ケータイ用語の基礎知識

第997回:普通の5Gとは何が違うの? エリア広げる「転用5G」とは

 どんどん広がる5Gエリア。しかし、高い周波数では広いエリアを作るのが難しいなどの理由で、5Gはエリア展開にも課題を抱えています。そこで採用が進んでいるのが、4Gの周波数を5Gへ「転用」するというもの。普通の5Gとはどう違うのでしょうか? 今回は「4Gの5Gへの転用」を解説していきます。

4Gが5Gに変身する?

 2020年5G通信サービスがスタートしました。5G通信に割り当てられていたのは、3.7GHz帯や4.5GHz帯、28GHz帯など、4Gと比べると高い周波数帯でした。高い周波数帯の方が空き帯域幅を確保しやすくかったためです。

 その一方で、周波数帯には従来4Gなどが使っていた周波数帯に比べ電波の直進性が高まり、基地局当たりのサービスエリアが広げにくくなるという課題も含んでいます。さらに運の悪いことに、5G通信に割り当てた3.7GHz帯は衛星の通信との干渉調整という技術的な調整が必要で、4Gのエリア展開よりも慎重に行わなければならず、時間がかかるという点もありました。

 そんなわけで5Gのサービスエリア展開は開始当初、遅々として進みませんでした。しかし、その状況を打破し、迅速なエリア展開を可能にしたきっかけが「周波数転用」というやり方です。

 KDDI(au)・ソフトバンクの2社は、この「周波数転用」を活用し、NTTドコモに比べて先にエリアを広げることに成功しました。2021年春からドコモも「周波数転用」を利用し、5Gエリア拡大ペースの速度を上げることに成功しています。

 さて、この「周波数転用」とは、いったい何でしょう?

通信速度向上は見込めず……しかしエリア拡大に寄与

 周波数転用とは、それまで4Gに利用していた周波数を使って、5G通信に使うことをいいます。既存の4G基地局を5Gに転用して、5G基地局にしてしまおうというわけですね。基地局設備が新しいものについては、ソフトウェアアップデートを行うだけで5G対応できる機種がメーカーによっては多く存在していたため、5Gエリア展開を加速できるだろう、と考えたわけです。この発想は「NR化」(NR=New Radio)とも呼びます。

 対応する基地局を多く持っていたことから、ソフトバンクの場合、2021年2月15日から700MHz帯、1.7GHz帯、3.4GHz帯の3つの一部の帯域を4Gから5G通信向けに切り替え、また、それにあわせて5G用に割り当てられた高い周波数帯も合わせて5G通信を利用しています。

 また、KDDIに関しては、2020年12月から3.5GHz、2021年春に700MHz帯と1.7GHz帯の5Gへの転用が認可され、一部が5G通信に利用されています。

 これらの転用周波数の中には、第996回で解説した、プラチナバンドと呼ばれる700MHz帯が含まれていることからも分かるように、現在ソフトバンクが設置している基地局・アンテナから5Gのカバーエリアの広がりが予想できる(それも恐らく広い)というのがソフトバンク・KDDIにとっては大きなメリットになるでしょう。

 しかし良いことばかりではありません。4G周波数を利用した5Gの通信速度は、通信方式は5Gで規定された物であるため「遅延」などは低くなりますが、速度的な面では4Gのそれとほとんど変わりありません。各社のエリアマップでも、4G周波数を使った5Gエリアと5G専用に割り当てられている周波数帯を明確に塗り分けています。

 ドコモに関しては、そうした性能面や4Gユーザーへの影響から、転用には慎重な姿勢でした。それゆえにほか2社より少し遅れたのですが、2022年春より4G LTE向けの周波数を一部5Gサービスに転用し、エリア展開を行っています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)