ケータイ用語の基礎知識

第765回:デュアルスタンバイ とは

 携帯電話では、「スタンバイ(standby)とは“待ち受け”のことです。今回紹介する「デュアルスタンバイ」は、英語で二重を意味する“dual”と“standby”という言葉の組み合わせからわかるとおり、1台の携帯電話で2つの通信方式、あるいは異なる携帯電話会社のサービスを利用できることを指します。

 たとえば、近日発売されるモトローラ製スマートフォン「Moto G4 Plus」もデュアルスタンバイ対応機種のひとつです。ちなみに「Moto G4 Plus」では“DSDS”という、あまり聞き慣れない単語も使われています。これは、「2枚のSIM、二重待ち受け」を意味する“Dual SIM - Dual Standby”の略とされています。2016年7月現在、ネット上を検索しても、DSDSという表現は、まれに海外の通販サイトで記載されている程度で、あまり多く利用されていないようですが、今後はこの表現が増えていくのかもしれません。

Moto G4 Plus

さらに「デュアルアクティブ」機の登場も

 一つの端末に2枚のSIMスロットを持つ「デュアルSIM」機自体は以前から、SIMフリースマホなどを中心に多くの機種が日本国内でも以前から販売されていました。

 ただ、「デュアルSIM」携帯電話・スマートフォンといっても、対応している機能のレベルはさまざまでした。

 最も原始的なタイプとしては、デュアルSIMと言っても、一度に使用できるSIMカードは1枚だけで、利用するスロットを電気的に切り替えるというものです。これには端末の設定で「SIMスロット1」「SIMスロット2」というような2つのSIMスロットを切り替えできるモノも含みます。この場合、当然ながら、端末内部の電波をやりとりするラジオ部、電波からデジタルデータを取り出すモデム部といった回路はひとつしか搭載されておらず、SIMスロット1、SIMスロット2どちらも同じ回路を使います。現在アクティブとなっているSIMのみが回路を排他的に使用します。

 一方、デュアルスタンバイ対応端末では、同時に2枚のSIMカードで契約した通信サービスを、同時に待受できます。この場合、回路自体はひとつしか搭載されず、SIMスロット1、SIMスロット2で共有しつつ、タイミングによって切り替えています。どちらのSIMカードも通話できる契約であれば、どちらの電話番号に着信があっても利用できます。タイミングによって切り替える、つまり、厳密に言えば同時待受ではなく、非常に短い時間で使っているSIMを切り替える“時分割”です。実は微妙に電話が呼び出されてから端末が着信に気付くまでの時間が遅れていることがあるのですが、非常に高速に切り替えているので利用している人間がそれと気付くことはありません。

 またデュアルSIMスロットを利用する機種では、デュアルスタンバイよりさらに進んだ「デュアルアクティブ」に対応する機種も最近では登場し始めています。これは、2枚のSIMを同時に通話などに使用できるというものです。GSM方式や3G方式でこのタイプの機能を実現するには通信用回路そのものを二重化するしかないわけですが、実際に現在まで海外で販売されている機種では、回路を複数搭載することで実現しています。デュアルスタンバイよりデュアルアクティブの方が高度ですが、仕組み上、バッテリー消費などが多くなるという問題も存在します。なお、デュアルスタンバイのことを“DSDS”と表記することがあるのと同様、デュアルアクティブを“DSDA(Dual SIM - Dual Active)”と表記することもあるようです。

 2つのSIMカードが1台で利用できる、と言いつつ、実際にできることに違いがあります。さらに注意したいのは、対応する通信方式です。日本ではLTE方式が主流になっていますが、たとえば端末がデュアルスタンバイ対応としつつ、SIMスロット1ではLTE(4G)や3Gをサポートしつつ、SIMスロット2では、2G(GSM)のみ、という場合もあります。日本ではGSM方式は利用できませんので、国内ではデュアルスタンバイ機能を利用できません。日本で利用する場合は、少なくともどちらのスロットともに3Gへ対応したものでなければ意味がないと言えるでしょう。