ケータイ用語の基礎知識

第998回:ちょっとした習慣がスマホのバッテリー寿命を縮める? 「充電サイクル」が長持ちのカギ

 高性能化のためでしょうか、最近はだんだんスマートフォンも高価になってきつつありますね。せっかく高いお金を出して買ったスマホ、少しでも長く使いたいものです。

 ところで、スマホの寿命を決めるのは、なんでしょう?

 ちょっと前ですと、画面の焼き付き……なんというのもありましたが、最近のスマホの寿命を決めるファクターといえば、なんと言ってもバッテリー保ちでしょう。どんなに高性能でデータ通信が速く、写真が綺麗に撮れ、話しやすいスマホでもあっという間に充電切れてしまっては使い物になりません。

 このスマホのバッテリーの寿命、扱い方によって短くすることも長くすることもできます。スマホを、少しでも長く使う、今回はそんな方法をご紹介しましょう。

バッテリーの寿命を縮める、こんなことしてませんか?

 普段やってしまいがちなこんなこと、実はバッテリーの寿命を縮めることにつながっているのです。スマホでこんなことをしていませんか?

やっていけないことのその1

 冬の季節ではそれほどでもないですが、自動車の中など、高温になる場所に置きっぱなしにする、などのこと。

 スマートフォンに内蔵されているバッテリーは、一般的にリチウムイオン電池で、正極材にコバルト酸リチウムのような酸化物、負極材に黒鉛(グラファイト)、電解質に溶媒などの材料を使用しています。そして、このバッテリーの寿命を左右する要素は負極の化学反応による劣化です。が、この化学反応は温度依存性があります。つまり、高温であるほど反応が早くなる=劣化が早くなるのです。

 また、電池の温度上昇は、電池寿命の低下だけでなく、本体の電子回路や内部配線の絶縁劣化を引き起こす原因となり、異常発熱による発煙や発火、本体の変形などの不具合にもつながりかねない危険な要素です。

 簡単にいえば、スマホが高温になった車の中で火も噴きかねませんから、置きっぱなしにするのはやめましょう、ということでもあります。それは極端な例としても、リチウムイオン電池に高熱は大敵です。高温に晒さないように気をつけましょう。

やっていけないことのその2。

 パンパンの満充電(充電 100%)や完全放電(充電 0%)のにするのは避けましょう。この状態での保管などはもってのほかです。理由としては、先ほどの暑さと同様、やはり満充電では電極の電圧が高すぎ、負極材の劣化が進みやすいという理由があるからなのです。

 やってしまいがちですが、常に充電器にコンセントを接続した状態にするなど、浅い充電を繰り返して、スマートフォンが100%充電された状態が続いているというのも、実はよくありません。先に挙げた「満充電では電池内の電極の電圧が高すぎ、化学反応が進みやすい」という同じ理由で電池の寿命を縮めてしまうのです。

 なお、リチウムイオン電池は満充電にも弱いですが、過放電にも弱いものです。放電した電池をそのまま利用しようと、原理上、最低限必要な電圧を下回る「深放電状態」となってしまい、回復不能となってしまいます。そこで一般的なリチウムイオン電池を使用する機械では、最低電圧が2.8V程度となった時点で、電池の放電を停止するよう保護装置が組み込まれており、通常の使い方であれば過放電状態にはならないようになっています。が、極端な低電圧もやはり電池を傷めますのでご用心。

やっていけないことのその3

 スマホを使用しながら(たとえば、ゲームをしながらとか、というような負荷をかけながら)充電をしてはいけません。これもいままでの理由をみてくれば分かりますよね。

 受電と放電が繰り返し行われるということは、電池内で過剰な化学反応が起こる、つまり電池の劣化が進むのです。

充電サイクルとは

 これは、AppleのiPhoneの場合ですが、バッテリーの寿命に関してはこのようにWebに記載されています。


iPhoneのバッテリーは、フル充電サイクルを500回繰り返した時に、本来の容量の最大80%を維持できるように設計されています。

本来の容量の最大83%までバッテリー性能の落ちたiPhone。

 フル充電サイクル、あるいは充電サイクルとは、0%から100%までの充電を1回行うことで1回と数えるサイクル数です。たとえば、80%→100%(差20%)を1回、50%→100%(差50%)を1回、40%→70%(差30%)を1回という充電を行うと20+50+30=100で1フル充電サイクルとなります。

 これを500回分したときに、本来の容量の最大80%を維持できるような、バッテリー寿命の目安として設計している、とアップルは言っているわけですね。ただ、バッテリーの発電は先ほど触れてきたように化学反応によるものです。バッテリーの寿命もバッテリーサイクルのような単純化した計算では寿命を予測できないのも事実です。

 たとえば「放電深度」「充電深度」という要素があります。これらは、どれだけ一気に放電したか充電したかというパラメーターなのですが、これもバッテリーの寿命を決める一因子になります。資料などを見ると、充電深度・放電深度は80%での充放電サイクル特性で一定の寿命を保つ……というものが多いのですが、実用の機械ではマージンを持たせて20%~80%の間くらいで充電・放電のサイクルを繰り返すのがちょうど良いのかもしれません。

 これらを考え合わせると、スマホを長持ちさせる方法は

  • 温度の高いところに放置しない
  • 電池残量20%程度で充電し80%程度で止める。(充電機につなぎっぱなしにしない)
  • スマホを使用しながらの充電をしない

 と言ったあたりになるでしょうか。

 100%充電にしない、というあたりはちょっと難しい注文のような気もしますが、逆に20%程度で充電する、というのはたとえばiPhoneであれば「低電力モード」への移行を基準とすればいいので、そう難しくはないのではないでしょうか。

 たとえば、充電機につないで何分つなぐと80%充電になるか調べておき、その時間になったら充電をやめるといった習慣をつけておくとできるかもしれませんね。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)