ケータイ用語の基礎知識

第833回:デュアルOIS とは

手ブレ補正をダブルで

 OISとは「光学式手ブレ補正」のことです。これを意味する英語「Optical Image Stabilization」の頭文字から来ています。

 スマートフォンも含むカメラは、写真を撮るときにシャッターボタンを強く押しすぎたり、端末をきちんとホールドしていなかったりして、撮影の瞬間にカメラが動いてしまい、ブレた写真になってしまうことがあります。いわれる「手ブレ」と呼ばれている現象です。スマートフォンのカメラも、ズーム機能の倍率が大きくなるなど、手ブレが起きやすい要因が増えています。

 そこでデジタルカメラには、ズームや光りが少ない撮影でも、ブレさせずに撮影する仕組みがいくつか用意されています。その仕組みのひとつがOIS、光学式の手ブレ補正機構です。OISのほかにも、DIS(電子手ブレ補正、Digital Image Stabilization)などの仕組みも存在しており、これを搭載しているスマートフォンもあります。

 OISそのものの仕組みは明快です。手ブレという現象は、画像の撮影を始める時間~終了までにイメージセンサーが捕らえている光の位置がズレてしまうことから起きます。

 ということは、撮影に必要な光をイメージセンサーが感じ取っている時間、撮影が終わるまでの間、光の位置がずれないように補正してあげれば、ブレていない写真を撮ることができるわけです。

 幸いなことに、スマートフォンなどのカメラユニットの表面と、イメージセンサーの間にはいくつかのレンズが組み合わされています。ここが、カメラなどではいわゆる「光学系」と呼ばれている場所です。この光学系を操作することによって手ブレを補正するのがOISと呼ばれる仕組みなのです。

 具体的にはスマートフォンのカメラユニット部分が、縦横にどれだけ動いたか、またピッチ・ヨーと呼ばれるカメラユニットの傾きを、加速度センサーなどで計ります。その値から、撮影中の揺れに対応する動きを光学系、つまりレンズなどをサーボモーターで補正することで、イメージセンサーが撮影する画像がブレないようにしているのです。

 最近のスマートフォンにはカメラユニットを複数台、搭載するものが登場してきています。2台のカメラユニットにOIS機構を備えた場合が、今回紹介する「デュアルOIS」ということになります。HTC 10や、iPhone X、Galaxy Note8などがこの「デュアルOIS」を名乗っています。

意味が違う二つの「デュアルOIS」

 ところで、HTC 10、iPhone XとGalaxy Note8のデュアルOISでは、同じ言葉でも意味が異なることに注意してください。

 HTC 10のカメラは、インカメラ1台、アウトカメラ1台の構成になっています。HTC 10でいう「デュアルOIS」は、インカメラも、アウトカメラもOIS機構が付いているよ、という意味です。風景の撮影でも、自撮りでも手ブレを起こすことはないよ、という意味だと思えばいいでしょう。

 一方、iPhone XやGalaxy Note8はアウトカメラ2つのデュアルカメラ構造になっています。たとえばiPhone Xの場合、標準撮影と望遠というように使い分けることができます。つまりiPhone XとGalaxy Note8でいう「デュアルOIS」は、デュアルカメラユニットどちらで撮影してもOISが有効であることを意味しています。

 一般的に言って、望遠撮影をしたときのほうが手ブレが画像に影響しやすいですから、標準側だけでなく望遠側でも手ブレ補正が効くというのは、写真が好きなユーザーには喜ばしいことでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)