wの電源供給が可能になったこと、それに、ホストとクライアント、どちらの方向からも電力供給が可能なことが挙げられます。
これまでのUSB規格では5Vの電圧のみが供給されていました。またスマートフォン用では、9Vの電圧にして、急速充電できる「Quick Charge 2.0」といった技術もありますが、これは特定の機器との接続のときだけ、USBの規格を超える高電圧を提供するようになっていました。
USB PDでは、5Vの他に、12V・20Vの電圧での電力供給を可能としています。12Vは、5Vと並んでパソコンの周辺機器でよく使われる電圧です。たとえば、ハードディスクドライブといった機器などでは5V、12Vの2電源の供給を必要とするものが以前は多くありました。また、20Vは一部のノートPCなどの電源などの電圧によく採用されています。
一方、電源供給のホスト/クライアントの面については、たとえば[対応スマートフォン]―[液晶ディスプレイ]―[ハードディスクドライブ]と繋がっていた場合、どうなるでしょうか。USB PDであれば、液晶ディスプレイがACアダプタに接続されているだけで、スマートフォンとハードディスクドライブ、両方に給電できます。
また、[パソコン]―[液晶ディスプレイ]―[ハードディスクドライブ]として、パソコンにACアダプタが繋がっていれば、パソコン→ディスプレイ→ハードディスクと電力を供給できます。
なお、USB PDの規格によれば、電源供給にはUSBケーブルが用いられることになっており、USB 2.0など過去のバージョンだけに対応したケーブルも含まれます。ただし、どのケーブルでも大電力を扱えるわけではありません、そのケーブル、あるいはケーブルを繋ぐ機器で設定された、安全の範囲内で電力が供給されるようになっています。