ケータイ用語の基礎知識

第888回:Android Goエディション とは

 Android Goエディションは、初めてスマートフォンを所有するようなユーザーに向けて最適化されたAndroidです。基本的なアプリの操作を簡略化し、そして価格を安くするためにOS内部の構成も変更、軽量化されており、安価なハードウェアでも動作するよう再構築されています。

 Android Goが搭載されるようなスマートフォンを使うという人が多い国と言えば、たとえばその国家の経済規模がまだまだ成長の余地があること、通信インフラもまだあまり整っていないことなどが考えられます。そのため、低スペックのハードウェアでもスマートフォンとして満足のいく動作をするように、また、貧弱なモバイル回線でも滞りなく使えるよう再設計されているのです。

 Android Goエディションを搭載する機種は、2019年1月現在、日本では展開されていません。一方、海外では、インドや南アフリカ、アメリカ、ナイジェリア、ブラジルなどの120以上の国向けに提供されています。これらの国で販売されている200機種以上のデバイスがAndroid Goエディションを搭載しています。

新興国を中心に販売されているAndroid Goエディション搭載スマートフォン。残念ながら日本では発売されていない(Google Webサイトより)

 Androidといえば、素に近いAndroidを比較的廉価なハードウェアに搭載した「Android One」も存在します。しかし、Androidそのものや標準的に搭載されるアプリが肥大化した一方で、新興国でのユーザーニーズに応えられるような機能が搭載されていません。従って新興国マーケットでさらにユーザーを増やすのであれば、OSにもなんらかのテコ入れが必要なのは明白でした。

 Android Goエディションは、OS自体と標準アプリなどにも手を入れることで、いわゆる新興国を開拓するために造られた戦略的な製品という側面があるのです。

Goエディションの基本的な構成

 Android Goエディションが、「新興国」の「インフラも整わない」「これまでスマートフォンを持ったこともない」ユーザーを開拓しようとしていることは、そのスペックからも見て取れます。

 たとえば、ディスプレイの解像度は、現役のAndroid機では珍しいFWVGA(480×854ピクセル)やHD(720×1280)といった低い解像度までと定められています。

 モバイル回線は3Gもしくは4Gに対応します。メインメモリは最大1GBが原則です。3GB、4GBといったメインメモリは載せられません。内蔵ストレージは最大16GBまでです。OS側のコアシステムの最適化により、メモリやストレージの小ささはそれほど苦にならないはずです。

 たとえば、内蔵ストレージが8GBだった場合、通常のAndroid 9でユーザーの使えるエリアは2.5GBしか残りません。これがAndroid 8 OreoのGoエディションの場合、ユーザーは5.0GB、Android 9 PieのGoエディションでは5.5GBまで利用できるようになっています。つまり、OSが占める割合が少なくなったわけです。

 プログラム/アプリからすると、Android Go と標準的なAndroid(Oreo以降)のAPIは基本的には大きな変更はないように見えるよう工夫されています。

 ただしGoエディションでは、アプリのサイズがデバイス上で40MB以下、メモリの使用は50MB以下(ゲームの場合はそれぞれ65MB、150MB)、ピクチャーインピクチャーが使用不可などの制約があります。

 このほかには、プリインストールのアプリも、標準のAndroidに比べ少なく、またひとつひとつが軽く、また新興国の用途に合うように作り直されています。

 典型例としては「YouTube」が挙げられるでしょう。Goエディションにインストールされる「YouTube Go」は、標準的なYouTubeと同じくストリーミングで動画が観られるだけではなく、ダウンロードも可能になっています。

 先述したように、いわゆる新興国では、通信品質が万全とは言えないことがあります。通信が途切れ途切れになりがちですが、「YouTube Go」は、何度も中断と再開を繰り返しながら、自動的に動画をダウンロードし、鑑賞できるようにしてくれるのです。

YouTube Go。指定した動画を録画してくれるほか、通信網を使わずに他のユーザーにシェアする機能なども持っている

 あるいは「Chrome Go」なども、わかりやすいでしょう。ブラウザアプリの「Chrome Go」は、初期設定で通常のAndroidにも搭載されている「データセーバー機能」がONになっています。Webブラウジング時には通信量を最小限にし、オフラインでも利用しやすくしつつ、Webページの読み上げ機能を搭載し、たとえば識字率が高くなくとも利用しやすい形にしなっています。

 Google Go、Gmail Go、Map Goといったプリインストールアプリも、標準版と比べてファイルサイズが半分以下になっています。それでいて、たとえばMap Goは通信環境が不安定でも、角を曲がったかどうかなどを判断してナビゲーションをしてくれるよう配慮されています。

 Goエディションには、「Files Go」というアプリも追加されました。これは従来のAndroidにもプリインストールされていないアプリです。素早くファイルを見つけ出し、要らないものは削除を提案するなど、いわばファイルの整理整頓ができるアプリです。

 内部ストレージやmicroSDなどの補助ストレージがあるとはいえ、不要なファイルを持ったままにする余裕は、Goエディションの端末にはあまりありません。そのため、ユーザーが自分でファイルを手軽にファイルの移動・削除などができるような機能も備わっているのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)